マラカスがもし喋ったら

読書メモ、講演メモ中心の自分用記録。

【イベントメモ】宮台真司氏退官記念トークvol1『90年代以降のニッポン社会と音楽・サブカルチャー』@LOFT9 Shibuya

【出演】
宮台真司社会学者)
渋谷慶一郎(音楽家
西村紗知(批評家)
【司会】
ジョー横溝
 
相対性理論+渋谷慶一郎『アワーミュージック』(2009年)
渋谷慶一郎の父 渋谷重光 社会心理学 広告学 南博
・95年に物心がついていたかどうかが決定的=終わる前と終わった後を知っているか問題
・それ以降スーパーフラット
・フォッシュマンズ佐藤伸治の死(1999年)、フジファブリック志村正彦の死(2009年)
1984年2月 渋谷区桜丘マンション5階 学習塾「鳳凰慶林館」→ヨガ道場「オウムの会」 麻原彰晃28歳
・渋谷区桜丘 三浦和義 「フルハムロード」 輸入雑貨店 良枝夫人
・微熱感
・今の渋谷再開発はクソ 安藤忠雄 渋谷区議会
・アンドロイドお教
・廃墟論 工場見学ブーム
レイ・ブラッドベリ火星年代記』 人類が滅んだあとに機械がいつもの生活を行う
サロマ湖 湧網線跡
・廃墟後の東京 渋谷
・廃墟の美学 ベンヤミンの廃墟論
・新しいカルト宗教ブーム カニエ・ウェスト→Ye(イェ)
パパ活マッチングアプリ 入れ替え可能性 回避
・地雷系ファッション
寺山修司 トルコ風呂評論家 
早稲田大学 丹下隆一 宮台のナンパの師匠
援助交際のメンヘラ化
・メンヘラ 心を道具化する存在 自分の心を客観的にみている
J・G・バラード 終わりの感覚 『コカイン・ナイト』
・不倫 このつまらない法社会生活 年に1、2回はお祭りが必要
新海誠妻 成宮観音
・災害=祭=解放=絶対/相対
マルクス『経済学・哲学草稿』、今村仁司『貨幣とは何だろうか』、仲正昌樹『貨幣空間』
・ケネー 重農主義自然主義 原初の贈与
・自然を加工して加工して加工して商品を作る。逆側に労働報酬として貨幣を返していく。
・大元の太陽には貨幣をお返しできない
・この貨幣の交換によるシステムはあくまで限定的。システムの内と外
マルクス 外の商品化 柄谷行人「システムの内から見える外と、本当の外は違う」
パーソンズルーマン流のグランド・ セオリーと、どうしてもそこからこぼれ落ちるもの
・ドバイ World Government Summit ダニエル・デネット
・人間は相対からは力は得られない
ナウシカ オデュッセウス 漫画版 全ては仕組まれた世界
・法に閉ざされるから力が出ない 絶対から、外から力を得ること
 
◆要約:95年で日本社会が決定的に終わった。その境目の記憶があるか、95年以前を知っているかどうかで人間が全く違う。
それ以後はスーパーフラットな社会。
◆感想:予想していた内容と全然違ったが面白かった。もっと小室ファミリーがどうとか椎名林檎がどうとかJ-POPの話をするのかと思っていたが殆どなかった。
95年に物心がついていたかどうかが決定的という話。
自分の理解でいうとハーバーマスのいう「システム」が「生活世界」を飲み込み尽くしたのが95年だったということか。
72年に「政治の季節」は終わって、その後は戦後民主主義と消費社会の豊かさを享受する時代だと思っていたが、95年にそれはやっぱり無理なことが確定した。
その後はネオリベが前景化してきて、資本主義リアリズムに塗り潰された時代になる。
大澤真幸の理想の時代/虚構の時代/不可能性の時代という整理もある。
 
その境目となる90年代のホット・スポットだったのが渋谷。
オウム真理教の発祥の地であり、三浦和義の輸入雑貨屋もあった。
コギャル文化があって怪しげな風俗も多かった。
不思議な磁場が働いた魔境のような街。世紀末。
渋谷慶一郎は渋谷生まれだそうで、このテーマを語るふさわしい人選だったと思う。
 
その後の硬直した社会の中で、脱出口を見出すことは出来るのか?
内と外の関係。人間は相対からは力は得られない。
 
「セクハラ」という言葉が人間のスキンシップを奪ってしまったのと同じように、
「ナンパ」という言葉も有害だったように思う。意識しないほうがよかった。
見知らぬ人どうしが、道端でも普通に会話をすることがあるべきだと思う。
微熱感という宮台真司のキーワード、
街自体が建築的な意味でも変容して、向井秀徳のいう冷凍都市になってしまった。
ゼロ年代は完全にストリート・カルチャーがない。
 
いろいろ触発されること多し、
西村紗知さんの本を読んでみたいと思った。


【読書メモ】広瀬隆『ジョン・ウェインはなぜ死んだか 新訂版』(文藝春秋 1988年)『億万長者はハリウッドを殺す 上・下』(講談社文庫 1989年)

 
目次

 

ジョン・ウェインはなぜ死んだか 新訂版』

・82年初出
ネバダ核実験場 ネバダ砂漠 ラスベガスの北西約105kmの地点
・1951年から1992年にかけて、928回の核実験が行われたことが公表。うち、828回は地下核実験 
・本実験場が開設される以前のアメリカの核実験については太平洋核実験場で実施されていたが、核兵器及び人員や設備を太平洋まで輸送するのは時間も費用もかかる上、冷戦の激化及び1949年にソビエト連邦原子爆弾の開発に成功したため、核兵器開発を迅速に進めるためにアメリカ本土に実験場が開設された。
・1963年 部分的核実験禁止条約(地下核実験は可能) 1993年 包括的核実験禁止条約
・地下水の汚染
・西部劇のロケ隊
 

『億万長者はハリウッドを殺す 上・下』

・単行本86年
・トーマス・アルバ・エジソン(1847 - 1931) ゼネラル・エレクトリック
ジョン・ピアポント・モルガン(1837 - 1913)
南北戦争時の翌年、モルガンは旧式のライフルを1挺3.50ドルで購入し、改良したのちに22ドルで北軍に売却してスキャンダルになった(ホール・カービン事件)。
南北戦争、デュポン将軍(北軍) 八百長で敗北し金価格を釣り上げる。
コーネリアス・ヴァンダービルト(1794 - 1877)鉄道王
・金ぴか時代 1865年の南北戦争終結から1893年恐慌までの28年間、あるいは特に1870年代と1880年代をさし、アメリカ合衆国において資本主義が急速に発展をとげた時代
・カリフォルニア・ゴールドラッシュ 1848年-1855年 → 鉄道の時代 『西部開拓史』
・アレクサンダー・グラハム・ベル(1847 - 1922) AT&T
・J・P・モルガンとヴァンダービルト 電信会社を買収(ウエスタン・ユニオン社)→通信の傍受→株のインサイダー取引、金塊輸送計画を察知し強盗
・J・P・モルガン 電信・電灯・電話・鉄道を握った → USスチール
アンドリュー・カーネギー(1835 - 1919) 鉄鋼王
ジョージ・ウェスティングハウス(1846 - 1914)交流 エジソン直流
ジョン・ロックフェラー(1839 - 1937)石油王 製油所 スタンダード・オイル社 談合とライバル潰し
・以上のようにして、モルガン家とロックフェラー家は、19世紀が終るまでに大部分の重要な産業を手のなかに握った。それだけではない。両家はアメリカの大統領以下、すべての重要閣僚を自分の部下のなかから選び出し、合衆国を支配してきたのである。
・モルガンとロックフェラーが操る十本の指は、次の通りである。
1〔輸送〕鉄道・ 自動車・船舶・航空機
2〔資源〕石油・石炭・金銀銅・ダイアモンド
3〔科学〕大学・研究所・発明家
4〔技術〕機械・電気・通信・化学
5〔食糧〕穀物・果実・家畜・飲料
6〔政治〕大統領・閣僚・議員
7〔軍事〕軍隊・兵器・諜報機関
8〔司法〕弁護士・検事・判事・警察
9〔報道〕新聞・雑誌・テレビ・ラジオ
10〔娯楽〕映画・音楽・スポーツ
この十本の指を操るのが、彼らの持つ金庫、すなわち銀行である。

【映画メモ】若松孝二監督『天使の恍惚』(若松プロダクション、日本アート・シアター・ギルド 1972年)

@横浜シネマリン
 
・四季協会 フランス二月革命前後にブランキが組織した革命集団
・武器の調達
内ゲバ
・党 規律
共産主義無政府主義の対立
・ピース缶爆弾 ただ破壊すること
・「自分の身体を張って闘えるヤツ、本気で孤立できるヤツ、個的な闘いを個的に闘える奴等、孤立した精鋭こそが世界を換える、世界を創る」
 
◆感想:
面白かった。まずこの四季協会の組織制度が面白い。よくできている。
主人公のチームは党のために命をかけて仕事をしたのに、党の都合で任務から外される。
大きな目的のために自分を犠牲にするか、それではそもそも自分たちが打倒しようとしているシステムと変わらないとなるか、
全体最適をとるか部分最適をとるか、大義のためなら個人を迫害していいのか、
このようなアナボル論争は普遍的なのだと改めて思った。
この前に観た『PFLP』はもろに連合赤軍に影響を与えたと感じたが、
こっちはもろに反日武装戦線に影響を与えたような気がする。
この映画作成とあさま山荘事件の時間関係が重要だと思うが、
たぶん、作ってるときに事件が起きたのだと思う。
日本がどんどん「豊か」になっていき、革命はなりそうもない。
彼らが苛立っていたもの。爆破したかったものは何だったのか。
その後、一見すると平和だが、藤田省三「安楽への全体主義」のような世の中になり、
緩やかな監獄のような社会の今に至る。
 

【映画メモ】若松孝二、足立正生監督『赤軍-PFLP 世界戦争宣言』(若松プロダクション 1971年)

@横浜シネマリン
 
・帝国プロパガンダに対抗するための武力誇示 
・空気は現前性(いま目の前にあること)によって変わる
PFLPパレスチナ解放人民戦線(Popular Front for the Liberation of Palestine)
・1953年 ジョージ・ハバシュが設立 パレスチナ解放機構PLO)に参加 急進派
・1970年 PFLP旅客機同時ハイジャック事件 ヨルダンの「革命空港」にて3機の旅客機が、各国のメディアの目前で次々に爆破
・1969年9月2日、塩見孝也ら30名のメンバーにより神奈川県・城ヶ島で「赤軍派」を結成。9月3日、関東学院大学金沢キャンパスに集結。9月4日に葛飾公会堂で初の決起大会を開いた。9月5日の日比谷野外音楽堂で開催された、全国全共闘結成集会に「蜂起貫徹、戦争勝利」のときの声とともに公然と大衆の前に姿を現し、「秋の前段階蜂起」、「世界革命戦争」、「世界赤軍建設と革命戦争」などを主張した。
・銃を取れ 頭脳警察PANTA 関東学院大学 世界革命戦争宣言
・自己を革命化すること 
プチブルかプロレタリアか
黒田寛一「小ブルジョワの意識はブルジョワに近く、生活はプロレタリアに近い。内面の自由を侵されることには強い反発を示すが、労働者階級の革命運動にも敵意を示す」
・観念主義と行動主義
・1959年1月1日 キューバ革命 達成
重信房子と奥平剛士 1971年日本出国→レバノンベイルート
若松孝二足立正生、1971年の監督週間で「犯された白衣」「性賊/セックスジャック」を上映。帰国途中にパレスチナへ渡る。
・革命は成るか?
・インターナショナル
 
◆感想:
非常に面白かった。最初プロパガンダの定義から始まるのはうまいと感じた。
プロパガンダがすでに戦争。
チョコレートや自動車の広告が流れるテレビと、安保闘争PFLPの旅客機炎上との対比。
潔いプロパガンダを目的とした映画でさっぱりしている。
 
自分はこの歳になりやっと文脈がある程度はわかるのでこの映画を理解することが出来る。
もっと前に観ていたら引いていたか、もしかしたらもっとハマっていたかも知れない。
 
当時観た観客はどう思ったであろうかと考える。
大半の人はついていけないと感じ、ある一部にはグッサリと刺さったと思われる。
そして、その影響があさま山荘まで直結する。
 
この映画を若い頃に観て乗れなかった人たちは、
自分たちはもっとスマートに他の方法で、知識社会化と科学技術によって社会を変えられると思ったと思う。
彼らには一応その矜持があった。
 
でも、世代を経るごとにその反発のようなものも消え、ただのただれた消費社会になり、
人間がゾンビのような社会になってしまった。
 
いま日本がまた貧乏になったことと、シオニストの酷さが露呈していることで
時代が一周しているような気がしないでもないので、
とてもタイムリーな映画だと思った。
 

【読書メモ】井上淳一監督『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』(若松プロダクション 2024年)

@横浜シネマリン
 
・シネマスコーレ 1983年開業 51席 風俗ビル 支配人木全純治さん 
・弟子入り
河合塾 全共闘
・80年代 歴史の終わり 終わらない日常 撮るべきものがない 怒りがない時代
大林宣彦 青春映画
・革命と日常との折り合い
・映画の力、ミニシアターの力
 
◆感想:
小品として面白かった。コロナ禍で窮地に陥ったミニシアター振興。
若松孝二が燻っていた時代。
大文字の政治や革命が終わり、個人的なアイデンティティが問題になっていく時代。
自分の実存とどう折り合いをつけるか。
主人公が若松孝二に弟子入りを願う一歩を踏み出すシーンが印象的。
田舎の映画青年が人生を変える千載一遇のチャンスを掴む瞬間。
自分だったら震えて足が出ないと思った。
けど、その機会を掴む人は準備が出来てる人だと思った。
井上監督は若松孝二の著作を読んでいたし、映画界のこともよく調べていた。
そしてこれから女性が映画界に進出していく時代でもある。
良い時代に生まれた自分たち世代の責任、使命なんかを考えるいまかも。