バーサ・クール&ドナルド・ラムシリーズ全29作中18作目の作品ですから中期ですかね。久しぶりの本シリーズで、ずっと読んでいなかったのは、いささか飽きてきたからなんです。久しぶりに読むと、こんな絶妙なユーモアミステリは最近まったく見られないから、非常に愉しめる。
15歳の少女のサンドラ・イーデンが探偵社にやってきたところ、金をもっていないため、バーサはサンドラの依頼を断ったが、彼女から失踪した叔父の創作という依頼内容を詳しく聞いたラムは、個人的に引き受けた。同時に探偵社に、1週間前から見つからない夫を捜してしてほしいと妻から依頼があった。探していくと、その夫の腐乱死体が見つかった。いったい犯人は誰なのか?
その少女はミステリイや犯罪実話に夢中で、以下のように語られています。
「ミセズ・イーデンは本棚のほうにあるいていき、『エラリー・クイーンの冒険』をとった。そのとなりには三巻になった『シャーロック・ホームズ・シリーズ、ドロシー・ヒューズの『ピンクの馬にのつて』レックス・スタウトのネロ・ウルフ物、また『ロスアンジェルスにおける殺人事件』という本もならんでいた。」(23頁より)
主人公のドナルド・ラムが、何か「これは違和感がある」と計算高く頭脳的に動いて、関係者から事件の手がかりを話させる。周りのバーサや新聞記者、保安官や弁護士もラムを利用しようとして近づいていくものの、最後はラムが利用するというアメリカン・コメディにあるよくある展開が素晴らしい。
というわけですが、ミステリの展開そのものは、推理がアクロバットすぎて無理があると感じさせるため、☆☆☆というところ。ちなみにタイトルはどうしてこのようなタイトルにしたのかなと疑問に感じさせるくらい、あまり意味はありません。もっと惹きつけるタイトルにすればよいのに。