『回廊』第12号: 『濡れるのは裏側の瞼』
著/恵久地健一

 盲目の女の子の独白から始まるお話。本人の想像を本人が把握しているのか、発想を手堅い面白さを提供してくれる。運転で言ったら、ハンドルの遊びのような物がもう少しあっても良いのかもとも思ったけど、でもそうしたら緊張感はなくなっちゃうのかなとも思った。
 作品内で女の子が自分のことを語るに至った経緯を改めて考えていたら、もしかしたら○○なのかも〜と新たな構造がかいま見えて、ぞくっとした。


『回廊』第12号: 『世界の果ての年代記《クロニクル》──World's End(前編)』
著/夏目 陽

 〈世界の終わりの村〉という村にたどり着いた人の話。ルポみたいな語り口。作者さんそれぞれの方向性は違うので並べることはできないが、12号の第一特集の中で最も気に入ったのはこの作品。センテンスだけでも読ませる。回廊の作家陣の中で、最も今風な印象を受けない。少しだけ浮き足立っているようにも感じる。その二点が合わさって、奇妙。まだまだ、余力があるのかも。後編の展開が楽しみ。

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まとめ。
久しぶりに回廊を読んだら、全体的なレベル(書く人も編集の人も何もかも)が
あがっているんだなぁと、感慨深くなりました。
読書が好きで、ネットでも何か読んでみようかなって思う方は
本当に一読をおすすめします。
読書の秋ですしね。

今更ながら、回廊12号の感想です。

『回廊』第12号: 『そして僕は「世界」になり』
著/水池 亘
絵/あらし

 学校のお話。想像の仕方は面白いと思った。アイデアは斬新と言えないまでも、著者の中で練り直すことで、想像力を発揮させる舞台を作り上げているのかも。それゆえに、原稿用紙60枚は短かったのではないかと思う。冗長でもいいから、2倍・3倍の分量になっても喜んで読んだ。
 想像したことをもっと丁寧に拾い上げたら、良質のSFとしてさらに飛躍できたのではないだろうかと思った。


『回廊』第12号: 『ノイエ・エイヴィヒカイト』
著/秋山真琴
写/友利亜

 宇宙のお話。著者の超短編的世界を拡張したような印象。私の好きな展開。短い割に、プロット感も受けない。豊かな発想。自ら決めた量の作品をぴったり仕上げられる人なのかもしれない。
 なんだろう。お洒落な服装でお洒落なカフェに入って、お洒落なケーキを食した感じ。
 何となく文章に余裕を感じてしまったことは残念でもあり、愉快でもあった。もっと書けるんだけど、今日はここまで〜と言われた感じがした。

12号のPDF版を見たら、すごいことになっていた。
デザインがちょうかっこいい。
PDFのデメリットをイメージして中身を開けていない人は、
一回だけでも良いから落としてみることをおすすめします。
なるべく最近の物がいい。
これ見た後だと、回廊のサイトが少し寂しく見えた。

恥ずかしながら近代の名作を網羅していなかったので、今年から古典?を時間のとれた際に読んでいます。
日本の作家で特に気に入ったのは森鴎外。読んでいると興奮します。
何を書いても、どこを切り取っても小説になる。
本的な本、小説的な小説の文を書けるというのは何とも羨ましい物ですなー。
いわゆる基礎体力のある文章や、ブッキッシュな文章というのはそれだけで様になります。そうして、そのような文章をいつかは書いてみたいなと思います。


ところで、本読みの方って素敵ですな。

うちの方の図書館は二昔くらい前のラノベは置いてあるけれど、ここ数年の物は皆無に等しいです。
どこもそうなんでしょうか。需要がないのか寄贈する人がいないのかはたまたリクエストされないのかされても却下されるのかな。
かくある自分はラノベをリクエストしたことがないので何とも言えないのですけれど。
本好きでも本に割けるお金は微々たる物なので、そいうのもちょちょっとそろった図書館があるといいなあと思いました。

『回廊』第12号: 『LUNA, Mad Maria in the Wrong』
著/キセン
絵/遥彼方
文章が上手いと思う。良い本をたくさん読んできたんだろうなぁと思う。
面白い短編だと思うし、短編ならではという気もする。シーンの移り変わりにややぎこちなさ少しだけ違和感を感じる。けれど、良いはしょり方をしているとは思う。一人称だけど、視点は一人称を見ている『僕』という印象。そこの奇妙さをもって、本を読んでいる感じがした。キセンさんの小説は、一環したテーマがあるように思える。
あと絵にはworldと書かれているが、タイトルなどにworldの文字がない。
どちらが正しいのだろう。