きままに図書館

年間120冊ほど本を読む”本のむし”です。心に染みた本たちの備忘録&ご紹介をしていきたいと思います。ネタバレありますのでご注意願います…!

東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇蹟」感想・相関図

 こんにちは、おはるです。コロナウイルスの影響で図書館が閉まっているので家にある本を片っ端から再読しております…殺人系などの残酷な話は2回読むのはきついので、ほっこりするものや笑える作品を中心に読んでます。今日はその中でも大好きな「ナミヤ雑貨店の奇蹟」をご紹介いたします!

 ナミヤ雑貨店の奇蹟

本作は、全世界で累計1,300万部売れた大大ベストセラー小説です。数々の舞台化や映画化もされました。日本の映画では売れっ子の山田涼介が敦也を演じ、更に浪矢雄治を適役の西田敏行が演じたことでかなり注目された作品でした。

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 あらすじ

内容(「BOOK」データベースより)

悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか?3人は戸惑いながらも当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くが…。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!?

感想

ナミヤ雑貨店を中心に、いろんなな人生が交差していきます。5章からなる短編ですが、すべての物語に強い繋がりがあります。「第一章 回答は牛乳箱に」「第二章 夜更けにハーモニカを」「第三章 シビックで朝まで」「第四章 黙祷はビートルズで」「第五章 空の上から祈りを」それぞれに良さがあり、人と人の『縁』を大切さを感じました。一番好きな章は「第四章 黙祷はビートルズで」でした!夜逃げをする両親を信用できなくなった浩介が、大好きだった”The Beatles”の解散理由がわかるという映画を見て、ひとりで生きていくことを決意する話です。大人になった浩介(藤川博)はナミヤ雑貨店に親と生きていて幸せだと嘘をつきますが、ほんといいひとだな、と、幸せになってほしいと思いました…

本作では過去と現代を行ったり来たりしますが、本当にあった話(1980年モスクワオリンピックのボイコットやバブル崩壊等)が盛り込まれている為、非常に読みやすいです。この作品だけでなく、東野圭吾さんの本はほんとに読みやすい。すらすら映像が浮かびます。

ちなみに映画も見ましたが圧倒的原作派です。西田敏行・山田涼介の配役はピッタリでしたが、そもそもこの小説を2時間にするのは無謀だと思います…いらない章がないので…

相関図①

角川書店特設サイトからの引用)

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②相関図(ネタバレ)

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『白夜行』感想・ネタバレ

感想・ネタバレ・伏線回収

 発行部数200万部以上の超人気小説で、2006年には山田孝之綾瀬はるかでドラマ化、2011年には高良健吾堀北真希で映画化されています。 

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内容(「BOOK」データベースより)

1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂―暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んで行く。二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「証拠」はない。そして十九年…。息詰まる精緻な構成と、叙事詩的スケール。心を失った人間の悲劇を描く、傑作ミステリー長篇。

 

感想

初めて手に取ったとき、「分厚い!!」と感じましたが、無駄なページが一行もないと思うくらい密度の濃い小説です。分厚さで読んでいない方、ぜひ読んでみてください。一気読みですので!そして伏線がたっぷりあって何度も何度も読み返しました。

雪穂と亮司からの視点で書かれたところは1つもないのに、2人の「怒り」や「悲しさ」が伝わってくるような心にずっしりとくる作品でした。ラストシーンの雪穂が振り返らない場面、雪穂は何を考えていたのか…。たった一つの太陽を失った雪穂はどうしていくのか…。もし『幻夜』が『白夜行』の続きならば、亮司を失った雪穂はパワーアップした悪女になっているのですが、私は美冬と雪穂は違う人物だと信じたいです…。

白夜行』のタイトルの意味を知った時、切なくいたたまれない気持ちになります…。

-本書より引用-

私の上には太陽なんかなかった。いつも夜。でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。太陽ほどは明るくはないけれど、私には十分だった。私はその太陽よって、夜を昼と思って生きてくることができたの。わかるわね。私には最初から太陽なんかなかった。だから失う恐怖もないの。

主要登場人物

●亮司

●雪穂 

●笹垣潤三:雪穂と亮司を追う警察官

 

ネタバレ

【第一章】小学生時代

●桐原洋介:亮司の父。質屋「キリハラ」社長

●桐原弥生子:亮司の母。

松浦勇:質屋「キリハラ」店長。弥生子と男女の仲。

●西本文代:雪穂の母。未亡人。

●寺崎忠夫:文代に思いを寄せる自営業者(実は雪穂を買っていた?)

●田川敏夫:雪穂・文代が住む吉田ハイツを持つ田川不動産オーナー

 笹垣の視点
洋介の死体が廃ビルで発見される。刑事の笹垣は相棒の古賀とともに犯人を捜す。
まず捜査線上に上がったのは妻・弥生子と店長・松浦だった。二人は男女の仲であったと予測され、徹底的に調査がされるが、当日二人にはアリバイがあった。弥生子は亮司とともに家でテレビを見ており、松浦は当日店番をしていた事実があった。また不倫関係である証拠は出てこなかった。
次に容疑者として名が挙がったのは、雪穂の母だった。殺人事件当日、洋介は100万円とプリン・アラモード4つを持って西本文代の家を訪れていた。笹垣は、洋介が文代の体を金で買っていたと考える。しかし文代のアリバイも証明されてしまう。
事件のすぐ後、雪穂の母がアパートの部屋で死んでいるのが発見される。第一発見者は雪穂と田川。「カギを忘れたから開けてほしい」と雪穂が田川の事務所を訪れ、ドアを開けるとガス中毒で倒れた文代がいたのだった。
 「何かをまちごうてる。俺らは何か、まったく違う道に迷いこんでしまってるぞー。」そう笹垣は思うが、結局事件は迷宮入りになるのであった。
【伏線】
P80   田川は、雪穂からちりんちりんと鈴の音が鳴ったと感じた
P252 雪穂の持つ、鈴のついた古いキーホルダーに鍵がついている
 

【第二章】

中学生時代
唐沢レイコ:雪穂を引き取り義母となる。
秋吉雄一:雪穂を盗撮し、写真を同級生に販売。
川島江里子:雪穂の友達。
牟田俊之:雄一から写真を買う。
藤村都:雪穂をライバル視する同級生。雪穂の過去の出来事を噂を流している。(10章で明らかに)
菊池:雄一の友達。弥生子と松浦が不倫していた証拠を掴み、桐原を脅す。(女子生徒暴行容疑をかけられる)
 江利子の視点
中学生になった雪穂は遠縁の唐沢家に養女として迎えられ、茶道や生け花などを学び上品な女性へと成長する。雪穂は 江里子という地味な同級生と仲良くなる。ある日、雪穂をライバル視する藤村都が何者かによって襲われ倒れている所を雪穂と江里子が発見する。現場に菊池のストラップが落ちていたことから、菊池は警察に疑われるが、アリバイもあり無罪であった。間もなく容疑は晴れ菊池は警察から解放されるが、桐原に関わるのをやめる。また、事件をきっかけにして、藤村都と雪穂は仲良くなる。
【伏線】
P125 パッチワークが趣味の雪子がイニシャルがRKの小物入れを作っている。
 

【第三・四章】

高校生
●園村友彦:修文高校。館亮司の友達。
●西口奈美江:大都銀行にて勤務。無限企画の経理
●花岡夕子:友彦と関係を持つようになる人妻。アル中。
●中道正晴:北大阪大学『サブマリン」を作った。雪穂の家庭教師。
友彦の視点
友彦はある日亮司にルックスがよいから、と自給3千3百円のバイトを紹介される。それは若い男を求めている人妻の相手をすることだった。亮司は仲介人として、高校生と人妻を併せて報酬の一部をピンハネしていたのだった。友彦は亮司と女が直接会うことを禁止していたが、そのルールを破り亮司は夕子と直接会うようになる。ある日激しく性行為をした後、夕子は死んでしまう。園村は焦り亮司に相談をするが亮司は初めは突っぱねる。しかし、友彦がパソコン関係に詳しいことを知ったとたん、「血液型とゴムを使用したか」を聞く。友彦は「O型、ゴムは使用した」ことを伝える。それから何日かたった後、警察が友彦の家を訪れる。しかし間もなく友彦は容疑者から外れることになる。①友彦にアリバイのある23時に、ルームサービスが夕子へシャンプーを渡していた。(実は雪穂)②夕子の体からAB型の精液が検出される。 亮司の血液型がAB型であると知った友彦は、亮司のために何でもすることを誓うのだった。
同時期、『サブマリン』非常によく似たゲームソフト『マリン・クラッシュ』が無限企画より販売される。正晴は一度雪穂にマリンソフトを見せていたが、雪穂を疑うことはなかった。
 【伏線】
P251 田川は言っていた「あと30分発見が早ければ助かったらしい」

【第五章】

 大学生
●篠原一成:ソシアルダンス部部長。
●倉橋香苗:一成の彼女。
 大学生になった雪穂は江利子とともにソシアルダンス部に入部する。一成は江里子に想いを寄せ香苗と別れる。その後すぐに江里子は何者かに襲われ退部することになる。江里子を襲うことを計画したのは香苗だとされる。
 

【第六章】

大学生時代

●紺色のスーツ男:西口奈美江を追う男。奈美江から金を巻き上げる。

友彦の視点

亮司は大学には行っておらず、パソコンの専門課程を履修している友彦のノートで学んでいた。また、銀行キャッシュカードの複製を使い、知らない人の現金を引き下ろす犯罪をしていた。同時期、スーツ男がやってきて奈美恵の居場所を尋ねる。亮司と友彦は名古屋のビジネスマンションへ奈美江を逃がすが、数日後死体で発見される。(おそらく亮司が居場所を伝えた)

【第七章】

社会人

●高宮誠:雪穂と婚約中。

●三沢千都留:東西電装派遣。誠に想いを寄せる。

 誠の視点

雪穂と高宮は婚約をしていたが、誠は千都留のことが気になってしまう。高宮が雪穂と結婚を決めた理由は過去に雪穂が誠との子を妊娠・中絶をしたことがきっかけだった。結婚式前日誠はある賭けに出る。千都留が止まると聞いているホテルに行き、彼女の気持ちを確かめることにしよう、と。しかし千都留がホテルに現れることはなく、誠は結婚を決意するのであった。実は、千都留は宿泊しようとしていたホテルで事件があったと警察に言われホテルを変更していた。その警察官は関西弁訛りがした(おそらく亮司)同時期、東西電装のコンピューターソフトがメモリスティック社から盗まれる。

 

【第八章】

弘恵:友彦と婚約中。

友彦の視点

亮司は友彦とともに『MUGEN』という店をオープンし、パソコンなどを販売していた。そこに松浦が現れ、亮司と何かを話している。その後、友彦と弘恵に結婚祝いとして切り絵と店をプレゼントし、姿を消す。

 

【第九章】

雪穂と誠が結婚して2年後

●田村紀子:南青山のお店で働く。雪穂の相棒。

誠の視点

雪穂が株を始めかなりの儲けが出る。証券会社にも足を運ぶようになり、夫婦仲が徐々に覚めていく。誠は子供を作ろうとするが、雪穂に拒まれてしまう。誠は雪穂を責め、株はやめると話す。しかしその後、雪穂は店を出したいと誠にお願いをする。株をやめた後、沈んでしまった雪穂を元気づけるため、誠は許可をするが、また夫婦仲は悪化してしまうのだった。そんなある日、雪穂は誠にゴルフスクールに誘う。ゴルフスクール当日雪穂は急用でいけなくなり、誠だけがスクールに行く。そこで千都留と再会し、誠は彼女の思いを抑えられなくなり不倫してしまう。数カ月がたったある日、雪穂と誠は大喧嘩をする。誠は腹が立ちお酒を飲み眠りにつくが、朝起きると顔を腫らした雪穂がいた。雪穂は酒に酔った誠に殴られたと言い、記憶が欠如していた誠とは、離婚することになる。

【第十章】

●今枝直巳:東京総合リサーチ勤務を退職し独立。

●笹塚康晴:雪穂と交際中。雪穂に心底惚れている。

●菅原絵里:今枝の友人

●元岡邦子:雪穂の中学時代の同級生。

今枝の視点

誠と千都留は結婚しており、子供を授かり幸せに暮らしている。今枝は笹塚一成から雪穂について調べてほしいと依頼を受ける。笹塚は従妹と雪穂が交際していることを知り、得体のしれない雪穂の調査依頼をしたのだった。雪穂の怪しい点として、一成は言う。「①雪穂の試算に不透明なとこ路が多い点②彼女と深く関わる人間は不幸になる。」今枝は雪穂の調査を開始し、江利子や元岡邦子と会いあ無をしたり、過去の出来事を洗い出す。

【第十一章】

今枝の視点

雪穂の調査結果を一成に話す。「雪穂が買った株は購入後100%伸びていること。株は引き払ってはいない。ある日、絵里のアパートに何者かが侵入している形跡が発見され、盗聴器が仕掛けられていることを発見する。今枝は、雪穂が今枝を探っているということを確認するために設置したと推測する。今枝が雪穂を調査していると知った笹垣がやってきて、今枝に雪穂の調査をやめるよう忠告する。しかしそこで今枝はあることを発見する。笹垣が持ってきた桐原亮司と呼ばれる男の写真がメモリスティック社の秋吉(亮司)だと。そして、千都留にゴルフスクールを進めていたのも秋吉(亮司)だと。しかし、そのあとすぐに今枝は行方不明になる。

【十二章】

●栗原典子:薬剤師。秋吉(亮司)と同棲

典子の視点

典子は秋吉(と名乗る実は亮司)に惚れて、同棲をしていた。ある日亮司が突然仕事で大阪に行き、典子もついていくが、特に何もわからなかった。亮司はミステリー小説を書いていると言い、青酸カリを見たいと典子に依頼し典子はそれに従う。その一週間後、典子は土がべっとりついた秋吉の靴と、今枝事務所と書いたファイルを発見する。また、先日渡した青酸カリは半分に減っていたのだった。

【伏線】

P754 典子は婚活情報サポートに登録していた。結婚情報サポートはメモリスティック社が管理

一成の視点

雪穂の義母が急死し、従妹の康晴に雪穂の助けになるよう指示された一成は大阪に向かう。そこで、義母が無くなったタイミングが良かったことを耳に挟む(雪穂の3号店オープン日が近かったため)

 

【十三章】

笹垣の視点

笹垣は19年前の事件をずっと追っていた。なぜそこまでの執念を見せるかというと、数年前にある事実を知ったからであった。「桐原洋介を殺害したのは子供である可能性があること②桐原洋介は幼女を好んでいたこと③亮司と雪穂は良く2人で遊んでいたこと」そこで笹垣はある恐ろしい仮説を導き出す。19年前の事件の真相は「洋介が雪穂を犯している現場をみた亮司が鋏で洋介を殺したのではないか」と。

笹垣は、これ以上不幸な人を増やしてはならないと、雪穂と亮司を追う。そして雪穂が『R&Y』という店舗を大阪に出すことを知る。雪穂の近くに亮司が現れることを悟った笹垣は店に向かう。

そこで亮司を発見し、目が合う。亮司は逃げ出し、所持していた鋏で自殺をした。近くにいた雪穂は振り返ることなく、遠くへ歩いて行った。

 

 

 

 

 

西澤 保彦『七回死んだ男』感想

西澤 保彦『七回死んだ男』

 

著者西澤さんは高知大学経済学部教務助手や土佐女子高等学校講師などを勤めるかたわら小説を執筆。江戸川乱歩賞小説現代新人賞などに投稿を続けていました。 『七回死んだ男』は第3作目で、第49回日本推理作家協会賞(長編部門)の候補になりました。20年以上前の作品ですが、時代を感じさせない名作です。

 

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あらすじ 「BOOK」データベースより

どうしても殺人が防げない!?不思議な時間の「反復落し穴」で、甦る度に、また殺されてしまう。渕上零治郎老人―「落し穴」を唯一人認識できる孫の久太郎少年は、祖父を救うためにあらゆる手を尽くす。孤軍奮闘の末、少年探偵が思いついた解決策とは。

 

 

感想

この小説、おもしろい。7回読みたくなります。(実際は3回読みました…笑)

ただ一つ物申すならば表紙のデザインが怖すぎる!(笑)

実際は、少年がお爺ちゃんを死なせない為に活躍する話で、表紙のデザインとは違いポップです!表紙が変わればもっと手に取る人が増えるのではないか…と思ってしまいます…。

7回も同じ日を繰り返すので、単調になるのかな~と思っていましたが、見事に裏切られ緩急のある作品でした。

誰がどんなことを言うか・どんな行動をするか知っているのに、おじいちゃんの死を防げない!この“もどかしさ”がたまりません。シリアスになりそうですがクスっと笑えるシーンも沢山あり、読みやすい一冊です。

また、主人公は実年齢以上に大人っぽくて頭がいいところも面白いです。クールだけれど、子供の部分もあり、クラスにいたらモテそうだな~という少年です…。読み終わり後には、もし私がこの特殊体質なら何に使えるかな~と考えるのも楽しいです。

おすすめの本は?と聞かれたらこの小説を答えるくらい好きな小説ですので、是非!

 

内容

同じ日を9回繰り返す「反復落とし穴」という特殊体質をもつ少年(キュータロー)が

新年の集まりの最中に変死した祖父を救おうと奮闘するミステリーです。

”9回繰り返す日”はランダムなのでいつやってくるか分からないのですが、たまたま祖父が変死した時に「反復落とし穴」が発生します。ラッキー!

 

どんでん返しのお話なのでネタバレはやめておきます…

 

 

 

 

『そして、バトンは渡された』家族構成の変遷・感想

瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』

 私には五人の父と母がいる。その全員を大好きだ。驚きのストーリーの本作品は2019年の本屋大賞受賞しています。瀬尾まいこさんは、2001年「卵の緒」で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年単行本『卵の緒』で作家デビューします。その後2005年『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞を、2009年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞を受賞しています。

はらはら・ドキドキするような作品ではなく、ゆっくりと、穏やかな気持ちで読む小説です。家族とは何なのか、大切なものを再確認したくなります。

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森宮優子、十七歳。継父継母が変われば名字も変わる。だけどいつでも両親を愛し、愛されていた。この著者にしか描けない優しい物語。 「私には父親が三人、母親が二人いる。 家族の形態は、十七年間で七回も変わった。 でも、全然不幸ではないのだ。」 身近な人が愛おしくなる、著者会心の感動作

感想

読む前に「4回も苗字が変わった少女の物語」ということを聞いていたので、悲しい物語で、涙涙なんだろうな~と思っていましたが、ぜんっぜん違いました。いつの時代を切り取っても優子は愛され大切にされていて温かい物語でした。第二章では早坂君と結婚を決意する優子ですが、早坂君なら大切にしてくれるよ、と私からも背中を押したくなりました。

”「早坂君が言うみたいに、気楽にいくわけないよ。生活って、人生ってもっと厳しいんだよ」「そうかな?俺と優子がいて、ピアノとおいしいものがあるんだよ。どう頑張っても、楽しいイメージしか浮かばないんだけど」”

という早坂君の言葉が大好きです。それに、空気を読めず、結婚を反対されている中「お父さん、口の横、カスタードクリームがついてます」と言ってしまう早坂君がとてもとても愛おしく感じます。優子はこれからも幸せに生きていくんだろうなと思いました…

正直、自分勝手な理由で、実父の手紙を渡さない梨花にすこし苛立ちを感じてしまいましたが…優子が幸せなら文句無しです!!!

血がつながってなくても「想い」があれば家族になれるのだと思いました。。。

家族構成の変遷・ネタバレ

【第一章】

① 生まれ~3歳

 実の父(水戸秀平)と実母

② 3歳~小学2年生

 水戸秀平との2人暮らし

3歳になる少し前に、実母は交通事故により他界。父と二人で暮らす。

③ 小学2年生~小学5年生

 水戸秀平と田中梨花(30)

小学6年生に上がる前、秀平はブラジルへ転勤の辞令が出る。秀平と梨花は離婚し、優子は友達と離れるのが嫌で、日本に残り梨花と暮らすことを決める。

④ 小学6年生

 田中梨花との2人暮らし

梨花はとても優しく優子想いだが、手元にあるお金を全てを使ってしまうような、計画性がない女性だった。近所に住む穏やかなおじいさんに野菜を貰ったりして暮らす。

⑤ 中学1年生~中学1年生

田中梨花(32)と泉ケ原茂雄(49)とお手伝いさん

優子が初めてものをねだった(ピアノが欲しい)ため、梨花はお金持ちの泉ケ原茂雄と結婚する。梨花によると「好きではないけど、嫌いではない人。優子の為に何とかピアノを手に入れたい」とのこと。何不自由ない家で、隙があればピアノを弾く生活。

⑥ 中学1年生~中学3年生

 泉ケ原茂雄とお手伝いさん

梨花は何もすることが無い生活に飽きてしまい出ていく。何とか優子を連れ出そうとするが、ピアノを弾きたい優子は泉ケ原のもとで暮らす。

⑦ 高校1年生~高校1年(2か月間)

 田中梨花と森宮

梨花は頭のいい森宮に惹かれ結婚するが、「探さないでください」と書置きを残し、2か月で出ていく。さらに数か月すると「好きな人ができたから、離婚してほしい」との連絡が入る。(実は梨花は病気を患っており、自分から身を引いたのだった)

⑧ 高校1年~結婚するまで

 森宮壮介との2人暮らし

 梨花は出ていくが経済的なことを考え森宮のもとで暮らす。森宮もまた優子を全面的に受け入れて優子を思い大切に育てる。

登場人物

●森宮優子

主人公。

●水戸秀平

本当の父。

●優子の生みの母

優子が3歳になる前に交通事故で他界。

●水戸梨花

2人目の母。実父の再婚相手。明るく元気だが、後先を考えないことがたまにキズ。

●泉ケ原茂雄

2人目の父。不動産会社の社長。穏やかで全てを包み込んでくれる。

●森宮壮介

3人目の父。梨花の再婚相手。東大卒だが少しずれている所がある。

●早瀬賢人

 優子の初恋の人。第2章で結婚する。かなりの天然。心を痺れさせるピアノを弾く。

 ●萌絵 

仲の良い同級生。いい子だが、一方的なところがある。

●佐伯史奈

仲の良い同級生。よく家に遊びに来る。

●浜坂

同じクラスの男の子。優子のことが好き。クラスのムードメーカー的存在。

●向井先生

担任の先生。上を後ろで一つ結びしている。程よい距離感を保ってくれる。

●矢橋と墨田

ギャル寄りの同級生。クラスのリーダー的存在。一時期優子をいじめる。

 

 

三島由紀夫『命売ります』感想とネタバレ・登場人物

 『命売ります三島由紀夫

三島由紀夫は東大法科を経て大蔵省に入るりますが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立します。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』など、次々話題作を発表しました。本作品は、1968年、週刊誌『週刊プレイボーイ』に全21回連載され、同年に集英社より単行本刊行されました。2018年にはテレビドラマ化もされ、より多くの人に認知されることになった作品です。

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あらすじ(筑摩書房より)

自殺に失敗し、「命売ります。お好きな目的にお使い下さい」という突飛な広告を出した男のもとに、現われたのは?

 

感想

小説好きなら三島由紀夫を読むべきだ…とお告げがあったので読んでみましたが、おもしろかったです!なんとなく、星新一さんのショートショートに出てきそうだな~と感じました。

他にも『午後の曳航』、『金閣寺』等も読みましたが、『命売ります』が一番好きでした(一番読みやすいからかも…)。ただ、かなり古い作品だからなのか、三島さんの作品だからか、登場人物の心情が常人には理解できない部分も出てくるので、「ん?」と思うことも多々ありました。(笑) 

それでも、魅惑的なタイトルと、ストーリーに惹きつけられ読み切ってしまいました。そして、「ここで終わるの!?」読み終わり後は思いましたが、三島由紀夫は命の大切さのようなものを伝えたかったのかもしれません…

登場人物

●山田羽仁男

主人公。コピーライター。

 ●老人

一人目の依頼人

●岸るり子

23歳。老人の3人目の妻。かなりのオカルト好き。

三国人=ベレー帽の画家

るり子の不倫相手。

●図書館司書の女性

2人目の依頼者。

●外人

図書館司書から昆虫図鑑を購入。図書館司書からACSの人間と思われている。

井上薫

3人目の依頼者。高校生。

●薫の母

美しい吸血鬼。未亡人

●病室に来た男

4人目の依頼者。拳銃を所持。

●倉木玲子

 30前の女性。大地主のお嬢様。自分は梅毒だと思っている

●ACS

アジア・コンフィデンシャル・サーヴィス。密輸と殺人の組織。

内容・ネタバレ

【序章】

羽仁男は病院で目を覚まし、自殺に失敗したことに気付く。何だかカラッポな、素晴らしい自由な世界がひらけたように感じます。

何でもできるような気がした羽仁男は、三流新聞の求職欄に広告を出した。「命売ります。お好きな目的にお使いください。」自宅のドアには「ライフ・フォア・セイル 山田羽二生」と洒落たレタリングをした紙を貼った。

 

【第一の依頼】

依頼:妻のるり子が人をも平気で殺す三国人と不倫をしている為、るり子の愛人となり、三国人にるり子と共に殺されて欲しい。

るり子が大のオカルト好きということを知って、羽仁男はACSの人間と嘘をつき(正確にはるり子が勝手に勘違いをする)、るり子を抱くことに成功する。見事その現場を三国人に見つかる。羽仁男は「これで殺されることができる」と成功を悟るが、三国人は2人の性行為現場のデッサンをして満足してしまう。

実は、人を殺すような恐ろしい三国人ではなく、ただの絵かきだったのだ。男はるり子の気を惹くために悪い男を演じていたのだった。男は羽仁男を家に帰し、羽二生は命拾いしてしまう。

しかし、翌日るり子の死体が隅田川で発見された新聞が発行された。

 

【第二の依頼】

依頼:自殺したくなる薬の調合方法が書いている“日本甲虫図鑑”を外人に売ったが、その実験台になってほしい。

図書館司書は図書館で高値で販売されている昆虫図鑑を見つけ、外人に売ってしまう。司書はさらにお金を稼ごうとしてその薬の実験台として羽仁男も外人に売ろうとする。

当日芝浦の倉庫に連れていかれた羽仁男は、外人の前でその薬を飲む。薬は見事効果を発揮し、羽仁男は自分のこめかみに拳銃を突き付ける。

しかし意識が戻った時、死んでいたのは図書館司書だった。なんでも、羽仁男に惚れてしまった図書館司書が助けてしまったのだ。またまた羽仁男は命拾いしてしまう。

 

【第三の依頼】

依頼:母が吸血鬼で血を飲まないと死んでしまう。母に血を吸われて欲しい。

薫の家に行くと、そこにはきれいな吸血鬼(薫の母)がいた。羽仁男はそこに住み、喜んで血を吸われ続けた。

ある日、薫の母から「明日、羽仁男の頸動脈に噛み付き、羽仁男が死んだ後その後は焼死したい」と告げられる。

翌日、羽仁男は人生最後の散歩をしていると貧血で倒れ病院に運ばれてしまう。外を眺めると火事が起こっており、薫の母は不自然な焼死をする。またまた羽仁男は命拾いをしてしまう。

 

【第四の依頼】

依頼:B国の暗号解読キーを手に入れて欲しい

A国の最高機密電報の暗号解読のキーがB国に盗られてしまう。そこでA国大使館はB国大使館にある、B国の暗号解読キーを手に入れるように指示する。

B国の暗号キーは大使館の机の上にあるニンジンが関係していると推測され、A国のスパイが3人、B国大使館に侵入するも、ニンジンを食べて死んでしまう。

羽仁男はB国の本当の狙いは「暗号解読に”何か特別のにんじんがいる”と思いこませること」 だから、どこにでもある普通のニンジンで暗号解読できると結論付ける。

羽仁男はニンジンを食べてよく噛み吐き出した。そしてB国の電文に擦り付けると、ニンジンの成分で電文のキーが現れた。またまた

 

【最終章】

羽仁男が黒幕に追われ殺されかける章です。

 命拾いをした羽仁男は総額三百三万円を手にしており、「命、売ります」を休業して引っ越しをする。不動産で玲子と出会い、彼女が部屋の一間を月五万円・男性限定で貸していることを知る。玲子から住んで欲しいとお願いされたこともあり、羽仁男は玲子の家を間借りすることになる。

玲子は自分が梅毒で死んでしまうと信じ込みクスリを飲みラリっているのでした。羽仁男は彼女と交わり、玲子は自分を受け入れてくれたと思い込みます。しかし玲子は自分が死んでも羽仁男は死なないのだと絶望し、羽仁男を殺そうとします。

羽仁男は「命を売っていないのに殺されるのは嫌だ」と拒みます。そして玲子のもとから逃げ出すのでした。

逃げたしている途中、羽仁男は甲虫図鑑の外人3人と三国人に誘拐される。誘拐犯たちはACSの人間で、羽仁男が警察の人間だと確信していて殺そうとします。羽仁男は用意していた偽の爆弾(箱にストップウォッチを入れたもの)で脅し逃げ切ることができます。

警察に駆け込み助けてほしいと懇願しますが、警察はもちろんACSを知らず、住所もない羽仁男のことを信じず追い返すのでした。

 

ー終わりー

 

解説

羽仁男がやってきたことが、ACSにとっては警察と繋がっている人間だと思わせてしまったのでした。羽仁男は最初はいつ死んでもいいと思っていましたが、追われると急に生きたいと感じてしまうのでした。

【ACSの行動】

①「命売ります」の広告を出したことが、ACSにとっては、ACSをおびき寄せる罠だと思った。

②るり子はACSのことを知りすぎていたからもともと殺すつもりで、るり子が死んだら羽仁男が警察とコンタクトを取ると思った。

③るり子のことで警察とコンタクトを取らなかったので、第二の刺客図書館司書を用意した。しかし上手くいかなかった。

④吸血鬼に血を吸われる羽仁男を見て、「もしかすると警察のスパイではないかもしれない」と感じるようになった。

⑤しかしB国の暗号キーを解読したので、やはり警察と通ずるスパイだと思った。

 

映像化

  中村蒼主演で映像化されています。 

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『夜は短し、歩けよ乙女』森見登美彦/あらすじ・ネタバレ・感想

『夜は短し、歩けよ乙女』森見登美彦

2006年に山本周五郎賞受賞、2007年の本屋大賞では2位を獲得した作品です。本作品は『四畳半神話大系』しかり、かわいい女性に恋をするちょっとおバカな大学生の恋愛物語です。恋愛物語と書いてしまいましたが、そんな甘酸っぱいものではないような気もします…2017年にはアニメ映画化もされており、第41回日本アカデミー賞/最優秀アニメーション作品賞を受賞しております。声を星野源さん、花澤香菜さんが担当しました。

 

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あらすじ(KADOKAWA

クラブの後輩の女の子を「黒髪の乙女」とよんで、ひそかに片思いしてる「先輩」。なんとかお近づきになろうと今日も「なるべく彼女の目にとまる」ナカメ作戦として乙女が行きそうな場所をウロウロしてみるけど…行く先々でヘンテコな人達が引き起こす事件にまきこまれ、ぜんぜん前に進まない! 天然すぎる乙女と空まわりしまくりな先輩の予測不能の初恋ファンタジー

 

内容/ネタバレ

本作では、1つの時間を「彼女側から見た場合」と「私側から見た場合」の2パターンで描かれます。下記あらすじでも「彼女の語り/私の語り」という風に「/」で区切っています。

 

【第一章:夜は短し、歩けよ乙女】

“私”が“彼女(黒髪の乙女)”に認知してもらう一夜のお話です。

サークルの先輩の結婚式に招待された私と彼女。

彼女はお酒が飲みたくなり2次会に行かず飲み屋を探す/は2次会には行かず木屋町から先斗町界隈を歩く彼女の後を付ける → 彼女はお店に入り藤堂と話す。藤堂に乳を揉まれる/は彼女を見失っている → 彼女を羽貫・樋口が助ける/李白にズボンを盗まれる → 彼女は羽貫・樋口と共に知らない大学のサークル(詭弁論部)の飲み会に参加 → 彼女は詭弁論部の飲み会で詭弁踊りを見る → 彼女は次のお店で元詭弁論部員で詭弁論踊り発案者のおじさんたちと飲む → 彼女は藤堂が李白からお金を借りていて窮地に追い込まれていることを知る → 彼女は李白と飲み比べをして勝利する/私は酒癖の悪い古本屋に絡まれ酒を飲まされる。同じお店に彼女がいることを発見 → 藤堂の借金はチャラになり、藤堂は彼女に抱き付く → 彼女は藤堂におともだちパンチをお見舞いする/私は彼女を助けようとしたが、酒の飲みすぎで彼女の目の前で倒れる → 彼女は私に「大丈夫ですか」と声を掛ける/私は彼女に拳を見せる。彼女は微笑んだ

 

 

【第二章:深海魚たち】

”私”と”彼女”が第一章に続き、2度目の接触をする章です

私は彼女が古本市に行くという情報を知り、古本市に行く/彼女も古本市に行く → 私は古本市の神(この時はただの少年だと思っている)にソフトクリームをぶつけられる → 私は古本市の神によって犯罪者扱いされそうになり、千歳屋の若旦那に助けてもらう/彼女は過去に手放してしまった『ラ・タ・タ・タム』の事を思い出しもう一度手に入れたいと思う → 私は千歳屋の若旦那から「売り立て会」での勝負に勝利をしてある本を手に入れて欲しいと依頼される(報酬10万なので承諾) → 売り立て会で私は樋口と遭遇し彼女がラタタタムを探していることを話す。(売り立て会にラタタムも出ていた) → 私は根性で売り立て会で地獄の火鍋を食べ続け勝利/彼女と古本市の神が出合い、彼女に「ラタタタムは見つかる」と告げる → 私は勝利したが、会場に空から突然暖炉が降ってくる(古本市の神の仕業) → 李白の所持していた本が古本市の神によって古本市にばらまかれる→私は古本市で『ラタタタム』を見つけ、手を伸ばすと彼女も手を伸ばす。照れて逃げる/彼女は古本市で『ラタタタム』を見つけ手を伸ばすと私(彼女からすると先輩)と手が触れる。先輩が本を譲ってくれたのだと感動する。 → 私は逃げたことを後悔して、自暴自棄になり『新輯内田百閒全集』を購入しようとするがお金が足りない。その時彼女が来て、お金を貸してくれる。

*売り立て会とは:李白が開催している。販売されるのは李白が集めたコレクション。支払いについてお金のやり取りではなく、命のやり取りが行われる。その代わり、かなり凄い品物が出品される。

 

【第三章:ご都合主義者かく語りき】

季節は晩秋、"私"と”彼女が”抱き合う章。

*「ナカメ作戦」= 偶然を装い「なるべく彼女の目にとまる作戦」

 

彼女は射的屋で緋鯉のぬいぐるみを獲得し、紐を貰い背負っていた / 私は緋鯉を背負っている彼女を目撃し追跡 → 彼女は羽貫、樋口(韋駄天コタツ)、パンツ総番長と豆乳鍋を食べる / 私は彼女を見失い象の尻と出会う。「なんじゃこりゃ、つまらん」とつぶやき紀子に立腹され、臭い物質を掛けられる →彼女は「像の尻」と出会い感動し紀子と知り合いになる → 彼女は偏屈王の「プリンセス・ダルマ」の代役を任命され台本を渡され暗記する → 彼女はプリンセス・ダルマを完璧に演じる → 私は偏屈王の作者はパンツ総番長だと気づき、最終回の『偏屈王』を自分が演じたいと名乗る(ラストシーンはプリンセス・ダルマと偏屈王が抱き合うため → 無事彼女と私は抱き合う

 

【第四章:魔風邪恋風邪】

季節は冬、"私"と”彼女が”最終的にデートする章

李白の風邪が移りに移り町中の人が風邪をひきます。彼女は私を見舞いに来てくれて、熱の影響もあり私はついにデートの依頼をします。彼女はそれを受け入れます。喫茶『進々堂』で私と彼女は待ち合わせをして、私は何を話そうか…そわそわしながら待っているのでした。彼女は話したいことが沢山で喫茶店の扉をあけました。終わり

これより先二人がどうなったか書かれていませんが、文中の内容でおそらくうまくいったのだと思います!

私「私には、いろいろと彼女に聞きたいことがあったのだー彼女はあの春の先斗町で、どんな夜を~」P318

彼女「私には先輩にいろいろ聞きたいことがあったのですー先輩はあの春の先斗町で、どんな夜を~」P317

 

登場人物 

・私(語り手)

大学生。黒髪の乙女に恋をしている

・彼女=黒髪の乙女(語り手)

クラブの後輩。必殺技はおともだちパンチ。大酒飲み。

・東堂

東堂奈緒子の父。李白からお金を借りている。

・樋口

年中浴衣を着ている。=韋駄天コタツ

・羽貫

麦酒を水のようにのむかっこいい女性。酒癖が悪い。

・藤堂奈緒

赤川康夫と結婚。

 ・赤川康夫

藤堂奈緒子と結婚。

・高坂

奈緒子の事が好き。結婚すると聞き自暴自棄になって英国へ旅立とうとする。

・詭弁論部部員たち

英国へ旅立とうとする高坂の為に詭弁踊りを披露する

李白

金貸し屋。古本市では貴重な本の売り立て屋。電気ブランを沢山持っている。

・内田

還暦祝いをしていた上京区のお医者さん。赤玉ポートワインを飲んでいる

・赤川

還暦祝いをしていた。赤川康夫の父。元詭弁論部員で詭弁踊り考案した方々の一人

・古本市で出会う10歳の少年

古本市の神。

 ・千歳屋の若旦那

私の窮地を救う。葛飾北斎の幻の春本がほしい

・千歳屋のご主人

古今和歌集写本を手に入れるため売り立て会に参加

京福電鉄研究会の男

時刻表を手に入れるため売り立て会に参加

・事務局長

私と同じ学部。男にはもったいない美貌を持つ

・韋駄天こたつ=樋口

タツに入って、校内をうろうろしている。

・偏屈王

プリンセス・ダルマを主人公とするゲリラ演劇「偏屈王」に出てくる王

・パンツ総番長=偏屈王の脚本家

願い事が叶うまでパンツを履き替えないと誓った。紀子と結ばれる。

・須田紀子

象の尻を展示する女性。パンツ総番長と両想い。

 

感想

初めてこの本を読んだとき、「なんだこれは!!」と衝撃を受けました。今までに読んだことのない展開、超超超個性的な登場人物!『四畳半神話大系』より先にこの小説を読みましたが、初めての森見登美彦ワールドについていけず、すぐに2週目を読みました(笑)もしかすると、私と同じような感覚に陥る人がいるかもしれません…でも気付くとクセになって3回目を読み、そのあとは『四畳半神話大系』『夜行』も読破してました!

 

大学生に戻りたいな~とつくづく思いす…。この小説に出てくる登場人物達のような”青春”を送りたい!!!それなりに楽しんだ大学生活でしたが、もっと自由に正直に生きておくべきであった!と思います。そして友達に無性に逢いたくなります~。彼女のセリフを引用して…「こうして出逢ったのも、何かの御縁」を大切に生きていきたいと思います!

映像化

2017年にアニメ映画化。

主題歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION「荒野を歩け」

映画も見ましたが、本を読んでた時に描いていた世界観がそのままで楽しめました。また、アジカンの歌もいい!「あの子がスケートボード蹴って~♪」とつい朽津さんでしまいます。ただ、小説を読んでから映画を見ることを強くお勧めします。映画だけを見た友達に「この映画は意味が分からなかった!」と言われてしまったので…

詳細はこちらのサイトに載っています。是非キャストのページを見てみてください。黒髪の乙女とパンツ総番長は思い描いていた通りでした!

 

kurokaminootome.com

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アイネクライネナハトムジーク/伊坂幸太郎/あらすじ・ネタバレ・感想

アイネクライネナハトムジーク伊坂幸太郎

本作品は2015年(第12回)本屋大賞にノミネートされ、第9位となりました。6作品の短編小説が収録されており、各短編は微妙に繋がりがあります。「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」とはドイツ語で「Eine kleine Nachtmusik」と記載され「一つの小さな夜の音楽(小夜曲)」という意味を持ちます。また、本作品では伊坂幸太郎さんの尊敬するミュージシャン斉藤和義さんの曲が数多く出てきます。(日テレ『成功の遺伝子』という番組では、伊坂さんの”成功の遺伝子”は斉藤和義さんだ、と放送されていました)映画化された時の主題歌を斉藤さんが担当されたことにも繋がります。

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【あらすじ】 ここにヒーローはいない。さあ、君の出番だ。 奥さんに愛想を尽かされたサラリーマン、 他力本願で恋をしようとする青年、 元いじめっこへの復讐を企てるOL……。 情けないけど、愛おしい。 そんな登場人物たちが紡ぎ出す、数々のサプライズ!! 伊坂作品ならではの、伏線と驚きに満ちたエンタテイメント小説!

引用:幻冬舎より

 

 

あらすじ・ネタバレ

① アイネクライネ 

【登場人物】

●佐藤(27)

マーケットリサーチ会社で働く。「アイネクライネ編」の主人公。

●織田一真(27)

高校から佐藤の友達。かなり変なやつだがなぜか憎めない奴

●織田由美(27)

和真の妻。相当な美人でなぜ一真と結婚したのか、周りから不思議がられている。

●織田美緒(6)

一真と由美の長女。佐藤のことを呼び捨てにしているが可愛い女の子

●藤間(39)

佐藤の同僚。システムを運営している。会社では几帳面。「ドクメンタ編」主人公

●藤間妻

ある日突然、娘・亜美子とともに実家へ帰ってしまう。几帳面な性格

●藤間亜美子(1)

藤間の一人娘

●課長

佐藤の上司。若干嫌われている。

●アンケートに答える女性(27)

小柄でも大柄でもない女性。バズライトイヤーのストラップを携帯。手には買い忘れ防止にと「シャンプー」とメモが書かれていた

相沢めぐみ(22)

佐藤の後輩。仕事をそつなくこなすため、古株のような貫禄あり。

●ウィンストン小野(27)

ボクサーで、日本初のヘビー級世界王者となる。

【内容】

藤間の嫁と娘が実家へ帰ってしまう。動揺した藤間は机を蹴り飛ばしパソコンが落下。支えようとした佐藤が手に持っていたコーヒーをこぼして、パソコン内のデータが消える

→ネットで集めたデータが消えたため、佐藤は街頭アンケートを採る。”佐藤”と”アンケートに答えた女性”が出合う。

→佐藤は織田夫妻から、車に吸盤でくっつけるバズの人形をもらう

→佐藤は道路工事に遭遇するが、”アンケートに答えた女性”が係員だった。女性は佐藤の社内のバズの人形を発見。二人は偶然の再開を果たし、佐藤は運命的なものを感じる。

 

② ライトヘビー

【登場人物】

●美奈子(27)

美容師。「ライトヘビー編』主人公。織田由美と高校時代は同級生だった。

●板橋香澄(29)

美奈子の働く美容院の常連客で、美奈子と親しくなる。

小野学(27)=ウィンストン小野

香澄の弟。プロボクサーのウィストン小野であることは、物語の最後に判明。事務職=ジム職。

●山田寛子

美奈子の10代のころからの友達。亮一と3人でよく飲む。

日高亮

美奈子の10代のころからの友達。寛子と3人でよく飲む。

●斉藤さん

路上で歌を売るおじさん。気持ちや状況を伝えると、その人にピッタリな曲の一部を流してくれる。流す曲のすべてが斉藤和義の為、斉藤さんと呼ばれる

 らすじ】

香澄から弟を紹介したいと言われ、学の電話番号を渡される

→学から着信があり話す。その後も週に何度か話すようになる。

→事務職をしていると話す学は、定期的に1か月半くらい連絡が途切れる

→香澄宅でヘビー級の試合(ウィンストン小野とチャンピオンの試合)を見ていると、香澄から学がウィンストン小野で、勝利したら奈美子に告白するらしいと伝える。

→ウィンストン小野はその試合に勝利する。

 

ドクメンタ

【登場人物】

●藤間(29)(34)(39)

佐藤の同僚。システムを運営している。会社では几帳面。「ドクメンタ編」主人公

29歳:独身

34歳:亜美子が生まれた(1歳)

39歳(現在)

●藤間妻

ある日突然、娘・亜美子とともに実家へ帰ってしまう。几帳面な性格

●藤間亜美子(1)

藤間の一人娘

●自動車教習センターで出会う女性(25)(30)(35)

誕生日が近いため、免許更新のタイミングが同じ。

25歳:独身。視力検査をパスする為、藤間の眼鏡を借りる

30歳:息子がいる。大雑把な彼女の性格に嫌気がさした旦那が家出

35歳:旦那と復縁。復縁をしたエピソードを藤間に話す。

【あらすじ】

「アイネクライネとほぼ同時期(現在)」、「5年前」、「10年前」の3つ時期の話です。5年に1度、免許更新時に出会う女性と藤間が話をして妻と娘に帰ってきてもらう努力をすることを覚悟するストーリーです。

そもそも妻が出て行った理由は、藤間のかなり大雑把な性格のせい。また、自動車教習センターで出会う女性も大雑把が原因で夫に家出をされていた。しかし藤間39歳、女性34歳の「現在パート」で出会った際、彼女は旦那と復縁をしたエピソードを語る。”怠惰でずっと放置していた通帳の通帳記入をしたら、旦那から「オレモワルカッタ」のメッセージが。大雑把で通帳記入をしない彼女に懸けで旦那が残していた。”その話を聞いた藤間は同じやり方で妻と復縁できるようメッセージを送ることを決意する。

 

④ルックスライフ

【登場人物】

「高校生」と「若い男女」の2つのストーリーが順番に書かれています。独立しているように見えますが、最終的には繋がります。

●久留米和人(高校生)

「高校生」パートの主人公

●久留米邦彦

「高校生」パートでは和人の父。「若い男女」パートでは朱美の彼氏

●小田美緒(高校生)

織田一真・由美の娘。かなりの美人。「高校生」パートのみに登場する和人の同級生

●深堀朱美先生=旧姓笹塚朱美

「高校生」パートでは和人と美緒の通う高校の教師。「若い男女」パート主人公。

●音痴な少年

和人の同級生。合唱コンクールの練習中、先生から口パクで歌うことを支持される。和人は合唱コンクールの前説で漫才をすることを提案する。

 

⑤メイクアップ

【登場人物】

●窪田結衣

化粧品会社勤務。『メイクアップ』編主人公。

●佳織

結衣の同期。物言いな性格で仲が良い。亜季への復讐を結衣へそそのかす。

●山田寛子

化粧品会社勤務。広報部部長補佐。『ライトヘビー』編で、美奈子と良一と飲んだ時に「仕事に生きる」ことを決意。

●照川

広告会社

●大久保亜紀

照川のアシスタント。高校時代結衣をいじめていた、クラスの中心人物

●辻井

アメリカ本社にあるネットワークサービス会社に勤務する幹部。もしかすると既婚者で、偽名かもしれないことがラストで判明する。

 

⑥ナハトムジー

【登場人物/あらすじ】

今までの登場人物総出演の勢いなので、出てきたことがある人物はさらっと紹介します。『ナハトムジーク』編では「現在(アイネクライネ編の19年後)」「9年前」「19年前」の3パートから構成されています。主人公は、美奈子と学です。

「現在(アイネクライネ編の19年後)」

美奈子と学は、小野学(ウィストン小野)の歴史を振り返る番組に出席する。そこで過去を回想する…。

●司会者

和人の同級生。合唱コンクールの前説で漫才を披露したことがきっかけで司会者になる。

●ウィストン小野=学

19年前にヘビー級のチャンピオンになるがその後は負け続け王者の座から落ちる

●国外で活躍するモデル

=9年前のラウンドボーイ=19年前に救った中学生

 

「19年前(アイネクライネ編と同時期)」

・佐藤、織田夫妻、小野夫妻は織田夫妻の家に集まる。佐藤はウィストン織田のサインをもらうため(藤間に渡す用)。織田由香と小野美奈子は親友だったから。

・佐藤、織田夫妻、小野夫妻は公園でいじめられている中学生を助ける。

小野学はいじめられている中学生にボクシングをするよう勧める

●いじめられている中学生

耳が悪く補聴器をつけている

●いじめている中学生の姉

弟を守る勝気な少女

 

「9年前(アイネクライネ編と同時期)」

・学はオーエンスコットとチャンピオンの座をかけて試合がある

・藤間は離婚していたが、元妻と良い関係を築いている

・オーエンスコットとの試合中、限界の学をラウンドボーイが鼓舞しオーエンを倒す

・オーエンを倒すが、ゴングが鳴った後とのジャッジがなされオーエンに敗北する

●オーエンスコット

天才ボクサー。ウィストン小野と試合をする。

●ラウンドボーイ

過去にウィストン小野が助けた中学生。

 

感想

あらすじ、登場人物の説明がへたくそでした…お判りでしょうか…本を読みながら、誰だこの人と感じた時にこの記事を読んでいただけると幸いです!!

数多くの伏線があり回収できたときはとてもとてもうれしい気分になることができます!何度も巻き戻りながら読んでいたので、いつもより時間がかかってしまいましたが、薄い本にもかかわらず読了感をたっぷり味わうことができました!

ゆっくり本を読むことができるタイミングにじっくり読むことをおすすめします。

 

映像化

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