古本屋の在野研究日誌

博士号を取得した古本屋の研究者生活

4月の読書記録

4月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:1051
ナイス数:4

古代の朱 (ちくま学芸文庫 マ 24-1)古代の朱 (ちくま学芸文庫 マ 24-1)感想
古代の日本がこれほどの朱砂の産地であったことを本書によってはじめて知った。そして、それが黄金の精錬に用いられ、不老不死の妙薬でもあり、ミイラにも用いられていたことも。その産出を掌る女神とそれを祭る神社が全国に分布していることが、著者の長年の調査によって明らかになったことにも驚いた。民俗伝承の裏に隠された史実を、物質面から科学的に論証しているように思え、非常に興味深く読んだ。
読了日:04月28日 著者:松田 壽男


日本哲学入門 (講談社現代新書)日本哲学入門 (講談社現代新書)感想
西田哲学をご専門とする藤田先生の本。本書では、経験、言葉、身体、社会・国家・歴史、自己と他者、自然、美、生と死などのテーマについて、西田以後の日本の哲学者がどのように考えたかを俯瞰する内容になっている。平易に読める文体で、日本哲学の豊かな営みを理解できる好著だと思う。
読了日:04月27日 著者:藤田 正勝


真言密教と古代金属文化真言密教と古代金属文化感想
紀伊半島を東西に横切り、四国を東西に横断して九州に至る地質学上の中央構造線上には多くの銅山が集中している。これは空海が山岳修行僧として踏破したところでもある。空海は冶金・鉱山知識を持って、(その確認のために!?)そこに寺院を足跡として残したのではないか?宗教と当時の先端科学が結びつき、彼が錬金術を行っていたことを示唆するもので、宗教というのはむしろその隠れ蓑であったのではないか?金属史観について話し合う後半の座談も、いろいろと興味深い視点が多く実に面白い。
読了日:04月26日 著者:佐藤 任


大月氏: 中央アジアに謎の民族を尋ねて (東方選書 38)大月氏: 中央アジアに謎の民族を尋ねて (東方選書 38)感想
クシャーナ(クシャン)朝と大乗仏教、そしてガンダーラ美術との関係などの点から、非常に興味深く読んだ。文献資料と考古学的な研究成果から、著者は大月氏をスキタイ(サカ)人として、クシャン人とともに同一の遊牧民と推定している。彼らはギリシア文字のバクトリア語を用いて、仏教を信奉していたことになる。クシャーナ朝大乗仏教の源流の一つといわれることを考えると、中国、日本へ伝わった仏教がヘレニズム文化によって変容されたものであることが分かり、非常に興味深いと思った。
読了日:04月01日 著者:小谷 仲男

読書メーター

 

月氏について、特に考古学からの研究成果については疎いので、勉強になりました。遊牧民の仏教への帰依というのは仏教史上重要なポイントですが、文献資料がない分、注目するところです。

 

下記の図録も入手しました。

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在野研究といえば…

在野研究という言葉で思い出すのは、個人的にはこちらの本です。

著者の方々は皆、在野の研究者の方々ですが、在野の側からきわめて独自で、興味深い視点を生みだしているところが印象に残ってます。特に鉱山技師として長年鉱山を渡り歩いた方が、空海密教山相ラインと鉱山学・地質学上の日本中央構造ラインが一致するのに着目し、空海が鉱山師であったのではないかとの考察を進めていくところは、まるでミステリーを読んでいるようなスリルを味わうことができます。

 

既成概念にとらわれない自由な発想、まさに在野研究の醍醐味という感じでしょうか。

 

同時に、それが水銀の産地とかぶってくるというのも、道教との習合とも合わせると実に興味深いところです。

在野研究者として

博士号を取得し、今まで20年以上在籍していた大学から離れました。今は、大学の研究員とかではなく、ただの古本屋です。その仕事の傍ら、趣味で研究を続けていくので、やはり自分は在野研究者と名乗るのが相応しいだろうと思い、ブログのタイトルを変えて新たにスタート。一応それまでのブログは博士号取得までの記録ということで、当面は残しておきます。

 

「在野研究者」という名称はこの本のおかげで、今やすっかり定着してますし、私自身もこの本から大いに感銘を受けたというのもその理由です。

 

目下のところ、目標としては、博論の書籍化です。それにあたって、口頭試問で指摘された問題について修正を試みています。

 

これからは、このブログで研究生活を随時発信していきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。