ディスカホリックによる音楽夜話

好きな音楽について駄文ではありますが、あれこれ綴って行こうかな。

原点回帰を行い、それを未来へと進化させて作り上げたMagic Tuber Stringbandの新作!

フィドルのCourtney WernerとギターのEvan MorganによるデュオMagic Tuber Stringbandは、アメリカ・ノースカロライナを拠点にアパラチアンミュージックをルーツとして2019年より活動しています。セルフリリースから始まったアルバムが、Blue Hole Recordings、Garden Portal、Feeding Tube Recordsを経て、今回インディーズ・レーベルの老舗Thrill Jockeyより新作がヴィナイル・リリースされました。

 

Magic Tuber Stringband / Needlefall

本作はフィドル、ギターのほかに、バンジョー、マウスボウ、ジャウハープ、ベース、パンプオルガン、シュルティ ボックス、クラリネット、シンギングソー、フィールドレコーディングスなど多彩な楽器を駆使して制作されました。これまでも、必要に応じて様々な楽器を使用しており、Courtney Werner とEvan Morganの2人がすべてを行っていた。ただ、今回は地元のミュージシャンを集めて、最小限のオーバーダブにて即興演奏的なセッション録音にしている。このことで、もの凄く臨場感溢れるアルバムになっていように思う。

 

オープニングナンバーA Dance On Sunday Nightは、軽妙でメロディックな曲でタイトルにあるように彼ら流のダンスミュージックです。希望と幸福を映し出す一方で、フィールドレコーディングスされた自然界の音のバックに様々な楽器が絡むThe Hermit's PassageやWater Dripped Upwardsは、より内省的でエクスペリメンタルに鳴り響く。この相反する要素をアルバムタイトルナンバーNeedlefallやDays Of Longingが、ミニマルでダンサブルな民族音楽として双方を繋ぎ合わせている。このバランス感覚が巧く機能して、完成度が高く纏まりのあるアルバムとなった。

 

前作Tarantismのようにコンセプトなアルバムではなく、Magic Tuber Stringbandとしてリスペクトしている音楽やアーティストに対してのケアを軸に制作しています。アパラチアンミュージックの伝統を継承しつつ、新たな要素を取り入れて曲を作り上げ、Terry Riley、Don Cherry、Pauline Oliverosならこの状況の中でどんなサウンドするか、常に考えていたようです。原点回帰を行い、それを未来へと進化させて作り上げたアルバムです。Courtney WernerとEvan Morgan以外のメンバーにもこの発想は、しっかりと伝わっている。そうでなければ、こんな素晴らしいアルバムは作れないと思う!

 

 

Courtney Werner - fiddle、field recordings 

Evan Morgan - guitars、bowed banjo、mouth bow、jaw harp

 

Mike DeVito - bass、banjo

Andy McLeod - fiddle、banjo、pump organ、shruti box

Crowmeat Bob - clarinet

Dan Partridge - singing saw

 

 

Magic Tuber Stringbandについては、過去にも取り上げています。

 

 

2024年4月のディスカホリック

フジロック2024まで3が月を切りました。先週の金曜日に第5弾ラインナップでThe Jesus and Mary Chainの出演が決定しました。ジザメリのライブには思入れがあって、1998年10月11日の今は亡き新宿リキッドルームでのライブを観ています。この時、Reid兄弟が喧嘩して兄のWilliam Reidが来日しなかったのです。主催者側も急だったことで中止の告知が遅れて、会場に多くの観客が来ていた。ただし、弟のJim Reidがお詫びを含めて暫定的な何かをやるとのことだった。これに参加しなければ、返金するとも言っていた。ここまで来て帰るわけにもいかず参加した。30分ぐらいノイズを垂れ流してあっという間に終わってしまった。何だかなあといった感じだった。その後、正式に解散が伝えられた。

 

ジザメリは2007年に再結成して2008年のサマーソニックに出演している。ソニックステージのトリを務めていたが、個人的には今一盛り上がっていなかった。ジザメリの前が、Spiritualized、そして、もう一つ前がSuper Furry Animalsであった。この二つのバンドが最高に素晴らしいライブを披露したこともあったしね。ライブバンドとしての定評も高いだけに、これぞジザメリだと思えるライブを観たいと思う。今回のフジロックでは、最終日に出演予定である。最終日は観たいものが多いだけに、タイムテーブルが非常に気になっている。ワクワクしながら待つしかないです。

 

 

2024年4月のディスカホリックは、レコード7、CD3、カセット2、頂きもの7インチシングル1、計13作品の購入実績となりました。毎度のことながら、まだしっかりと聴けてないものが多いです。

Faye Webster / Underdressed at the Symphony(Vinyl) 購入先Tobira Records 購入価格3,390円

FAYE WEBSTER / フェイ・ウェブスター / UNDERDRESSED AT THE SYMPHONY (CD)

アトランタのシンガーソングライターFaye Websterの5作目となる新作。このジャケットに魅せられて思わず購入してしまった。

 

 

Ali / White Stallion, Abyadh Aswad(Vinyl) 購入先Lighthouse Records 購入価格3,831円

フジロック2024に出演するインドネシアサイケデリックバンドAli。今年リリースされた12インチシングル。

 

 

Noel Gallagher's High Flying Birds / Council Skies(CD) 購入先diskunion.net 購入価格1,452円

なんだかんだ言ってもフジロック2024のヘッドライナーですから。

 

 

Kramer / And The Wind Blew It All Away(Vinyl) 購入先Shimmy Disc Bandcamp 購入価格$43.00 USD(6,682円)

あのKramerがShimmy Discを復活させていたことを今頃になって知った。2021年に自身のアルバムもリリースしていました。

Lee Ranaldo / Circular (Right As Rain) (7Vinyl)  Shimmy Disc Bandcampからの頂きもの

Primary

Sonic YouthのLee Ranaldo。2017年リリース片面1曲の7インチシングルをShimmy DiscのKramerが、一緒に送ってくれました。有難いです。

 

 

Jad Fair & Kramer / History Of Crying(Vinyl) 購入先Amazon.co.jp(Rarewaves⁻Jp) 購入価格5,470円

Shimmy Disc Bandcampを確認していたら、Jad Fair & Kramerのコラボレーション・アルバムを発見!2017年にリリースして2021年Shimmy Disc から再発したようです。

 

 

Half Japanese / Jump Into Love(CD) 購入先diskunion.net 購入価格1,925円

Jad Fairの名前が出たのでHalf Japaneseはどうなっているか検索したところ、昨年7月に新作が出ていました。

 

 

Sun Ra Arkestra / Living Sky(CD) 購入先Diskunion.net 購入価格1,680円

今年100歳になるMarshall Allenが音楽監督を務めるSun Ra Arkestraの2022年作。

 

 

Duster / Remote Echoes(Cassette) 購入先Tobira Records 購入価格1,998円

スローコアバンドDusterの昨年後半にリリースされた90年代未発表デモ音源集。

 

 

Hour / Ease the Work(Cassette) 購入先Tobira Records 購入価格1,880円

アメリカ・ペンシルベニアの12人編成スローコアバンドHourの新作。

 

 

Thomas Bush / The Next 60 Years(Vinyl) 購入先Tobira Records 購入価格3,984円

RAPやCitrus & Muskのメンバーとしても活動しているイギリスの実験フォークThomas BushのJolly Discsからリリースした新作。

 

 

Amateur Hour / Krokta Tankar Och Branda Vanor(Vinyl) 購入先diskunion.net 購入価格5,250円

スウェーデンのアンダーグランドシーンでインダストリアルやインディーポップを奏でるDan Johansson、Hugo Randulv、Julia Bjernelindの3人組Amateur Hourの2022年作。

 

 

Magic Tuber Stringband / Needlefall(Vinyl) 購入先Amazon.co.jp(Avatarmusic) 購入価格5,063円

Magic Tuber Stringbandの新作。

 

 

Bardo Pondのアーカイブ音源シリーズ第9弾!

90年代初期からサイケデリックロック、スペースロック、ストナーロックと称されてきたアメリカ・フィラデルフィアのバンドBardo Pond。彼らのアーカイブ音源シリーズ第9弾となる音源が、新作としてイギリスのFire Recordsよりヴァイナルとデジタルでリリースされました。彼らの場合、アウトテイクや未発表音源など膨大な録音を維持管理して、タイミングをみてリリースしてきた。今回の第9弾は、以前の寄せ集め的なコンピレーションとは違っていて、新たなる方向へと進もうとしていた軌跡が残っていました。

 

Bardo Pond / Volume 9

本作は2005年から2006年に録音されています。Bardo Pondのメンバーである、Michael Gibbons(ギター、シンセサイザー)、John Gibbons(ギター)のGibbons兄弟とIsobel Sollenberger(フルート、ビオラ)の3人に、Gibbons兄弟のサイドプロジェクトAlumbradosに参加していたMichael Zanghi(パーカッション、ドラム)の4人編成でジャムセッション的な作りとなっている。Gibbons兄弟のギター vs Michael Zanghiのパーカッション&ドラミングの轟音コラボレーションにIsobel Sollenbergerのフルート、ビオラがさりげなく花を添えている感じ。A面にConjunctio、The Nine Doubts、War Is Over Part 1の3曲、B面にWar Is Over Part 2の1曲の計4曲収録です。

 

前半の2曲は、Gibbons兄弟の脅威的なディストーション・ギターが炸裂。これに対抗するがごとくIsobel Sollenbergerのフルートが可憐に鳴り響く。いつものBardo Pondサウンドですが、ここにMichael Zanghiのパーカッションがオリエンタルなテイストを醸しながら、曲を盛り上げている。後半のWar Is Overは2部構成でPart 1は、3分を少し超える曲でポストロック、あるいはスロコア的な要素を含んで穏やかに聴かせてくれる。B面のPart 2は21分をこえる大作でPart 1の流れを踏襲しつつ、徐々にGibbons兄弟のギターワークが暴走しまくる中で、Michael Zanghiのドラミングの巧さも伝わってくる素晴らしい曲でアルバムを締めくくっている。

メンバー全員が参加してなかったので、当時はBardo Pondとして出せなかったのかな? 2006年にIsobel Sollenbergerのヴォーカルを積極的に取り入れたBardo Pondとしての分岐点となるアルバムTicket Crystalsをリリースしている。Gibbons兄弟のサイドプロジェクトAlumbradosのエキゾチックなサウンドとも違う。この関係でお蔵入りになったとも考えられる。だた、ヴォーカル曲が入ってないけど、Volume 9での変化は現在のBardo Pondに通じるものがあるように思う。

 

2011年からは、ほぼ全ての新作アルバムをFire Recordsよりリリースしている。Fire Recordsは90年代、2000年代の過去のアルバムもリイシューしており、両者の関係が強固であることが伺える。ただし、新録の新作が2017年のアルバムUnder The Pinesよりリリースされてないのが気になる。そろそろ新作を期待しつつ、今はVolume 9に酔いしれています。

 

 

 

 

 

Brian LucasのソロユニットOld Million Eye、浮遊感あふれる独特のサイケデリックをアンビエントにて包み込んだ世界!

Dire Wolvesや43 Odesのメンバーとしても活躍しているマルチ奏者でテープマニピュレーターBrian LucasのソロユニットOld Million Eye。90年代のサイケデリックバンドMirza解散後、2000年代中頃に一時期タイに住んでいたころにOld Million Eye名義で活動する。その後、アメリカに戻って2014年頃よりDire Wolvesのベーシストとして参加します。Dire Wolvesの活動が軌道に乗る中で、Mirzaの昔のメンバーとの43 Odesにも参加しつつ、2019年頃よりソロ活動をOld Million Eyeとして再開します。カセット音源を中心に何作かリリースしていたあと、ヴァイナルとしてFeeding Tube Recordsより2021年にThe Incandescent Switch、2022年にThe Air's Chrysalis Chime、それに続くヴァイナル3作目Quartz Hiveが、同じくFeeding Tube Recordsから新作としてリリースされました。

 

Old Million Eye / Quartz Hive

これまではBrian Lucasが、基本的に一人ですべて制作していた。曲によって、一部ゲスト・ミュージシャンを使うこともあったが、そんなには多くない。今回は多数のミュージシャンをフル動員させて、アンサンブルを中心にアルバム制作を行っている。参加しているメンバーは、Dire Wolves、Angel Archerとして一緒に活動しているSheila Bosco(パーカッション、キーボード)、43 OdesのメンバーでもあるSteven R. Smith(ハーモニウム、ギター)、コラボレーションしたことのあるStuart Chalmers(ダルシマー、ソーマンダル)、前作に参加していたKevin Van Yserloo(ヴァイオリン)、Jem Fanvu(ヴォーカル、エレクトリック・ピアノ)、Zekarias Thompson(サックス)、Ceylan Hay(ハープ)などが、Old Million Eyeのサイケデリックな世界を構築しています。

Brian Lucasは曲の構想を考え、自身の朴訥としたヴォーカル、テープによるノイズなどで応戦しています。アルバム全体のイメージとしては、浮遊感あふれる独特のサイケデリックアンビエントにて包み込むといった感じ。各メンバーの力量もしっかりと反映しており、ときに不協和音を醸しながら巧くアンサンブルを作り上げている。最初に聴いたときは、取り留めなく思ってしまったが、聴き込むことで繊細で優美さを兼ね備えた音楽であることを確認した。これまで脇役的な存在であったBrian Lucasであるが、このアルバムで多くのミュージシャンを従えて作品を作り上げたことで、プロデューサー的な力量も凄いことを改めて感じてしまった。

 

 

 

 

 

スウェーデン地下音楽シーンの重鎮Dan Johansson率いるDrifting、ノイズとロリータ・ヴォイスのコラージュ作品!

スウェーデン地下音楽シーンの重鎮でEnhet För Fri Musik、Amateur Hourなど様々なプロジェクトに関っているDan Johanssonと、同じくAmateur HourのヴォーカルJulia Bjernelind、そしてアメリカのハーシュ・ノイズForm HunterのメンバーであるWeston Czerkiesによって結成されたDrifting。彼らのデビュー作 “Dream Autopsy” が、スウェーデンヨーテボリのレーベルDiscreet Music傘下のFörlag För Fri Musikより昨年末にヴァイナル・オンリーでリリースされました。私にとって要注目のレーベルで、本作も素晴らしい作品となっている。

 

Drifting / Dream Autopsy 

スウェーデン国内の様々なミュージシャンとコラボレーションを行っているDan Johanssonが、大西洋を越えたアメリカのノイズ・アーティストWeston Czerkiesと組むのは初めてです。自身のソロユニットSewer ElectionやOrdealでもインダストリアル・ノイズやドローンを実践しているが、これまでとはまた違ったノイズ音響的な雰囲気を醸し出している。一方でヴォーカルのJulia Bjernelindは、Amateur Hourで披露していたアシッドフォークやドリームポップの歌い方よりも、ウィスパー的なロリータ・ヴォイスで攻め込んでくる。ノイズとロリータ・ヴォイスのコラージュによって生み出された艶やかサウンドに魅了されています。

改めて、Dan Johanssonの凄さを感じてしまった。コラボする相手の魅力を引き出すのは勿論のこと、それをさらにプラスアルファに引き上げる彼の力量に完敗です。自身のソロユニット作品よりも、プロデューサー的な役割でプロジェクトやコラボレーションを行った方が、よりユニークで素晴らしい作品を作り上げているように思う。今後もDan Johanssonの動向をしっかりとフォローしていくしかない!

 

Dan - guitar, electronics, synth, reel-to-reel loops, bass, mixing
Julia - voice and guitar
Weston - electronics, found cassettes, reel-to-reel loops

 

 

 

Dan Johansson、Julia Bjernelind、そしてHugo RandulvによるAmateur Hourの2022年リリース作品。ヴァイナルは既に完売となっているが、今月やっと中古で購入することが出来た。

 

Weston CzerkiesとStefan Auneによるハーシュ・ノイズForm Hunterの今年1月にリリースした新作。

 

 


 

2024年3月のディスカホリック

今月はレコード5作品の購入実績でした。いつもあまり利用することの無いタワーレコードオンラインでの購入が多かったです。私の好む音楽について取り寄せが多いが、今回は在庫を持っていました。タワーレコードも色々利用したいと思い、Old million Eyeの新作は予約を入れた。ただOld million Eye Bandcampでリリース後、早い段階で販売終了となってしまった。すぐに予約をキャンセルしてリリース元Feeding Tube Recordsに注文し直した。好きなアーティストなので、買いそびれだけはしたくない。やはり在庫を持っているところが強いです。ちょっと高くついてしまったけどね。

 

Big Blood / The Grove(Vinyl) 購入先Tower Records Online 購入価格2,155円

 

Big Blood / Big Blood And The Bleedin' Hearts(Vinyl) 購入先Tower Records Online 購入価格2,155円

Caleb Mulkerin、Colleen KinsellaによるBig BloodのCDRとカセットでリリースされていた2008年の2作が、Feeding Tube Recordsより2023年に初ヴァイナルとしてリイシューされていました。現在の愛娘Quinnisa Kinsella Mulkerinをフューチャーした作品も素晴らしいけど、初期のシンプルでカオスしたアシッドフォークも良いですね。Feeding Tube Recordsは10年ぐらい前よりBig Bloodの新作をヴァイナルとしてリリースしてきました。初期の作品を扱うのは今回初めてなので、この2作がBig Bloodにとって重要であるのは間違いないですね。特にThe Groveの1曲目 “The Grove Is Hotter Than An Ocean's Oven” はBig Bloodの原点ともいうべき曲だと個人的に思う。

 

 

 

The Telescopes / Growing Eyes Becoming String(Vinyl) 購入先Tower Records Online 購入価格5,110円

2013年に録音していた2回のセッションをHDDに保存していたが、クラッシュ破損して使えなくなっていた。時を経て奇跡的に修復された音源をStephen Lawrieが自身のスタジオで再構築した新作。

 

 

 

Bardo Pond / Volume 9(Vinyl) 購入先Tower Records Online 購入価格5,110円

Bardo Pond のアーカイブ音源シリーズの第9弾となる新作。2000年代初期に録音されたアコースティックなアンビエンスと脅威的なディストーションが融合したBardo Pondならではの作品となっている。

 

 

 

Old million Eye / Quartz Hive(Vinyl) 購入先Feeding Tube Records 購入価格$62.00 USD(9,566円)

Dire Wolves、43 Odesのメンバーとしてもマルチに活動しているBrian LucasのソロプロジェクトOld million eyeの新作。Sheila Bosco(Dire Wolves)、Steven R. Smith(43 Odes)など多彩なメンバーがゲスト参加。浮遊感あふれる独特のサイケデリック感を披露しています。

 

 

 

Shimmy DiscのKramerが近年発見したDaniel Johnstonの2000年4月のライブ音源!

Iconic Daniel Johnston concert immortalised with LP 'Alive in New York City'

2019年に58歳で天国に旅立ったシンガーソングライターDaniel Johnston。精神の病と闘いながらKurt CobainSonic YouthBeckYo La Tengo、Flaming Lipsなど数多くのアーティストがリスペクトしていたアウトサイダーヒーローでもあった。今回、2000年4月にニューヨークで行ったライブ音源が発表されました。Daniel Johnstonのアルバムを手掛けたことのあるShimmy DiscのKramerが近年発見したDATからマスタリングされた音源をレコードとカセットでShimmy Discよりリリースです。

 

Daniel Johnston / Alive In New York City

私は2003年2月23日の初来日を観ています。飛行機が大嫌いで睡眠薬を飲ませ寝かせたまま日本に連れてきたとか、様々な伝説があった人です。この時はピアノの弾き語りで、本人が出てくるまで1時間近く待たされた記憶が蘇った。機嫌が悪かったのかな?本作は心身共に安定していた時期だったのでしょうね。彼の痛切で生々しい歌声とギターが、ほろ苦さを感じさせながらもユーモラスで優しく鳴り響く。観客と一体となった臨場感あふれるライブ盤となっている。Paul McCartneyの “Live And Let Die” 、The Beatlesの “You’ve Got To Hide Your Love ”も取り上げていますが、完璧にDaniel Johnstonの世界へと塗り替えていることが凄い。何よりも本人がこのライブを楽しんでいるように思える。彼の魅力を堪能できる傑作です。

ライブ音源以外のボーナス・トラックとして、ニューヨークで受けたストリート・インタビューからの短い抜粋が1分ほど収録されている。そして、これはカセット・オンリーであるが、彼が友人たちに送るために作られた “Telephone Demos” も収録。こちらは電話の受話器越しに歌った曲を何曲か纏めて20分弱ぐらいに仕上げている。2023年にJoyful Noise Recordingsがハンドメイドの7インチとして限定100枚でリリースしているが、一般販売しているのかな? ライブ音源とは違った、Lo-Fiで初期の実験DIY的な雰囲気が Daniel Johnstonらしさを物語っている。

 

このアルバムがリリースされたことでKramerが、音楽シーンに残っていたことを知った。プロデューサーとしてGalaxie 500やLowを見出したことや、Daevid AllenとHugh Hopperを90年代に結び付けたのは、彼の功績だと思う。一方で女性を含めた人間関係や金銭問題で色々とトラブルを抱えていたのも確かです。90年代のインディーズ・シーンで異端児とも言われていた。1998年に自身が運営するShimmy Discを売却してからも地味に活動していたようであるが、あまり情報が入って来なくなっていた。ただ、2020年頃よりShimmy Discを復活させているようです。Kramerとしてのソロアルバムもリリースしているのでちょっと注目している。