fate/stay night

まあ昨日書いたようなことはエロゲーにとっては無粋なことなのかも知れない。でもやっぱり自分は、現実世界から「萌え要素」だけをぺりぺりと引き剥がしてパッチワークしたようなキャラ(凛とか)みたいなのには違和感を覚えてしまう。きっとそれを受け入れられるかどうかがエロゲーマーと一般人を分ける境界線なのだと思う。ゲーマーは現実世界とゲーム世界を見事に分離させることができるから、「正義の味方」という言葉がいくら現実世界にあったとしても「それはゲームの中だけで通用する概念だ」と割り切ることができる。
似たようなことはハリポタを読んだ後にも起きる。楽しい楽しい魔法の世界で、ウラオモテの無い純粋な少年少女たちが活躍する。そんな世界の中で丸一日(読書時間で)過ごせば、現実の世界に戻りたくなくなるというもの。エロゲーは日常を描いているようで、それはファンタジー並に省略と想像の手を加えた現実なのだ。
そして、現実世界に戻って落胆する。ゲームや小説の中とは違って「自分が何のために生きているのか」ということすら曖昧な世界。愛や正義だけではどうにもならない世界。それをみて落胆する。そんな時、自分を納得させるか、それとも空想の世界に戻っていくかはひとそれぞれの自由だ。
さて、桜ルートやろうっと。

Fate/stay night

凛ルートクリア。手に汗にぎってマウスもしっとりの戦闘シーンがこれでもかと繰り返されてむっはー。ヒロインたちと食卓を囲むシーンや、生徒会室での一成とのやりとりも真剣に読んじゃうのはキャラ立ちトークの威力ゆえ。凛が破顔、ディスプレイの前の自分も破顔。破壊力抜群。現実のごちゃごちゃした人間関係に戻りたくなくなる。
でも正直な話、肝心の物語部分が物足りない。ちょっとその物足りなさを下に書いてみる。
まずアーチャーの正体に結構早く感づいちゃったのは痛い。アーチャーの正体が明らかになるよりもずっと前の段階でわかっていたという人は多い。そもそもセイバーシナリオで「英霊は時間の縛りを超越する」みたいなことをしつっこくしつっこく(図まで使って)説明するのがいかんと思う。あそこまでくどくどと説明されると「ああコレは何かの仕込みなんだな」と思うし。そのへんのメタ的な推理で興がそがれた感あり。
そもそも自分は、月姫のような主人公の主観を室伏ばりにぶんぶん振り回すようなテキストを期待していた。昨夜の夢は果たしてただの夢だったのだろうか、それとも実際に吸血鬼として活動してしまったのだろうか、というやつね。主人公が吸血鬼かもしれない、というのはやっていて本当に怖かったように覚えている。
それと比べると今回のシロウ君の悩みは風船に吊るして飛ばせるくらい軽い。「周りの人全員を救うことはできないのか」そもそもこのゲームがやれるような年齢の人なら「正義」なんていう言葉にはちょっと引いちゃうはず。そのうえ飽食平和の日本で育った自分には「救う」という言葉の意味が上手く掴めなかった。そりゃ毎日毎日聖杯戦争みたいなことやってれば、「救う」=「命を救う」という単純な図式で理解できるけど、一転、現実では「救う」ってなんだろうということになるため、とたんにシロウの悩みはぼやける。魔法にせよ剣術にせよ、いくら戦闘力を高めたところで、実際救えるのはレイプされそうな人とかだし。シロウ君が聖杯戦争に巻き込まれる前にやっていたことが所詮「ストーブの修理」と「弓道場の掃除」程度だったことを思い出すとその皮肉がわかる。正義の味方の日常はそんなもので、聖杯戦争のようなことが起きない限り「すべての人を救えるのか」ということは問題になりさえしない。
つづく