下の娘が中学受験で忙しくなって以来、もう年単位でウチのピアノは鳴っていない。
そうなるとリビングにおいてはただの邪魔者である。実家からタダでもらっておいて申し訳無いが。
孫の代まで残す・・なんて何時になるかわからんし、それまで置いておくのはばからしい。
とはいえ、捨てるのももったいない。手前味噌だが、かなり程度も音も良い
低音は豊かにひびき、高音もキシキシせずクリアだ。とても50年前のピアノとは思えない。
そこで脳裏に、例の泣く子も笑う、銀色の人が踊るCMがうかんだ。そうだ、売って次の人に使って貰おう。
そう思っていろいろ調べたら(カワイのBL-71という機種だった)、20万円前後のそれなりの値段が付いて売られている。「この時代のピアノは完全国産で作りが良く、木材も今では入手困難な良質な物を使っているので音の良さには定評があります!」だそうな。 お、これはお宝的な展開を期待して良いんじゃ無いか?
というわけで、夕ケ毛卜ピアノ(仮名)にさっそく電話してみた。なんと実物をみなくても電話査定してくれるという。
電話越しに指示され、音を出したり内部のサビやフェルトの状態を確認したりした挙げ句「程度は良いみたいですね。では少々お待ち下さい」と言われしばし待つ。
そして鑑定結果は・・・ジャジャン!「お邪魔でしたら無料でお引き取りできますよ」 ゴミ扱いかよ!
「・・・BL-71の場合、最高買い取りはお幾らなんですか?」と聞いたら「最高でも0円ですね」とのこと。
じゃぁ色々確認するまえに、機種聞いた時点で「あ、値段つきませんけど」って言えよ。時間だいぶ損したわ。
いたく気分を害して「・・・検討します」と言って電話を切りました。
まぁ、クリーニングしたり調律したり展示販売したり、という手間や在庫リスクを考えると売値20万円でも原価はそれぐらいなのかもしれないけどさぁ。あんだけCMうってたら宣伝費用も凄いやろうけどさぁ。
悔しいので、無料で訪問見積してくれる業者数社に声をかけました。
そして訪問見積1社目は1万円の値が付き、そんなもんなんやと思っていたのだが2社目がひどかった。
若いにーちゃん(ホストっぽい)だったのだが、ピアノはおざなりに見て写真をとっただけで(音すら鳴らさない)、「では本部に査定してもらいますのでお時間少々いただきます・・・その間に他に指輪やネックレス・腕時計等を見せて頂けませんか? なんでも良いんで」と来た。そっちが本命かよ。
「ネックレスの箱だけでも、今なら1000円で買いますよ」というので持ってきたら、「あー・・・これ中身が欲しいですね、何かネックレス持ってきてくれませんか?」と結局箱だけでは買い取ってくれない。
「美術品はもちろん、腕時計もデジカメも、古いのでも何でもとりあえず持ってきて下さい!」と言うから本当に古いのを持ち出したら一目見て「あ、これはお値段つけられませんね」と塩対応。 結局、本当に価値のある物以外はいらないらしい。 そらそうか。
しばらくそうやってあの手この手で「何か無いですか?何でも持ってきて下さい!」と粘っていたが、ゴミを並べていたら諦めて帰っていった。あ、ピアノはもちろん0円査定でした。 結局、いまはやりの押し買いって奴だったんだなぁ。
とはいえ、ひっかかってしまって業腹ではあるものの、ビジネスモデルとしてはよく考えているものだと感心した。
指輪やネックレス、美術品を死蔵しているといえば年寄りの家庭だが、あの人達は面倒くさがりなので、自分から売りに行くことはまず無い。しかしいきなり家を訪問して「買い取りますよ」といっても、まず門前払いだろう。
しかしピアノを見積るという口実でいったん家に上がり込んでしまえば押しに弱い年寄り世帯、居座って粘ることは容易だ。
その兄ちゃんに「いや、ピアノを切り口に家に上がり込むって、すごいうまい事考えてるよね! 考えたひと凄いわ!」と素直に絶賛していたら、「え・・いや・・・」と黙り込んでしまったけど。
あ、それはそうと、ピアノは結局別の業者に1万2千円でドナドナされて行きました。
次の人も「いい音だなー」と思ってくれたらいいなぁ。