生後0日
無事に出産を終えて、ナースステーションに一番近い病室でひと段落。子どもは、基本的には病院預かり。2時間に一回くらいのペースで、病室に子どもを見せに来てくれる。
僕と奥さんの母親が、知らせを聞きつけて病院へ来たので、看護師さんに無理言って子どもを見せてもらう事に。
正直な感想、こんなにもか弱い生物があるものかと思うくらい、小さい。小さな泣き声を上げたと思うと、5秒くらいで疲れ果て、休憩。また30秒くらい経った所で泣き出して、やっぱり5秒で力尽きる。その必死さがなんとも可愛かった。
順調に行けば一週間で退院できるとの事なので、後の事は病院に任せて、母達と祝杯を上げる事に。
酒の席では自分の娘を褒めまくり。もともと子どもは好きな方なので、ある程度親バカになるとは思っていたが、見事な親バカが出来上がった。
掛け値なしに褒めちぎって良い存在、と自分の中で認識しているらしい。兄弟のいない僕にとって、自分よりか弱い身内、というのがとても新鮮なのだ
僕は父親になった
7月9日木曜日。雨がちらつく朝。今日は、奥さんが検査入院する日だ。現在38周目。出産予定日は7月23日と告げられていて、まだ余裕はあるのだが、妊娠初期から奥さんの血圧が高くなってしまい、一度入院して様子を見ようという話だ。
僕の仕事は休みが不定期で、別に休みをあわせたわけではないのだが、たまたま今日は公休日だった。
「せっかくなので、車で送ってあげましょう」
ちょっと得意げにそう伝える。病院まではひと駅。駅からは徒歩5分。休みが不定期な僕は毎回送り迎えはできないので、通院しやすい様に、徒歩の距離が一番短い病院に世話になっていた。
病院の受付を済ませ、少し検査をするとの事なので、僕は待合室で待機。しばらくして、看護師さんから声がかかる。
「ご夫婦揃って聞いて頂きたい事がありますので、こちらへお越し下さい」
重々しい扉を通って奥さんとご対面。お医者さんの話によると
・試しに出産を促す処置をしてみた所、血圧が160近くまで上がった
・無理に自然分娩を行おうとすると、母体に危険が及ぶ可能性がある
・待つ理由はないので、可能ならば今日、帝王切開をする事を勧める
との事。突然の事で、面食らっていた。つい数分前まで、「奥さん入院して家帰ったら、束の間の一人暮らしだなー。とりあえず今日はスプラトゥーンやるかー」等と考えていたので、ほんと急展開。
少し話して、奥さんはなんとか覚悟できた様なので、手術をお願いする事に。
「では、各々昼食をとって、13時半から手術を始めましょう」と、お医者さんにサクッと言われて一時解散。40分しかない。慣れない街で良い飯屋が見つからず、日高屋へ。温玉うまから丼。
帝王切開になるので、立会いはできない。お医者さんに「お願いします」と声をかけた後は、待合室でひたすら待機だった。
2分後、赤ちゃんの泣き声が聞こえる。ドキドキしながらナースセンターを見つめるが、どうやら今預けられている、他の新生児の様だ。
3分後、赤ちゃんの泣き声が聞こえる。ナースセンターを見つめるが、以下略。
5回くらい繰り返した所で、なんかもうやんなってスマホーゲーを始める。
白熱したバトルが終わり、次の勝負の為の戦術を練っていた所で、名前を呼ばれる。駆けつけると、赤ちゃん。というより、最初のイメージは、タオルの塊に赤ん坊の頭が飛び出たもの、みたいな印象だった。
「おめでとうございます。2388グラム。女の子です。では、このままだとベイビーが冷えちゃうので、もう行きます」
一言「ありがとうございます」と言うのが精一杯だった。たったの10秒。
しばらくして、奥さんがストレッチャーに乗せられて、病室まで運ばれる。すれ違いざまに何か言わなきゃ、と考えて、考え抜いて、出た言葉が
「お疲れ様です」
お前なんで敬語やねん、みたいな空気が周りに漂った。
そんなわけで、臨月に浮き足立ちながら仕事したりとか、陣痛が始まった時の対処とか、立ち会った時の応援とか、全部すっとばして、いま一つ心の準備が足りないまま、僕は父親になった。
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学生時代以来、久々にブログなんぞ開設した。まずはお試し〜