今日同じチームの人から「どうすれば(プランニングのような)ミーティングをうまく仕切ることができるのか」といった趣旨のことを聞かれたのだけど、あまりうまく答えられなかったので、ちょっと落ち着いてまとめてみようと思う。
ファシリテーションの問題
まず課題設定。
「(プランニングのような)ミーティングをうまく仕切る」というのはつまり、いわゆるファシリテーションのことを言っていると思う。
ファシリテーションとは - FAJ:特定非営利活動法人 日本ファシリテーション協会 によれば、ファシリテーションとは「人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすること」だ。
僕は、ファシリテーションを以下の要素で捉えている。
- ゴール: その場の参加者が「何を達成したい」のか。
- 全体図: ゴールに照らして、おおむねどういう道筋で進んでいくことを想定されるか。
- 現在の場: 現在の共通認識は何で、共通になっていない認識は何か。場は熱いか、冷たいか。発散中か、収束中か、等々。
これら3つが明らかであれば、自ずとなすべきことが見えてくる。
先の質問をされたときには、ここまでを伝えた。
どうすればできるようになるか
問題はここからだ。
「これら3つが明らかであれば、自ずとなすべきことが見えてくる」と言われたところで、
- どうすれば、それら3つを明らかにできるのか
- 3つを明らかにしたところで、本当になすべきことは見えてくるのか。見えてこなかったらどうすればいいのか
- どうすれば、それらの技術を習得していけるか
といった疑問が湧いてくることだろう。
聞いてくれた人も、僕の回答を受けて少し困惑していたみたいだった。こういった疑問が浮かんでいたのだと思う。
ここからは、これらの疑問に答えることを試みたい。
どうすれば、それら3つを明らかにできるのか
ゴール、全体図、現在の場。
これらを明らかにするには、まず「明らかにしようとすること」が必要になる。
おそらく、当たり前だと思われるだろう。では、「明らかにしようとすること」ができているだろうか?
おそらく、できている部分もあれば、できていない部分もあることに気づく方が多いのではないかと思う。
僕自身もそうだ。
これらに常に注意を払い、曖昧になってきたらそれに気づき、明らかにするための行動を取る。
これができているか。
たとえばゴール。ミーティングが始まるとき、「その時間枠が終わりを迎えたとき、どのような成果が得られていればよいか」は明らかだろうか。
ファシリテーターであるあなた自身にとってはどうだろうか。参加者全員がその答えを共有できているだろうか。
僕の場合は、定期的なミーティングでゴールが明らかである場合以外は、まず明示的にゴールを確認することが多い。
自分なりの答えがある場合は「ゴールは○○でいいですか?」と聞くこともあるし、自信がない場合は「まずゴールを確認したいんですが」と切り出すこともある。
全体図。これは、ある程度経験が積めてくると、その場で提示されたゴールと時間枠から、即興で全体図を描けるようになってくる。
そしてそれが理想だと思う。進行に応じて、全体図は形を変えていくものだからだ。ときにはゴールが変わることもある。
しかし、経験が少ないうちは完全に即興というのも難しいだろう。
その場合、あらかじめゴールをある程度把握しておいて、ミーティングが始まる前に大まかな流れを頭に描いておくと多少安心できる。
定期的なミーティングは、だいたいの目的と流れが決まっているものだし、定期的でなくても、ほとんどのミーティングはいくつかの類型で整理できる。意思決定のためのミーティング、アイデア出しのためのミーティング、情報共有のためのミーティング、等々(それらのミックスであることも多い)。
そういったものを学んで、頭に入れておくのも役に立つだろう。
また、全体図を自分自身が描けなくても、全体図に不安を感じたら、参加者に助けてもらうのも手だ。
たとえば、「ところで、残り時間どう使うのがよさそうですかね?」「ちょっと立ち止まってここからの進め方整理してもいいですか?」といった質問が役に立つだろう。
現在の場を明らかにすることは、たぶん一番難しく、経験が必要になる部分だ。
ミーティングの内容(コンテンツ)についての認識・把握も、人や場の状態(プロセス)についての認識・把握も、同じくらい重要になる。(正確には、ファシリテーターの立ち位置に応じて後者の比重が高まることが多いが、ひとまずはどちらも重要、と言っておいてよいだろう)
この課題についてはこの記事では書き尽くせる気がしないので、ここまでにとどめる。
基本的には、上手な人を観察しながら身につけていくとよいだろう。また、ファシリテーターが必要以上に出しゃばりすぎなければ、周りの人たちが助けてもくれる。
最後に、何度か言及してきたが、これらの3つは一度明らかにして終わりというわけではない。
ゴールは変わることもあるし、参加者がゴールを見失うこともある。
全体図は刻々と移り変わっていく。時間がなくなってきたら、アジェンダを一部省略する必要が生じることもあるだろう。それに応じて、ゴールの見直しも必要になる。
現在の場については、文字通り移り変わり続ける(それが「現在」の定義だ)。常に把握を試み続ける必要がある。
3つを明らかにしたところで、本当になすべきことは見えてくるのか。見えてこなかったらどうすればいいのか
「3つを明らかにすれば、自ずとなすべきことが見えてくる」ということの意味については、ここまでである程度は伝わっているのではないかと思う。
「自ずとなすべきことが見えてくる」というよりは、「3つを明らかにし続けようとすること自体が、なすべきことそのものである」という言い方のほうが正確かもしれない(ということに、書いていて今気づいた)。
「見えてこなかったらどうすればいいのか」についても答えは同じで、見えてこないということは、おそらく3つのうちのいずれかに不透明な部分がある(生じている)はずだ。
なお、ファシリテーターは当然ながら全知全能ではないし、そうである必要もないので、力不足を感じた場合は参加者に助けを求めるのもよいだろう。というより、途方に暮れてしまうよりはその方がずっといい。
これを、この質問への当座の答えとしたい。
どうすれば、それらの技術を習得していけるか
以前、とある名ファシリテーターの方に「ファシリテーションがうまくなるにはどうすればいいですか? おすすめの本とかあれば知りたいです」と聞いてみたことがある。
答えは渋く、「実践から学ぶしかないですね」といったものだったと思う。(正確には、洋書を一冊だけ教えてもらえたのだったが)
ある程度ファシリテーションができるようになってみて、その答えの意味もある程度わかるように感じる。
個人的には、本も役に立つと思う。基礎知識は持っていて損はない。
ただ、何か一冊世の中に名著があるというよりは、自分に合う本を見つけることの方が大事なのではないかな、とも思う。
それぞれの本に書いてあるファシリテーションの基礎は、(一定まともな本なら)たぶん本によって大きくは変わらない。どちらかというと、読む人に伝わるかどうかの問題で、それは読む人と本との相性によるところの方が大きいのではないかと思う。
だから、本を探すなら、大型書店に行って、自分に合いそうな本を手にとって探してみることをおすすめしたい。
そして、あとは実践あるのみだ。
どうなんだろう。何か、うまいやり方を知っている人がいたら教えてほしい。
残念ながら、ここまで記事を書きながら考えてみても、実践しながら学ぶこと以外に有効な学び方を思いつかなかった。
実践しながら学ぶことの一般的な手引きとして、
- 安全に失敗できる場所で、小さく失敗しながら学ぶ
- 本などで学んだこと(座学)を実践に投入してみて、フィードバックを得ながら学ぶ
といったことは言えるだろうか。当たり前だが、大事なことだ。
まとめ
ミーティングをうまく仕切ること、つまりファシリテーションにおいては、(僕の考えでは)「ゴール」「全体図」「現在の場」の3つを明らかにし、またし続けることが重要だ。
それらを明らかにし続けること自体がファシリテーションである、という言い方もできそうだということがわかった。(※これは捉え方の一つに過ぎず、ヒントのようなもので、違った捉え方も可能だとは思う)
そして、ファシリテーションがうまくなるには、本を読んで基礎知識をつけておくことも有効だが、実践し続けることが何より重要だと思う。
この記事が、ファシリテーションがうまくなりたい人にとって、何かしら手助けになれば幸いだ。