漫画の話の返信

id:m-kikuchi氏への返信。

 

まず、参考書を読んでいないという決めつけはすみませんでした。
「視線」という単語が出てきたので、まとめサイトで適当に影響を受けた「アホな視線誘導論者」かと思ってケチをつけました。
その点はごめんなさい。
(参考書は、評論とか技法書くらいの意)

 

 

で、詳しい話はこちらを読んでもらうとして、

m-kikuchi.hatenablog.com

本文の

日本のマンガの場合、視線の流れ的にはページ右上→左下に向かって動いていくのが自然なので、仮に152ページに「開始」があると、最初に読まれるべき(「防衛隊〜最終審査」の次に読まれるべき)文字が右下にあることになり、視線の流れに齟齬が生じてしまうのです。

の部分に僕がケチをつけたわけです。

 

視線の流れが「ページ右上→左下に向かって動いていくのが自然」だからといって、「文字が右下にあることになり、視線の流れに齟齬が生じてしまう」とはならねえだろ、と。

 

この「視線の流れに齟齬が生じる(から、普通はそうしないはず)」という部分に引っ掛かったわけですね。

「漫画は右上から左下に読む」ことに異を立てるわけではありません。

 

追記で

マンガを読む際ページの右下から読むってことは(中略)珍しいケースだと思うのでそう書いた訳ですが

 と書いていますが、

本文からは「右下から漫画を読む・読まない」とかそういう話だとは思わなかったです。

 

コマの左下に「開始」の文字があるほうが自然ではないでしょうか?

場所としては、左側にいる少女・四ノ宮キコル(防衛隊員選別試験の最注目株で、防衛隊長官の娘)の右脚あたりですね。

 とあり、

この例では「文字」より上部に「キャラクター」がいて、先にキャラが目に入る(上から下に視線が動く)ことが前提の文章に読めるので。

(自分で読み直して思ったけど、ここの説明すごいややこしいな)

 

あくまで、「文字を右下に置く」「右上ではない場所から文字を読む」ことを想定して話をしています。

 

※ちなみに、スマホ表示で収まりがよくなるように「開戦」の文字をあの位置に持ってきた、というブログ内容は肯定します。

 

 

で、漫画の視線の話ですが、「ページ右上から左下に読む」自体はその通り。

これは日本語の縦書きの文章がそうなっているからで、ページ内だけでなくコマ内でも視線の流れ(時間の流れ)は同じ。

(大雑把に分ければ、右から左・上から下ともいえる)


ただ、それは大まかな視線の動きの「原則」でしかない。

漫画は、この原則からはみ出すことで時間や感情を豊かに演出します。

提示する情報の順番を「右上→左下の流れ」からずらすことで、コマ内の時間(や感情)の流れを操作できるのです。

(正確には「右上→左下」だけじゃなくもっと細かく視線は折れ線のように動くし、余白なども使って操作するのだが、長くなるので省略)

 

漫画を読んでて、急にスローモーションに見えたり、感情が増幅されたりすることがあるでしょう。1コマで経過する時間が他より長く感じたり。

あれはコマ内の情報の位置を操作してるから起きるものなんです。

逆に、「右上→左下」の基本的な配置だけだとただの単調なリズムの、淡白で無機的な話になります。

 

文章を書く時も、用途や場面によって文を痩せたり太らせたり、ひっくり返したり読点を多用したり、意図的にボリュームや時間を操作しますよね。同じです。

漫画はそれを視線の流れの中でも行います。

 

 

視線が「右上→左下」に流れる原則があるからといって、その順番通りに情報を配置しなければいけない訳ではないのです。

 

こんなん、漫画読んでりゃ当たり前の話だろ、それを齟齬と呼ぶってどういうこっちゃと思ったのでケチをつけたわけです。

 

 何度かブログ本文を読み返していて、理解したうえで書いているのかな?とも思ったのですが、最初に書いたように、追記部分を読んでまたよくわからなくなりました。

 

で、文章だとわかりにくいと思うので、手元にあった漫画から適当に例をいくつか。大雑把な例なので、それぞれ条件等は違いますが。

見ていて時間や感情が操作されてるのがなんとなくわかると思います。 

(画質は意図的に落としてます)

 

 

f:id:hiruneya:20210207154415j:plain

 (志名坂高次・粂田晃宏『モンキーサークル』2巻 104ページ)

 

 

f:id:hiruneya:20210207154604j:plain

田村由美『ミステリと言う勿れ』5巻116ページ)

 

 

f:id:hiruneya:20210207154551j:plain

福本伸行賭博黙示録カイジ』11巻 8ページ1コマ目)

 

f:id:hiruneya:20210207154558j:plain

(小池ノクト『6000ーロクセンー』3巻 94ページ)

 

 

文字がない例としてはこういうのも。

画面下部に、頭を右下にして足を左上にというように、丁度視線の流れと真逆にキャラが倒れてるという絵ですね。

f:id:hiruneya:20210207154612j:plain

南勝久ザ・ファブル』22巻70ページ)

 

 

ちなみに僕がめちゃくちゃ怒ったのは、こんな簡単な話も通じない漫画読みとやらをいくつも見てきたからです。

 

いや、普通に漫画読む人はこういうことを全っ然知らなくていいんですよ。うへー楽しい、面白い、なんかわかんないけどすげーって読むのは自然なことです。

 

しかし漫画通を気取って、調子に乗って解説とかをする人間に限ってこうした基本すらも知らないことが多いので、お前ら何やねんと憤っているわけです。

(今すぐそいつらの例を出せと言われても困るが)

 

映画や小説なんかと比べても、ネット上の「漫画の話」はちょっとひどい現状だと思っています。

(もちろん漫画感想が全部だめとか言ってるわけじゃないぞ)