そこにある

所感と備忘録

スーパコンピュータとGreen500(TOP500)について思うこと

若干遅くなりましたが,2020年6月のTop500が更新されたので,私の思うところを書きます. www.top500.org

私はスパコンの専門家ではないので認識間違いがあれば教えて下さい. 当然TOP500についても明るくないです. せいぜい計算機の構成方法を院生レベルで知っているくらいの目線で話をします.

富岳がTOP500(LINPACK)*1, GPCG, HPL-AIの3部門で首位という目覚ましい成果が出ていますが, TOP500の省エネ性能のランキングGreen500*2では9位という結果でした.

2020年6月Green500の首位はPFNのMN-3でした. www.top500.org

とはいえ,富岳の試作機は2019年11月にGreen500で首位でした. 富岳の省エネ性能はかなり良く,試作~運用開始までの期間の差が出たということでしょうか. pr.fujitsu.com

ここで,TOP500ではなくGreen500を重視される理由ですが,実用上は電力性能も重要ということです.

例えば,スパコンの性能指標について,PFNはわかりやすく紹介しています. tech.preferred.jp

個人的には,TOP500のような性能ランキングのみでは,ある程度限界はあるものの, 計算ノードを並列化させればスコアが伸び,並列化合戦に帰する可能性があるのも問題だと考えます. スパコンの性能を並列化に重視しすぎることは,コストの面で良いとは思えません. スパコン(というか計算機一般)は性能バトルのために存在するわけではないので,電力性能も重視されて然るべきでしょう.

さて,スパコンの計算性能を決定する要素は,私見では以下4点だと考えます.

上記4点のうち,上2つはスパコンに限らない話なので, 下2つの構成がスパコン開発において重視されると思います. (スパコン向けのトランジスタを作ってるところってあるの?)

論理レベルより上位層の設計ではデータ構造とアルゴリズムが重要な要素を持ち, スパコン開発者は計算パフォーマンスを最大化する努力思います.

私の想像に過ぎませんが,スパコン設計は解きたい問題で達成しうる計算性能目標を決め, それを実現するアーキテクチャを決定するプロセスを踏んでいるのではないでしょうか.

しかし,消費電力を目を向けると電源,冷却構成といった物理ハードウェア(電気,機構)観点も非常に重要です. 消費電力を第一に考える場合,消費電力を最小に抑える物理ハードウェアを設計した後, それを許容しうる最大の計算性能を発揮する構成(私が上記で挙げた4つ)を考える,というのもアリではないのかな~~~~と思います.

*1:連立一次方程式を行列計算で解く性能を計測する

*2:TOP500のスコアを消費電力(実電力比較が難しいため,いくつかの指標で求める)で割ったスコア

キルケゴールの反復を読む

反復  http:// Soren Kierkegaard (原著), 桝田 啓三郎 (翻訳)

読書記録その1としておきます.

 

この本についてかんたんに紹介します.

実存主義の先駆けと言われるキルケゴールさんの恋愛体験白書 青年詩人の悲愛を描いた小説です.

人間不信の人や恋人ができないと嘆く非リア充にオススメ.共感できると思います.

文体が比較的平易だと思うので読みやすいです.

 

 

私は就活で心が死んでたころに読んである程度救われました.

 

  キルケゴールの反復*1の概念は心の安定をもたらす最たるものだと私は強く実感しています.追憶*2 の概念との対比もポイントです.

 

 

さて,以下では印象に残った本文を引用し,コメントを何か書きます.

 

著作権法32条の引用を守るように書きたいです.

はじめに断っておきますが,この道の素人なので,解釈が明らかに間違っていても許してください.詳しい人はツッコミ入れてください.

 

とりあえず序盤に見どころさんが多いと思うので,そこからいくつか紹介します.

内容は(気が向いたら)充実させたいです. 

 

p16

彼自身が恋に燃えていた.葡萄は熟しきると清く透明になるが,汁は繊細な管をとおってしたたりおちる,そして果実が実りきるとその外皮は破れる,そのように,恋は彼の姿のなかで透明になって裂け出ているといえるほどであった.

 詩的な表現が好きです.恋の瑞々しさをぶどうに例えるのは日本的な表現にないと感じています.

 

p20

彼の気分はエロス的な気分として正当なものだと,あくまでも主張する.このようにこのような気分をそもそもの初めに経験しなかった人は,恋をしたとはいえない.(中略)このように恋がその初めに追憶となって強化されるということは,恋の恒久的な表現であり,まことの恋のしるしである.しかし,まことの恋には,このほかに,この気分を利用することのできるアイロニカルな弾力性がなくてはならぬ.(中略)恋の明けがたには,現在と未来とが永遠の表現を得ようとして互いに争いあう,そしてこのような追憶のはたらきはまさしく永遠が現在の中に逆流することなのである. 

アイロニカルな弾力性とはなんでしょう.あとで確認します.しかし,最後の一文は好きですね.

p21

彼女は彼にとってあまりに大きい意味をもってしまった,彼女は彼を詩人に仕立て上げてしまったのだ,だからつまり,彼女は自分自身の死刑判決書に署名してしまったのだ.

 自分自身の死刑判決とは,彼女存在そのものが青年の中で膨張する彼女像を肯定してしてしまったということだと解しています.

*1:反復とは何か,キルケゴールは本書で明示的に説明しているわけではありませんが,過去→現在→未来の中で繰り返される事象により,心の安心をもたらすものを指すこと考えられます

*2:追憶は反復とは異なり,過去の現象が現在に還元され得ないもだとキルケゴールは考えています