2024年4月6日、丸山隆平さん主演の『ハザカイキ』を観てまいりました。今の時代に上演するべきテーマだったと思いますし、挑戦的な内容だったと感じました。
撮る側、撮られる側、見る側…色々な視点から舞台を考えさせられました。
ただ、登場人物全員が、きちんと胸の内を吐露して、謝罪ができる。そこに救いがあったように思います。心からのごめんなさいが言える人が現代に、どれだけいるのでしょうか。プライベートを知らない相手、顔すら知らない相手、どうやって心を通わせるのでしょうね。
わたしは橋本(父)の、セリフが特に色々と印象に残りました。
「なんで時代にあわせなきゃいけないんだ」「時代についていけなくて何が悪い」実は、わたしもそう思ってしまうことが多々あって。昔はこうだったのになぁとか。だからこそ余計に響いたんだと思います。
正直、時代に合わせることが正義ではない。ただ、闇雲に逆らうのが全てかっこいいわけでもない。正解をどうしても探したくなってしまうけれど、そんなものないんでしょうね。
橋本(母)の「世間っていうのはね、個人の集まりなの」というセリフもわたしが常々考えていたこと。個人が集合して巨大な力のように見えてしまう。正直、怖いですよ。でもね、ひとつひとつの声なんて小さくて大したことないんです。全部の声を耳に入れる必要なんてないんだって思いました。わたしも良く、嫌な時代になったなぁなんて思ってしまうけれど、なんでもかんでも時代のせいにしたくはないですね。(『忘れてもらえないの歌』で同じセリフを聞いた)
勝地さん演じる今井と、さとうほなみさん演じる里美が観客の前で初めて顔を合わせたシーンは、なんだかぎこちなさ、というか違和感があって。
昔の恋人なのでは…?というには、菅原の態度が普通すぎて違う気がするし、今井と里美が浮気をしている、という感じでもない。今井が菅原を連れ回しているのを疎ましく思っているのかしら、でも違うような…と思って観ていたのですが、恋敵、という理由を知ってとても納得しました。そして、違和感を覚えさせる距離感の表現が素晴らしかった。
里美は、菅原から直接過去の話を聞いたのか。それとも同じ菅原を好きだからこそ気付いたのか…その辺りに想像の余地があってよかったです。
それにしても、物語の後、菅原と里美の結婚を知った今井はどんな顔をするんだろう。きっと泣きそうになりながらおめでとう、と言うんだろうなと思うと切なくなります。全員がハッピーエンドにはなれないのが世の常、やりきれないですね。
記者会見のシーンから構想が始まったと、パンフレットでも三浦さんはお話しされていましたが、本当に舞台でこそやるべき演出でした。観客を巻き込んで…という表現が適切かはわかりませんが、観客サイドにかなり訴えてくるものがありました。
菅原が、撮られる側になってしまい世間の声に怯えているシーンは息を呑むくらいの迫力で、「因果応報だ」と思っていたのに、その瞬間だけは菅原の気持ちに思わず感情移入してしまいました。こういう気持ちが味わえるのも、生の舞台の魅力です。
とってもまとまりのない文章になってしまいましたが、貴重な舞台を観劇できたことに感謝して、明日からも生きていこうと思います。お付き合いいただきありがとうございました。