灰まみれの映画感想帳

ネタバレありなのでお気をつけを。基本誉めることしかしません

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う

「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」は2015公開のアメリカ映画です。あれー?地元だと2017年公開だったぞー?^ ^ まあ私は忙しくて映画館で見る機会がなく、TSUTAYAで借りたのですが、、、ちなみに原題はDemolition「解体」です。))

 監督はジャン=マルク・ヴァレ。「ダラスバイヤーズクラブ」の監督の人なんですね。いい映画だったんですが80年代という設定なのに日本の原宿のシーンがどう見ても現代で、その適当さがちょっとツボにはまった作品でした。

 デイヴィス役の主演はジェイク・ギレンホール。超イケメンで、そのイケメンっぷりがこの作品において爽やかな印象を与えているのですが、この人、アメリカの警察映画の傑作「エンド・オブ・ウォッチ」の主役を演じたとウィキペディアに書いてあり、まさかと思って見返したら確かにジェイクでした。いや、頭丸めてたから全然気づかなかった。

 そんなジェイクは今作で妻を交通事故で亡くした夫のデイヴィスを演じておりますが、この主人公が他の映画と異なるのは、妻を亡くしたのに「悲しくなかった」ということ。この設定(性格)が今作の物語の核となります。

 たった今、妻が死んだのに哀しみを感じない。それよりも病院のスナックの自販機の故障でチョコの袋がでてこなかったことが、奇妙に癇に障る。

「空腹でしたし、何よりもたった今妻が死んだばかりでしたし」

 妻の両親や周りは妻の突然の死を悲しみつつも、その出来事を受け止め、デイヴィスを慰めてくれるのですが、デイヴィスはその状況に適応できず、その気持ちを自販機の管理会社に苦情の手紙を書くことでぶつけます。

 その手紙を受け取った苦情係のカレン(ナオミ・ワッツ)はデイヴィスに謝罪と慰めの手紙を書くのですが、デイヴィスは手紙をくれたカレンをほとんど犯罪すれすれの(というか犯罪ですが)ストーカーまがいのことをして住所をつきとめ、カレンとその息子クリスと交流を持つようになります。

 デイヴィスは仕事(デイヴィスは妻のお父さんの会社で働いていました。投資会社?)をほっぽりなげてカレンの家に入り浸り、クリスと子供みたいに遊んでばかりいるので、初めはジェイクをやさしく慰めてくれていた義理の両親もだんだんデイヴィスに愛想をつかし始めます。

 そして妻の両親は、妻の名を冠した奨学金を設立することで、自分の娘を弔おうとするのですが、デイヴィスはそれに反発し会社のオフィスを破壊、周りなんか気になんねぇぜ!とばかりにイヤフォンで音楽ガンガン聴きながらオフィス街を歩きます。

 評価サイトだとここのシーン傑作だったという意見が多いようですね。でもジェイクがここまで自暴自棄になる理由が分からんと。

 自分の勝手な推測なんですが、周りに他人の気持ちを読み取るとか、状況に合わせた適切な行動をとるのが苦手な人っていませんか?デイヴィスも妻が死んだんだから悲しむべきなのは分かってるいる。でも突然で感情が追い付かないし、奨学金は何かが間違っている。妻を亡くした夫の「正しい」態度ってなんなんだ!

 この作品は、他者の死の悼み方、自分の感情との付き合い方についての作品です。デイヴィスのような自分の感情に不器用な人たちにとって一種の清涼剤のような感覚を味わえるのではないでしょうか、、、

 カレンの息子のクリスやカレン自身もいい味を出してるキャラなので紹介したいんですがあとはご自身でお確かめください。

 ちなみに私の好きなシーンは最後です。自分的2017年ベスト作品でした。

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祝!ブレードランナー続編公開決定

お久しぶりです。今日は映画「ブレードランナー」、それとSF映画についての勝手な考察です。

ブレードランナー2049」の製作が無事終わったそうですね。公開は今年の10月27日予定だとか。舞台は前作から30年後の地球だそうです。監督はカナダ人で「メッセージ」(まだ見てない)のドュニ・ビルヌーブ

今作では新人ブレードランナーのKが新たに起こった世界の危機を解決するため色々頑張るみたいです。

世界の危機とはまたハリウッド映画らしいうたい文句ですが、全然ブレードランナーらしくない感じですな。

映画版「ブレードランナー」は一言で表すと人に混ざっている脱走アンドロイド(レプリカント)を見つけ出して破壊しようとするブレードランナー(刑事)の物語であり、まぁヒトの定義だとか自己の証明方法だとかは要素としては含んでいましたが、原作の「アンドロイドは電気羊の夢を見るのか」にいたっては、脱走レプリカントを懸賞金目当てで追い求めるバウンティーハンター(嫁さんにいびられてる)の物語でした。

ブレードランナー」が映画史に残る金字塔となったのはストーリーゆえというよりもその画期的な未来の表現方法ゆえでしょう。

それまでのSF映画における未来世界の表現方法はもっぱらディストピア的な未来観であり、それは西洋的な舞台と完璧な管理社会を背景にすることで、人間性が否定される偽ユートピアを描いたものでした。ジョージ・オーウェルの「1984年」や「未来世紀ブラジル」などがその代表格でしょう。これはもちろん共産主義への否定という現実世界の状況を反映したものでした。

しかし「ブレードランナー」が提示した様々な人種が入り乱れるアジア的な(80年代の日本だそうですが)都市を背景としたカオスな未来観は、それまでの西洋的で管理社会をモチーフとした初期型SF映画とは一線を画すものでした。これは当時の環境破壊問題や増長していく資本主義、膨張するアジアが背景にあったのでしょうが、ここからSF映画は「カオス」な時代に突入していきます。

そして「カオス」なSF映画なモチーフとして「アジア」はSF映画のひとつのガジェットして取り入れられていきます。「甲殻機動隊」や「マトリックス」、「AKIRA」などがあげられるでしょう。人口が増え続けていく、人類は拡大していくものという前提にとってアジアは象徴として使われました。

もう一つ象徴として使われたのは「宇宙開発」でしょう。拡張を続ける人類の領域はいずれ地球を離れ宇宙に飛び出していく。「ガンダム」や「マクロス」などSFアニメにとって「宇宙」という存在はなくてはならないものでした。

しかし2000年代に入り、「カオス」的SF映画とは趣を異にするものが現れました。「カオス」SF映画が前提としていた人類の膨張は、先進国における人口減少問題によって、永遠に成長を続けていくと思われていた資本主義はたびかさなる経済危機による崩壊の兆しによって崩れ始めました。宇宙開発すら国家ではなく民間主導で行われるようになった現在、もはや人類が大規模な宇宙移民に乗り出す想像は難しくなりました。(TED曰く人類の人口は90億人ほどで安定するのではないかとか。いやはや)

そんななか新たに表れた新型SF映画は人類の衰退という前提に立ち、いかに崩壊に対処するかがキーとなっていきました。アニメ映画ばかりで恐縮ですが水島精二監督の「楽園追放」や伊藤計劃の「ハーモニー」また、「PSYCHO-PASS」などです。

「ハーモニー」では個人が社会の資源(リソース)として尊重され、「管理者のいない」管理主義が描かれましたが、ある意味テクノロジーの進歩によって古典的なSFが再生産されました。

「楽園追放」においてはヒトそのものが電子化されて人類の在り方自体が変革を遂げた様が描かれましたが、攻殻機動隊における「人を一個の情報の運び屋ととらえた場合、都市は(つまり社会は)巨大な情報記憶装置である」という比喩そのままになりましたね。

このような新たな未来像が提示され始めた中で、これから公開されていくSF映画が同のような映画になるのか非常に楽しみです。「ブレードランナー2049」は続編であることを強く意識しているようですが、、、

「ブレードランナー 2049」の画像検索結果

検索:王様のためのホログラム→もしかしなくても:おっぱい

GW最終日。楽しみにしていたトムハンクス最新作の王様のためのホログラムを見てきました。え?公開日が違う?田舎なんだよ、、、

主演はみんな大好きトム・ハンクス。カーリー・ジェプソンのI Really Like YouのPVに出演してましたね。フォレストガンプ一期一会の時と比べてめっきり老けましたね。すっかり好々爺然してます。監督はトム・ティクバ

ざっとストーリーを説明すると、トムハンクスはうだつの上がらないアメリカ人のセールスマン。娘の養育費のため家も車も売っぱらい、崖っぷち。若いころ、サウジアラビアの王子と一言しゃべったことがあるという理由で、サウジアラビアの王様にホログラムでまるでそこにいるかのように会話することができるという最新の会議システムを売りにサウジアラビアに行くことになります。慣れない異国の地で無事にトムは商談を成立できるのか?というかなんか体調悪そうだけど大丈夫?

さて、この映画の冒頭はいきなりトムハンクスがラップで歌いながら自分のグダグダな今の状況を説明しだすという斬新極まりない演出で始まります。いきなりの大音量のラップに劇場には何か自分は間違ってしまったのかという空気が漂います。いまいちついていて行けていない私と観客(おっさん3人)を華麗に置き去りにし、トムはジェットコースターに乗りながらラップを歌い続けます。「(自分は)いつもこうだった。いつもこうだった。いつもこうだった、、、」

大丈夫です。まだあきらめるような時間じゃありません。ここからしばらくは普通の映画です。しばらくは。

前述のとおりトムはサウジアラビアに行きます。飛行機を降りたらそこは砂漠とラクダと厳格なイスラムの王国、サウジアラビア。アメリカとは全く違う文化が広がっています。雇ったハイヤーは浮気相手の夫から爆殺されることを懸念しエンジンをかける前に執拗にボンネットを確かめたり。仕事のほうもうまくいきません。トムのチームに割り当てられたのは砂漠の中にたつテント。冷房が壊れたり、食べ物がなかったり、IT企業なのにWiFi環境がなかったり。プレゼン相手の国王もいつ来るのか誰も知りませんし、そもそもサウジ側の担当者にすら会えません。

仕事以外にもトムを悩ませるものが。背中に腫瘍のようなこぶができていてトムはガンじゃないかと不安で仕方がありません。

そんな中でも、冒頭に引き続き我々観客には試練が続きます。サウジ側の担当者の部下のデンマーク人のおばさんに呼び出されたディスコのシーンは、観客の耳を破壊しようと大音量の音楽が襲い、絶対やりすぎなフラッシュで我々の視界は奪われます。そしてそこからのおばさんとの濡れ場シーン。いきなり始まる四、五十近いおばさんとトムのムフフなシーンに戦慄を覚えさせられます。観客も(たぶんトムも)誰も得をしません。それ以外にもトムの嘔吐を文字通り顔面で受け止め、我々観客の心は開始40分ぐらいで既にグロッキーです。

安心してください。見どころはあります。背景を彩る豪華な現代イスラム建築たち。イスラム文化と建築大好きな自分としてはストーリーは置いといて幸せな時間でした。撮影はエンドクレジット的に多分オマーンですけど。

体もがたがただし、仕事も上手くいかないけど、すべては愛する娘のため。トムはやる気を出して、序盤のハイヤーの運転手と仲良くなったり、美人のサウジ人の女医さんに助けられたりして、なんやかんやあってトムは王様へのプレゼンを成功させます。元気も取り戻したトム、、、映画はこの中盤で最高潮の盛り上がりを見せます。

 

中盤?

 

はい。映画は続きます。

プレゼンは成功したけどぐずぐずサウジに残るトム。なにやらサウジ人の女医さん(50くらい)といい感じです。自宅に招待され、一緒に海で泳ぐことに。

そこで女医さん、なんと水着の上を着てきません。理由は男二人が泳いでるとご近所さんに思わせるため、、、

そうだよね~イスラム教のサウジで男女が海で一緒に泳いでるの見つかったらまずいもんね~^^

女医さんと一緒にサウジの海で素潜りを楽しみトム。

ここで映画は50くらいのサウジのおばさんのおっぱいが海でたわわに揺れ続けるシーンに入ります。

あまりにもどうどうと我々の前を漂うおっぱい、、、わたしはここでスペースバンパイア(要するにおっぱい映画)のあの名解説を思い出しました。

はい、みなさんこんばんは。今は怖くて眠れませんよ。
スペースバンパイア」。スペースバンパイアって何でしょう?
宇宙バンパイア宇宙吸血鬼です。またいつもとおんなじような…
ところがちがうんですよ。今日吸血鬼、ちょっとちがうんですよ。

あなたは旦那さんですか、さんですか、お嬢ちゃんですか、坊ちゃんですか? 
この映画ご覧になったら、旦那さんは今眠れないかもしれませんよ。いろんな意味で。

(中略)

はい、ゆっくり怖がってくださいね。あとでまた会いましょうね。

1989年8月20日日曜洋画劇場 淀川長治による冒頭解説より、一部抜

(引用 

スペースバンパイアとは (オッパイライフフォースとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

 

そうかー今日俺はおっぱいを見に来たんだったー。永遠に続くと思われた5分間。劇場にいたおっさんたちと私の心は一つでした、、、おっぱいおっぱい!

映画はその後、サウジに残り続けることを決めたトムや、色々なことがうまくいきはじめた他の登場人物たちを映し、ハッピーエンドで終わります。めでたしめでたし。

ちょっと待て

どうしておっぱいが入ってきちゃったの?中盤から後半にかけてのシーンって本当に必要?百歩譲って編集で順番入れ替えるとかできなかったの?あとなんでおばさんばっかなの?

まぁ多分監督は異文化との交流をテーマに書きたかったんでしょう。そこはある程度かけてます。ちゃんと面白い。そしてちょっとお色気シーンか何か入れたかったんでしょう。でもトムハンクス今年60歳だし、若い娘とはちょっとということでおばさんになったんでしょう。でも量も内容もどうしてこうなった。

いや、外国で主人公が活躍するものとしては十分及第点ですし。サウジという点も含めて背景はとてもきれいで文句ありません。ただ後半がだいぶおっp。

基本的にDVD買ってもいいやっていう、なんやかんや好きな映画の記事しか書いてないんですが、これは買うかなぁ?迷います。まぁイスラム文化が好きという人は楽しめるでしょう。何やらすごい映画でした、、、

ポスター画像

 

 

 

アフタースクール

またまたアマゾンプライムを使って「アフタースクール」(2008年)を見てきました。

内田けんじ監督の邦画ですが、出演陣が大泉洋佐々木蔵之介堺雅人と、何なの?私のために作ってくれたの?というようなラインナップ。

やっぱり佐々木蔵之介いいなぁ。僕たちと駐在さんの700日戦争とか今でも大好きでよく見返します。

出産間近の妻を持つ大手企業の会社員(堺雅人)とその友人で中学校教師(大泉洋)ですが、奥さんが産気づいたのに堺雅人は連絡が取れず行方不明。横浜のホテルで謎の女性と目撃されたのが最後で、その行方を追って、なぜか勤め先の企業に頼まれた探偵(佐々木蔵之介)とともに大泉洋堺雅人の足取りを追っていきます。なぜ一介の社員の行方を会社が探偵まで雇って追うのか。ちらつくやくざの影と謎の女性。いったい堺雅人は何を隠しているのか。はちゃめちゃな佐々木蔵之介とそれに振り回される大泉洋堺雅人を発見できるの?そして赤ちゃん生まれちゃったけど奥さん大丈夫?というストリーです。

邦画らしく、気持ちよーく、テンポよく進んでいきますがラストのどんでん返しは圧巻。まさにキャッチコピーの「甘く見てるとダマされちゃいますよ」どおりですね

しかししかしキャスティングですが、え?大泉洋が教師で佐々木蔵之介が探偵役?逆じゃないんだと、探偵はバーにいるファンとしては意外な感じですが、大泉洋。しっかり教師してます。「学校なんてどうでもいーんだよ。学校がつまんないのはな。お前のせいだ。」とか教師が言いそうなセリフですね。くー!いい演技でした。

邦画の爽やかさあふれるこの「アフタースクール」どろどろの映画を見た後なんかに癒されたいときにいいんじゃないでしょうか。このタイトルのダサさがまたいい、、、

ゴースト イン ザ シェル コピーはオリジナリティを持つのか

90日以上更新していなくてブログに広告が載せられてしまったのですが、その広告が電子煙草のやつでした。まぁこんなブログタイトルだったらそうですね、映画のことしか書いてないんだけど。

 

GWに攻殻機動隊の実写リメイク版のゴーストインザシェルを見に行ってきたんですが、字幕版でスカーレットヨハンソンの声をどれ初めて聞いてみるかと思っていたら、わが愛すべき地元では吹き替え版しかやっていませんでした、、、田舎ェ

ということで主演の少佐役にはハリウッドの誇るグラマー女優、スカーレットヨハンソン。この人あんまり見ていない人だと思っていたらロストイントランスレーションの人なんですね。あと、ホームアローン3と私がクマに切れた理由など。めっちゃ見てたじゃん!何が初めて声聞いてみようだよ!まぁホームアローン3は3回ぐらい見ましたけど全部吹き替えだったからしょうがないね、、、あの子役は元気にやってるんでしょうか。麻薬やめたのかな?

ああ、正式な役名は草薙素子じゃなくてミラキリア少佐です。ネタバレになるけども。

監督はルパートサンダース。スノーホワイトの人だとか。(見てない。)

他には荒巻部長役でビートたけしさんが出てます。後で書きますがかっこよかった👍

トグサ役には韓国人の俳優さんが使われていましたね。性格悪そうな演技が嫌いじゃない。あとマテバが実写で使われていてちょっと感動。

トーリーですが、ベースは完全に甲殻を下敷きにしていますが結構違うところが多々あります。義体は一般に浸透しているのですがどうも電脳化はあんまり広まっていないのかな?みんな耳のあたりにインターフェースみたいなのを埋め込んでいるみたいです。そして全身義体の実用化に成功したのは世界でも少佐だけとされています。電脳化は多分していないので生身の脳と機械の体ということですね。冒頭のシーンでアニメ劇場版でおなじみの義体が作られるシーンがCGで出てくるんですが、グロイグロイ。で、この世界初の全身義体化というのが今回の核になります。

ざっくりいっちゃうと義体化企業(名前忘れた)が肝いりで開発したミラ少佐は実験体というかもはや戦闘用の商品みたいな扱いを受けているわけで。しかも少佐は義体化前の記憶をほぼ完全になくしていて、義体化後一年を訳もわからず公安9課で働かされています。まさに9課に納入されている感じです。そんな少佐ですがその企業の研究員たちをつぎつぎ襲うハッカー(クゼ)を追ううちに正体不明の記憶の残滓ともいうべきバグに悩まされるようになり、クゼの目的を知った少佐は自分に隠された秘密と過去に気付いていくという感じです。

アニメ劇場版などではネットの複雑化によってゴーストを持ち始めたプログラムと人間の境目とは何かみたいなのを追い求めていたわけですが、実写版は営利をもとめ法を犯す悪徳企業の犠牲になった主人公みたいなのがテーマであり、どちらかというとイノセンスとか新劇場版に近い感がありますね。

作中に頻繁に登場する甲殻のモチーフも劇場第一作のもの以外にもイノセンスのものも頻繁に登場してきます。悪徳企業の社員で破壊された舞妓ロボットの調査をする女性研究員なんか、煙草と目の大胆な義体化などまんまイノセンスの警察の鑑識の人です。

そう、この実写版にはさまざまなパクリスペクトともいうべき甲殻のモチーフがたくさん出てくるわけですが、その量がすごいのです。よく言えばオリジナルに対してのリスペクトにあふれているわけですが、劇場第一作の水路に電脳汚染されたテロリストを追い詰めるシーンのコピーはけっこう無理やりでで、これ甲殻を知らない人がみてもわかるのかな。上に挙げた女性研究員も、イノセンスでは清潔な研究室で汚染ともいうぐらい大量の煙草を吸い、なぜか日本の警察のはずなのに白人、そしていきなりギミックを展開する目の義体パーツの暴力的な衝撃さは、伊藤計劃のいう「殻の中を暴く」というイノセンスのテーマを表現していたわけですが、今回は単にびっくりどっきり人間なだけです。

イノセンスというコンテキストから無理やりテキストだけコピーされた今回の女性研究員ですが、これが単なる劣化コピーなのか。それとも独創性を備えたコピーか。判断が難しいところです。一つの判断材料としてこの煙草もくもく研究員がウケてほかのSF映画にコピーされるようなり、これまでのアトムのお茶の水博士のような、博士と言ったら白髪の老人といったイメージのように我々に定着と再生産されるよになるか。つまりこのミームは生き残ることができるのか。個人的には興味深いところです。

この実写版に独創性が全くないわけじゃないです。面白かったのはアニメ劇場版では舞台背景が中華街ばかりで日本を感じさせる要素はあまりなかったわけですが、実写版では逆に街並みしかり道路標識しかり日本を端々に感じさせる要素があり、逆に甲殻機動隊日本版のような雰囲気を獲得していました。特にラストの墓地は面白いカットでした。撮影はエンドロール見る限り香港で行われたみたいですね。この逆転現象は確実にこの実写版のオリジナリティといえるのではないでしょうか。

しかしこの実写版、実はそんなことよりもとんでもないことを犯しているわけです。

荒巻部長役としてビートたけしさんがでているのは最初に書いた通りですが、監督のインタビューを見るとたけしさんの多忙なスケジュールにより出演シーンは二日で撮ったそうなのですが、マグナムをぶっ放して自ら戦うなど面白いアクションシーンが結構あります。(たけしさんが日本語で話しているのにそれ以外はみんな英語で普通に会話というのは結構他で触れられているので省きます。)そのアクションのラストのシーンにて悪徳企業の社長を自ら殺しちゃうんですが、これ仮にもハリウッドの映画でアジア人が白人を殺すって大丈夫だったんでしょうか?社長が撃たれ倒れていくスローのシーンで、私は驚きを通り越して恐怖すら感じました。今までだったら多分絶対あり得ないシーンの挿入。新時代の変化を感じさせられます。さらっとハリウッドでとんでもないことを成し遂げちゃったたけしさん、、、やっぱ世界のたけしですね。

連投、「LIFE!」 洋画の吹き替えに芸能人を起用する功罪

 以前「LIFE!」を見て非常に気に入り、ブルーレイまで購入して何回も繰り返し見ていたんですが、普段は洋画は字幕で見ていたので、つい昨日まで吹き替えで見る機会はありませんでした。

気分を変えて吹き替えで見てみたら驚愕。主人公のミッティ、なぜか関西弁、しかも棒読み。

びっくりして調べてみたら岡村隆史が、ベンスティラー演じる主人公ウォルターの吹き替えを担当してるんですな。

やっぱり声の仕事に慣れているはずはなく、棒読みで、案の定ネットでもたたかれてましたね。

吹き替えがひどい洋画ベスト10にランクインしてましたよ笑

まあ、でもずっと聞き続けていたら岡村さんのとぼけた声がなんだかツボにはまって、ちょっと面白かったです。独特ののんびりした空気が生まれていて字幕版を何度も見て内容を完全に把握しているので許せます。

やっぱりひどい演技なんですけどね。

吹き替えひどいランキングには数々の”名作”が紹介されていて、意外なあの人とかが吹き替えを担当して事故を起こしていて笑えます。

篠原真理子はひどかったなぁ、、、

不景気な映画業界。吹き替え版にお茶の間で人気な芸能人を起用して話題を作り、少しでも集客数を伸ばしたいのはわかるのですが、芸能人を起用したからってファンとか見に来るのかな?ちょっと疑問です。

声優さんの仕事がなくなるので吹き替えは声優さんにしてもらいたいですね。まあ、そもそも吹き替え版全然見ないんだけども。

ああ、でも堺雅人とか大泉洋を起用!とか言われたら、見に行っちゃうかもしれないですね。

10月はエイドリアンブロディ

 私はウェスアンダーソン監督の作品が好きで好きでたまらないのですが、監督の作品に頻繁に登場しているエイドリアンブロディも好きで、ゲオで彼の作品がたまたま目に入ったので借りて見てみました。

 主演エイドリアンブロディ。監督マイケルペトロー二の「心霊ドクターと消された記憶」

ジャンルはサスペンスホラー。ブロディは自身の娘をなくし、精神的に追い詰められつつある精神科医を演じています。

カウンセリングの仕事を行いつつ、娘の死から立ち直ろうとするブロディですが、彼の周りでは不可思議な出来事が頻繁に起こり、霊たちが彼に語り掛けてきます。

霊たちは彼を、彼が昔犯した罪について責めるのですが、精神的に不安定な状態の彼は娘の死の記憶、過去のことについてうまく思い出すことができません。

少女の霊に導かれ、彼の実家に向かった彼は、昔彼が犯し、そして記憶から消し去ってしまったとある”事件”について探り始めるのですが、、、

ホラー映画ですが、ホラー色は薄め。なんだか主人公の仕事といいシックスセンスを思い起こしますが、あちらが感動路線なのに対してこちらはサスペンス路線。

後半はホラーそっちのけでサスペンスにひた走ります。

シックスセンスと違ってホラーの描写がお決まりというか、あんまり力を入れてない感じなのでホラー映画としては微妙なんじゃないでしょうか?怖くないです。

ただ、物語でも重要なアイテムとなる電車がいい味を出してます。

主人公が通勤に使う路面電車。主人公の地元を走る列車。

電車とか駅とかはなにかあちらの世界とかの交流をイメージさせやすいのか(千と千尋とかそうですよね)、映画の中でも電車は存在感を放ってきます。

あと当たり前のことですが、ブロディが主人公なので、全編にわたってブロディの独特な無精ひげ顔を楽しむことができます。

一時間以上ブロディを堪能できて、、、それだけでいい映画だった、、、