次号GameDeepの元ネタ予定

そろそろ年末が近づいて来てすなわちコミックマーケットがあってGameDeepもいいかげん新刊を作らねば! まだ手つかずだ! という頃合いですよこんにちは。ところで最近ゲームと言えばIngressしかしてません。仕方なく次のGameDeepはIngressの本になる情勢が濃厚です。

こんなん作りました

本当はGoogle+とかに公開するべきような気もしますが、本稿あくまでもGameDeepの宣伝なのでたまにしか稼働しないここで書かせていただきます。

ということでなんか使えたりしそうだなーと直感したのでDarsana Tokyo クラスタ戦域別戦績概算 みたいなものを公開されている情報だけ参照して作りました。
元にしたのはGoogle+のIngressアカウントで公開されてるDarsana Tokyoの対象ポータル告知とレポート記事です。そこからリスト部分だけを抜き出してきてデータベースに突っ込んで処理してみました。

どうやって作ったかはソースコード一式&元ネタデータベースを見るといいです。わかる人にはわかる*1。名前の重複とかの問題でか、この集計結果の総得点が公式の最終スコアと一致してないのでどこかにミスがあるんですが、全体の傾向を見るのにそんなに問題にならない差異だと勝手に判断したので特に直す気はありません*2

今のところの分析

この数字を元にした分析をつらっとtwitterに書いたので、今回はそれにもう少し情報を付け加えて一本サブ記事にしようかなと思ってます。本当はGD#でやるべきような内容ですが、今回諸事情でGD#はそういう本にならないので本誌の方でやっちゃいます。とりあえず現時点ではtwitter上に書いたものを引用して予告編としたいと思います。専門用語の解説とか本当は入れるべきですが、そういうのは本編にご期待ください。

ENLは基本的に新橋戦域でポイントを稼ぎ、他では大負けしない程度に戦力を投入していたのではないかという様子がうかがえる。実際、新橋以外では+40%ボーナスがあるにも関わらずほぼRESが勝利している。

https://twitter.com/ynakata/status/544130277627686914

その新橋戦域の勝率の推移がちょっと面白くて、他が押し合いをしているのに新橋では一方的にRESがENLが押し込んでいく。RESがリンク要員を戦域争奪に振り分け直したりした可能性*3を感じるが、裏付け情報が漏れてきたりしないかなあ。

http://twitter.com/ynakata/status/544131596526575617

クラスタ4でENLは全域で大きく獲得率を落としていて、代わりにvolatileの獲得率が跳ね上がっている。DD獲得したので戦力を集中させたんだろうってことが見て取れる*4。なおどの戦域でも獲得ポイントは向上しているので戦力傾斜させた判断自体は正しかった模様。

http://twitter.com/ynakata/status/544135824338853890

RESはb(麻布戦域)の優秀さが目につく。クラスタ4こそvolatileを取られたために負けているが、かなりの僅差。あと2ポータル奪えていればvolatileを取られてなお勝つという圧倒的な強さを見せられるところだった。

http://twitter.com/ynakata/status/544138342011768832

全体を眺めて大きな割合を占めているのはやはりvolatile Portalの行方。+40%ボーナスがあってなお、DDの獲得は流れを傾けるということ。たとえばクラスタ4で全volatile PortalがRESの手に落ちていたなら、勝っていたのはRESだったと思われる。

http://twitter.com/ynakata/status/544140734052728833

ちょっとばかりデータをいじれると、まあ色々見えますよね、というそれだけの記事になると思いますが、ご興味のある方は、

をどうぞお買い求めください、とそういう宣伝でございました。

*1:わからない人のための解説をする予定はありません。あしからず。

*2:誰か直してくれたら嬉しいとは思ってます。

*3:ここのところについては別の可能性も感じているのでそのへんは掲載記事にて

*4:一方クラスタ3ではENLが全volatileを取っているのでここは逆にDDをENLが獲得していた可能性が伺えますね。しかしENL全体の獲得率はあんまり低下してないので、そのへん物量差を感じますねー

4人戦スイスドローの数理考2013

昨年の記事 (http://d.hatena.ne.jp/gamedeep/20120527/1338128349)以来のご無沙汰です。

1年も経つと去年もあったような出来事がまた再び巡ってくるわけでありまして、ドミニオン日本選手権も今年の開催要項が発表されました。

昨年の記事で枕の話題にしました「なんでタイブレイカーが総得点なのよー」については、ヘッドジャッジ様より「本人が努力できる数字なので」という明解な回答をいただきました。実に明解な意図ですね。
終了タイミングをある種の人気投票で決めるマルチプレイヤーズゲームで総得点の多寡が本当に「努力できる範囲」なのかには疑問があるとか、「ぎりぎりの戦いを勝ち抜いてきた人が救われない」という感を抱いてしまうのですが、そういうのはゲームを(無駄に)深く考察してみるスタイルに起因する病気に過ぎません。実際的には2位以下(になりそうな)プレイヤーへの指針としては十分機能しますし、そもそもタイブレイカーなんて甲乙付難いところをなんらかの形で足切りをするための数字でしかないので、明確な意図があるならそれで十分だと思います。

前提

ということで今年の予選突破ラインについて考えていくのですが、いくつか条件を置かねばなりません

まあ要するに去年までと同じ形式ですよね、というのが前提です。
それから話を始める前の大切な準備として、去年の記事の最後で使った4人戦スイスドロー4回戦256人の場合の順位予測表を(少し伸ばした上で)改めて引用しておきましょう。

4-0-0-0 24P 1人 1位
3-1-0-0 21P 4人 2-5位
3-0-1-0 19P 4人 6-9位
3-0-0-1 18P 4人 10-13位
2-2-0-0 18P 6人 14-19位
2-1-1-0 16P 12人 20-31位
2-1-0-1 15P 12人 32-43位
1-3-0-0 15P 4人 44-47位
2-0-2-0 14P 6人 48-53位
2-0-1-1 13P 12人 54位-65位
1-2-1-0 13P 12人 66位-77位
2-0-0-2 12P 6人 78位-83位
1-2-0-1 12P 12人 84位-95位

今回の記事では数理的な考えはほぼこの表にだけ頼りますので、これだけ憶えておいていただければ以後の話は読めるはずです。

満員の場合

まずは理想状態、というか用意された定員が満たされていた場合にどうなるか、というのを考えたいと思います。
昨年は最大160名中30人だったので、単純な比率で言えば以下のような感じで、やや倍率としては上がっています。
 160:30 = 16:3 ≒ 5.3:1
 128:22 = 64:11 ≒ 5.8:1

ボーダーラインがどうなるかと言いますと、128人中22位は256名4回戦換算で44位相当です。先の表を参照するなら15ポイント上にラインが来ることになります。
これ、だいぶ厳しい数字です。なんと2-1-0-1ではボーダーライン上で、総得点での争いになるという過酷ぶり。自力で突破を決めるにはラウンド点16点を稼がないとなりません。

なにより不遇なのは、同着1位を取った時でしょう。直感的には同着1位を取れば全体のボーダラインも下がる……と考えるのは早計。1位順位点と2位順位点を足して頭割りする方式ですと、トーナメント全体に放流されるラウンド点は減少していません。同着1位を取ったことで偶然当確圏からボーダーライン上に下がったというケースを除けば、ボーダーラインへの影響は発生しないと考えておいたほうがいいでしょう。ですので、このとき受ける-1.5Pが大変に重くなります。
「1位を3回取る」のは確定の目安のはずなのですが、ここに同着1位が絡んでくると話が怪しくなってきます。もちろん1位-1位-同着1位の16.5Pあれば文句なく通過なのでありますが、同着が2回というレアな、とはいえ全体で1人ぐらいは陥りかねない状況になると話が変わってきます。
1位-同着1位-同着1位-4位だと合計15Pで、これはまさしくボーダーライン上となってしまいます。そして同着1位3回や、1位-同着1位-2位-4位で得られるラウンド点13.5Pとなれば、ボーダーラインにも絡めず敗退となることでしょう。

同率2位や単独3位を取った場合も、状況はかなり苦しくなります。ボーダーとなる15Pが1位点6Pの2.5倍というのが実に絶妙です。前回までのラインだと同率2位による2Pや単独3位による1Pが(1位2回による)12Pからボーダーライン越えを果たすまでの隙間を埋めるのにに有効に働いていたのですが、今回のラインだと2位による3Pでなければほぼ意味がありません。

より現実的に:110人の場合

とはいえ128人の定員が全て埋まるかというとそんなことは多分ありません。実際の参加者数は一昨年が208名、昨年も午前午後合わせて200名強でした。一昨年、昨年と参加者数はほぼ同数ですから、今年の参加者数も同程度に落ち着くと予測するのはそう非合理ではありません。ちなみに昨年の初日ボーダーラインは13P。105名中30位で計算してみますと256名中73位相当で、先の表に照らし合わせるとまさしく昨年の実績に合致しています。

念のため、少し参加者が増えると考えておき、110名ほどの場合を想定してラインを考えてみたいと思います。110名中22位256名中51.2位相当51位がボーダーラインに相当すると考えればよいでしょう。
先の表だと14Pが51位に相当します。昨年実績値より1P上がっていますね。

単独1位2回の12Pにもう2点を積めばボーダーライン上ということです。1位2回はほぼ必須条件だと言って良く、更にその上で残り2点強をどう確保するかという勝負になってきます。単独1位2回に単独2位1回を加えれば通過確定、同率2位1回か3位2回を加えられればボーダー勝負に乗っかれる――というのを楽と見るか辛いと見るかは微妙なところ。

昨年までならわりとなんとかなっていた同率1位ですが、今年のラインで同率1位を取ってしまうと(満員のときほどではないですが)かなり苦しいことになります。単独1位のときに比べて1.5点後退してしまうため「1位2回」に加えてもう3.5点を積まねばならなくなります。3.5というのは「2位1回では足りない」という数字です。同率1位は1位と言いながら、トーナメント全体のことを考えれば2位を取ってしまったことに限りなく近いと考えた方がいいぐらいでしょう。
同率1位2回は更に苦しいです。残る2戦で単独1位1回か単独2位2回、あるいは同率1位+3位以上のいずれかの成績を残さなければ14点の確保はできません。

通過ラインを越える裏技的ルートとしての「1位-2位-2位-2位」による15Pという道は今回も健在ですが、少し滑り落ちても良かった前回までとは違い、本当に踏み外せない薄氷の戦いとなります。2位のいずれかが同率2位1回ならラウンド点ではボーダー上という計算になりますが、2位を取り続ける=総得点が低めになる、ということですからタイブレーカー勝負では不利。やはり15Pを狙っていくしかない、という戦いとなるでしょう。


なお、(昨年一昨年の実績値に近い)105名だった場合、105名中22位は256名中53.6位相当となりますから、やっぱり14Pが必要という計算になります。昨年13Pで涙を飲んで今年も13Pぐらいかなと思っている方々(主に俺)におかれましては、事前に自分より強い人を10名ぐらい闇討ちして不戦敗に追い込むことでようやっとボーダーラインに乗ることができるという程度の過酷さですので、2日目に「大会」が開催されそうなゲームに目を付けて修行に励んでドミニオンのことを忘れていただくと、昨年ボーダーライン上で総得点足りなくて落ちた私が喜ぶかもしれません。

まとめ

  1. 初日通過ボーダーラインは14Pになるでしょう。
  2. 「15P取る」つもりで望んだほうがいいでしょう。
  3. 1位2回はほぼ必須です。
  4. 同率を取ってしまうとわりと死にます。同率1位は2位を取ってしまったのと大差ない、ぐらいに思っておいたほうがいいです。

4人戦スイスドローの数理考

ドミニオン日本選手権が今年も開かれますが、タイブレイカーが「ゲーム総得点」なことにいたく不満なわけです(という話をしてるあたりのtwitterのログ)。
なぜかといえばドミニオンのゲーム内得点というのは、本質的にはゲームの外部に持ち出していい類の得点ではないから、とかいうあたりはGameDeepの最新号に書いたあたりなんでそういうもんだと思ってください。気になる人は https://gumroad.com/l/zrqQ あたりからPDF版をお買い上げいただくか、次の号が出てURLが公開されるのを待つといいですよ!

しかし一方で総得点を使う意味というのもあるわけで、想像するに「同意の上での引き分けを選びたいシチュエーション」を消すためには必要なんじゃないかと思います。タイブレイカーとしてもう少しゲームの意味を示す指標――たとえば1位取得回数を優先すると「全員同率1位で終われば全員通過できる卓」みたいなのが生まれてしまいそうだなあ、と。もしここで「同意の上で全員同率1位となるように仕組んだゲーム」を遂行することを選ぶ可能性がある。まあ具体的にはトップ卓とかそのすぐ下あたりがそうなるんじゃないかな。
ここで1位取得回数を優先すると、全員同率1位って超有利なので、同意引き分けで少ないラウンド点を手にしてタイブレイカー勝負に巻き込まれてもおそらく勝ち抜くことができる。しかしながら、(サプライにもよりますが)このメークアップしたゲームはおそらく全員の得点が低めになる。そこで総得点をタイブレイカーに使っておくと、同意引き分けしてタイブレイカー勝負になったとき、ガチで戦って総得点を伸ばしてきたもう少し下の卓のプレイヤーに負ける可能性が出てくる。であれば同意引き分けを選ばず真剣勝負をせざるを得ない――というだいぶパラノイア的思考の入った状況まで考えているとしたら、最終戦のサプライには特殊勝利点系のカードを使ってガチった人が得点をガンガン伸ばせる仕掛けを組み込むほうが抑止力高いですよね! という謎の牽制を空打ちしてみたりするわけです。

ところで実際どのぐらいが勝ち抜けるラインなのか、ということについてたぶん大会当日になってスイス形式のラウンドが進めば感覚的にものが話されようかと思いますが、なんかそこを感覚で話しちゃうのはもにょもにょした気持ちになるので少し真面目に考えてみましょう。ということでお題目に掲げたところの「4人戦スイスドローの数理考」という話になります。

スイスドローの特徴

さてスイスドローという形式について改めておさらいしておきますと、

  • 競技ゲームの大会における、組み合わせ決定方式
  • そのラウンドまでの合計成績が近いもの同士を組み合わせて対戦させる
  • 実は数理的には「敗者復活戦のついた勝ち抜き形式トーナメント」に非常に近い

というような特徴をもっています。最後の項目について説明しておきますと、強い(勝ってる)人は強い人同士で戦いますから、その時点での全勝者はだいたい全勝者と戦うことになります。回戦数にもよりますが、最低限の回戦数でやる場合、全勝者同士がお互い潰しあって、最後まで勝ちっぱなしだった人が大会の勝者となる、というのが大雑把なスイスドロー形式トーナメントの動きです。

さてスイスドローというのはもともとが(スイスで行われた)チェスの大会において使われはじめたものですので、2人用のゲームで使われている例は非常に多いです。そして大会自体の数理的な動きも(実践例が多いこともあって)だいぶ研究されています。しかし4人用のゲームでスイスドローっぽい形式を採用し、その動きを研究してる例はとんと見たことがございません。
まあ2人用の動きを4人用に拡張して考えればだいたいのところはわかるんで、なんとなく感覚で適切な運用がこなせちゃう人は世の中に一定数いるかと思いますので研究がなくてもそんなに困らないと思いますが、まあ折角なので少しばかり頭をひねって考えてみましょう。

4人戦スイスドロー

さて本来2人戦用のスイスドローを4人戦に拡張するときにまずネックとなるのが、全勝者がすごい勢いで減っていくという点でありましょう。
大雑把にいうと、2人戦ゲームのスイスドローはラウンドをこなすと全戦者が半分に減ります。4人のスイスドローなら2回戦をやれば1人の全勝者が残るし、16人のスイスドローなら4回戦をやれば1人の全勝者が残ります。この最低ラウンド数でやったスイスドローというのは、いちおう「その時点での勝者」が決まってはいますが正直あんまり精度のいいものではないので、より精密に決めたいときは成績上位者だけを残して別の形式で決勝戦を行ったりすることが多いです。

これが4人戦になると、劇的に全勝者が減ります。16名の大会だと2回戦やると全勝者が1人になります。2回勝てばやったね優勝!16名の中で最強だよ!というわけです。人数が多くても少ないラウンド数で結果が出るの嬉しいですね。万歳!

とか安易に言ってられないのは、4人戦のゲームという「勝敗決定装置」の出す「ゲームの結果=実力の測定値」の精度が、実のところあんまりよろしくない点にあります。2人戦のゲームというのは、「勝敗決定装置」としては実に理想的で、ゲームに負けた理由はほぼすべて自分の行動に責任が帰着します。「お前が格下だったから俺に負けたのだ!」と正々堂々宣言してしまえばいいです。しかし4人戦のゲームは違う。「お前が俺に負けた理由はお前以外の2人が格下だったから」ということが平気で起こります。なので、2人戦のときよりも全勝でない人をもう少し救う手立てが欲しいです。

幸か不幸か、4人戦スイスドローの場合には序盤に対戦して一度雌雄を決したあとで一部の面子が入れ替わりつつも再戦ということをやれなくもない。自ら序盤のラウンドでの負けを挽回するチャンスを用意できるわけです。ただし、これを活用するには人数に比して回戦数が多めに設定されている必要があります。16名で2回戦、とかだと再戦の余裕がまったくないのです。3回戦だと64名まで収容できますので、そこでだいたい40名ぐらいに抑えておくと、こういったチャンスはだいぶ増えてきます。

16名2回戦をやった場合、1位-2位-3位-4位の取得回数は以下のような分布になります。

2-0-0-0 1人
1-1-0-0 2人
1-0-1-0 2人
1-0-0-1 2人
0-2-0-0 1人
それ以下 8人

この大会でスイスラウンドのあと、上位4人で決勝卓をやるとしましょう。上から3人まではすんなり決まります。問題は1-0-1-0の2人。この2人のどっちを決勝に残すかの選択に使われるのが、スイスドローにおけるタイブレイカーの役割であり、それしか役割がないと言ってもいいです。他の人にとってはほぼ無用の長物です。

少し考えるとわかるのですが、4人戦ゲームの16名2回戦のスイスドローというのは実に過酷な戦いです。1度でも4位を取ればもうその時点で上位4人にすら残れないことが確定します。2人戦なら1敗は単なる1敗、トーナメントリーダーは無理でもそこそこのポジションは狙えなくもないですが、4人戦ゲームは容赦ないです。一度4位になっただけで全体順位は5つぐらい落ちてます。全体の中での格付けが1/3ぐらい低下する、というわけです。
ちなみに下のほうを切っているのはなんらかの悪意があるわけではなく、切っておかないと、回戦数を増やした話をするときに大変になるからです。

64名3回戦の場合

ということで回戦数増やしてみましょう。64名3回戦になると次のようになります。

3-0-0-0 1人
2-1-0-0 3人
2-0-1-0 3人
2-0-0-1 3人
1-2-0-0 3人
1-1-1-0 6人
1-1-0-1 6人
1-0-1-1 6人
1-0-0-2 3人
0-3-0-0 1人
0-2-1-0 3人
それ以下 27人

ひとつ注意してほしいのは、今回の表では2位以下のラウンド点までは考慮してないってことです。3戦全部2位をどう評価するかってのは実に難しい問題です。
ドミニオン日本選手権の場合1位から6-3-1-0というポイントが着きますので、3戦して全部2位なら9点、1-1-0-1の人とは並ぶことができ、タイブレイカーが総得点なら9点勢トップの20位までは進出できる可能性があります。

それはそうと、これで上位4人とかだとマジ過酷過ぎて泣けますね。4着はおろか3着ですら1回取ったらアウト。2位ですら1回しか許されません。ではどのへんまで人数減らせばいいのかなー、ということを考えるときには、本当は正しくないやりかたですが、最大人数に対する割合を掛けるか、逆に順位の方に逆演算して換算した順位を基準に元の表と照らし合わせると、目安としてはいい数字が出てきます。たとえば32名3回戦だと、32/64=1/2ですから、

3-0-0-0 0.5人
2-1-0-0 1.5人
2-0-1-0 1.5人
2-0-0-1 1.5人
1-2-0-0 1.5人
1-1-1-0 3 人
1-1-0-1 3 人
1-0-1-1 3 人
1-0-0-2 1.5人
0-3-0-0 0.5人
0-2-1-0 1.5人
それ以下 13.5人

とこんな感じで考えるわけです。これで上位4人だと2-0-0-1の1.5人の中から選ばれる感じですね。4位を取ってしまっても2勝すれば可能性はある、ぐらいの感じになってきます。

256名4回戦の場合

で、4回戦256名だと以下のようになります。

4-0-0-0 1人
3-1-0-0 4人
3-0-1-0 4人
3-0-0-1 4人
2-2-0-0 6人
2-1-1-0 12人
2-1-0-1 12人
2-0-2-0 6人
2-0-1-1 12人
2-0-0-2 6人
1-3-0-0 4人
1-2-1-0 12人
1-2-0-1 12人
1-1-2-0 12人
それ以下 149人

この規模で上位4人だけ選抜とかだいぶヒドい戦いです。3-1-0-0ですらタイブレイカー勝負というありさま。

それから2位の重要性もだいぶ重くなっていて、これをドミニオン日本選手権のラウンド点考慮して並べ替えてみますと、

4-0-0-0 24 1人
3-1-0-0 21P 4人
3-0-1-0 19P 4人
3-0-0-1 18P 4人
2-2-0-0 18P 6人
2-1-1-0 16P 12人
2-1-0-1 15P 12人
1-3-0-0 15P 4人
2-0-2-0 14P 6人
2-0-1-1 13P 12人
1-2-1-0 13P 12人
2-0-0-2 12P 6人
1-2-0-1 12P 12人
1-1-2-0 11P 12人
...

1位を取った回数よりも2位を取った回数の多いほうがラウンド点が上回るケースが、示した範囲の中では2箇所でおきています。ただし、ここから下では1位-2位間の差が2倍なのに対して2位-3位の差が3倍とされているせいで、この類の逆転現象は起きないようになっているはずです。

もしこのスイスラウンドに対して1度の4着をなんとか挽回できるラインを設定するなら通過基準は10位〜13位あたりを含むようにするのが目安で、現実的には12人か16人で決勝ラウンドを行う、といった感じになりそうですね。

ドミニオン日本選手権2012の場合

それではいよいよ本題、ドミニオン日本選手権2012の予選ラウンド、最大160名4回戦で30人通過、というのがどのぐらいに当たるかを今度は逆演算法で考えてみましょう。30 * 256 / 160 = 48となりますので、160名での30位というのは、256名の場合の48位ぐらいに相当することになります。

4-0-0-0 24P 1人 1位
3-1-0-0 21P 4人 2-5位
3-0-1-0 19P 4人 6-9位
3-0-0-1 18P 4人 10-13位
2-2-0-0 18P 6人 14-19位
2-1-1-0 16P 12人 20-31位
2-1-0-1 15P 12人 32-43位
1-3-0-0 15P 4人 44-47位
2-0-2-0 14P 6人 48-53位

ということで、見事に2位順位点の力で順位の入れ替えが起こっている15Pラインが当落線上に浮上する設定。3位と4位に実質的な差はほとんどなく、仮に3位4位に沈んでしまった場合でも残り3戦のうち1度の2位は許される、といった感じでしょうか。

ちなみに去年の私の成績(1位-3位-1位-3位)だと、2-0-2-0で見事当落線からおっこちかけてるあたりですので160人フルだった場合は厳しいんじゃないの、ということになりますね。


ということで「1回ならボロ負けしてもいいけど、どっちかというと2位には食らいつけ」という傾向が数理的に明らかになったことを知った皆様の作戦はどのようにかわるのでしょうか、ということを無責任につぶやきつつ本稿を終えたいと思います。ありがとうございました。

vol.20 / 21 PDF公開

GameDeep vol.20と21のPDF版を公開しました。

vol.22も近いうちに公開してしまいたいと思います。
あと次号からは先にPDF公開してから実物を売るというよくわからない行動をしてみる予定。毎度おなじみの突貫工程にそんなことをしている余裕が残っているのかは不明ですが。

GameDeep vol.22 「ゲームと得点」

掲載記事

ゲームと得点 / 中田吉

ゲームにおける「得点」というものを分類し、得点というものがゲーム構造に与える影響や、得点をゲーム外に取り出すことの問題について考察する。

勝利条件調整装置としての「勝利点」 / 寺島由人

ボードゲームにおける「勝利点」の分類と、その機能についての考察。

PS VITA『リッジレーサー』評 / C.F.

PS VITA版リッジレーサーの目指したものについての小評

頒布場所

1日目 東F-29b 遊星からのフリーキック
3日目 東P-59b 豆満江開発機構

      • -

やむなく、とは言うものの、きちんと予定していた内容でお送りしますので、お近くにお立ち寄りの際はぜひ入手していただければ、と思います。

コミックマーケット81での委託のお知らせ

前回チケットを忘れるというポカをやった影響でか、ついに(弱小ジャンル補正によると思われる)コミックマーケット連続当選の途絶えたGameDeepですが、なんか原稿が出てきてしまったのでやむなく(?)新刊を作りましたよ。

ドミニオン:カードの版面デザインを考える

ドミニオンが登場し、その斬新な内容で界隈を席巻し、いくつかのフォロワーが出てくるようになった。しかし後発のデッキ構築型ゲームの多くは、いざ遊んでみるとなぜだかドミニオンより遊び辛く感じてしまう。
決して不思議なことではない。後発のフォロワーたちでは(ドミニオンとの差をつけるために)なんらかの要素が加えられ、システム面での複雑性が高まっている――わかりにくくなっていることが多いからだ。だが、後発のフォロワーとドミニオンの差は、単にシステム面での違いだけではない。


「わかりやすさ」につながるもっと基本的な部分、ドミニオンの「わかりやすさ」をなにより支えている「コンポーネント」の形、カードの版面デザインについても、やはりドミニオンは優れている。

○ゲームの導入

ドミニオンの基本システムが持っている要素は、極めてシンプルだ。
ベースとなる7種のカード:銅貨・銀貨・金貨・屋敷・公領・属州・呪いを見ればわかる。全てのゲームで使われるこれらのカードには、余計なことも複雑なことも一切書かれていない。
ゲームのはじめ、デッキには3枚の屋敷と7枚の銅貨が入る。これらのカードの意味は、一目瞭然となるように作られている。背景色で機能が示され、大きく書かれた数字で効果が書かれている。左下に書かれた○囲み数字――購入するときの価格のことさえ説明されれば、初期デッキの中身は全て把握できるぐらいにシンプルだ。

○サプライにて

それ以上に複雑なことは、すべて王国カードのテキスト欄に押し込まれている。

ゲームが開始され、サプライ(カード売り場)に目を向ければ、最初の手札と、並んだカードは明らかになにか違う。
手札にある得点と財宝にはテキスト欄はない。大きな数字とマークだけが書かれている。
だがサプライに並んだカードを見れば、そこにはカードの半分ほどを占めるテキスト欄があり、なにやら複雑なことが書かれている。わかりやすいことは太字で大きく、わかりにくいことは小さな字で細々と。パッと見でわかりやすいかわかりにくいかも見た目でわかる。
カードの名前とイラスト、それからテキスト欄に書かれた効果が、10枚ぶん一気に並べられているので、なんだか混乱するかもしれない。だが全てはテーブルの上に並んでいて、どの情報も苦労することなく参照することができる。
テーブルの上に平たく置かれることで、その状態のカードは「一覧表」としての効果を発揮しているのだと言える。

並んだカードのテキストを読んで、わからなければ質問をして、効果を確認したうえで、左下隅に書かれたコストを支払って購入することになるだろう。

○手に持つ

買ったカードがシャッフルを経てデッキに入って手元にやってきたときにも、ドミニオンのカードの版面の力が発揮される。

次のターンに向けた手札がやってきて、まず行われるのは分類だ。
幸いドミニオンのカードは、わかりやすく色分けされている。はっきりと枠が色分けされているので、中身を見なくても種類だけならすぐにわかる。
財宝は黄色の枠にコインマーク。得点は緑の枠に盾のマーク。これらは「アクションを消費しないでも効果が発揮されるもの」だ。手札の中では脇に置いておかれる部類だろう。
自ターン中の主役となるアクションカードは主に白枠。
他人のターン中でも使うことがあるリアクションは青枠。
ドミニオン:海辺で追加された「持続アクション」は橙枠で、ターン終了時の片付けのときに気が付きやすくなっている。


さて、そうやって分類されたカードをいったいどう持つだろうか?
手の中のカードは(トランプなどのときと同様に)左手でカードの左下隅を持っていることがほとんどだろう。このとき、実はカードの名前はほとんど見えない。せいぜい先頭の一文字ぐらいで、おそらくは枠とイラストのごく一部分しか見えていない。
だから、カードの認識をする上で最初の情報となるのはイラストだ。
枠とイラストでカードを認識し、よくわからなければカード名をちょっと見て思い出す。それでもわからなければカードの全面を見てテキストを読んで確認する。


だがちょっと待て、なんでイラストなんていう「意味を持たない情報」を上に持ってくるんだ。そんなことよりテキスト欄を上にしたほうが、という意見もあるかもしれない。
なるほど一理はある意見だ。でもドミニオンにおいて、その理は明白に否定される。

○あなたの選択でデッキに入る

思い出して欲しい。ドミニオンが「デッキ構築型ゲーム」であることを。
デッキ構築型ゲームにおいて、デッキの中のカードとは(初期の手札を除けば)プレイヤーであるあなたが選択して獲得したものばかりのはずだ。あなたが選んで買ったから、デッキの中に入っている。すなわち、あなたはそのテキストとイラストと効果とコストを確認した(もしくは確認するまでもなく憶えていた)はずなのだ。


だから手札の中のカードについて必要なのは、仔細な説明ではない。
そのカードの名前がなんであるか思い出せれば、効果はもう知っている「はず」だ。そして目の前にはサプライという見本集がある。枠の色とイラストがあれば思い出すには十分だし、ちょっとずらせばカードの名前もすぐわかる。
手札の中にあるカードとは「思い出す」ための情報を提供するものであり、そのための情報はちゃんと左上隅に集まっている。
いきなり未知のカードの束を渡され、把握しながらプレイしろ、と言われたわけではない。プレイヤーが納得したうえでの選択の結果、デッキの中にはそのカードが入っていることを忘れないほうがいい。それでもなお、手札のカードの効果がすぐにはわからないのは欠陥だ、と断固主張するのであれば、さっき食べたお昼ごはんのことを忘れていないかを心配したほうがいいだろう。


ところでカード左上隅の情報には1系統だけ例外があって、財宝で得られる価値は左右両方の上隅に小さく書かれている。左上隅だけ見れば手札の中のお金の量は計算できる、というわけだ。もしも上下逆にカードが来た場合でも右下隅は空欄だから、購入コストを財宝の価値と勘違いしてしまうこともないようになっている。

○リサイクルを考える

購入コストが左下隅なのもおそらくは意図的だ。
カード左下隅は、通常カードをまとめて持つために手で握るための場所である。すなわち、テーブル上に平置きされているときには見えても、手札の中では見えにくい場所なのだ。
しかも左隅であるため、その気になれば一覧しやすくもある。破棄したカードのコストを見て効果を得るようなアクション――改築や引揚水夫など――を使う場合、手札のカードのコストを一覧したくなる。普段は見せたくないが、たまに一覧したい情報=カードの購入コストを示すための場所として、左下隅というのはうってつけの場所だと言える。

○まとめ

というような観点で他のデッキ構築型カードゲームの版面を見ると、いろいろ問題のある箇所が一目でわかるようになる。

  • 財宝に相当するカードの価値がテキスト欄
  • 購入コストが左上隅
  • リアクションや持続カードの色分けがない

といったあたりはよく見かけるところ。
とはいえデザイン上で考えるべきは機能性だけではない。特にイラストレーターの絵を大きく見せたいというニーズによってデザイン上の制約を受けていたりもすることは多いだろうし、その上での選択であるならば上記のポイントが一概に悪いとは言えない。
それにドミニオンのデザインだってカードとしての機能性だけに特化しているわけではない。「カード名を左寄せにする」「カード名を左辺に書く」あたりは機能性としての改良点に挙げることができるだろうが、実際やってみると見た目のバランスは悪くなるはずだ。


これからカードゲームをデザインして、カードの版面を作るという人がいるのなら、版面デザインをする上での重要なポイントとして

  • 手の中で「思い出す」ための左上隅
  • 平場で見えて手で見えない左下隅
  • 色分けは大切

を意識するといいだろう。