ゼロイチ起業ノート

スタートアップ、スモールビジネスを問わずにゼロイチ起業に挑戦、成功する人を増やすことで日本において起業という選択肢を当たり前にすることが究極的な目標です。

大企業の新規事業はステルスで進めるべき理由

結構レガシーな日系大企業の新規事業部署に入社して1週間が経ちました。日系大企業で新規事業が生まれない理由についてはある程度の仮説をもって入社していましたがいくつかは想定通りで、いくつかは想定よりもよくない状況だったので今後、自分自身でどうやっていくのか考えています。

新規事業のプロセスについて入社した会社では一般的なステージゲート方式を採用しています。ステージゲート方式についてはこちらの記事を参照してください。

ステージゲート法は研究開発テーマや商品アイデア創出に始まり、多数創出されたアイデアを対象に、研究開発や事業化・商品化活動を複数の活動(ステージ)に分割し、次のステージに移行する前には評価を行う場(ゲート)を設け、そこでの評価をパスしたテーマのみを次のステージに進め、最終的に上市に至らしめるという方法です。

www.monodukuri.com

一方で使い方間違えるとあんまりよくない制度だと思っておりこんなことをつぶやきました。

実際に僕自身がこの企業の中で新規事業をやるにしても、どれだけステルスで物事を進めることができるかが大事だと思っており、その理由を整理しておきたいと思います。

事業創出経験のない上司や同僚の意見は役にたたない

事業を創っていくプロセスの中では人の意見は基本的に役にたちません。その上、自分が提供しようとしているサービスのターゲットでもなく、事業創出の経験もない上司や同僚の意見であればなおさら役にたつことはなく、害悪になるケースが多いと思っています。人間は弱い生き物なのでどうしても、上司や同僚に「いいね」と言ってもらった上で物事を進めたくなるものですが、最終ゴールが事業を創出してユーザーに価値を届けることであるならば、ターゲットユーザー以外からのアドバイスや意見を取り入れる必要はありません。

承認会議を経るごとにアイディアが丸くなる

結果が出ていない中で承認会議にかけようとするとどうしても、承認会議を通過することが目的化されてしまい、当初のサービスコンセプトが歪むケースが少なくありません。承認会議を通過させるために、部長・課長から受けた指摘を企画に反映させてそれっぽいことを盛り込もうとしてしまい、誰の役にも立たないサービス企画になっていきがちです。悲しいのは上司が指摘を反映させるように命令したわけでもないのに、担当者レベルで忖度した結果、指摘を自主的に盛り込んでしまうということが起こりやすいということです。

承認会議を経るごとに担当者の素敵な発想やアイディアが忖度の塊になり、担当者自身のやる気もそがれて計画が頓挫してしまうことがかなり発生しているように感じました。

予算がなくてもできることが多い

そもそも上司の承認を得たり、承認会議を通過させたりするのは、予算獲得のためというのが大きいと思いますが、予算がなくても検証できる仮説が非常に多いのに取り組んでいる人が少ないように思います。ユーザーインタビューも市場調査もサービスフローの設計も予算が0でも相当できます。

個人的に小さな仮説検証の話としてはザッポスが最初に「オンラインで靴を買う人はいる」という仮説を検証するために近所の靴屋で在庫商品の写真を取らせてもらい、Webに掲載して実際に売れるかどうか試してみたという話が好きでよく話しています。

リーン・スタートアップ

リーン・スタートアップ

  • 作者: エリック・リース,伊藤穣一(MITメディアラボ所長),井口耕二
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2012/04/12
  • メディア: 単行本
  • 購入: 24人 クリック: 360回
  • この商品を含むブログ (95件) を見る
 

僕自身が創業して売却した会社も「就活生は企業からの都合のいい情報ではなく実際に選考に役立つ情報を求めている」という仮説をブログで検証することから始めて、実際に数字がついてきたので起業してみることにしました。 

blog.zerotoone.jp

最近は仮説検証の速度と精度が高まっていると感じており、最近リリースされたグルメアプリのDishのリリースは動画でプロトタイプを作り、ツイッターでバズったからアプリを作るという面白い経緯で始まったなと思ってみていました。

note.mu

日系大企業はこの仮説検証をするためにも、上司の承認や承認会議を通過させようとしていて効率の悪さを感じます。

予算がなくてもサイトを作れるようにするためにプログラミングを学ぶというのも選択肢の一つだと思っていて、最近では未経験の人が学ぶ環境が増えてきており身につけやすくなっていると感じています。

テックキャンプは有料のスクールですが、興味があれば無料の体験会にいき効果がありそうだと実感できれば参加するのがよいでしょう。

af.tech-camp.in

ステルスで成果が出れば承認可能性が高まる

うまくいくかどうかもわからない事業に対して、仮説検証を進めるのでもなく、調査や勉強会など無駄なインプットに時間を費やしてしまいがちなのが大企業組織というものですが、そもそもステルスで仮説が検証でき、ある程度の数字がついてくると承認会議での承認可能性が圧倒的に高くなります。

大企業とはいえ、リソースは限られており、真剣に取り組むことの出来る新規事業は多くない中で、出来るだけ成功可能性が高い事業が承認されるのは当たり前です。そして成功可能性を高く見せるには、実際に仮説検証を行い、ある程度の数字がついてきているというのは非常に大きなアドバンテージとなります。 

会社で承認されなくても自分で起業する選択肢が得られる

実際にステルスで進めて、仮説検証を行い、ある程度の数字が出たとしても会社の承認会議で否決されることも少なくないでしょう。ユーザーにニーズはあるけれどニッチな分野のため、考えた新規事業単体ではMAXの売上が3億円、営業利益で数千万円の事業にしかならず大企業内でリソースを割けないと判断されてしまうケースなどがそれです。

確かに売上3億円、営業利益数千万円だと大企業内でやるには物足りない数字かもしれませんが、個人で起業してやるには十分すぎる数字です。所属する大企業と親和性のある事業であれば最初から業務提携してくれたり、出資して応援してくれる可能性もあります。

最後に

何より、ステルスで仲間を募って試行錯誤しながら新規事業を考えるのはお仕事として新規事業をやるよりも数段楽しいものです。世界を変えるようなサービスの多くもお仕事からではなく、純粋な好奇心や楽しみの中から生まれています。純粋な好奇心や楽しさを忘れずに新規事業を続ける方法としてはステルスで進めるのが最もよいと思っており、ぜひ新規事業部署にいない人もチャレンジしてほしいと思っています。

上場した日系大企業の社内ベンチャー・新規事業一覧

スタートアップの多くの人が、大企業の中ではなかなか新規事業が生まれにくいと考えています。

blog.zerotoone.jp

しかし私自身が新卒で大手商社を選択した理由は、IPOするような子会社をゼロから複数立ち上げていたからでした。そうした組織であればサラリーマンとしてリスクを限定しながらも事業を生み出すことに関わることができ、将来的にやりたい起業のためにもなるし内部でできるのであればそもそも起業の必要性もないかもしれないと思って入社を決めました。

 

今回は大企業の中で、ゼロから立ち上げた社内ベンチャーをまとめてみたので参考にしてください。もしこのリスト以外にも知ってるものがあればぜひTwitter、コメントなどで教えてもらえるとうれしいです。

ちなみに先日、この本を読みましたが参考になりました。著者は筆王、ウェブマネーなどの事業を成功させてきた人物で、大企業向けに新規事業のコンサルタントをしているようです。

新規事業がうまくいかない理由

新規事業がうまくいかない理由

 

フィットネス事業を展開するルネサンス(親会社:大日本インキ化学工業)

フィットネス業界3位のルネサンスは1982年に創業され、2003年に上場しました。親会社は大日本インキ化学工業ですが、近年は持分比率が減少して独立色が強まっています。

創業者が会社の外部で副業として行っていた「カルチャースクール」事業が出発点で、その後、事業転換をしながら社内ベンチャーとして企画を通し、会社として設立しました。

www.recruit-ms.co.jp

 

ネット株式取引を運営するカブドットコム証券(親会社:伊藤忠商事)

カブドットコム証券は1999年に伊藤忠とマイクロソフト他の出資で設立された日本オンライン証券と三和銀行系列のイーウイング証券が合併して設立されました。2018年現在社長を務める斎藤氏は日本オンライン証券の設立を機に伊藤忠商事に入社し、システム開発に携わってきました。

kabu.com

 

事業者向けECサイト運営MonotaRO(親会社:住友商事)

MonotaROは2000年に住友商事と米国グレンジャー社の出資によりスタートした事業者向けECサイトで、創業者の一人瀬戸氏は1983年に住友商事に入社し、設立後にMonotaROの取締役として就任し、その後転籍しています。MonotaROの退任後にはLIXILグループの社長に就任し話題になりました。

style.nikkei.com

信用リスク引受のイー・ギャランティ(親会社:伊藤忠商事)

事業者向けに売掛金などの信用リスクを引き受けるサービスを展開するイー・ギャランティは2000年に伊藤忠商事の社内ベンチャーとして設立されました。社長を務める江藤氏は1998年に伊藤忠商事に入社しており、わずか2年目の若手で社内ベンチャーの設立企画を通していることになります。

参考:企業発ベンチャーは人材を育て社内を活性化させる(江藤社長インタビュー)

http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/sogyo/kigyouhatsu/data/venture6_p8_p9.pdf

不動産管理クラウドを提供するプロパティデータバンク(親会社:清水建設)

不動産事業者向けに管理クラウドを提供するプロパティデータバンクは、2000年に清水建設の社内事業家制度を活用し設立された会社で、2018年に上場しています。プロパティデータバンクは経済産業省が提供する「大企業とベンチャーがWIN-WINの発展を実現するためのベストプラクティス」にも記載があり、清水建設のノウハウを核に多くの起業や業界全体に展開するビジネスモデルであるため、カーブアウトに合っていると社長が語っています。

参考:大企業とベンチャーがWIN-WINの発展を実現するためのベストプラクティス事例集

http://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/innovation_policy/pdf/best_practice.pdf

自社パッケージ製品を提供するエヌ・ティ・ティ・データ・イントラマート(親会社:NTTデータ)

エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマートは1998年にNTTデータの社内ベンチャープログラムとしてスタートし、2000年に株式会社化され、2007年に上場しています。親会社であるNTTデータが7割、創業社長が3割の持ち株比率でスタートし、初年度から黒字でスタートしたと語られています。

tech.nikkeibp.co.jp

医療情報提供ポータルを運営するエムスリー(親会社:ソネット)

エムスリーは元々はソネット・エムスリーとしてソネットの子会社として2000年に設立され、2004年に上場しています。上場後も成長を続け、2018年現在では時価総額1兆円を超える規模まで成長しています。創業の経緯としてはマッキンゼーのパートナーとしてヘルスケア業界に長くかかわってきた谷村社長がソネットエンタテインメントと共同で立案した新規事業がコア事業の一つである「MR君」だったそうです。

参考:エムスリー:躍進する業界特化型ポータル事業 

http://www.waseda.jp/prj-riim/paper/RIIM-CaseNo16_SonetM3.pdf

 レディースファッションECを運営するマガシーク(親会社:伊藤忠商事)

女性向けファッションECを運営するマガシークは2000年に伊藤忠商事の社内ベンチャーとして生まれ、2003年に設立され、2006年に上場しています。雑誌に掲載された服が購入できるECとしてスタートし、小学館、集英社、講談社など大手出版会社と資本業務提携を行いながら成長してきました。

www.magaseek.co.jp

外国為替取引所運営するFXプライム(親会社:伊藤忠商事)

外国為替取引所を運営するFXプライムは2003年、伊藤忠商事の子会社として設立され、2008年に上場しました。FXプライムは元々、伊藤忠商事の為替部門を母体としており、商社の為替ディーラーが実際の業務で使う機能を元にサービスが提供されています。競合の相次ぐ参入によるスプレッドの減少、2009年にFXのレバレッジ規制などの業界の逆風をうけ、2012年にGMOグループに売却されました。

ネットで乗換案内・時刻表を提供する駅探(親会社:東芝)

駅探は元々東芝の社内ベンチャーとして発足し、2003年に設立されたものの、2007年に投資ファンドのポラリスキャピタルと共同でMBOを行い、その後2011年に上場を果たしている会社です。

japan.cnet.com

文中ではMBOした理由を、「連結子会社という位置付けでは他社との資本提携などダイナミックな動きができない」という悩みがあったことを語られています。

最後に

いろいろ調べたものの、上場までこぎつけた社内ベンチャーの多くがいわゆるインターネットバブルに湧いた2000年前後に設立された会社でした。要因としてはインターネットバブル崩壊後は大企業としてなかなか設立に前のめりになれなかったこと、そうこうしているうちにリーマン・ショックにより新規事業どころではなくなり、社内ベンチャーが減ってしまったことが関係していそうだと感じました。2018年現在は日系大企業がデジタルトランスフォーメーション、新規事業と鼻息荒く資金を投下しています。現在立ち上げられている社内ベンチャーはここで紹介した上場を経験した企業と肩を並べる存在になれるのか、今後も注目していきたいと思います。

これまでのインターネットが救った人と救えなかった人、これからの話

僕が創業して売却した会社の競合である就活支援サイトのワンキャリアにて、興味深い議論が起きていました。 

リクルートが生み出した就活システムは学生からも大学関係者からも評判が悪く、リクルートが生み出した価値の部分よりも負の側面が強調されて批判されてしまいがちです。今回の議論はそのような評判の悪いリクルート的な価値観とは対局にいてほしいとユーザーが期待する人材系のインターネットベンチャー企業が結局、リクルート的な価値観と同じだったのでは?というユーザーの疑問からスタートしていました。この点については自分自身もHRの領域にいたことから考える機会が多かったのでポエムを書いてみたいと思います。

これまでのインターネットが救ったものと救えなかった

いつか言語化したいと思ってTwitterのいいねにいれて放置していたのですが、これまでのインターネットが救ってきたものについては下記のTweetが的を得ていると思っています。

就活市場においても情報がオープンになることで、いわゆる「情報強者」が得をしてきました。リクルートが生み出した就活システムはこれまで企業に所属する人の人的つながりや企業と大学、研究室などのつながりを元にした採用から、オープンな求人情報により、誰もがどの企業にも応募できるようになりました。これで得するのは実力はあるけれど、これまでの就職活動では求人にそもそもアクセスできなかった層です。

求人情報がオープンになったのがリクナビがネット化し各社が導入した2000年代だとすると、就活ノウハウや選考情報のオープン化が始まったのが2010年代で、まさに僕らがやろうとしたことです。下記のブログでも書いていますが、当時の僕自身がやりたかっったことは、「ちょっとした情報の差やテクニックの差で人生を大きく左右する就職活動に大きな影響が出てしまう」という現状を、「就職活動に関する情報をオープンにすることで学生本来の実力や実績が評価される」ということでした。

blog.zerotoone.jp

ここでも得をしたのは、オープンになった就活ノウハウや選考情報というあふれる情報の中から自分に合った情報を取捨選択し、実行する能力のある人たちです。情報をオープンにすることで情報強者が得をするという結果は、リクナビも就活情報系のベンチャー企業が提供するサービスも変わりません。

Twitter、facebookといったSNSの普及が情報の取捨選択能力が低い人の不幸を加速させている側面もあるように思います。情報がオープンになり、その情報をうまく活用して得をしている人がSNSの活動で可視化されてしまうようになりました。SNSの中ではどうしてもうまくいっている人の声が大きく見えてしまい、煽られていると感じてしまうという側面はあるのではないでしょうか。

ちなみにSNS時代の就職活動を描いた「何者」は2012年に描かれた本ですが未だに通じる部分があると思われます。

何者 (新潮文庫)

何者 (新潮文庫)

 

これからの話、情報が十分にオープンになったことで取捨選択の手助けをするサービスが本格化してきた

 一方で近年では情報が十分にオープンになったことで、溢れる情報の取捨選択に対する「負」が表面化してきたからか、情報の取捨選択をサポートするサービスが増えてきたように思います。

僕自身もお会いしたことのある矢本さんが提供するタベリーは献立を10秒で作ることができるアプリです。

tabe.ly

これまではレシピサイトといえばクックパッドで、クックパッドの大量にあるレシピから主体的に検索することが求められていました。溢れる情報の中から冷蔵庫にあり、自分が作ることができて、いま食べたいものを選択するのは結構な労力がかかってしまい、そこを解決してくれるアプリだと言えます。

先月末にリリースが出て、話題になった「ズボラ旅」も情報の取捨選択を助けるサービスと言えます。

jp.techcrunch.com

旅行についても大量にある候補から、予算内におさまる宿を探して、意思決定するのはなかなか労力がかかるものです。

就活や転職などにおいても十分に情報がオープン化されてきたため、溢れる情報から取捨選択する負が高まっており、この部分を解決するサービスが今後トレンドとなりそうだと思っています。

これまでのインターネットは情報をオープンにするビジネスモデルが主体で、実際に多くの産業でその方向でビジネスが立ち上がったように思います。そして情報が十分にオープンになったことで、情報の取捨選択が結構面倒であり、能力のある人しか報われないことが周知された結果、このような情報の取捨選択をサポートするサービスが生まれてきました。なのでこれからのインターネットサービスの多くは、情報強者だけでなく、これまでインターネットサービスで報われることのなかった人にも優しいものになるのではないかと考えています。

一つのサービスで全ての課題を解決することはできない

自ら起業してサービスを作って提供した経験からすると、自分自身のサービスで全ての人の悩みを解決して幸せにするのは到底ムリで、それを目指そうとするのは驕りなんじゃないかなと思っています。上記で紹介したブログでも書いた通り、「一つのサービスやプロダクトが全ての課題を解決することはできません。結局、時代が変われば人々が直面する悩みや課題が変わるので、それを解決するサービスを生み出す起業家のニーズはいつまでもなくなりません。」と考えています。

blog.zerotoone.jp

社会やサービスに対する不満や議論はたくさんあるべきだと思っている一方で個人としては、議論から世の中の負や課題を抽出して解決するサービスや事業はなんだろうと考え続けていきたいと思います。

起業したいと思ってる人にオススメの本

起業して売却した経験があるため、起業の相談を受けることも多いのですが、その中でオススメの本を聞かれることが多いと思ったのでまとめておきます。

僕自身は起業する際には、短期的な急成長を求められるスタートアップだけでなく着実に長期間かけてビジネスを成長させるスモールビジネスという選択肢もありだと考えているので、スタートアップ関連の本だけでなくスモールビジネス関連の本もいくつかいれました。

ここに書き忘れてるけどオススメの本があるかもしれないので、皆さんのオススメも教えてもらえればうれしいです。

ドラゴン桜の作者が書く起業本:マネーの拳

マネーの拳はドラゴン桜の著者である三田紀房氏の起業漫画です。 元プロボクサーの主人公が今度はビジネスの世界でチャンピオンになろうと奮闘する漫画で、アパレル分野で起業し、苦難のスタートから上場まで果たすストーリーになっています。

三田紀房氏の漫画は、受験漫画であるドラゴン桜も就活漫画である銀のアンカーも投資漫画であるインベスターZも、直感には反するが正しいことが詰め込まれており、マネーの拳も商売、ビジネスの本質が名言として詰まっていると感じます。

勉強して知識を蓄えてから商売するというのは、 才能のないものの発する言葉だよ。

楽して儲けるのが本当の商売だ。苦労して儲けるなんて誰でもできる。人の2倍働けばいいだけのこと。ただがむしゃらにやればそこそこ稼げる。

「ビジネスは理詰めの世界。切羽詰まって破れかぶれの行動に出る人間は商売には向かない。」

無能な経営者は一見信用できそうな人間を欲しがる。社員も経営者の信用を得ようとする。結果、経営者の方しか向かなくなる。社長も、忠実で従順な社員達に満足する。これが会社をダメにする

「あんた・・・感情で商売してるんだよ。常に自分の願望を最優先してる。」「商売の成功には道理がある。感情を最優先すれば理屈が曲がる。理屈が曲がれば道から外れる。」「そんな商売は必ず失敗する。」

商売は自分がいかに楽な競争をするか・・・さらに・・・いかに競争をしないで済むかを考えるゲームだ

 これらの言葉の多くはスタートアップの常識としても当てはまる言葉が多く、起業やスタートアップに関する知識がある人も楽しめると思っています。

起業する人のイメージをいい意味で覆す:ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代

ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代 (単行本)

ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代 (単行本)

 

この本も個人的に好きな本の一つで多くの人に勧めています。書評も下記で書いています。

blog.zerotoone.jp

この本も上記で紹介した三田紀房氏の本と同様に、直感的・常識的には一見正しいが実は違うことを紹介しており、天の邪鬼な自分はそこが気に入っているポイントかもしれません。例えば起業家といえばリスクが大好きでリスク許容度の高い人が起業家になると信じられていますが、この本では実は起業家はリスクが嫌いだということをデータから明らかにしようとしています。

アメリカの偉大な起業家もいきなりリスクを取ったわけではなく、サイドプロジェクト的に本業とは別に進めていたプロダクトが思いの外あたりそちらに専念するようになったという話が実例を元に書かれています。

また起業する上では優れたアイディア1つが大事だと思わているけど、実は成功の秘訣は大量のアイディアをカタチにすることだと書かれています。シェイクスピアやベートベンなど後世に残る天才たちも多くの名作の裏に多くの駄作を生み出していたそうです。起業で成功している人も実は多くのプロジェクトを検討して、実際にリリースしているケースは少なくありません。nanapiのけんすうさんも大量に出しているものの当たりは少ないということを語っています。

 

けんすう 一方で、むやみやたらに行動していれば、失敗例はめちゃくちゃ多くなるけど、失敗ってみんな覚えていないのでリスクはない。

尾原 特にネットは失敗のコストが低いから、何度でも失敗できる。

けんすう ぼくも全然当てていないです。そもそも打率が超低いですから。でも失敗したサービスってほとんど誰も知らないので、あまり困らない。

尾原 それはたくさんのサービスをつくりすぎだからだけど(笑)。上手な失敗のしかたみたいなことで心がけていることはありますか?

けんすう ウソをつかないとか、誠実にやることの価値がすごく上がっているので、そこを押さえておくと、だいたいの失敗は許されるというのはあると思うんですね。常に相手のため、誰かのために誠実にがんばる、というのは意識しています。

diamond.jp 

直感に反するスタートアップ的考え方の集大成:逆説のスタートアップ思考

逆説のスタートアップ思考 (中公新書ラクレ 578)

逆説のスタートアップ思考 (中公新書ラクレ 578)

 

プロダクトづくりにおいてはこの逆説のスタートアップ思考が非常に参考になります。書いてて思ったのですが個人的に、「常識的に正しいと思われているけど真実は別にある」的な本や部分が好きだなと改めて感じました。逆説志向は新しいサービスを生み出す上で役立っているのかもしれないなと思います。

この本に関しても下記で書評を書いています。

blog.zerotoone.jp

詳しくは上記のブログと実際に購入して読んでもらいたいのですが、最近自分が腹落ちした一節の一つが、「スケールしないことを長く続ける」ということです。スケールを焦ってマーケティングでのバズを狙ったり、製品ができた直後にセールスでガンガン売ろうとするのは悪手である可能性が高いということです。僕自身が最近見たプロダクトでも、ユーザーにまだ十分愛されたものではないのに、リリースは派手にやり最初はユーザーがつくもののすぐにユーザーが飽きて離脱してしまったプロダクトは少なくありません。

また作り込みが甘いにも関わらず、製品が完成した段階でガンガン営業をかけてしまい結果としてクレームの嵐と高止まりしたままの離脱率でスケールしないB向け製品もいくつか見ています。

直感に反するけど成功のために必要なことを続けるのは難しいものの、成功するためにはこうした長期スパンでの取り組みが不可欠だと改めて感じています。

成長し続けるだけが起業のカタチではない:小さなチーム、大きな仕事

小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則

小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則

  • 作者: ジェイソン・フリード,デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン,黒沢 健二,松永 肇一,美谷 広海,祐佳 ヤング
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/01/11
  • メディア: 単行本
  • 購入: 21人 クリック: 325回
  • この商品を含むブログ (37件) を見る
 

最近起業したいと相談を受ける人の多くが、起業というのはベンチャーキャピタルから資金調達を行い、リリースを派手にやり、世間から注目を受けるプロダクトを作ることだと考えている人が少なくないように思います。

この本も書評を書いているので詳しくは下記を読んでもらえればと思います。

blog.zerotoone.jp

この本にもある通り、スタートアップというのは起業の一つの形態にすぎません。そもそも多くの顧客は自分たちが使う製品がイケてるスタートアップが提供しているものなのか、大企業が提供しているものなのかそこまでこだわりません。ユーザーに価値を提供することができればどのような企業形態でもよく、自分が選択した領域とサービスがスタートアップが相性がいいのかスモールビジネスが相性がいいのかよく考える必要があります。個人的にはある程度どこに資金を投下すればスケールするのか見えるまでは自己資金で少数のユーザーに愛されるプロダクトを作るべきで、その後資金調達をするかどうかは自分が開発したプロダクトが属する領域の成長性、成長スピード、参入障壁などの観点からスピードが重要な領域であれば資金調達をして一気に勝負を決め、そうでないなら自己資金で小さく勝つのがいいのかなと考えています。

 

個人事業に近い中小企業も起業である: 僕が四十二歳で脱サラして、妻と始めた小さな起業の物語

僕が四十二歳で脱サラして、妻と始めた小さな起業の物語 (自分のビジネスを始めたい人に贈る二〇のエピソード)
 

有名ブロガーICHIROYAさんの2冊目の書籍で一冊目は下記です。

僕が18年勤めた会社を辞めた時、後悔した12のこと

僕が18年勤めた会社を辞めた時、後悔した12のこと

 

こちらも上記の小さなチーム、大きな仕事と同じくスモールビジネスに属する方の本ですが、事業の立ち上げについて生々しく書かれていて参考になります。このようにスモールビジネスを展開されている方でも最初は店舗を借りて大きく勝負しようかと考えていたことなどリアルな起業の実態も垣間見れるのがよいと思っています。

 

スタートアップ的ビジネスの始め方が網羅されている:起業の科学 スタートアップサイエンス

起業の科学  スタートアップサイエンス

起業の科学 スタートアップサイエンス

 

起業の科学は最近出版された本ですが、近年のスタートアップのトレンドおよび、そこから導き出される事業の作り方について体系的、網羅的にまとまっている点がよいと思います。また著者がベンチャーキャピタル出身のため、多くのスタートアップや起業にあこがれているだけでなかなか行動に移せない人と出会ってるのか、辛辣な言葉もところどころにあり面白かったです。

手順やり方や考え方のインストールはこの本を読むといいと思うものの、これを理解できたり共感できるのは自分自身がゼロからプロダクトを作ってそこそこのスケールまで持っていけたからかもしれないというのは感じています。人間、経験したことでなけれ本当に心から腹落ちするのは難しいからです。なのでこれからはじめての起業をする人はざっと全体を読んで、実際に手を動かす中で時々参照してみるという使い方がよいかもしれません。

資金調達まわりの知識が全てわかるようになる:起業のファイナンス

起業のファイナンス増補改訂版

起業のファイナンス増補改訂版

 

スタートアップで資金調達をする人は必ず読んだほうがいい名著です。一方で内容は結構ファイナンスの難しい部分を扱うため、最初から実感値を持って理解するのは難しいかもしれません。僕らも起業するときには確かに読んだはずなのにセオリーから外れた株主構成にしたりと、読んではいて知ってはいるものの、実務として活かせないという状態だったなと思います。この本も上記の起業の科学同様にざっと一通り読んで、手元においておき、実際に資金調達が必要になりそうなときに読んでみるのがいいかもしれません。

最後に

なんだかもっとオススメの本があったような気がするものの、自宅の本棚とKindleに取り敢えずあった中でオススメのものを紹介しました。これも必須でしょうというものがあれば紹介してください。

一方で冒頭のマネーの拳の名言でもあった通り、「勉強して知識を蓄えてから商売するというのは、 才能のないものの発する言葉だよ。」なので、走りながら考える、本で情報収集をするだけに満足しないことが起業する上では一番大事かなと思います。

 

日系大企業はなぜ1億円の予算があっても新規事業を生み出せないのか

最近こんなつぶやきをしました。

大企業の新規事業開発を行う部署の知人が、1億円の予算があるものの何をしていいかわからないので、コンサルにまるっと投げようかと話していたのでそれをつぶやいたら結構反応がありました。多くの大企業が同じようなことを考えているのではないかと思い、考えてみたいと思います。

新規事業開発におけるスタートアップと大企業の比較

新規事業開発におけるスタートアップと大企業の違いについて考えてみると下記が挙げられます。

1.小さく始めて大きく育てるスタートアップと最初から大きく始める大企業

多くのスタートアップは小さく始めます。MVP(Minimum Valuable Product)を使って本当に顧客のニーズがあるのか検証を行い、顧客ニーズがあることがわかったら、市場がどの程度あるのか検証し、など細かいステップに分けて新規事業を一つずつ前に進めます。プロダクトがない状態のスタートアップは調達する金額も少なく、数百万円程度で仮説検証するケースがほとんどです。一つの仮説が検証できたら次の調達という形で事業を小さく初めて徐々に大きく育てていくのがスタートアップの事業開発の基本です。

一方で大企業は最初からある程度大きな絵を書いて、稟議書を書いて事業の承認をもらわないとそもそも新規事業をスタートすることができないことがほとんどです。顧客ニーズがあるか検証しないまま、キレイなパワーポイントでバラ色の未来を描いて、1億円程度の大きな予算を獲得することが大企業の新規事業のスタートになりがちではないでしょうか。 

2.仮説検証サイクルを内製化するスタートアップと外注依存の大企業

2000年前後の営業職が強かったベンチャー企業とは異なり、最近のスタートアップ企業でエンジニアを採用していないのは稀なことで、自社内で開発を行い、仮説検証サイクルを回しているでしょう。社内で仮説を検証することができるので、高速に様々な仮説を検証することで事業の方向性を考えることができます。

大企業は前述の通り、最初から大きな予算を取りに行き、外注先に発注を行う形で新規事業の開発を行うケースがほとんどです。なのでそもそも仮説検証する機能を社内に持たず、開発それ自体を外部に依存しています。当然、細かな仕様の変更はできても、仮説検証に基いて事業の方向性を変更することができません。

3.チームを承認するスタートアップと事業を承認する大企業

スタートアップは事業を別のものに転換するピボットすることが前提としてあり、スタートアップに投資する投資家も事業内容にももちろん興味があるものの、特に事業が生まれる初期段階では、基本的に組織やチームの重要性を高く見ています。

VCの判断基準の中でも、経営チームは大きなウェイトを占めています。直接チームを印象づけるという意味で、意志決定プロセスの中で一番重要なステップとも言えます。

(中略)

スタートアップの世界は、環境変化がはやく、不確実性も高くなっています。そんな世界に、正しい答えなどありません。ここでは「計画の正しさ」「受け答えの正しさ」ではなく、「いかにロジカルに環境を分析し、戦略を考えられているか」、「環境が変化したときに、再現性をもって戦略を再構築できるか」が注目されます。

thefirstpenguin.jp

スタートアップでは多くの会社が最初の事業からは全然違う領域にピボットすることで成功を収めています。

一方で大企業では、チームを承認することはなく、あくまで事業を承認しているので、方向性を転換するのであれば再度、方向性の転換の承認を得る必要があり、ピボットを難しくしており、その分成功する角度も低くなってしまっているように思います。

 

4.10年以内に売上10億円を目指すスタートアップと短期間に売上・利益を求める大企業

IPOを目指すスタートアップというと急成長が印象的ですが、IPOしているスタートアップを調べてみると、10年以内に10億円程度の売上を目指すのが標準的な成長曲線のように思われます。この成長に資金を多い時には数十億円突っ込めるのがスタートアップの強みと言えます。

careerdb.jp

一方で大企業では、10年で10億円の売上だと本当に物足りなく感じて、とても稟議の承認がおりないのではないでしょうか。3年で純利益ベースで投資金額が回収できないとゴーサインがでない会社も多いと思われます。

新規事業の成果に対してはスタートアップよりも大企業の方が時間軸が短く、そして大きなリターンを求めてしまうがゆえに中々新しい事業に踏み出せないと考えられます。

5.使える予算が実は大きいスタートアップと予算は意外と少ない大企業

過去にこんなの書いてますが、仮説検証を追えて、成長したスタートアップはつぎ込める金額が大企業よりも全然多かったりします。

大企業というと資金が豊富にあり、新規事業にも湯水のようにキャッシュをつぎ込めると深く考えずに思い込んでしまっている人は少なくありません。ですが実際にはうまくいくのかわからない新規事業にそこまで資金を投下することはできず、対応が遅れることがままあるといえます。

具体的な数字で説明すると、クラシルは今回調達した30億円をすべて人員採用や広告費につぎ込むでしょうが、クックパッドは30億円の資金をレシピ動画の領域に簡単には突っ込めません。クックパッドも大きい会社ではありますが、2017年5月現在の現預金は170億円、2016年度の営業利益も50億円レベルです。そんな中で30億円を、伸びてるけど成功するかわからないレシピ動画市場に突っ込むにはかなり勇気のいる経営判断が必要になります。しかも30億円は攻めの投資というよりも、迫り来るクラシルを撃退するための守りの投資なので、余計に判断が難しくなると思っています。

blog.zerotoone.jp

 

10億円以上の大型調達でもスタートアップであればその金額を全て人材採用や広告宣伝費に投下することができます。

大企業でも成功している事業であれば予算をいくらでも突っ込むことはできますが、まだ成功するかわからない新規事業にはそこまで予算をつぎ込めないケースも多いのではないでしょうか。

大企業内に新規事業のチャンスは山程ある

ここまで大企業内で新規事業が生まれない理由についてスタートアップとの比較で見てきましたが、大企業は新規事業の宝庫です。最近ではネットだけで完結するビジネスの余白が小さくなり、スタートアップも日系大企業が主戦場とする古い業界を変化させる方向に大きくシフトしてきています。

特にSaaSビジネスでは、大企業出身の経営者の方が活躍しており、2018年のB Dash Camp優秀のカケハシは薬局薬剤師向けのSaaSビジネスで、武田薬品出身の人が立ち上げた会社です。他にも建設会社、商社など業界のインサイダーと言える人がSaaSの領域でスタートアップを立ち上げています。

jp.techcrunch.com

 

大企業は豊富な事業チャンスを活かせる組織に変化できるか 

古いと言われる業界の元社員が社内では新規事業でできなかったものを社外に飛び出して起業しているのが現在のトレンドですが、大企業からすると優秀な人材だけでなく、社内にある事業チャンスを社外に流出してしまっている状況だと言えます。

このトレンドが本格化する前に大企業は事業チャンスを新規事業として形にすることのできる組織に変わることはできるのでしょうか。社内で新規事業をやる場合には、上記にあげたようなスタートアップの違いに加えて、優秀な仲間を集めることができるのか、スタートアップの人たちよりも高いモチベーションで事業立ち上げができるインセンティブ構造を構築できるのかなど様々な問題が考えられますが、そういった問題一つ一つに向き合う大企業が一つでも多く出てくるとより多くの大きな社会課題が解決されるように思います。

僕が起業した時に提供したかった価値と作りたかった未来

2017年9月末を持って、6年間代表を勤めた会社の代表を退任しました。今後は取締役として後任育成のために残りますが、また新たに会社を立ち上げようと思っています。

今日は6年間で成し遂げたかったこと、実現したかったことについて振り返ってちょっとしたポエムでも書こうかと思います。

合理的に判断して起業するのがよいとは思うけど

僕自身は起業家界隈では目線が低く、「ザッカーバーグのfacebookのように世界を変えるプロダクトが作りたい」、「ジョブズのスピーチに感動して世界を目指して起業する」みたいな意識の高さは持っていません。どちらかと言えば、リスクを最小限に抑えながら、サラリーマンでは得られないリターンを得るための起業や自分が実現したい生き方のための起業という意識が強いです。

blog.zerotoone.jp

blog.zerotoone.jp

一方でたまに起業の相談を受けたり、既に起業してる怪しい感じの起業家と話をしていると、全然ユーザーのこと考えておらず違和感を感じることも少なくありません。彼らは提供してる価値には興味がなく、自分がいかに楽して儲けるかしか考えていないようで、話していても面白くないと感じてしまいます。

僕自身は世界を大々的に変えたり、世の中のほとんどの人が使ってるような有名サービスを作るというほど意識は高くなくてもいいけど、限られた人が泣いて喜ぶサービスを作るべきだと思ってます。

僕が採用支援事業で起業して提供したかった価値と作りたかった未来

先日、三菱商事に勤める同期ぐらいの人とバーベキューした時に、僕がやってる新卒向けの採用支援事業の話になったんですよ。その時に、三菱商事に勤める方が

「僕の1つ上の先輩に入社時の評価がめちゃくちゃ高かった慶應の先輩がいて、社内の部長や課長にも、「彼のエントリーシートは素晴らしかった」と言われてる人がいるんですよ。その先輩にエントリーシートかなり頑張って書いたんですか?って聞いたら、「そんなの伝統的に慶應の先輩から受け継いだのをそのまんま書いただけだよ」って笑いながら話してたんですよね」

と話してて、これが僕が変えたかった未来の一つだったんだよなと改めて思いました。

この話に出てくる慶應の三菱商事の先輩や僕らが就職活動をした2006年とか2007年ってまだまだ就職活動に関する情報はクローズドな状況でした。エントリーシートもどうやって書いたらいいのかわからずにOB訪問して聞くか、今も続く「絶対内定シリーズ」のエントリーシート編ぐらいしか情報がありませんでした。

絶対内定2019 エントリーシート・履歴書

絶対内定2019 エントリーシート・履歴書

 

僕自身、地方から上京して慶應義塾大学に入り、サークルも あまり就職活動実績が芳しいところではなく情報を得るのにかなり苦労しました。

一方で、先程の三菱商事の慶應の先輩のように、クローズドなコミュニティで共有されたオトクな情報でスイスイと就職活動をうまくいかせてしまう人もいました。もちろんエントリーシートがすごいだけで突破できるほど甘いものではないので、面接やその他実績も優れていたとは思いますが、こういう状況はよくないんだろうなと起業するときから思っていました。実際にユーザーも企業が発信する企業にとって都合のいい情報ではなく、自分の就職に実際に役立つ情報を欲しがっていました。だからこそ内定者のエントリーシートを多数掲載し、就職活動に関する情報をオープンに提供したサイトだった僕らのサービスに初年度から2万人もの会員登録があったのだと思います。

今考えると、「ちょっとした情報の差やテクニックの差で人生を大きく左右する就職活動に大きな影響が出てしまう」という現状を、「就職活動に関する情報をオープンにすることで学生本来の実力や実績が評価される」ような未来に貢献したいと思っていたのかもしれないなと思います。

最後に

僕らが起業した2011年から6年が経ち、今では僕らが立ち上げた会社以外にも多くの会社が内定者のエントリーシートを掲載しており、情報はかなりオープンになってきました。一方で情報がオープンになりすぎたために、「学生が同じことばかりエントリーシートに書いたり、話すようになって選考が難しくなってる」という企業側の悩みも浮かび上がってきました。

一つのサービスやプロダクトが全ての課題を解決することはできません。結局、時代が変われば人々が直面する悩みや課題が変わるので、それを解決するサービスを生み出す起業家のニーズはいつまでもなくなりません。自分の身の回りで、困っている人がいてそれを解決するアイディアや方法が知っている人が気軽にサービスを作る未来が来るともっともっと社会はよくなるんじゃないかなと思ってます。

「既にある」サービスで成功するための3つのアプローチ

最近は新規事業の開発、お手伝いしてくれる人との面談、子育てなどがあり、ブログ更新が途絶えてしまいました。起業の相談を受けて、アイディア出しをしていると「それって既にありますよね」ってところで思考を止めてしまうケースが結構あってもったいないと思っています。

このつぶやきの通り、世界的に成功しているサービスも、「世界初の〜」だったわけではなく、既にあるサービスに極めてよく似たものだったりします。今回は「既にある」を超えて成功した3つのアプローチについてメモとしてまとめておきます。

 

1.技術力でよりよいものを作る

今では大多数の人がgoogleの検索エンジンを利用していますが、googleも世界初の検索エンジンだったわけではありません。

www.seojapan.com

googleが検索エンジンを作ろうとした時には既に、yahoo、Excite、infoseekなど既に成功を収めた企業が検索エンジンを提供していました。これらの企業はユーザーが最初に訪れるニュースなどを配置したポータルサイトを提供しており、その機能の一部として「検索窓」を提供していました。余談ですが、僕が中学生の時に初めてインターネットに触り、Googleにアクセスした時は検索窓しかなくて、「ニュースないじゃん」と思ったのを覚えています。

googleはこれらの「既にある」検索エンジンに対して、技術力でよりよいものを作ることで着実にシェアを奪っていきました。

 

2.ターゲットを変える

facebookはなお成長を続けていますが、facebookも世界初のSNSだったわけではなく、friendstarとMyspaceが先行していました。中でもMyspaceの勢いが強く、wikipediaによると2005年時点ではMyspaceのPVがGoogleのPVを上回っていたとのことです。

ソーシャル・ネットワーキング・サービス - Wikipedia

facebookは先行するMyspaceなど他のSNSに対して、「ターゲットを変える」ことで小さな市場を独占し、その領土を拡大することで成功したと言われています。有名な話ですがfacebookは当初、ハーバード大学の学生限定のSNSでその後、ボストン地域のアイビーリーグの大学、スタンフォード大学へと対象を拡大することでSNSとしての地位を高めていきました。その後の歴史については皆さんが知っているとおりです。

 

3.プラットフォームチェンジを利用する

プラットフォームが変わる時は大きなビジネスチャンスであり、これを利用することで成功した事例の一つがメルカリだといえます。個人間のCtoCのビジネスとしては、既にヤフーオークションが先行しており、多くの人が利用していました。一方でヤフーオークションはPCに最適化されたものでしたが、メルカリが生まれた2013年にはスマホの普及率は60%を超えており、多くの人がスマホ経由でインターネットに接続していました。

 

f:id:happytarou0228:20170912062328p:plain

画像引用:総務省|平成27年版 情報通信白書|インターネットの普及状況

プラットフォームが変わるタイミングで、対象となるプラットフォームに最適化することで先行事例に勝つことができるということを、メルカリ創業者の山田さんは強く意識しているように思います。

PCだとヤフーが勝者で、もう絶対に誰も勝てなかった。これがスマホっていう新しいデバイスの上だったら、C2Cをやることで全然違ったプラットフォームが作れるかなと思うんです。

ユーザーのスマートフォンのホーム画面を取れるか、自社アプリのアイコンを置いてもらうことができるかというのは重要です。枠数が決まったホーム画面ですが、いったんそこにおいてもらうことができれば、そこからいろんなサービスが展開できます。 

hrnabi.com

先行する大企業を恐れない

いずれの事例も既に大きな成功を収めた企業がある中で後発ながらも大きな成功を収めた事例になります。下記のブログエントリーでも書きましたが、大企業といっても、新規事業に潤沢に予算も人もつぎ込めるわけではなく、後発の企業を潰すためだけに全力は尽くせません。

blog.zerotoone.jp

もし自分なりにニーズを掴み、サービスとしていけるかもと感じたのであれば先行する大企業を恐れずに、上記3つのどのアプローチに当てはまるのか、まずは考えてみるといいのかなと思います。もちろん考えた末にやっぱり先行する企業と戦うのは難しいと考えるのであればそれは大事な決断といえます。重要なのは、思いついたアイディアに対して「既にあるから」と思考を停止するのではなく、一歩踏み込んで考えることができるかどうかです。

最後に

多くの人がサービスを考える時に、先行する事例をみて「既にあるからな〜」とせっかく面白い発想をしているのに考えるのを辞めてしまうのは非常にもったいないと感じています。多くのサービスは「既にあるもの」を「少し」変えたケースが少なくありません。その「少し」の差が上記で見てきたように大きな差になるので、ぜひアイディアを思いついたら一歩踏み込んで考えるというのを実践してほしいなと思います。