愛猫 黒猫無垢の話 21
私と弟が独立して両親が二人で生活していた頃の話です。
猫さんはたとえ病気になってもなかなか具合が悪そうにしてくれません。
だからそれがはっきりわかった時にはもう手遅れ・・という事もあるようです。
外でケンカをしてきてからしばらく、部屋で寝てばかりいた無垢。両親はケンカに負けて元気がないのかな?と思っていたそうです。
しかし、2日ほどすると無垢は誰もいなくなった離れの弟の部屋から出てこなくなり、両親もさすがにおかしいと思いはじめました。
そのタイミングで私が(アポなしで)娘を連れて実家に遊びにきました。
実家に入る早々、無垢の事を説明されました。
父「ちょっと前に外でケンカしてからよ、なんか無垢が元気ないような気がするんだわ。」
私『ケンカ?それ、どこかケガしてるんじゃ・・』
母「それが見当たらんのよ。だけど触られるのもちょっと嫌がるんだわ。」
母も困った様子で言いました。
私は娘を両親に預け、急いで無垢の様子を見に行きました。
窓辺にしいてあるウレタンの上で丸くなって寝ていた無垢がいました。
『無垢~』と声をかけると、ゆっくりと顔を上げてくれました。
うーん・・目がなんかうつろだな。眠いのかな・・。
そっと顔を包むように撫でるとなんかちょっと熱い感じ。
この時はまだ脱水症状を調べる方法を知らなかったので、発熱してるかどうかもしっかり判断できませんでした。
『熱があるのかな。でもここ窓辺だから熱くなってるだけかもしれない。特に鼻水も出てない・・』
でもやっぱりどこか様子がおかしい。とにかくけだるそう。でも身体にケガらしきものも見当たらない。
『無垢、どこか具合悪いの?病院行く?』
無垢は私の顔をじっと見ながらお腹の下に隠していた左足をゆっくり出してきて舐め始めました。
その瞬間、ちょっと腐敗臭のようなものを感じました。
『ん?なんかちょっと臭くない?なんの臭いだろ・・』
無垢の左足を手にとり、臭いの元をじっくり探しました。
『あった!こんなところに!』
足の指と指の間に大きくえぐれたような傷が隠れていました。
これは普通に見るだけでは絶対気が付かない場所。
すでに数日経過しているので膿んでしまって臭いを出しているのかも。
慌てて父と母に、ケガが見つかったから病院に連れて行くと言いました。
父「今日は休みだ。お前は子供いるし俺が明日の朝一番で連れて行くわ」
無垢がせめて足を引きずるなりして歩いてくれれすぐ気が付いたのでしょうが・・
母「普通に歩いとったのよ?涼しい顔して。だから全然気が付かんかったわ💦」
我慢強すぎないか・・無垢💧
次の日の朝早く、父から電話がありました。
どうやら本当に朝一番に病院に駆け込んだようです。
父「先生にあと2日ほど遅かったら足を切断しなきゃいかんかったと怒られたわ。」
発見が遅れたのでかなり状態が悪くなっていたようです。
入院はせず抗生剤をうってもらったり消毒してもらったりして帰宅した無垢。
帰ってからは離れの方には行かず、両親がいる母屋で過ごしていると言っていました。
よかった・・無垢がケガの場所を教えてくれて。
傷が治った頃、私はまた実家に(アポなしで)遊びに行きました。
居間の窓辺でのんびりひなたぼっこをしながら寝そべっている無垢に言いました。
『お願いだからもうちょっとその・・顔とか行動で痛いの教えてくれないかな?』
無垢は一応しっぽでパタパタと返事らしきものをしてくれました。
しかしその後も何度か無垢のポーカーフェイスに騙されることになりました💧