暫くすると
コツコツと女性のヒールの音が響く
誰か着たのだ
 
静かにドアが開く
20代後半の女性
美人であるがどこかで見た気がする
ショートカットでOLの制服のような服をきている

自分が何故この場所にいるのか?
何のためにここに連れてこられたか?

聞いてみても全く回答は無い
彼女の耳が聞こえないのか?
聞こえているが返さないのか?
さてまた自分の声が出ていないのかさへ分からない

 ただ彼女が日本人である事だけはなんとなく分かった

静かに彼女は近づいてくる
そして無言に服を脱ぎ始めた

 また随分と時間が経って少しずつ落ち着きを取り戻してきた
部屋を見渡して一つだけドアがある
 ただし奇妙な事にこちら側にノブはない
 外からしか開ける事ができないのだろう
 
 監禁?
 
 どうやら僕は閉じ込められている
 外に出る事は出来ない
 
 そしてもう一つ
 きれいにアイロンがけされたこのワイシャツの袖にほんの少しだが血痕がある
 
 何かしらの犯罪に巻き込まれたのは間違いない
 
 随分色々な事が分かってきたがとにかく何か起きるのを待つしかない
 人の行動には「やる」と「待つ」の二つしかないのだから

 ここが何処か全く解らない
 自分自身が誰で、何故この場所に居るのかもわからない
 
 なにも分からない

 幾時間そんな事を考えていたのだろう?
 そして急に襲ってくるパニック

 これからどうするのか?
 一体なんなのか?

 オーケー
 パニックになるな 冷静に
 どんな問題に直面しても微動だにしない
 そういう生き方を目指していたはずだ
 
 
 
 まずは分かる事から把握してみよう
 時間は夜 
 日が沈んで月が見える
 僕のいるこの場所
 どうやらマンション
 しかもかなり高級なマンションである
 階数はかなり上の方だ
 なぜならガラス張りの窓から見えるこの景色、
 赤くそびえ立つタワーと街明かり
 かなりの都市の様でネオンの明りが綺麗だ
 地上をみるとおもちゃのミニカーと蟻みたいな人たちがせわしなく動いてる
 

 この部屋の中には
 かなり高級であると思われるベッドとソファーとテーブルの数々と部屋は心地よい絨毯で覆われている
 薄暗い間接照明のせいかそろえた様にその色は全てベージュである
 
そして気になる僕の服装
 裸だ
テーブルにはきちんとアイロンがかけてある白いワイシャツと使い古したジーンズ、下着がきちんと置いてある
 
 どうやら最初の作業はこの服を着るという事なのだろう
 それにしても誰がこの様な事をしてくれたのだろう?