自作キーボード前文 ~満足と理想~
ふとしたことで現在使っているキーボードに不満を持つことはよくある事だ。そこから「もっといいキーボードを使いたい」と思う人は少なくないだろう。その中には「理想のキーボードってどんなのだろう?」と疑問を持つ人がごく少数いるかもしれない。だが一般的にその考えは即座に「高級なキーボードを買えば満足できるんだろう」と変化してしまう。
そこで問おう。
果たして、”満足”は”理想”たり得るのだろうか。
世の中には高級な(単純に値段が高いという意味で)キーボードが存在する。東プレのREALFORCE然り、PFUのHHKB然り、富士通のLibertouch然り。たしかにこれらのキーボードは購入時の満足度が高い。キータッチも良いし周りの評判も上々だ。だがそれらはあくまで「一般的なキーボードをしっかり作ったもの」と言ってしまえる。HHKBはちょっと特殊で一般的とは言いがたいが、”理想”とは一概には言えない。
なぜなら、理想は個人個人で違うからだ。
そもそも、すでに広く知られているようにキーボードは不完全な道具である。意味なく左右にずらされたキー配置、むちゃくちゃなアルファベットの配列、日本語に適合していないローマ字、気が狂ったかようなJISかな配列、小指を酷使するAとEnterなどなど、挙げればきりが無いほどの欠陥の塊がキーボードというものだ。
たしかに安いキーボードの不満が改善されていれば交換時した際に満足するし、それ以外の要因は無視できるほど小さいのかもしれない。しかし元来、キーボードに対する不満というものはそれほど大きいものではないのだ。だからこそ980円のキーボードでも不満を言う人は多くないし、それを改善しようと思う人はごくごく少数派であり、高級キーボードはマニアのものとしていつまでも高価であり続けている。
目を見開いてほしい。高級キーボードで得られる「満足」の先にも、別の世界は広がっている。
キー入力に対するよりよい環境を作るため、何が必要かを考え、改善し、追求し、極めていく。キータッチが不満なら、何が不満なのか。どうすれば自分は満足するのか。スイッチか、キーキャップの形か、全体の剛性か、高さか、重さか、角度か、そこだけでいいのか。もっと自分は不満に思っていることはないのか。自問自答を繰り返し、”理想”を探し、少しずつ近づいていく。その行為自体を楽しみ、理想を持つ自分を理解していく。それが「自作キーボード」という世界だ。
もちろん、一般的なキーボードの持つ問題はある程度ソフトウェアで解決できる。だがこのソフトウェアというものがまた問題の一つとなりえる。1台のコンピューターのみなら時間をかけて調整すればかなり解決できるだろう。だが、コンピューターが変われば設定のやりなおしになる。また他人のコンピューターは弄ることができないことも多い。そしていくらソフトウェアを駆使しても、キーキャップの形やスイッチの微妙な位置ズレなどの純粋なハードウェアへの不満を解決するのは不可能だ。
だが、自作キーボードならそれらを「根本的」に解決することができる。
どこにどのキーを置こうが自由。キー数も増やそうが減らそうが自在(30キーしかないキーボードのキットすらある)。手のひらの形にキーを配置することも、親指にShiftやEnterを持ってくることも、キーを打つたびに光らせることも、キーキャップをダースベイダーの顔にすることもできる。そしてひとたびそのキーボードをコンピューターに接続すれば、自分のベストな環境が再現できる。自分が何を求め、どうすれば満足いくか、何が理想なのか、思う存分悩み、苦しみ、楽しむことができるのがこの自作キーボードの世界である。
そして、自分の理想を極めるのは非常に難しい。
End Games.
自作キーボーダー憧れの言葉。
理想のキーボードが完成し、それ以上のものはないと自分が確信した時の言葉である。
願わくば、これを読んだみなさんが、できるだけ”遅く”End Gamesに辿り着けんことをーーー。
蜂蜜小梅の個人的結論
そろそろ、蜂蜜小梅の結論を出そうと思う。
蜂蜜マトリックスは3行×5列の格子フィルタ
蜂蜜マトリックスの正体は、左手側に設けた3行×5列の単純な格子フィルタです。行方向で子音(シフト位置)の選択、列方向で母音の選択を行い、右手側の子音候補の打鍵との掛け合わせで、定義した拗音全てを左右同時打鍵の1ストロークで入力します。
- 84 文字を、基本定義となる親指キー同時シフトで配置しています(*)。このうち、「濁音」と対になる「清音」を清濁ペアとして同じキーに定義(清濁同置)しているため、84-5×4=64 の記憶負担で84文字を入力できるとまでは言いませんが、10万字サンプル での打鍵頻度わずかに1回と激レアなカナ「ぢ」も忘れにくくなっています。
- 104 組の拗音を定義しています。
マトリクスの影響
ハイブリッドの意味
さらに詳述すれば、蜂蜜小梅配列は拗音を子音と母音とに分解して入力し、
- カナ(直音+捨て仮名)
- カナ系/親指キー同時シフトで入力
- 拗音
- 行段系/文字キー同時シフトで入力
という、二重にハイブリッドな構造を採用しています。ただし、一部のカナは例外的に文字キー同時シフトで(も)定義しています。
「複雑な配字ルールなんて端から覚える気がありません。」
そう。その通り。慣れの問題だ。
だが、複雑な配字ルールを無理して覚える必要などない。
慣れるなら、ステノワードに慣れたほうが圧倒的に速いのだから。
NICOLA創始者のお言葉
(画像右下のa,b)
日本語ワードプロセッサーOASYSの生みの親、神田泰典氏のHP
蜂蜜小梅の改良への道
何事も最初は苦労があるものだ
以前からキーボードの自作をしようと色々計画を練っていたが、先日レーザーカッターが安く使える所を見つけたので「作るか」と、ついに重い腰を上げた。
外はあったかくて良い天気で自転車で走ろうと思っていた。どうせならスイッチのマウント用プレートデータを作って10キロほど先にある店まで走ればいいなと、せこせことイラレを弄っているとあっという間に日が暮れた。作っているのは前々から欲しかった40%キーボード(普通のキーボードの4割のキー数〈40~43個〉)なので、ざっと作ればすぐ切りに行けると思っていたのだが、太陽の動きは思いの外俊敏である。
綺麗な夕焼けと共に焦りながらマウスを操作していたところ、重大な問題が発覚する。なんと、キーボードのスイッチ位置を決めるには、キー配置がどうなっているかを正確に決める必要があるのだ!(当たり前)
とにかくレイアウトを決めようと、ネットを漁ってテンプレを探すと、面白いサイトを見つけた。
さすがGithub。なんでもある。
ここで弄ればキー配置は自由自在に設定できる。これはいいと弄り始めたら、まあ時間が飛んで行く飛んで行く。日が暮れるどころか、あっという間に日付が変わろうとするところまできてしまった。おかしい。騙されてる。俺の日曜を返せ。
それでできたのが、この配列である。
アーススター配列
Earthキーが下段レイヤー(キー下段)、Starが中段レイヤー(キー中段)。
特徴
- キーのグリッド配置で、タイピング時のロスを低減。
- テンキーを40%キーボード内に納めて、かつ入力が簡単にできる。
- 記号はキーボードに表記しているものすべて網羅。102キーフルに打てます。
- カーソルもEarthキーで右ホームをくずさずに移動。
- ZキーのNum(Lock)を使えばStarレイヤーにロックされ、テンキーや四則キー、$¥などがすべて単独キーで入力可能。カンマ、ドットも単独で配置。普通の102キーより便利なはず。
- 英語日本語の切替用のIMキー(Ctrl+Space)を単独にし、日本語と英語の切替を一瞬で行える。英語はIM通さなくなるけど、その方が早い。どうしても通したい用に、IMの拡張に全角/半角とCaps Lockを入れておく(入れられれば)。
- そして、親指シフトも可(やまぶきR等のFEP使用)。
ちなみに、日付が変わった頃に大体のレイアウトが決まり、足りない記号は無いかと探していたら、日頃使ったことの無い記号を見つけた。@キーの上に表記されている「`」だ。アキュート・アクセントというらしいが、今まで全く使ったことがなかった。Firefoxを使ってどうやって使うのか調べ、Wordを使って表記させる方法を試していたら、Firefoxが落ちた。Wordではない。「Firefoxが」である。
上記にあるが、私はキー配列をGithubを使って作っていた。そしてその時まで、私はGithubにユーザー登録をしていなかった。
これがどういうことかというと、「MS死ね」ということだ。
まあ一度組んだキー配置だから再現するのはそれほど苦労はなかったが、それでも寝る時間が2時間ほど遅くなったことは間違いない。
はやくイラレデータを作って、来週はレーザーカッターを使いに行かねば…。
蜂蜜小梅近々結論
蜂蜜小梅を始めてそろそろ1年4ヶ月が過ぎようとしている。現在はほぼ普通につかえるようになっているので、そろそろ結論を出してもいい気がしてきた。それがずっと延び延びになっている141Fさんへの回答にもなるだろう。
目的の違いによる重要キーの違いや、個人の好みによるキー配置は変えて行かざるを得ないと思っている。特に記号とマトリクスについては、大幅に変更となると思う。
しかし、141Fさんが膨大な時間をかけた上でこの配置にしているので、その理由は知りたいところだ。141FさんのBlogを全て読み返し、データをひっぱり出す必要があるかもしれない…。目次でも作れれば一番いいのだが…。
と言いつつ、自分が使うだけなので自分の好みにすればいーじゃんという囁きも聞こえる。どーすんべかね。
HUTAレビュー(上)