マッチレポート【2024年明治安田生命J2リーグ第10節 清水エスパルスvsいわきFC】

 第10節の相手はいわきFC。第9節終了時点で3勝2敗4分の10位。昨年は清水と2度の対戦でいずれも大敗している。

 清水は前節、甲府に劇的な勝利を収めて首位に浮上。欠場していた選手も戦線に復帰し、雪辱を期すいわきFCをフルメンバーで迎え撃つ。

(いわきは3-4-2-1かも)

 

 清水の後方保持に対して、いわきは1列目がボールをサイドに追いやり、ボールがサイドに出たらWBがSBまで縦スライド。サイドではめ込むようなプレスをかけてきた。

 高い位置に出てくるWBの背後のスペースへはボールサイドのCBがスライド。しかし残りのCBはスライドせずにゴール前を埋める。こんな特徴の動きだった。

 清水は6分、ルーカスブラガのゴールで先制する。北川がWB加瀬の裏に流れてフィードを受ける。北川はサイドまでスライドしてきた中央CBの照山を見事な浮き球コントロールでかわして置き去りに。そのままゴール前まで運んで逆サイドから走り込んできたルーカスブラガにラストパスを出した。

 前に出てくるWBの裏のスペース。スライドしてくるCBとの1対1(残りのCBがスライドしてこないので、ここを制すればフリーになりやすい)。そしてカバーの不安定な逆サイド(逆サイドのWBが高い位置から戻りながら守備するから)。まさにいわきの非保持の特徴を突いたゴールだった。

 さらに8分、いわきDFラインの裏に抜けた北川からのアシストで乾のゴール。清水が2点のリードを奪った。

 早々の2得点で清水が主導権を握るかと思いきや、その後の試合の流れはいわきに傾く。

 清水は保持時に乾が左脇に降りて4-3-3っぽい配置になるが、これにいわきの非保持配置がちょうど噛み合う。

 サイドで制限されて詰まるので、爆弾ゲームのようなパス回しになり、中へパスを入れても余裕がなく中盤で捕まえられてしまう。後方からの組み立てが上手くいかないと裏へのボールも単調になり、いわきも対応しやすい。ということで清水は中々チャンスを作れない。

 

 いわきの保持局面を見ると、配置とボールの循環にしっかりとした設計を感じる。

 WBで清水のSBをずらしてサイドの奥へロングボールを入れたり、IHの選手が清水のボランチを動かすとすかさず内側へミドルレンジの縦パスを刺す。

 サイドではWBを頂点とした三角形を作ってロンドのようにボールを動かし、アタッキングサードでは必ずポケットから裏狙いのラン。これで清水のラインを下げるとDFラインの手前のスペースに入ってシュートを狙うと。

 清水は中でも左足でフリック気味のパスを出すIH西川をかなり警戒していたよう。ここにはボランチ中村がマンツー気味についているように見えた。しかし西川の左足を制限できずに、逆に西川に動かされて中央を宮本1人でケアするような場面も散見している。

 前半の22分、ペースを握るいわきにゴールが生まれる。スタートは清水GK権田から。トップ下乾も含めて6人が自陣側に寄ってきた状態で権田が前線へフィード。

 この時、完全に前後が分断していて照山が弾いたボールを受けた左WB大迫にプレッシャーが全くかからない。

 大迫はフリーでトップの谷村にアーリー気味のボールを入れる。この時、宮本と高橋はギャップへランする有馬に意識がいって谷村への反応が遅れている。

 権田のフィードに合わせて前に出ていった乾の戻りも遅く、CBの前を宮本一人で見ている状態に。最後は西川に誰も対応できずにシュートを決められた。

 権田はおそらく相手のプレスがきていたので、前線へのフィードに切り替えたのだろう。それでも静止状態からのスタートで配置が崩れているのは少し切ない。またたびたび現れるトランジションへの備えと守備時の役割や関係性のあいまいさ。この辺りは早めに整えておいた方がいいと思うのだけど(といいながらすでに1年が経つが)。

 ということで前半は2-1と清水1点リードで折り返す。

 

 後半の清水の非保持を見ると、プレスのかけ方を少し変えたよう。いわき3バックの保持に対して左SHのブラガを出して前から制限をかけているように見える(清水は前半39分にカルリーニョスが負傷により松崎と交代。左SHブラガ、右SH松崎の並びになっている)。後ろで噛み合う形を作られたいわきは、長いボールで裏を狙ったり、前に当てて落としを拾うような前進になるのが60分頃まで。

 しかしいわきは徐々に相手の守備とのやり取りを見せる。右CB五十嵐がアンカーの右横に上がるような動きを時折見せて、これを気にしてブラガのプレスがぼやける。相手が噛み合わせるなら引き付けてずらしましょうが面白い。

 いわきは60分過ぎから再び繋いで押し込む時間が増え始め、アンカーの大西も前線の攻撃に参加してチャンスを作っていた。

 しかし追加点を奪ったのは清水。いわきが押し込んできたところをひっくり返すようにこぼれたボールを中村、乾と繋いで左のブラガに大きく展開。ここで山原が猛烈な勢いでオーバーラップ。ブラガから山原へのボールはゴールラインを割りそうになるが山原が粘ってゴール前の北川に。これを北川が決めて清水が再び2点差に突き放した。

 ポジトラから相手の制限をかわす技術と前に出ていく馬力。清水らしいゴールといってもいいかもしれない。

 その後、コーナーキックからいわきが1点差に詰め寄るも、清水は選手交代を交えて最後は3バックで守備固め。そのまま試合を締めて3-2で清水が勝利した。

 

 フィジカル面が強調されるいわきだが、攻守に整えられた組織的なチームで好印象。また個々も次のプレーへ繋ぐ個人戦術に加えて特徴的なストロングも備えている選手が多い。要注目のチームだ。 

 中でも挙げるならアンカーの大西選手。周りをフリーにする動き、へそでボールを受けて複数のルートを作る視野とオンザボールの技術もあるようだった。また急所を消すような守備、乾を抑えた対人もgoodでした。

 

マッチレポート【2024年明治安田生命J2リーグ第6節 清水エスパルスvsブラウブリッツ秋田】

 第6節の相手は秋田。開幕から2連敗したがその後は2勝1分。前節は栃木に3-0と快勝している。

 清水は前節千葉に3-1と勝利し2連勝。昨年勝てなかった秋田に勝利し3連勝を狙う。

(前半6分、乾が足の違和感を訴え松崎と交代)

 

 秋田の非保持は、ボールサイドにかなり圧縮してくるのが特徴的だった。またブロックのギャップを埋める動きが徹底していて、2トップも頻繁に中盤までプレスバックしてくる。さらに自分の背後への警戒も非常に強い。これらを見ると、秋田はまずブロックが崩れることを嫌っているようだ。

 ただし2トップも下がって守備をするため、ポジトラ時に前に人が配置されていないことが多い。つまり仕組みとしてカウンターに移行しづらいと言える。そこを小松のように単独で時間を作りシュートに持っていける選手で補っているのかもしれない。この試合でも小松が無理めのボールを収めて何度かシュートに繋げていた。

 

 こうした秋田のやり方に対して、清水はSHを大外に配置してサイドチェンジを多用していた。特に左サイドからのスローイン時にその傾向は顕著。例えば山原のスローインカルリーニョスが受けると、ほぼオートマチックに逆サイドにサイドチェンジを行っている。

 サイドチェンジのボールを右サイドでブラガが受けると秋田の左SBがスライドしてくる。しかしここは距離があるためブラガは余裕を持った1対1。これで相手SBはピン止めされるので、吉田が大外を上がった時はほぼフリーでクロスを上げられていた。ただブラガが持っても吉田は上がったり上がらなかったりが少し勿体ない。ここはブラガが持ったらオートで追い越すでも良かったのではないかと思う。(他の試合でもSHとSBの関係性を整理すればもう少しチャンスに繋がると思うのだけど)。

 また秋田はスペースを埋める意識が強いためか無理な追撃には出てこない。清水がワンタッチで素早く動かすと比較的容易にボールが繋がっていた。

 清水はこのような戦術的な準備からの攻め手は見せていたが、秋田も固い守備ブロックを崩さず最後まではやらせない。

 

 秋田は保持した時も、非保持同様ピッチの片方サイドに人を配置する。

 後方で保持すると、細かく繋がずにサイド前方にロングフィード。競り合いでこぼれたら同サイドの密度を生かしてマイボールにする。

 サイドの攻防でボールアウトしたらスローインスローインに対してもまた同サイドの密集を利用してマイボールに繋げる。

 ボールを縦に運んだらシンプルに中へのクロス。ゴール前には2トップと逆サイドのSHの3枚が必ず入ってシュートを狙う。複雑なことはせずにこれらの形を徹底して繰り返していた。

 秋田は、安定した非保持ブロックに移行しやすいよう4局面を回す。得点は生まれづらいがシンプルな形を繰り返す中でどこかでゴールが生まれればオッケー。こんなゲームモデルのように思えるがどうだろう。

 

 試合は秋田のゲームモデル通りの流れ。基本は清水がボールを持つが秋田の非保持ブロックを完全には崩しきれない。秋田はシンプルな形ながら小松を中心に前線にボールが渡ると時折チャンスが生まれる。

 そのような流れの中、試合を動かしたのは清水。前半26分、左からのコーナーキックは一度クリアされたが、清水が再びそれを拾ってクロス。クロスがポストに当たり跳ね返ったところを北川がダイレクトにゴールに蹴り込んだ。

 コーナーキックの配置から通常の非保持の配置へ。秋田にとっては試合の中でごくわずか、非保持時の配置が崩れた場面だった。そこを決めきる清水の強さを見せつけたとも言える。

 

 後半も基本的な構図は前半と同じ。秋田は前線から選手交代して強度と走力を維持する。じれずに自分達のやり方を崩さずに同点を狙った。

 清水も北川、ブラガに代えて西原、白崎と選手交代。87分には北爪、高橋を入れて3バックに変更する。

 秋田は最後はスローイン時にはCBも上げてのパワープレーを敢行するが、1-0のままで試合は終了した。

 

 スカウティングから明確な戦術を採用したこと、3バックで逃げきる勝ちパターンで締めたこと。戦術面で興味深い内容を見せた試合だった。戦術的な取り組みと試合で見せる基本的な原則への不安定さ。どこまでが意図したものなのか。今の清水は不思議な強さを持ったチームだ。

 

 秋田は打ち手は少なくともとも徹底すれば強い。そんなことを感じさせるチームだった。小松選手は一人でシュートに持っていく強さとしなやかさのある選手だなと。ちょっとした驚きだった。

 

マッチレポート【2024年明治安田生命J2リーグ第7節 モンティディオ山形vs清水エスパルス】

 第7節の相手は山形。開幕2連勝の後、3敗1分と調子は上がっていないよう。

 かたや清水はここまで5勝1敗。直近の試合は3連勝中。しかしこの試合は主力の北川、乾、カルリーニョスが負傷により欠場。主力抜きでの戦い方が注目される。

 前半始めから山形が完全にペースを握った。山形のビルドアップスタートは右SB熊本を残して後ろ3枚。

 対する清水は左のSH白崎を1枚前に出して数合わせ。高い位置からかみ合わせるようにプレスに出ていた。

 しかしこのプレスがはまらない。山形は右SH杉山で清水のSB山原をピン止めすると、プレスに出る白崎の裏のスペースにトップ下の国分が流れてくる。さらにボランチが2トップ脇の奥に顔を出す。

 これで中と外に前進コースを作る。清水はSHが外切りでプレスすれば内側に、中切りするとサイドへとボールを出されてしまう。

 トップ下から右サイドに流れる国分は常にフリーになっていて、ここがビルドアップの出口になっていた。清水はこれにボランチ中村がサイドへのスライドで対応するが、すると今度は中央が数的不利に。

 山形は国分が中央の選手に平行のボールを入れたり、もう1枚のボランチが前に出てさらに清水の守備を動かしていく。

 山形は左SHの氣田が中央にポジショニングする特徴的な動きを見せていて、ここが最後の崩しのポイントになっているようだった。中央に残った宮本は数的不利の中、これらの動きへの対応を強いられる。

 氣田が中に入ると対応する清水の右SB吉田豊は内側に絞り気味。そのため左の大外で山形左SB吉田泰授はフリーになりやすく、そこで1対1を仕掛ける攻撃も山形の狙いだったと思う。

 32分山形の先制点もこの流れ通りの形で生まれる。左SB熊本がボールを持つと左SHブラガ(ブラガは前半途中で左SHにポジションを移している)は外側を消すような位置取り。そこで熊本は内側に顔を出した高江にパスを出す。高江にはボランチ中村が出てきたが、高江は当てられる前にブラガの裏でフリーの国分にはたく。

 ボランチ中村が前に出たので中央は宮本一人。宮本は国分に寄せたいけど、中に氣田と南がいるため寄せきれない。逆サイドから松崎が絞って対応するも気田が余ってフリーに。氣田は慌てて寄せた宮本を外してシュートを決めた。まさに再現性のある攻撃から生まれたゴールと言える。

 

 清水の保持vs山形の非保持も見ておこう。山形のファーストプレスは明確に清水のボランチを消しながらCBにプレッシャーをかけていた。

 普段ならボランチを消された時は、SB山原と乾の関係性でそれを回避するところ。しかしこの試合は乾がいない。左SHの白崎が降りてフォローはしていたが、山原が単独で縦を狙う様子が目に付いた。

 また清水はビルドアップに詰まればシンプルに前に入れるが、この試合の前線は郡司と松崎。どうしてもフィジカルバトルで優位に立てない。

 ということで、後ろからの組み立ては詰まり、縦に入れたらボールは回収される。清水が保持してもすぐに山形のターンになり、山形に持たれると奪えない。清水にとってかなり厳しい前半の内容となってしまった。

 

 後半、清水に修正が見られる。まずボールを保持した時は、吉田が残って後ろ3枚の並びに。さらにトップ下の松崎が右ハーフレーンの低い位置まで降りるようになった。

 山形は吉田には氣田、右サイドを降りる選手にはSBが縦スライド。清水は山形の左サイドがタテずれしたその奥にボールを届けるプレーを何度か見せる。

 右サイドの高い位置を取れるようになったため、66分にブラガに代えてサイドを個で殴れる西原を入れたのは納得しやすい采配だった。

 また清水は非保持時にはマーク基準をはっきりさせたよう。まずボランチは相手ボランチをそのまま掴みにいく。右サイドに流れる国分はSB山原が前に出て捕まえる。

 山形の左SB吉田はブラガが下がって対応し、内側で浮く氣田は吉田がマークする。こんな守備基準になったように見える。

  これにより後半しばらくは互角の流れに見えたが、徐々にまた山形にペースが傾き始める。

 山形は清水が前からきたら長いボールで裏返すと、サイドを一人で見ているブラガの裏を狙い打ち。右SB吉田はトップ下のように振る舞う氣田に付いていくので、ブラガの裏のカバーに入れない。

 そこでマンツーマンだ!とマークを徹底するわけでもないようで、次第に清水の右サイドの守備はちぐはぐなものになっていく。

 ボール保持時はサイドに持っていくことはできるが、ただただ西原で殴るだけの攻撃になってしまった。西原が突破できればチャンスだけど、抑えられればカウンターで押し下げられる。

 お互い選手交代がなされたけれど、その後もこの構図は変わらず。最後はクロスのクリアが中途半端になったところを山形がダメ押しのゴール。スコア、内容とも山形に圧倒された試合となってしまった。

 

 思い出すのは昨年プレーオフ準決勝の山形戦だ。山形のチーム全体が繋がるようなポジショニングと相手を引きつけて止める、次に繋げる個人戦術。これらに対応できず押し込まれる構図はほぼ同じ。

 

 勝ち負けに関しては、主力3人の欠場が大きい。例え劣勢でも彼らがいればどこかでゴールを決めてくれたかもしれない。

 しかし結果だけでなく(結果は絶対的に大事だよ!)、試合の現象が正しく認識できているのか。そうでなければ個人能力ガチャにかけるようなチームから向上できないと僕は思う。今後同じような構図をぶつけてくる相手にどんな試合を見せるのか。そこに注目したい。

 

 清水側では、後半から出場した千葉選手は頑張っていた。彼の持ち味ではないけど味方のボールを引き受けて、背負って繋ぐプレーを懸命にこなしていた。できればもう少しだけでいいのでゴールに集中させてあげたい。

 山形の南選手、高江選手の両ボランチはとても良かった。次のプレーのために相手を引きつける。出し手にも受け手にもなり、裏表のキックの蹴り分けもできる。全くストレスを感じさせないプレーだった。

 

マッチレポート【2024年明治安田生命J2リーグ第4節 清水エスパルスv大分トリニータ 】

 第4節の相手は3年ぶり片野坂監督アゲインの大分。清水は前節の大敗(長崎に1-4)を受けての試合となる。

 試合の前半は清水が優勢。しかし後半は大分の修正もあり拮抗した好ゲームになった。

 大分の非保持は4-4-2。CBに圧をかけ、バックパスをスイッチに積極的なプレスが発動する。1列目の仲川が片サイドを切りながらGKまでプレスをかけ、それに連動してボールサイドの選手が出しどころを塞ぐよう前に出ていっていた。

 最前線から圧をかけてロングボールを蹴らせ回収が大分の狙いの一つに思われる。しかし清水の前線との競り合いでそこまで優位に立てていない。清水の前線にボールが収まると、ボランチも含めた一気になだれ込み作戦で何度もゴールに迫られていた。

 清水の右SHが松崎からルーカスブラガに代り、質的優位となる場所を作れなかったのも影響したのかもしれない。

 また大分は回収から保持に移行できても、清水のプレスの勢いの前になかなか前進ができなかった。

 特に右CBがカルリーニョスのプレスから逃げるように身体を内側に向ける傾向が見られる。そのためプレスを呼び込んではめられる場面が目についた。ここで正対できれば中、外の選択肢を作り、清水のプレスの矢印を折れたかもしれない。

 この他にも配置やボールの動かし方に保持への取り組みがうかがえるが、ちょっとしたサポートや身体の向きが追いつかず清水のプレスをまともに受けてしまうのが残念だった。

 大分はプレスに行けない時は、逆にCBへもあまりいかずにミドルゾーンにブロックを構える。1列目は基本ボランチを消すような立ち位置を取っているが、少し動き過ぎにも見える。

 例えば清水がCB→SBのパス交換するとボランチへのコースが開いてしまいがち。清水のボランチが前向きでボールを持てると、乾は下がる必要がなくなりライン間からフィニッシュへ向かう仕事に専念できる。

 大分側の試合後コメントにもあったが、大分の選手は清水の選手をかなり警戒していた。プレスをかけたい、でもいけない。このメンタルが動きの中途半端さに繋がったのかもしれない。 

 前半は、26分に清水のゴール前密集アタックが決まり(今回は成功)、清水1点リードで折り返す。

 

 後半、大分は右SH宇津元に代えて渡邉。清水はそのまま選手交代無し。

 大分は渡邉を左SHに入れて、野村をトップ下、仲川を右SHに回す。前半とはボール保持時の動きを変えて右SHが脇に降りる形になっていた。

 清水は非保持で相手を見る基準が変わり、カルリーニョスがやや前に出づらくなったかもしれない。(ボランチが野村を見ると、カルは仲川を気にするような)

 前半同様にカルリーニョスが外切りプレスをかけても内側にサポートの数が増えて選択肢がある。保田、弓場がCBからのパスコースを作り、野村がライン間で潤滑油的な役割を果たしていた。崩しのポイントとなる野村が右SB吉田のマークから解放され間で仕事をできるようになったのも大きかったと思う。

 この修正が効いたと見たか、大分は60分にその流れをさらに強化するため3枚の選手交代。最前線の長沢へ、またSBへなど飛ばしのボールも交えて、明らかに前半より相手陣内に入る回数を増してきた。

 後半に入り、展開は五分五分。ここで勝負を決めるのが個人の能力だ。

 73分、蓮川からのパスを山原が受ける。山原はスライドしてくる大分右SH有働をそのまま抜きにかからず一度止まって正対する。正対して相手を止め、そこから仕掛けたことで有働を置き去りに。そして味方が相手を引き付けてできたスペースに突入し、バイタル辺りで右足を一閃。個人戦術と味方のスペースメイクが連動したゴール(結果的にかもしれないけど)が決まり清水がリードを広げる。

 清水は選手交代を交えて、最後は5バックで試合を締める。そしてそのままスコアは動かず2-0で清水が勝利した。

 

 ボランチが前向きでボールを受けて乾が前でボールに絡む。この状態になれば清水は強いをあらためて。また前半のように相手のプレスが中途半端になってトランジション合戦になるのも清水の強みを発揮できる展開だった。

 大分側に触れれば、前半の上手くいかなさからの後半の修正。これは自分達のやるべきサッカーがしっかり存在している証左だと思う。しかしその未完成さへの自覚が相手への過度なリスペクトに繋がり、結果として前半の内容に影響したのではと想像する。ここが次回対戦時にどうなるか。ちょっとした楽しみにしたい。

 相手選手に注目するとボランチの保田選手。後半、次への選択肢が増えると間でターンからの落ち着いた展開、前に絡むプレーなど良い選手だなと思った。

マッチレポート【2024年明治安田生命J2リーグ第2節 清水エスパルスvs愛媛FC 】

 今年は雑感程度にでも試合のメモを残していきたい。すぐに挫折しそうだけど。

 さてホーム開幕戦となる第2節。相手は今期J3から昇格してきた愛媛FCだ。試合を通して愛媛にはとてもコレクティブな好チームだという印象を持った。

 

 愛媛は清水の後方での保持に積極的なプレスをかけてきた。左のSH、SBを1列ずつ前に出し、こちらのビルドアップを前から窒息させる。

 それでも清水はあまり長いボールを使わずに、乾が左脇に降りたり(いつものパターン)、左SB山原が絡んだりしながら中央に縦パスを差し込もうとしていた。

 開幕戦ではCF北川航也のポストプレーが光ったが、愛媛はブロック内に縦パスが出されたところを狙い撃ち。愛媛の非保持の役割的にボランチの片方がフロートしているので、追撃にくるCBと挟み込んでくさびのボールを絡め取っていた。

 清水の後方ビルドアップは、2CBに2ボランチ、さらに乾も降りるなどかなり後ろ荷重。そして愛媛はSHも前に出して高い位置でプレス。この状態でトランジションが起きると愛媛のプレス隊がそのままカウンター要員となる。

 ということで清水は無理やり縦パスを差し込み、何度も綺麗にカウンターを浴びている。

 また愛媛はボールを持つとシンプルに裏狙い。味方の動きで清水のDFラインをずらすとすかさずその裏に飛び出し後ろからボールを入れてきた。

 特にスピードのある右SH窪田を山原の裏に走らせ、何度かチャンスを作っている。

 

 長いボールを裏に入れば清水が得意な中盤で奪取してのカウンターの局面を作らせないし、ボールを失ってもそのまま相手陣内でプレスに移行できる。

 そして相手陣内でプレーすれば押し込まれて無理やりこじ開けられる可能性が減る。

 これら愛媛のプランはお互いの力関係を見ればとても理にかなっている。清水を意識したものか、普段通りなのかはわからないけど。とにかく前半の清水はこの策にはめられていた。

 しかしゴールを決めきれない愛媛とゴール前で踏ん張る清水。良いプランとその遂行を見せたが、個人の質の差がなんとも残念と感じる前半の愛媛だった。

 

 後半は詳しく見てないのでサクッといく。 

 後半に入ると清水がペースを握り始める。理由の一つは疲労の影響で愛媛のプレス強度が下がり始めたからと思われる。後半20分過ぎにまずトップ下曽根田と左SH茂木を交代したのも運動量の確保が目的ではないか。

 また清水自身もビルドアップ時の動きに修正を入れたよう。乾が高い位置をキープするようになっている。

 清水は相手のプレスに詰まると、シンプルにカルリーニョスに当てるように長めのボールを出している。乾が下がり過ぎないので、失ってもプレスがかかりやすくなったようにも見える。

 その乾はライン間で受けるそぶりでサイドに流れたり、前に出たりでマークにつく相手のボランチを動かしていく。自分が受けて引っかけられるより、味方にスペースを提供してボール前進に貢献する。

 また乾は左サイドライン沿いでのボールタッチが増え、そこを起点にサイド攻撃を促したり、逆サイドに大きく展開するプレーを見せている。

 58分の先制点もやはり左サイドに開いた乾が起点。ボランチ中村とパス交換で愛媛ボランチ谷本を引き付けると、そのスペースを山原が運んでいく。左ワイドの高い位置でパスを受けた乾は右サイドに大きくサイドチェンジ。

 サイドチェンジのボールを受けたのは愛媛の中切りの守備にここまで沈黙気味だった松崎。愛媛のサイドバックがスライドしてきたが余裕を持って1対1を制してインスイングのクロス。この時、原が内側を抜けてボランチのカバーを剝がしたのもgood。その松崎のクロスを北川が頭ですらしてゴールを決めた。

 さらに終了目前の89分。またもや前方へ上がった乾と山原の関係で左サイドを突破し乾のクロス。北川がそれを決めて2点目を奪った。

 愛媛も後半は繋いでの前進も見せながら何度もチャンスを作るが、やはり決めきれない。試合は2-0で終了する。

 

 この試合を観る限り清水の全体の作りは昨年と大きく変わっていない。最終ラインから中盤へのパスを遮断する清水対策は今年も効きそう。しかし局面、局面では解決策に取り組んでいる様子がうかがわれる。あとは新加入選手の特徴でどこまで変化が生まれるか。今後、苦しい試合が訪れそうだが紙一重の部分を選手の質で力ずくで乗り越えられるのでそこに期待といったところ。

 愛媛はなかなか良いチームだったが、それでも勝てないのが勝負の辛さ。あと左サイドバックの田中選手は攻守においてポジショニングや判断が良い選手でけっこうお気に入り。

マッチレポート【2023年明治安田生命J2リーグ第33節 清水エスパルスvs徳島ヴォルティス】

 前々節、町田との天王山を劇的な勝利を飾った清水。続く秋田戦は痛恨のドローでしたが、この徳島戦で勝点3を得れば自動昇格圏内に浮上です。

 かたや一時は降格圏に沈み、苦しい戦いが続く徳島。前々節の山口戦後にラバイン監督との契約解除を決断し、吉田達磨監督が就任しました。そして前節の金沢戦は1-0で勝利。この勢いのまま勝利を重ね降格の足音を消し去りたいところでしょう。

 お互い立ち位置は違いますが、この一戦が重要な試合となることは間違いありません。今回も事象に沿って観察してみたいと思います。

メンバーとフォーメーション

 フォーメーションは両チームとも4-2-3-1。

前半

徳島のボール保持と清水のプレス

 開始直後、清水が勢いよく前に出てチャンスを作りますが、徐々に徳島が保持からペースを握り始めます。

 徳島は2CBと白井(ときおり永木)の3枚でビルドアップスタート。対する清水はこの3枚を2トップで見る形です。しかし清水の2トップがここを上手く監視できません。清水の前線は前からはめ込む意思は見せますが、徳島の引き付ける動きとフリーになるポジショニングで容易に前進を許してしまいます。

 徳島がフリーで前進するとそこを起点に今度は中盤ラインの前で数的優位に。この数的優位を使ってまたボールを前進させます。

 例えば持ち運ぶ森昴大に白崎が出れば柿谷が空き、中山が出ていけばケサダが空きます。
 徳島はこうして順に清水の守備をずらして前進。そこから一度ワイドに振って、右は浜下のカットイン、左はケサダのクロスや内側に入った西谷が絡みゴールを狙います。

 しかし清水陣内では清水DF陣の強さもあって決定機までは至りません。徳島がボール保持で支配するも最後は決め手を欠く。前半しばらくはそんな流れになっていました。

清水の保持と徳島の非保持

 前半の開始から徳島が保持で主導権を握りましたが、清水も保持する時間は作っています(前半30分までの保持率は約46%)。

 清水の保持は2CBとボランチ、さらにトップ下の神谷がボランチの高さに降りて5枚でビルドアップスタート。

 対する徳島は2トップがプレスを抑えて真ん中を埋めつつ、ミドルゾーンに4-4-2のブロックを形成。徳島の中央を消しながらのコンパクトな4-4-2のブロックの前に清水はボールを差し込むスペースを見つけられません。

 するといつものパターンで清水の選手はボールを欲しがり段々と低い位置に降りてきます。

 相手の1列目のラインより低い位置に4、5人いる状態が常になり、後ろでボールを動かせても相手の守備ラインは越えられません。

 中盤が後ろに下がるので前後が分断。無理やり縦パスを通しても相手の守備に対応されます。この状態が飲水タイム前まで続きます。

前半飲水タイムからの修正

 清水非保持の問題は、2トップで相手のビルドアップ3枚を監視できないことが始まりです。

 飲水タイム後の清水は前線のプレスに右SHの中山を参加させ、CBが空いたら中山を前に出し嚙み合わせる形に変えてきました。また2トップの裏で徳島のボランチがフリーになった時は、清水もボランチを素早く出して塞いでいます。

 これで徳島のビルドアップに制限がかかります。徳島はSBの位置を下げたりプレスの変化に対応しているようでしたが、詰まった時は無理せず前に長めのボールを出しています。

 清水が前に出ていくので後ろは同数になりがちですがロングボールの競り合いは清水が優位。清水はボールを回収すると徳島が守備をセットする前に素早く相手ゴールへ向かいます。これで少しオープンな状況になって清水も徳島陣内に攻め込む時間を作ります。清水が展開を五分五分に戻したところで前半が終了しました。

後半の流れ

後半の入り

(後半開始後すぐにカルリーニョスが負傷によりコロリと交代)

 清水は前半飲水タイム後の流れを受けて、より前への圧力を強めてきたように見えました。

 例えば徳島保持の48分。ビルドアップのサポートに永木が少し降りるとすかさずホナウドがプレス。そして中盤に降りてきた柿谷には鈴木義宜が高い位置まで出てきて追撃。徳島のビルドアップを詰まらせています。

 徳島も右SBの石尾を前に出して長いボールのターゲットにしたり、保持から前進の姿勢も見せますがゴール前までは迫り切れず。

 清水はセカンドボールの回収から速攻、またコロリと山原を中心に左サイドを崩すプレーで攻め入る場面を作ります。

 特に55分は清水最大のチャンスでした。コロリのSB-CB間へのランでCB内田を動かすと、内田が動いたスペースを山原が突いてゴール前まで侵入します。決定機と思われましたが山原の折り返しをGKスアレスがキャッチ。ここは清水が完全に崩したように見えますが、徳島も的確なカバーリングでゴール前にはしっかり人を確保していました。

 この時間帯は清水が攻勢を強めましたが、徳島も守備組織を崩しません。前半の飲水タイム後から均衡状態が続きます。

徳島の選手交代とシステム変更

 流れを変えたのは61分の徳島選手交代から。浜下、柿谷代えて西野、杉本がピッチに入ります。同時にシステムを3-4-2-1に変更。このシステム変更によって清水のプレス基準があいまいになって、再び徳島が保持できるようになっていきます。

 徳島が保持時間を伸ばすとオープンな状況が消えて清水はボールを持っても前進できなくなります。相手のワントップに対してボランチや神谷も降りてきてしまうので、後ろ荷重とそれによる前線不足が顕著に。

 61分、ホナウドの不用意なターンをカットされ背後を突かれたように、無理やりに前を狙ってカウンターを受ける場面が散見し始めます。

 そこで清水も64分に選手交代。山原と中山に代えて吉田と北爪。システムを3-4-2-1にしてミラーゲームの形にしました。

 システムを嚙み合わせて前からはめ込みたい清水ですが、逆にこの交代で流れはさらに徳島へと傾きます。

 清水保持では、3バックに加えてそれまでと変わらず中盤が降りてくるので前線はさらに薄くなります。65分清水のビルドアップでは、ボールサイドではめ込まれ左サイドの吉田が前に出したボールを簡単にカットされました。 

 また清水非保持の局面では、前線3枚がCBにいくもボランチが相手のシャドーを気にするため1列目と2列目の間が乖離。そのスペースを移動する徳島の中盤に清水のボランチが動かされてたびたび中央にスペースを作ってしまいます

 流れを掴んだ徳島は75分飲水タイム後に再び選手交代。森海渡とケサダに代えて、トップにフィジカルで対抗できる渡、シャドーにライン間からゴールへ向える棚橋を投入します。
 清水もサンタナに代えて北川航也、神谷に代えて宮本。ここはフレッシュな選手に代えて攻守の強度を上げつつ、ワンチャンスを狙います。

 おそらく秋葉監督も非保持での前線と中盤の乖離は気になったはず。交代後には前線の裏のスペースに早めにボランチが出てくるようになっています。
 しかし清水のボランチが前に出ることでシャドーの棚橋がたびたびフリーになります。さらに右CB石尾のサイドに開く動きや、白井の降りてくる動きで前線のプレスもぼやけ気味に。棚橋への縦パスが入りやすくなり、間から運ばれ決定的なシュート放たれます。
 徳島の決定機をなんとか防いだ清水も右サイドの北爪から強引に仕掛けますが、ボールを運ばれると徳島は5-4-1でセット。ゴール前を塞いで清水の猛攻をしのぎます。 結局、お互いに最後はしのいでそのままスコアレスでタイムアップ。
 多少組織を崩してもオープンにして個の力の差を生かしたい清水。粘り強く組織を維持して対応した徳島。スコアは動きませんでしたが、お互いの攻防は見応えのある試合だったと思います。
 
 
 

観戦メモ【2023年明治安田生命J2リーグ第31節 清水エスパルスvs町田ゼルビアの前半】

 前半は町田が固い守備をベースに流れを掴む。ボールを持てばサイドを中心とした縦に速い攻撃で清水ゴールに迫った。

 清水は最後尾では保持しようとするも上手く前進できず回収される→再び町田のターンへの流れとなっていた。

 

 試合開始直後の清水の後方保持。ホナウドがアンカー、シラが右脇、乾が左脇に降りる中盤3枚気味。
 町田の非保持はまず2トップがアンカーを挟む位置から。清水のCBが動かすとプレススタートし、SBにパスが出るとSHが早めにプレスをかけてくる。左脇降りて受ける乾にはボランチの松井が前に出て自由を奪う。

3:08

 上記の形でエリキが原のところではめてスローイン。その後、エリキのスローインを町田SB鈴木がファーにクロス。ファーで山原、鈴木宜と松井が競り合いこぼれたボールを髙橋がゴールを決めた。クロスが上がった時点でCB高橋と鈴木の間に町田の選手2人走っていて、ファーで競った時にはその手前で3人浮いていた。ロングスローを意識していたためかマークがあいまいになっていた。

7:20

 清水保持。ホナウドが右に降りて後ろ3枚でスタート。町田はエリキが怪我でピッチ外のため441。1トップに対し3枚は後ろに重たすぎる。ホナウドが持ったところで左SH高橋がプレス。ホナウドが縦に運んで乾に横パスも町田のブロックもそのまま下がったので結局1列目を越えず。町田の守備組織も動いていない。

 その後、白崎が右に降りて後ろ3枚。白崎は左SHの高橋を揺さぶるように中外をうかがう。白崎が降りた方が相手の1列目とSHを動かせる。

 ホナウドが下がって後ろ3枚になると白崎がアンカー位置に入る。右脇で相手を動かせる選手がいなくなり、乾のいる左からの攻撃が主となる。前半、中山がボールに触れる機会はかなり少なかった。

8:40

 空中戦で弾いたボールを山原拾ってドリブル。中を動かせずにカットされるならサイドを無理にでも剥がした方が良さそう。

13:35

 清水保持、GKから。原を高い位置に上げて左SB奥山にぶつける。そして権田からロングフィード。しかし奥山競り勝って原の裏のスペースでエリキが拾う。そこにホナウドがスライドして対応もさらに裏に髙橋大悟走ってパスが出された。ここはCB高橋のクリアで事なきを得るが、ホナウドが中央からスライドしたため中央には広大なスペースができている。

17:55

 町田のロングフィードのデザインは藤尾が右サイド少し降りた位置でターゲット。山原に藤尾をぶつけつつ、エリキも右に寄って、髙橋、平河で対応に出てきた清水DFラインの裏を狙う形か。

 藤尾を狙って逸れたボールを裏でエリキ。山原が対応した裏を平河が突くと鈴木宜が右にスライドしてくる。これで中央はCB1枚剥がした状態。

 町田はSHに縦突破できる速い選手を置いて、ボールを持ったら相手のSBと勝負させるようにサイドの裏を狙う。藤尾が右サイドでターゲットのなるのも含めて、サイドを中心に縦に速く攻める。突破できなくてもクリアされたボールをロングスロー。これが基本的な攻撃の形のよう。

22:10

町田2点目。宇野のサイドチェンジから平河。平河サイドを突破してクロスを上手く前で合わせられた。徹底的にサイド突破からクロス狙いだなと。

26:10

 乾が降りて松井が付いていく。松井が動いたスペースにカルリーニョスが入って縦パスを受ける。町田右SB鈴木が追撃してこぼれたが、カルリーニョスがそのまま拾って中央を剥がして右サイドに展開。

 右で白崎、乾と繋いで白崎は前へ。左SB奥山が内側に絞って、ワイドの原はエリキが下がって見ている。白崎が宇野の背後に回り込みむと、宇野が気にして少し右に動く。乾がその瞬間、宇野の左脇を通して奥山とエリキの間を割るようなスルーパス。原には通らなかったけど見事なコンビネーションだった。

 相手を押し込み、個人の戦術眼が発揮できる状況になると清水の攻撃は脅威。

30:32

 後方から原の裏を狙ったエリキ目掛けてロングフィード。開いたSB-CB間に平河がラン。そこを白崎がカバー。エリキが中を上がった宇野にパスした時に中央の守備者はホナウド一人。ここは中山が内側に絞ってカバーした方が良さそう。2列目にスペースができてほぼフリーで平河への縦パスの落としをエリキがシュート。

31:38

 清水GKからビルドアップ。清水ペナエリア近くまで乾が降りて鈴木からのパスを受ける。町田、右SH平河が乾にスライドしたが乾がターンで剥がす。そして中に運んで逆サイドの前線にパスしたが距離が遠くスライドした左SB奥山にカットされた。

 乾の受ける位置が低いため、剥がしても前との距離が開いてしまう。ミドルレンジのパスで出し所が読みやすいためスライドされてロストする場面が目立つ。

36分

エリキ負傷でバスケスバイロンと交代。

37:13

 左スローインから。1度後ろに戻して高橋から原へのパス。原はSH平河より高い位置でパスを受けたため相手陣内まで運べた。ここまでSBの位置が低くSHに対応されていたが、このくらいの高さで受けたい。

37:28

原が運んだ後、白崎への横パスをカットされる。そこにホナウドが寄せてくるが交わさると中央ががら空きに。乾が後ろからバイロン倒してチャンス潰しでイエロー。ボールにどんどん出ていくのがチームのコンセプトなのはわかるけど、状況的にはホナウドは中央に留まってバイロンの前進を遅らせた方が良さそう。遅らせて味方の帰陣を待てば乾のイエローもなかったはず。中央にスペースが生まれた理由は13:35とほぼ同じ。

39:30

 乾がSH-CHの間で受けて倒される。SH-CHの間、つまりライン上。受けて失敗すれば挟まれるけど、成功すればターンで置き去りにできるポジション。

42:29

 カルリーニョス内側に降りて松井が寄せる。その後ろ、わずかに出来たコースに乾が顔を出して鈴木からの縦パス。チャンミンギュ後ろから追撃。ファールでFKに。乾から山原に出し、山原のクロスを高橋祐がヘッド。弾いたところをカルリーニョスがゴールを決めた。

前半まとめ

 中央を締めつつ、乾も松井が強く監視したため清水はそのままでは前進コースがなかった。清水のCBはあまり動かせないのでボランチが下がって後ろ3枚になる。さらに乾は町田のコンパクトなブロックと松井のプレッシャーを嫌ってかなり低い位置で受けようとする。また中を使えない時に、サイドを使いたいけどSBの位置も低い。相手のSHより高い位置を取りたいが、CBの横にポジションして逃げ場所になろうとしたのかもしれない。

 自分がフリーで受けやすそうな場所に移動して受けてもいいが、もう少し前で留まり相手を止めたり、二択を作って迷わせるような動きがないとスライド対応されるだけ。降りてくることで、距離が開く&周囲に味方がいなくロングボールも対応されやすくなる。縦パスやロングフィードはほぼ対応されてそのまま町田のターンへの繰り返しだった。

 一方、町田は内側を締めたコンパクトな守備と乾を強く消してブロックの外に追い出した。

 ボール保持でもサイドを徹底的に使うダイレクトな攻撃で結果的に2得点。1失点はしたものの、狙いはほぼ遂行できたのではなかろうか。