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短歌と感想ほかまとめ

2024年 個人発行物ログ

2024年に発行したネットプリントなどのまとめ。
記録として画像/PDF版を公開します。
発表時期の新しいものが上部にきています。



20240413 ネットプリント「生活」

上期と下期それぞれ1回ずつは何らかのネットプリントを発行したい、という目標があります。とはいえ、その内容は都度検討というか、はっきり言ってしまえば特別何か計画的に考えてやっているわけではありません。
この上期のネットプリントも、本来はあと1~2ヶ月後くらいに何か出したいな、くらいに考えていたので、前々から計画していたものではなく……。
下記の短歌を詠んだことから、ネットプリント全体の構想が浮かび、数日で一気に完成させました。基本的に勢いで生きすぎ。

30秒分の1秒だけだってきみでひたひた満ちる水曜

「WE ARE!」のプロモーションとして、X(旧Twitter)にアップされた短い動画に映る、SUPER EIGHT 丸山隆平さんを観たところから詠みました。


この短歌を詠んだときは、新生活の疲れなどでへろへろになっており、短歌もあまり浮かばない周期にいました。そのため全体的に言葉の並びがぎこちなく、もう少し手を入れられそうだな……と考えるうち、「~水曜」というように各曜日ごと短歌をつくったら楽しいかも、と思いつきました。
水曜の短歌も、自分に実際にあったことから詠んでいるので、他の曜日もそれは同じにしています。短歌にする上で多少の調整はかけていますが、基本的には生の感覚から詠んだつもり(=全体にあんまり元気がない)。

生活するのって、当たり前のようで難しい。私自身この春から新しい職場で働いていることや、フォロワーさんにも新社会人になられる方が複数いらっしゃることもあり、何か新生活の……支えというのはおおげさでも、そばに置いてもらえるようなものができたらいいなあと思っていました。
実際にお手に取ってくださった方々からも、この曜日の短歌が好きだった、というようなお声をいただけたり、サイズとしても手元に置いておきやすかった、というように言っていただけたので、本当にありがたかったですし、嬉しかったです。

レイアウトについては、はじめてL判サイズのネットプリントに挑戦。ポストカードよりひと回り程度小さなサイズ感で、個人的にはかなり気に入るデザインになりました。また、印刷代が比較的安価なことと、プリントされたものが写真取出し口から落ちてくるかんじも好きなポイントでした。
写真は、2023年春にフィルムカメラで撮ったミモザ。実は(?)個人歌集に収録しようと思っていた1枚でした。ただ、歌集に収録するには色味などが向かず諦め……。どこかで使いたいと思っていたので、「生活」にしっくりくるものになってよかったなあと思っています。



drive.google.com

2023年度 お誕生日にあてたアイドル短歌

Snow Manひとりひとりのお誕生日にあてたアイドル短歌は、年度ごとにテーマを決めて作っています。
2023年度は、お名前の押韻をテーマにしていました。
とはいえきれいに単語へ嵌めるのは難しいな…と早々に理解したため、短歌の中にどこか入れ込めたらOKくらいのきもちで臨むことにしました。そのため押韻もどきという雰囲気がかなり漂っていますが、大目に見てやってください。

以下かんたんに、作ったときイメージしていたことなどを振り返ってみたいと思います。
発表時のツイートまとめはこちら。


かんたんな目次はこちら。



2023.05.05 深澤辰哉さん



揺らがない板の上にて恐ろしいことなどないと開いたまぶた
ふかざわ/uaaa/ゆらがな(い) たつや/aua/まぶた

滝沢歌舞伎の戸板倒しから。あの一瞬の深澤さんが本当に強くて美しくて好き。2023年春は本当に、観られるだけ滝沢歌舞伎LVに通っていました。


不可視、ふと雑踏のなか渡ってくやわい空気にあなたが滲む
「ふか」視、ふと「ざ」っ踏のなか「わたつ」てく「や」わい空気にあなたが滲む

この短歌だけお名前の折句。これはなんというか、雰囲気だな〜と思うのですが、わたしの思う深澤さん像がぎゅっと詰まっている気もします。


欲しいもの掴まなかった腕なんてずっと前だよ 抱きしめている
ふかざわ たつや/uaaa aua/つかまなかった

深澤さんの得意なクレーンゲームから。クレーンゲームのアーム=腕でもあるし、深澤さんご本人の腕でもある。いろんなものを抱きしめて生きている人かなあというところから詠みました。


2023.05.17 岩本照さん



今の星だってはしゃいだ声あげて跳ねるあなたがいちばんひかる
いわもと ひかる/iaoo iau/いまのほしだっ(て)

ひかるくんのお名前が本当に好き。自らが輝いてまわりを照らす人。メンカラ黄色も個人的にかなりしっくりくる。ということで(?)ここで詠まずいつ詠む、と「星」を解禁しました(気を抜くとすぐ星をきらきらさせてしまうので普段は自制しています)。ひかる、の名前も入れたかったのでよかった。


2023.06.21 向井康二さん



おひさまは暗い夜にもずっといて泣きそうな子をあやしてくれる
むかい こうじ/uai oui/くらいよるに

メンカラオレンジ、そして夏至の日生まれのひと。康二くんにとにかくぴったりと思っています。なのでおひさまと呼びたかった。あとほんとうにやさしいひとだよなあ、というところから下の句ができました。周りの人、相手のことを深く考えられる・感じられるところがすごく好きです。


2023.06.27 ラウールさん



撫でつけたムース髪の毛一本もおれだけのもの 好きに踊って
らうーる/auu/(つけ)たむーす

らうちゃんの押韻、無理矢理ですみませんと思いつつ作った覚えがあります。とはいえ短歌の雰囲気はかなり気に入っている。これまでに観たらうちゃんのダンス、特にTGCのさまざまなステージなどをイメージしていました。インスタなども見ていて思うのですが、本当に自分の世界観を表現するための努力を惜しまないひとだなあと感じます。


2023.07.05 佐久間大介さん



人前が得意じゃなかったタイプでも必ず空を飛べるってこと
さくま だいすけ/aua aiue/(な)かったたいぷで

佐久間くんは幼少期と今とでかなり変わった方なのかなと思っていて、それはひとえにご本人の努力によるものだろうなあと感じます。かろやかに行うアクロバットだって、はじめは出来なかったことを、ひとつずつ積み上げていったんだろうなあ。


2023.11.05 渡辺翔太さん



この喉はいっとう出来のいい楽器きっとお前が鳴らせと歌は
わたなべ しょうた/aaae oua/がならせとうた

渡辺さんと歌は切っても切れないと感じていて、絶対に「うた」をそのまま詠み込みたかった。押韻の入れ方はかなり無理矢理なんですけど、歌そのものが渡辺さんに語りかけるようなかたちにしたくて、これが出来たときはかなり嬉しかった。


2023.11.27 阿部亮平さん



ありったけ想定しても上回るほどにぼくらの雪は積もって
あべ りょうへい/ae ouei/(ありっ)たけそうてい

あべちゃんはSnow Manというグループの名前、雪というモチーフなどについて、折々にふれてくれるなあと感じています。その印象と、やっぱり天気絡みのものにしたくてこんなかんじに。出来る限り最善を、と考えて考えて努力して、という人だなあと思っていますが、その人の想定が嬉しい方向に裏切られることがあったらいいな、の短歌。


2024.02.16 目黒蓮さん



あ におい いまの季節の 電話だとわかんないけど言わせてほしい
めぐろ れん/euo en/(き)せつの でん

前のラジオで季節のにおいの話をしていたのが好きすぎてここでも詠んでしまった。これはかなり個人的な考えになりますが、めめさんって、何もかも永遠に続くものなどない、と深いところでしっかり理解している人な気がしています。そのことのさみしさも、だからこその愛おしさも全部知って抱きしめているような。


2024.03.25 宮舘涼太さん



波風に乱されようが砕けない心音だけを確かめて行く
みやだて りょうた/iaae oua/みだされようが

だてさん、ものすごく心臓が強い人だなあとありとあらゆるところで感じるのですが、それも彼の努力によるものだと思っています。努力や経験があって、そのことで自分でも自分にきちんと自信を持てるから、わたわたしないというか。メンカラ赤、たぎる血の色だなあといつも思います。そのぶれないかんじを詠みたかった。



以上、かんたんではありますが、振り返りができてよかったです!
2024年度ものんびり作っていきたいなあと思っているので、どこかで見かけたらどうぞよろしくお願いします〜

ご感想などあればぜひ↓

log:202404 短歌

0316
おりぼん春号

ようやっとここに来られた きみのことあんま嫌いになれないよ、春
平気って言わなくていい泣いててもぬるい夜風が頬を撫でてく



0402
題詠「天井」または「片思い」

情愛の話はひとつも出なくってそういうとこが特別だった
ハグしない手を繋がないキスしない隣り合わせで息するだけの
恋人じゃなくって誓約保証人として捺印お願いします



0405
#ゴー・シチ・ゴ・シチ・シチで始まる短歌の短歌がみたい

ゴー・シチ・ゴ・シチ・シチたったこれだけでわたしは違うものにもなれる
ゴー・シチ・ゴ・シチ・シチきみにこれだけを渡せたのなら充分だった



0410

ぬかるんだ椿で埋まるアスファルト踏みつけたのはわたし、わたしだ
泣きわめきそうな部分にありったけ突っ込んでおくポテトチップス
不幸自慢これっぽっちじゃ取り立ててかわいそうでも何でもないね



0417
いちごつみ(Discordアイと短歌鯖)

かろやかに手を振るきみが人波にまぎれる、きっと忘れてしまう(まぎれる)



0425

テトリスの上3段しか空いてないくらいの電車なんて消えちゃえ
むしゃくしゃのくをむに変えてくれ早く塩胡椒して平らげてやる

いちごつみ(Discordアイと短歌鯖)
吊り革に頭突きしたとこ、嘘もっと前の前からやり直したい(突き)



0428
きのこの山たけのこの里詠み込み

折れてないきのこの山を目一杯選りすぐったらきみにあげたい
たけのこの里を整列させてから分けてくれるのきみっぽかった



0428
コジヤジコ初の回文個展『光る番が来るからな。』印象

目の前で回り続ける言葉たちここにある詩はずっとやさしい
ひとつずつ文字がかたちを持ったなら豆電球の温度で光る
そこだけがぼうっと明るい路地裏で順番を待つ 待つと思える

log:202404 アイドル短歌

0403
下の句「怖くはないよきみがいるから」

始業まで流しっぱなしにしてる曲怖くはないよきみがいるから



0406
お題「証拠」または「夏」でアイドル短歌→証拠

昼休みいっぱい外を歩いてた緑のにおいを吸い込みながら
薄れてくキーボードの字は何度でも言葉を探して足掻いた日々の
(応答なし)やわらかに二度Excelを叩いて起こす まだくたばんな
先輩じゃなくて後輩でもなくてわたしに聞いてよかった、だけで
半年の通勤手当を継続で 怖いことない まっすぐに立つ




0411

30秒分の1秒だけだってきみでひたひた満ちる水曜



0425
お題「銀河」または「転落」でアイドル短歌

きみたちのひとりひとりへ向けられる明かりのことを銀河と呼んだ

log:202403 短歌

0301
「短歌桜」参加作

目の前をよぎる桜はあの街のまたは舞台の上にのみ咲く


0302
花束を抱いたあなたはまっすぐに飛び立ってゆく この先は春

にせのほし題詠
001 正義
善いものになりたいなれない全身に真綿の縄が絡みついてる
002 告解
あやまったやつから楽にしてやれる告解室の重たい扉
003 口ずさむ
特別なところは何にもないぼくの名前もきみにかかれば歌に
004 ピッチ
息が詰まる。僕の奏でる音程はいつも正しい場所をなぞった
005 カトラリー
特別なときに食べると決めているケーキにそそぐ明るいひかり
006 滲み
くたびれた体をソファに投げ出してわたしは部屋の大きな滲み
007 いいひと
(どうだって)いいひとなんていませんよ 本当に、って言ってやりたい
008 予感
ああきっとわたしあなたをすきになる たとえば揺らす爪の血色
009 トランジット
乗継ぎを待つあのひともあのひともまぶしいみんな行き場があって
010 翼
ぼくだけの飛べない翼、いいでしょう あなたの分はあなたが誇れ



0303
にせのほし題詠

011 ポーカーフェイス
飄々、とたぶん書けないきみなのにわたしばっかりこんなに好きで
012 ロードムービー
毎日が休前日とするならば暗くならない映画をえらぶ
013 砂の城
この城をいつか崩れるものとして建てたことさえ抱きしめていく
014 グリッター
偏光をきみは見ないね 知っている それでもグラデはきちんとつくる
015 紡ぐ
一音を決めかねる夜があるためにわたしの骨は成り立っている
016 やきもち
やきもちを焼いたところで許されるあの子みたいになりたかったよ
017 罠
かわいげの意味を調べておそらくは「-がない」例だと気づいてしまう
018 奇跡
両の手に残ったままの生傷をいいものみたくされてたまるか
019 くすぐったがり
こそばゆい顔して笑ってくれるから何回だってほめちぎりたい
020 きらきら
きみにならシュガーレイズドドーナツのレイズド部分をあげたっていい



短歌ワンドロ「ライブ」

キーボード、PC、機材に囲まれていくつも音を奏でる天使
舞台上スポットライトを浴びながら天使が低く鳴らしたベース
カウントが天使によって刻まれる スネアドラムのかすかな響き
週末になったらふっと現れる天使はギターを弾いてるらしい



0305

深く息を吐いて潜ったおふとんの奥に銀河があるのはひみつ
すり減っていったわたしの断面がせめてまあるくありますように


0309
春になったら#08

おなかから大きい声を出していくこわいばっかでいられなくって
動けなくなっちゃう前にエプロンを自分ではずし襷としたい
焼きつける、のは比喩じゃなく 眼裏のあなたを何度思うのだろう



0310
お題「ホワイトボード」または「黒板」

縦書きのときだけ無敵 左手で握ったチョークは迷わず動く

うっすらと浮かんだきみの落書きのゆるいカーブを指で辿った
日直の名前を大きく丁寧に 呼びかけられもしないあなたの



癖短歌(例え一緒にいる事で不幸になったとしても側に居たい考えすぎる人と、その人が幸せでないなら一緒にいなくても構わない能天気な人のすれ違い)

この先はひとりで行くよ、大丈夫 泣いてくれなくたっていいんだ
桜の木 たとえば重い亡骸をおまえと一緒に埋めたっていい
指先が冷えてていたい いたかった 離れてやっと気づくだなんて



0314

告白の仕方も知らないぼくなのに何でか愛の手紙は書ける


0317
春になったら#09

スターにはなれなくってもきみたちがいてくれるならぼくを選ぶよ
ファインダーの向こうがぼんやり光ってて撮っとかなきゃって強く思った
指きりの代わりいくつも口にした、春になったら、が忘れらんない



0318

平日のやり過ごしかたを教えてよ あんまり難しくないやつを


0321
春になったら#10

わがままのオンパレードを人生でたったの一度許してほしい
ただいまが宙に浮かんで消えていくからっぽの家 はやく帰ろう
ああ そうだ ぼくたちを見る瞳には光が多く含まれていた



0327
題:青

壊れちゃう一瞬前の瞬きの ブルースクリーンは美しかった
この春に色を塗るなら透きとおる朝の光の淡さを選ぶ
ほんとうは違う色だと気づいてる それでも青って呼んでてあげる
底抜けに明るい空のただなかでからっぽになるまで泣いとけよ
永遠にしたくて肌の刺青を撫でてくおれを謗ってもいい



0330
題:雨になったら

来週の天気予報がようやっと雨になったらあなたに会える
どこにでも売ってるビニール傘だってきみから借りたがつけば特別
髪の毛の先から光がこぼれてく拭いちゃう前にかるく見惚れた



春になったら#11

一歩だけ先に進んで待ってるよ 春の空気を吸いこみながら
いくつもの、春になったら、の営みをあのとききっとぜんぶ愛した
ぼくたちは光を焼きつけ生きている永遠なんてないとしたって



0331
題:岸

いくつもの生活がありいくつもの感情があるひとりの岸辺
最後までまぶしく過ごす人にさす強いひかりを覚えていたい
こんなにもひとりの人の幸福を願えた おれはそれでよかった
結局は敬称付きで呼んでいて誰も何にも憎めなかった
さっぱりと笑った子から溢れてく春の陽気に包まれている

log:202403 アイドル短歌

0303
アイドル短歌ワンドロ「ライブ」

ぐしゃぐしゃに潰れた肺が砕かれた背骨が息を吹き返してく
ここに来るだけの己でいられたか またここに来る覚悟はあるか
明滅をこの手で変えていくようにわたしの舵はわたしがとれる



生きていく理由をきみに託さない 今日もおんなじように誓うよ



0313
アイドル短歌題詠「白」

ひらひらと振られた指は宙空を泳ぐ白魚 鱗がひかる
吐き出した息が世界を染めてゆく どうかあなたの思うとおりに
紙吹雪 ほんとは真っ白だったこと秘密だよって指を鳴らして



いい加減白状します まだ好きじゃないのは嘘です君がすきです
もう好きじゃないのに選ぶ君の色 こんなのぜんぶ白々しいね



0323
アイドル短歌ワンドロ「楽曲」
ここに/SUPER EIGHT

いやんなるくらい歩いた通勤路にさえ朝日は差し込んでくる
もうずっと会えないかもね だからって立ち尽くしてるわけはないんだ
感情はすこし遅れてやってきてそういや痛いだなんて思う
あと一歩、まだもう一歩 走ってもどっかに行ける訳じゃないけど
吸ってからゆっくりと吐く涙ってたまに壊れたみたく流れる



0324
アイドル短歌ワンドロ「楽曲」
Boogie Woogie Baby/Snow Man

恐ろしいものなど何もないのだときみは岸辺に立って手を振る
お嬢さん、どうかこの手を取ってくれ 見たことのない景色をあげる
真っ白なまんまじゃいられないとして僕らが派手にまく紙吹雪



題:村上信五さん

眼差しは遠く交わることがない 背中の熱であればいくらか
手のひらに収まるものではいられないその身ひとつでどこまでも行け
ゆるやかにかたちを変えていく雲の近くで深い息をしている
ぐしゃぐしゃに混ぜた前髪 大丈夫 いい子でなんていなくてもいい
真っ当に生きてくだけだ人混みのなかでもどこか板の上でも



0325
Snow Man 宮舘涼太
お誕生日おめでとうございます!

波風に乱されようが砕けない心音だけを確かめて行く



題:メンバーカラー

白熱灯よりもLEDよりもまぶしい色をしたきみだった
正しさの暴力性を知っている それでも言葉を探してしまう
あ ひかり 日向にできた影を見て強く照らされてるとわかった
心臓を見たことはまだないけれどあなたにはあの赤が相応しい
ドロップスジェリービーンズかろやかに跳ねて色づく頬の血色
ほんとうかどうかはきみが決めること境界線を指でなぞった
どこまでもどこまでも空、もしくは海 抜けてくように広がるきみの
常緑樹 変わらずにいることなんてできない、だけど、それでも、僕ら
ペンライト灯さなくてもきみのいる場所は確かに見えていたんだ



0330
アイドル短歌ワンドロ「ない」

特別と呼びたいひとは板上に立ったあなたの他にはいない
このときを特別だって思えたらあとは何にも構いやしない



降り注ぐ紙吹雪さえまばゆくて痛みのことは覚えていない



0331
アイドル短歌ワンドロ「五感」

本当に光って見えた豆粒とおんなじだけの姿としても
ラジオから流れる声のふやけかた素っぽいなんて思ってごめん
あなたっぽい見た目で選ぶフルーツのケーキは想像より甘くない
あの春のにおいがずっと残ってて桜を見ると喉が詰まった
触れられる距離がぼくには恐ろしいあんまりきみと地続きだって
こういうのぜんぶ忘れていくんだね あなたの気配も知らないままに

storyteller(物語ベースの相互題詠)のこと

2024年2月に、遊佐さんと「storyteller」=物語ベースの相互題詠をしました。
その記録及び自作解説をしたいと思います。

はじめに、これは今回の記事に限ったことではありませんが、解説とは言いつつも、そう読まなければいけないという訳ではありません。もちろん、違った解釈をしたらだめということは決してありません。わたしの短歌やブログを読んでくださる方には、自由に楽しんでいただければと思います。



1) はじめに storytellerって?

ふっと思い立ってしたこんなポストが始まりでした。


もしこれをどなたかと出来るなら、ということで、考えてみたルールがこちら↓
<ルール>
・1ポスト(140字)程度の設定を作る
・設定の形式は自由。箇条書きでも短文でも
・作った設定を相手に渡す
・もらった設定から連作を作る
・連作のボリュームは5〜10首の間なら自由

遊佐さんが一緒に遊んでくださることになり、相談の上、上記ルールでやってみることに。
それぞれが考えた設定と、それに沿って作った作品は下記のとおりです。

2)設定を作る 作成:遊佐さん

・性別はなんでも
・高嶺の花と道端の雑草
・二人の接点は同じクラスであることだけ
・雑草は花のことをこの世のなによりも美しいと思っている
・逆に、友達のいない花にとって、たくさんの人と仲のいい雑草は憧れの存在
・ある日、二人は行きの電車が同じことを知り、それをきっかけに距離を詰めていく--……

3)設定を作る 作成:しま

・特別にはなれないとわかっている話
・AとBは恋人同士だが、Aには別の相方(親友・バディ・シンメ等)Cがいる
・AとCは決して恋愛関係にはならないが、AにとってCはずっと、他の人とは違う特別な存在
・ただAにはその自覚があまりない(当然と思っている)
・ということをBは最初から知っている

4)遊佐さんの設定から連作を作る 作成:しま



たんぽぽの明るい黄色はどこででも軽やかに揺れひどくまぶしい

木蓮 頬にうっすら朝がふる美しいってこういうことだ

「高嶺の花」の子を白木蓮にするのはすっと決まった。花言葉も調べて、結構よさそうだなということでそのまま採用。
「雑草」の子を、雑草とはいえかわいい花にしたいな…と思って浮かんだのがたんぽぽだった。ハルジオンもちらっと思ったのだけど、花言葉がしっくり来なかったので没。
車内でも教室でもどこでも目に入る、明るい女の子と、立ち姿と横顔の美しい静かな女の子のイメージ。

教科書に載っていた詩を思い出す貴方の声はひばりのおしやべり

いつだって凭れずにいる隣にはぽつんとひとつ空席がある

話し声をうるさく思うのではなく、明るくて楽しそうでいいなと感じていることを表現したかった。「ひばりのおしやべり」は山村暮鳥「風景 純銀もざいく」から。
木蓮の子は周りからちょっと話しかけにくい孤高な存在と思われている。とはいえ本人は普通にしているだけ。でも周りの雰囲気は分かっているから、無理に群れることもしない。それを見ているたんぽぽの子は、でもちょっとさみしいんじゃないかな?いつか話してみたいなあと思っている。

繰り返し頭のなかで呼んでいた名字がわたしのくちびるに、いま

朝礼の点呼も絶対かなわない声量だった あなたがわらう

お互い相手のことが気にはなっていて、でも行動に移すのは木蓮の子が少し早かった。頑張って声をかけたのだと思う。声がうわずったりひっくり返ったりしないように気をつけながら。
そのことがうれしくて、びっくりして、思わずものすごく大きな声で返事をしてしまうたんぽぽの子、というイメージでした。朝礼の点呼、ある程度は先生に聞こえるように声を出すと思うけど、そんなの比べものにならないくらいの大音量。

はじめてのおそろいかもってこっそりと言われて撫でる遅延証

8時5分6両4ドア待ち合わせ、の前にささっと直す前髪

電車のなかでの出来事をいくつか。電車が遅れて嫌だけど、一緒にいるから楽しいし、(遅延証明とはいえ)おそろいができたことも相手もそれを喜んでくれているだろうこともうれしい。
親しくはなってきたけどまだ少しよそゆきなかんじ、で「ささっと直す前髪」にしました。あと、なんとなく都内の地下鉄イメージだったので「6両」くらいかな?とこの位置にしてみた。この辺はフィーリングです。

ずる休みじゃなくてもっといい名前つけたいねってふたり一緒に

お休みの連絡はせず海に出て(次は終点)ともだちになる

ふたりが普段使っている電車は、最終的には海の方までつながっているイメージ。ある程度仲良くなったある日ふっと、学校をサボって終点まで乗って行く。
「ずる休み」には違いないんですが、ふたりにとってはもっといいもので、かつ特別なものでもあるので、何かいい呼び名を考えつつ電車に揺られている。
多分タイプも違うし一緒にいて何で?と言われるふたりなのだけど、お互いしっくり気が合って、この後一生の友達になる、そんなイメージでした。

5)しまの設定から連作を作る 作成:遊佐さん


6)まとめ

物語ベースの相互題詠、考えていくのが難しくもありましたが、とっても楽しかったです! 設定をもらうのも考えるのも、そこから作るのも面白い。かなり創作寄りになるので、普段短歌・アイドル短歌を詠むのとはまた違った感覚がありました。
もしご自分でもやってみたい! と思われた方がいらっしゃいましたら、下記のポストなどをご利用いただければと思います。



何かあればしま個人のDMもしくはお題箱まで。
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