妄想せぶんてぃーん

イルデまでの暇つぶし

眠れるおぬよん

席替えをした。

私の前に座っている男はチョン・ウォヌというクラスの中でも一際不思議な雰囲気を放っている男の子だ。一年ほどクラスが一緒になってはいるが、人見知りの性格なのか、用心深いのか、彼がわかりやすく心を開いているだろうな、と思う友達はクォン・スニョンという、目つきが10時10分、ほっぺはまるでつきたての餅のようだと述べれば、読者は首を縦に二度は振るだろう。ウォヌとは違って誰にでも分け隔てなく接しているので、クラスのムードメーカーと言える。そもそも、スニョンはクラスの学級委員長でもあるのだ。授業が始まり、先生が教室に入った瞬間に、軍隊のような威勢のある号令をするものだから、私たちのクラスは勝手に暑苦しくて情熱的だと思われている。

私は、おぬくん(クラスの子たちはウォヌのことをおぬよんだとか、おぬくんだとか、イケメンキツネだとかの愛称で呼んでいる)を観察対象として、彼の昼休みの動向を一年ほど見届けた。どうやら彼は、季節ごとの行動パターンがあるらしく、春は教室のベランダで読書、夏は音楽室で歌の練習、秋は読書と昼寝を繰り返し、冬になると冬眠モードに入ってしまうのか、一日の大半を睡眠に費やしている。

衣替えの時期で、男子も女子も白シャツになるせいか、教室が一気に晴れやかに明るくなるなかで私の視線を奪ったのは彼の肩甲骨だった。

純白のシャツから浮き出てうっすらと映る肩甲骨が妙にいやらしい。シャツの上からでも素肌のなめらかさがわかるくらいには、彼の背中は美しかった。肩幅は意外にも男らしくがっちりしてるものだから、そのギャップはなんだかずるい。

途端にはっとした、先生が説明する数式が全然頭に入ってこない。試験も近いので授業に集中しなくてはいけないのだけど、もう面倒だからいいや、という気持ちになってしまった。おぬくんを存分に楽しめる特等席が当たったのだから、黒板を見るふりをして彼を観察させてもらおう。

首筋もそこはかとなく豆腐のようなみずみずしい白さを放っていて、綺麗に散髪された黒髪のマッシュヘアーが眩しい。髪質も柔らかそうで、見ているこっちまで朗らかな気持ちになってしまうのだった。まるでミルクティーを飲んでいるような気分になってしまうかのような、それだ。

ひい、たくさんドキドキしてしまった、どうしてくれるんだ、チョン・ウォヌ、私の授業中の胸騒ぎをどうしてくれる、今回の試験、多分ダメだ。全部全部おぬくんのせいだ、どうしてくれるんだイケメンキツネさん。

そんな風に思ってしまうくらいに、彼自身は圧倒的に普通の人と比べても、全てが優れていた。

「はい、プリント」

不意打ちで渡されたので、すごくびっくりしてしまった。大抵は振り向きもせずに渡すであろうプリントをおぬくんは、しっかり私に目線を合わせて、優しく渡してくれた。

私のチョン・ウォヌ行動記録に「おぬくんはプリントを渡す時に、しっかりこっちを向いてくれる」というのが新たに更新された。