彼氏のsnsを監視し続ける女
平成の終わりに彼氏ができた。
大企業の地方の支社に勤務する彼とは所謂婚活アプリで知り合った。
プロフィールの写真は正直あまりタイプではなかったが、自分の人生でおそらく交わることは無いであろう、なんというかすごい人からアプローチが来たなと思いながらメッセージのやり取りを交わし、自然な流れで一緒に食事をすることになった。
初対面からドライブ、居酒屋、長時間拘束コースを提案してくる男性も数多く出くわしたが、昼間の数時間で初対面を済ませようとした彼に好印象を抱くと共に、婚活慣れをしているんだなと感じていた。
地元の駅の近くの落ち着いた喫茶店で当たり障りのない会話のキャッチボールを終え、次回の約束と共にLINEの交換をする。
LINEの登録名はアプリと同じだった。下の名前の頭2文字であろう。
わたしはチャンスを逃さず、下の名前を尋ねた。
先の会話で苗字も聞き出している。フルネームゲットだぜ!
家に帰るとお礼のLINEもそこそこにFacebookを開いて彼の名前を検索する。案の定すぐ彼のアカウントを見つけた。漢字も判明。
判明した漢字フルネームでgoogle検索をかけるとインスタグラムのアカウントが見つかった。投稿は無かったがインスタグラムのIDでTwitterを検索。ビンゴだ。
数年前で更新が止まっているがつぶやく頻度からして今もTwitterを続けている可能性が高い。フォロワーを一件一件チェックし続ける。見つけた。彼が今使っているアカウントだ。ネットリテラシーが低すぎて逆に信用できる。好きだ。
数年分のつぶやきをリプライ含めて遡り、ブログや質問箱もくまなく目を通す。アドレナリンがドバドバと放出されている音が鳴り響く。これだからネットストーカーは辞められない。
彼の好きな映画や音楽を把握する。
2回目の食事でその知識を小出しにして趣味が合うことをアピール、3回目はアルコールを交えて彼がコンプレックスに感じている見た目の部分を褒める。その日の帰り道で交際を申し込まれた。
付き合い始めて数ヶ月、わたしは今も彼のsnsを監視し続けている。
正直見なければよかったと思うことも投稿されているが朝起きてアカウントのチェックが習慣になった今、簡単に辞められるものではない。この執着は果たして愛なのか恋なのか。
いつか彼が私に愛想をつかすときが来たら、付き合う前からsnsを見ていたよ、と教えてあげよう。そうすれば私のことを忘れないだろうから。