コンサルタント=ピアニスト=ランナーはきょうも語る

現役経営コンサル兼ピアニストがランニングと仕事術とピアノと英語とかについて語ります

医薬品メーカーのアドボカシー

ここ数日のテーマは、長年関わっている医薬品業界のアドボカシー(advocacy)について。
アドボカシーとは日本語では患者権利擁護ともいわれるが、医薬品メーカーにとって、CMなどでは患者さんのために、患者さんと共に、とメッセージを出しているものの、それは経営理念同様、「重要だができていない」のが理由である。
医薬品メーカーがアドボカシーと言い始めてからしばらくになるが、依然として患者、あるいは一般個人からすると医薬品メーカーというのは遠い存在である。おそらく最も身近なのは(訪問規制が厳しくなり、またコロナ禍でさらに減ったが)MRの病院・クリニック訪問である。
そもそも医薬品メーカーと患者の間には、医薬品卸(アルフレッサやスズケンなど)があり、医療機関があり、調剤薬局がある。
また、医薬品メーカーの部門間の壁も高い。営業とマーケティングの壁、マーケティングと臨床開発の壁、臨床開発と創薬の壁がある。その他メディカルアフェアーズなど様々な部門があり、ますます分業は進んでいる。
高血圧や高脂血症などがアンメットメディカルニーズであった20年ほど前は、医薬品メーカーの至上命題は「ブロックバスター」を世に出すことであった。多数の患者が慢性的に患う病気は一旦処方されれば巨額のキャッシュを産む。高脂血症薬のメバロチン等はブロックバスターの先駆けの一つだが、年間何千億、薬によっては兆円台の売上を記録したものもあった(ファイザーのリピトール等)が、医療用医薬品には特許失効という宿命があり、後発医薬品ジェネリック)にとって代わられると、売上は一気に落ちる(日本では落ち方が欧米に比べ緩やかだが)のと、高血圧や高脂血症といった「大きな池」にはたくさんの製薬会社が群がり、それほど大きな差(薬効や安全性において)のない似たような薬が鎬を削る(臨床開発費の高騰は多くのサンプルを集めて統計的有意を証明するためのものだったし、巨大な営業戦力にも一社あたり何千億の固定費がかかる)ため、レッドオーシャンと化し、この「ブロックバスター」ビジネスモデルはもはや通用しない過去のものとなっている。
戦略転換を迫られた医薬品メーカー各社は、新たなアンメットメディカルニーズの充足に乗り出した。筆頭はがんである。がんといっても当然一つの病気ではなく、また一つの臓器にも様々な種類のがんがある(例:肺がん)。
抗がん剤は昔からあるのだが、がんの発生メカニズムの解明や薬の新たな作用機序の発見により、分子標的薬など新しいタイプの薬が世に出てきている。テクノロジーの進歩は製薬会社の潤沢な投資余力によって支えられている。
問題は、このような新しいタイプの薬は従来の薬とはけた違いに高額であることだ。数年前にTVのニュースでも取り上げられたオプジーボが最たる例である(当初は年間投与費用が3,500万円とされた。今は度重なる薬価引き下げでかなり低下している)。
がんの次は特定疾患、あるいは稀少疾患、難病である。患者数は生活習慣病と較べると3桁も4桁もあるいはそれ以上少ないが、薬価は例えば千倍(シンプルに錠剤1錠が100円に対しバイアル1瓶で10万円といった具合)であれば、十分大きな売上が見込め、粗利率も高い。ただし、開発の難度は高くなるし、営業・マーケティングも難しくなる。
がんや特定疾患は確定診断も難しいため、医薬品メーカーとしては臨床面のサポートも求められるし、新しいタイプの薬は投与後の管理も難しいし、安全性の評価も確立していないので、市販後調査を含め上市後のサポートも充実させなければならない。

ここまでは医薬品メーカーの立場で書いてきた。では、患者からするとどうなのだろうか。アドボカシーというからには、あくまでも患者が求めること、必要とする製品・サービスを提供することに資するものでなければならない。
以前、自分が主宰するヘルスケアの研究会でテクノロジーとヘルスケアについて各界の識者にインタビューしたりディスカッションしながら提言をまとめ、立法・行政の関係者や、あるいは別の講演会などで発表させていただいた。
具体例として取り上げたのは嚥下障害、がん、骨粗しょう症など、いずれも現在の医療において顕著な問題(患者の不満や妥協の大きい)があるテーマばかりである。
また、ある講演会では、個人的に考える最も深刻な(充たされていない)アンメットメディカルニーズとして3つを挙げた。それはアルツハイマー認知症、ALS、ミトコンドリア病である。いずれも根治させることはおろか、疾病の発生メカニズムも未解明(有力な仮説はあるものの決定的ではない)の疾病であり、我々が最も恐れるべき疾病に挙げられるものである。
仮に根治させる治療法があったとして、それで患者さんの問題が解決する訳ではない。
最近上市され、日本では年間投与費用1億7千万円弱と「世界で最も高価な薬」筆頭になったゾルゲンスマ(ノバルティス)は脊髄性筋萎縮症(SMA)の遺伝子治療薬だが、ノバルティスはYoutubeTwitterで投与された患者さんの生活がどう変わったかなど、積極的にゾルゲンスマのメリットをアピールしているが、一方でSMA患者さんの厳しい声が患者団体の動画などで伝えられている。投与してもらいたいと思っても、また米国や日本では全額或いはほとんどが保険適用だとしても、投与を強く要望しても半年待たされたり、遠くの病院まで飛行機で行かなければならない(例:アトランタからボストン)、など、仮に投与できたとしてもそれまでの負担がとても大きい場合がある。
投与まで時間がかかる原因の一つに、確定診断のためには様々な検査を受け、その疾病以外の可能性をすべて排除してからでないといけないということがある。特にミトコンドリア病は患者さんによって様々な部位に様々な症状が出るため(ミトコンドリア病といっても一つの病気ではなく、●●脳症等多様な病名が付けられている)、症状の程度によってはそもそも本人が受診しないかもしれないし、最初に受けた病院で誤った診断が下されるかもしれないし、対症療法を繰り返しつつ病気が進行してしまうかもしれないし、それでも正しい診断がなされるとは限らない(実は自分もある疾病で同様の経験をしている)。
また、これまで再生医療遺伝子治療抗がん剤についてプロジェクトで実際に関わってきており現場の医師や開発者から直接聞いていることだが、仮に重症であっても患者さんには治療を受けない選択肢を採る人も少なからずいる。必ずしも経済的な問題ではない。病気は必ずしも「治さねばならない」ものではなく、あくまでも本人や家族が選ぶことなのだ。
もし確定診断にも苦労せず、副作用もなく、しかも著効で経済的に十分affordableな薬があれば別だが、それは開発者・販売者からしたら「夢」に過ぎない。どこまで行っても医薬品メーカーと患者の間には越えがたい壁、埋めがたい溝、遠い距離があるのだ。

医薬品メーカーがアドボカシーに本気で取り組むならば(本気になって欲しいし今社会が求めていることだが)、これまでの自分のビジネスモデルの陥穽を正確に患者の視点で捉え、一部門の仕事として任せるのではなく、真に全社的・部署横断的な取組を、すべてのステイクホルダー(患者と家族、患者団体、医療機関、行政など)に対して正面から向き合い、かつ不確実性やコスト(なぜ高額なのか、開発費だけではなく販売費、開発失敗コストも含め)も含めてオープンにした上で、そもそもどういう薬を世に出すのかのバリューチェーン上最上流での意思決定をステークホルダーの厳しい要求に真摯に応えるべく全力を注ぐことが必要と考える。

ちなみに、「必要」という言葉は最近軽いニュアンスになっている。本来は強い意味なのである。「必ず要する」のであるから。「絶対」を付けるまでもない。

医薬品メーカーは外資も内資も含め10社を超える会社の経営陣や各部門とお付き合いさせていただいており、国を問わず規制業種であること故の難しさや過去の経緯や同業他社や医療業界との関係も含む「オトナの事情」が多々あることは承知しているが、どの業界であれ、業界の向かう方向は最終受益者のニーズを満たし不満や妥協を解決することであって、製薬業界だから最終受益者を蔑ろにしていいということではないし、最も最終受益者から遠い位置に自分たちがいることを骨身に沁みて理解した上で、「なぜそれをやるのか」という論点に拘泥することなく、邁進しなければならないし、それが今後の業界の生存メカニズムでありゲームのルールになっていく。

大いに期待したいし、経営陣がアドボカシーを真摯に考える会社ならば支援を惜しまない所存である。

ストライドを伸ばす①

4月末から本格的に走り始めて7ヶ月。合計で約1,600㎞走ってきました。
目下の目標はタイムというより、結果としてのタイムではなく、楽に(効率的に)楽しく走る、そして結果としてタイムが良い、というところに置いています。
そして、それを測る指標として最も重視しているのがストライドです。もちろんストライドは伸ばそうとして伸びるのではなく、正しい(効率的な、うまく全身を使った)走りをした結果伸びるものであり、それが如何にできているかを測る指標としてみています。

当初はキロ5分で10㎞走るのもぜえぜえで、今月までにも膝が痛くなったり、坐骨神経痛的なものになったり、アキレス腱が痛くなったり、足底が痛くなったり(足底筋膜炎ではなかったけど)、トラブル続きでだましだまし走ってきたのですが、ここに来て先週は10㎞を46分20秒、昨日はハーフで1時間44分22秒と、長い距離もそれなりのペースで走れるようになってきましたた。

先月、気ランニングという本に出会い、今までの自分が如何に筋力に頼った走りであるかに気づき、重力を利用して(古武術でいうところの測地法に通ずる)走ることを意識し、その上でピッチは190以上で走ってきたのを180前後で一定に保ち、大きな筋肉(特に大腰筋)を使うことを意識し(といっても実際には特定の筋肉を意識してはいないのですが、少なくとも膝から下の筋肉は使わないように)、「蹴らない走り」に努めてきたら、ストライドが半年前に比べると15㎝は伸びたし、これがそのまま平均ペースアップにつながっています。

こういう、あれこれ考えながら走るというのは、本来は良くないと思うのです。大迫選手が言っているように常に身体の声を聴き、自分の足音を聞き、体と対話しながら感覚を大切に走るべきだとは思うのです。一方で、同じく大迫選手が言っているように、身体のどこかが痛いとか辛いとか警告を発しても、それを鵜呑みにするのではなく、それが堪えるべき痛みや辛さなのかを見極める感覚も必要であるとも思います。

昨日ハーフを走った際は、常に「キロ4分50秒はジョグ」と脳に言い聞かせ(以前の自分だったら閾値ペースより速い)、ペースがキロ5を上回るまで耐えたらハーフの距離をカバーできてしまったのですが、タイム以上にメンタルブロックを外す意味で有意義なランでした。

では具体的にこの先どうやってタイムを狙っていくのか、そしてストライドをどう位置付けていくのか。次回に続きます。

【ランニング】村山紘太選手にエールを送ろう

ここのところ外国人選手ばかり取り上げてきたので、イチオシの日本人選手にエールを送るべく投稿します!

陸上ファンなら知らぬものもない、泣く子も黙るかもしれない村山紘太選手。
箱根駅伝ウォッチャーである自分は村山紘太選手が予選会で総合トップで城西大の出場を果たしたというのが衝撃でした。

第91回箱根駅伝予選会 城西大 村山紘太 一位ゴール 2014.10.18

10000mの日本記録保持者であることは言うまでもないですがやはりあらためて見るとすごいです。

八王子ロングディスタンス 男子10000m A組 2015年11月28日 / 村山紘太 27:29.69 日本新記録

その後リオ五輪の5000m、10000mにも出場します。

そして村山紘太選手が光り輝いたのは、昨年10月、ウィーンでのエリウド・キプチョゲ選手のサブ2チャレンジ、INEOS 159 Marathonのペースメーカーに日本人として唯一選ばれたことです。いま世界で活躍する中距離、長距離ランナー41名がペースメーカーを務め、キプチョゲ選手は見事2時間切りを果たしました。村山紘太選手はTeam 4としてキプチョゲ選手を引っ張りました。
ちなみにその前の区間Team 3にはあのノルウェーのIngebrigsten3兄弟がいます。

これがそのレースです。Team 4は44分50秒あたりでTeam 3と交替します。

ELIUD KIPCHOGE INEOS 159 MARATHON FULL RACE

つい最近では先週7/15のホクレンディスタンス網走大会10000mA組で日本選手権参加標準A記録を突破!

ホクレン網走大会10000mA組 翌日 10000m日本記録保持者のオフショット

何度も怪我に見舞われ克服してきた村山紘太選手。今後の活躍を大いに期待しています。

今回は以上です。

【ランニング】堂場瞬一の描くランナーの世界

9年前に読んだランニング小説をふと思い出した。

箱根駅伝を舞台にしているので、小学生以来の箱根駅伝ウォッチャーとしては数々の場面を思い出しながら読んだ記憶がある。
実写版映画は知っていたがアニメ版もあることは初めて知った。アニメ版をみてランニングを始めた人も多いと聞く。

実写版は小出恵介林遣都が主役を演じる。林遣都若手俳優の中でも運動神経の良さを買われているが、この映画の撮影の為に自身曰く最も厳しいトレーニングを積んだという。その成果が映画で披露されている。いいフォーム。実際速そうだ。

Feel the Wind - Kakeru the black bullet

不勉強にも、堂場瞬一という作家がランニングをテーマにした小説を複数著していることもこの流れでつい先日知ったばかり。
めったに小説は買わないのだが、第六感がはたらき、書店で一冊購入し、すっかり虜になってしまった。

ネタバレになるので詳しくは書かないが、あまり涙を流すことなどない自分が不覚にも目頭も胸も熱くしながら読んだ数少ない小説の一つとなった(他には山崎豊子不毛地帯ぐらいか)。数時間で読破してしまった。読み始めたら止まらなくなってしまった。

ということで、立て続けに「チームII」「チームIII」「ヒート」も読んでしまった。

とにかく魅力的なキャラクターが「山城悟」である。高校1年の時のインターハイでの活躍で注目され、箱根駅伝4年連続出場4年連続区間新記録(箱根駅伝の歴史に残るヒーロー達、武井隆次、渡辺康幸今井正人大迫傑などを彷彿とさせる)をマーク、初マラソン日本最高、そしてすぐその後マラソン日本最高を度々更新するなど、まるで大迫傑東京マラソンの活躍を予見したかのような活躍を見せるランナーなのだが・・・(あれネタバレ?)

そしてその山城悟と運命的な絆で結ばれたかのような同期の浦大地・・・

ランナーにもランナーでない方にもぜひまず「チーム」を読んでいただきたい。

今回は以上です。

ランニングの3C

コンサルタントとして、よく使うフレームワークがあります。

特によく使うのは3Cです。企業戦略策定や事業の評価に用いるのですが、Customer(市場/顧客), Competition(競合/競争), Company(自社の戦略・資産・能力)の頭文字をとって3Cです。

コンサルタントは3が好きです。3はゴールデンナンバーです。「その理由は3つあります」「要点は3つです」「本日は3つのポイントをお話します」と話すととてもコンサルタントらしく聞こえるのですが、それは聴き手が受け取りやすいからです。
「え~と、それにはいろいろ理由があるのですが例えば●●、あるいは●●、さらには●●」では聴き手は「いったいいくつ理由があるのだろう?それで全部なんだろうか?」と不安になりますし、覚えにくいですね。
そう。ただ3つに意味があるのではなく、その3つのそれぞれがMECEの関係にあることが必要なのです。
MECE = Mutually exclusive, collectively exhaustive、互いに排他的で全体として網羅的

本格的にランニングを始めて2ヶ月、あらためてこのフレームワークでランニングを考えてみました。
1日考えてみましたが、それは3Cです。

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ランニングの3C by じむ

解説します。

ランニングの3C = Craze, Control, Craft

1. Craze(夢中)
「夢中は努力に勝る」とは今年の箱根駅伝6区を走った矢野航平選手の言葉です。これにいたく感銘を受けました。
なぜ走るのか、そこに打算が混じることはあっても、好きで走る、夢中で走る、これには「何かのために」が勝つことはないでしょう。CrazeをPassion(熱意)と読み替えても、あるいはAddiction(中毒)と読み替えてもいいかもしれません。
(まったく走らない人からみたら、フルマラソンに挑む人の気持ちは理解できないでしょうし(去年までの自分含む)、どう考えてもHENTAIとしか思えないランナーが身近にいますしね・・・)

2. Control(制御)・・・自分を律することができる
いくら走るのが好きといっても、走り過ぎは怪我や故障につながりますが、かといってあまりにも走らなくても速くはなれませんね(速くなるだけがランニングの目的ではないですが速く走れたらうれしいですよね)。休養も必要です。
また、必ずしも楽ではない練習を続け正しい(身体に負担をかけず最適な推進力を出し続けられる)フォームを身に着けるにも、練習メニューを考えたり、自分の身体の声に耳を傾け自制することなくしては走り続けることはできません。
継続は力なりですが、ただ続ければいいというのではなく、自分を律することができないとですね。ControlをDiscipline(規律)と言い換えてもいいと思います。
そして常に良いコンディション(精神的にも身体的にも)を保つ食事もコントロールはもちろん重要ですね。

3. Craft(技)・・・身体の使い方を体得できている
これに関してはバイブル的存在のダニエルズのランニングフォーミュラはじめ数多くの理論が提唱され信奉者も多いのであえて詳細は語らない(語れない・・・)が、最も重要であることは間違いないです(少なくとも今の自分にとっては)。
ランニングはテクニックです。
しかしテクニックの深遠さを理解するには実践無くしてはあり得ないでしょう。
そしてテクニックの重要さは実はあまり理解されていないように思います。そもそも「テクニック」とは何かということですね。
走るということは特に学ばなくてもできてしまう(born to run?)からこそ、実は正しく走ることの意義・重要性が実はランナーですら完全にはわかっていないのかもしれません。

もちろん、真剣にランニングをやっている方々は、フォーム、呼吸、脱力、伸張反射など意識し、またトレーニングも工夫されていますが、実は走るという行為は極めて高度な統合作業であり、かつ個々のランナーに特異的なものである上、客観的に把握することが極めて難しい(そもそも運動生理学という学問は人体を完全に理解した上に完成する学問でありその意味では完成には遠い)のですから。

逆に言えば、相当な改善、いや改革の余地があるのではないでしょうか。

昨日フィットネススタジオのトレッドミルで、マシンの限界の20㎞/h(3'00"/㎞)で30秒間、数回走ってみました。
恐怖を克服して、ふっと力を抜いてみました。するとどうでしょう。ずっと楽に走れる感覚がほんの10秒間ほどですがありました。
少しテクニックの一端が見えた気がします。

【ランニング】体重を減らすとどれだけタイムが縮まるか試算してみました

・・・という疑問をふと抱いたので、以前読書メモを書いた「ランニングをする前に読む本」(田中宏暁著)をあらためて読み直しています。

jimkbys471.hatenablog.com

この本の第3章は「ランニングとダイエット」なのですが、章末付録に「マラソンタイム推定法」というのがあります。
生理学的推定法と物理学的推定法の2種類が紹介されているのですが、両者の算出結果に大差はないので、シンプルな前者を採用して試算してみましたので、結果をご紹介します。

なぜ体重とタイムの関係が気になったかというと、以前大学の同級生にひさしぶりに会って話した時、大学時代はロクに運動もしてなかったその同級生が、ダイエットのため10年ほど前にマラソンを始め、別大でサブ3を記録するまでに速くなったというのでびっくりしたのですが、体重にはとても神経質になっていて、理由を聞くと「1㎏増えるとタイムが3分遅くなるから」と言っていたのを思い出したからです。

自分も実は5年前にアレルギー発作で入院してから、薬には頼れない、体質改革(改善ではない)をすべく、食生活を大きく改めウォーキングから初めて16㎏減量し、一時は体脂肪率3%まで絞った結果、筋量まで落ちてしまい、この1年間オレンジセオリーに足しげく通ってなんとか58㎏まで体重を戻した(増やした)のですが、マラソン(ハーフでも)を走るには重いのでは、と思い始めたからなのです。

ともあれ、田中先生のこの本によると、まずこういう関係があります。
ランニング速度をx(m/分)、体重あたりの酸素摂取量をy(ml/kg/分)としたとき、xとyの間の関係は:

y = 0.2x + 3.5

という実にシンプルな一次方程式が成立するのだそうです(近似式と思われますが)。

そこで、この式を用いて、大変恐縮ながらマラソン世界記録保持者のキプチョゲさんと自分で試算してみました。

キプチョゲさんの場合、公式世界記録である2時間1分39秒の平均ランニング速度は
x = 42,195 (m) / 121.39分 = 346.856 m/分
y = 0.2x + 3.5 = 72.8711 ml/kg/分

これはVO2maxとイコールではないですが、不自然な値ではないと思われます。
参考: 
www.inscyd.com

まったく比較にもならないのですが、自分を想定して同じくxとyを求めます。
実はフルマラソンは走ったことないのですが、10㎞やハーフの非公式タイムに基づくDanielsのVDOTは低めに見積もって41なので、フルマラソンのタイムは3時間45分であったとしましょう(30㎞の壁を超えられたとした場合、あくまでも)。
この場合(現在の自分)x = 187.533 m/minです。ちなみに3日前の体重は58kg。身長はキプチョゲさんと同じくらいなので、体型や体組成は違うものの、6kg減量したとして、時間当たりの酸素摂取量は不変としましょう(筋肉は落とさない)。
すると、それはつまり体重1kgあたりでは酸素摂取能力は高まることになります(体重に反比例)。
その場合のxは209.172、そしてフルマラソンのタイムは3時間21分44秒と、23分16秒も短縮できる計算になります(●ↀωↀ●)✧
6㎏減らして23分16秒ですから、1㎏あたり4分弱、同級生が言っていた3分とまぁオーダーは合ってますね。

今回は以上です。無理な減量はしません!

【ランニング】今日の朝練の手応え

本日も未明走ってきました。自分にしてはめずらしくラン日誌。

4時40分スタート。小雨降る中いわゆるシャワーラン。
身体が重く気分も乗らない中、30分間走るべきか走らぬべきか考えた挙句、6月は毎日最低10㎞走ると決めた以上はやはり走ることにしました!(どこも痛い訳ではないので)
エアロスイフトとリアクトインフィニティ、きょうはNIKEデー!
きょうのメニューはガミスポさんのスローペース走18㎞。しかし調子次第では10㎞でやめることもオプションに気楽にスタート。
きょうの練習には明確な目的がありました。それは抽象的な感覚や感情に惑わされないこと。
「無」になることを徹底しました。
no pain, no feeling, no emotion, no greed, no suffering,... 抽象的な気分や想いはすべてその存在を認めた上で否定しながら一定のリズムを刻み走り続けました。
スローペースとは言え、VO2maxを高めるのがもう一つの目的なので、ペースは遅すぎず、余裕をもってハーフを走り切れる水準を心掛けました。

しかし16㎞あたりでGarminさんのボタンに触ってしまったのか計測が中断、しかも再開できない状況に!

ここまでのラップは上り調子:

1km 5:40(アップ込み)
2km 5:28
3km 5:29
4km 5:16(あったまってきた)
5km 5:22(長い上り坂あり)
6km 5:16
7km 5:13
8km 5:10(このあたりでno pain作戦奏功し始める)
9km 4:57(速いランナーがいたのでつい追いかける)
10km 4:59
11km 5:09
12km 5:04
13km 5:14
14km 5:07
15km 5:12
16km 5:08

このあと自宅までの4㎞も上り坂ですが走り続けます。
17km 5:00
18km 5:02
19km 5:02
20km 4:59

ハーフまではあと1㎞ちょっとというところですが、このペースであれば(走り始めがかなり遅すぎたものの)1時間49分、サブ110は確実にいけたはずと言っていいほど余裕がありました(前回ハーフは5/30の1時間54分)。

しかし本日の成果は、決して無理をしない(欲張らない)ペースでありながらも、常に客観的に自分を認識し、一定のリズムを刻み走り続けることができたという自信です。
最初の4㎞までが遅いのは、アップということもありますが、まだこの時点では10㎞以上の距離を走ることへの不安が勝っていたからですが、それももう今日で卒業です。

感覚的には、ハーフであれば4分55秒ペース(1時間44分)、10㎞であれば4分50秒ペース(48分20秒)は確実に行けると思います。5㎞のPBは先月5/31に気楽に走った22分42秒(4分32秒/㎞)ですが、これも今月中には短縮したい。
ようやく各距離のペースがつかめてきたようです。

明日も走ります!

【ランニング】音楽を奏でるように走る

ランニング歴が浅い自分が速くなるには他の領域で学んだ経験を活かすと良いのではないかと思いつきました。
とは言っても専門的に学んだ訳ではないのですが、少なくともランニングよりははるかに長くやっている音楽、それもピアノ演奏のアナロジーで考えることが得策ではないかと!
しかもこういうアナロジーを語っている人はいままでいないのではないか?

史上初??

ピアノを演奏すること、それも良い演奏をするということは、楽曲のポテンシャルを最大限引き出すことができるということです。
ここで楽曲をランニングの一つのエピソードと捉えます。
ここでいうエピソードとは、1,500mでもいいし、フルマラソンでもいいですが、ランニングの一つのセッションです。
レースであってもいいし、普段の練習でもよいです。

さて、ランニングの「エピソード」のポテンシャルを最大限引き出すということは、どうい考えればよいでしょうか。
最もわかりやすいのは、PB(personal best)を出すことでしょう。しかし、プロランナーではないほとんどのランナーにとっては、タイムだけを追求しても苦しいだけです。もちろんタイムが短縮できればうれしいですが、私がランニングコーチから言われた最も重要なメッセージは「タイムはあとからついてくる。楽しく走ることが先決」であり、それを金科玉条にしています。なのでぼくに言わせればタイムではありませんし、そもそも日々の練習で毎回PBを更新することを期待するべきではありません。

ではなんでしょう。
それは、その時点で自分が持つ能力をすべて引き出すエピソードのイメージを抱き、即興的な要素も含めそのイメージとそれを実現する自分自身に確信をもって実行することです。

エピソードのイメージとは音楽の言葉でいうとどのようなものになるのでしょうか。
たとえば、5㎞(5000m)走ることを考えてみましょう。このエピソードは最も短くて13分(現在の5000mの世界記録は2004年にベケレが記録した12分37秒35・・・)、自分であれば先週22分42秒だったので、レベルによって長さは大きく(!)変わりますが、10分から30分の長さというのはピアノ曲にはよくある長さです。そして、ピアノ曲には形式というものがあります。
ピアノの楽曲でバロックから現代まで採用される形式にソナタ形式がありますが、一般的にはテーマが提示される提示部、テーマが展開する展開部、そしてテーマが元の形で再度現れる再現部、そして終結部という形をとります。
レースで言えば序盤、中盤、終盤、フィニッシュにざっくり対応します。
たとえ同じペースでラップを刻んだとしているとしても、ランナーにとってそれぞれの局面の状況(身体的、心理的両面において)変わります。そして集中力は大切。
音楽も同じ。演奏者は楽譜に忠実に演奏しながらも、時間芸術として唯一無二の即興性を発揮します。集中力は同じく大切。

いい演奏をするということは、とても多くの要素が複雑に絡み合いますが、簡単に自分なりに5大ポイント(特にアマチュアにありがちな誤りを克服する意味で)を挙げるとこういうこと:
1. 作曲者の意図をしっかりと汲みルールを守ること
2. 楽曲全体のイメージをしっかりと描き、絶え間ない変化・展開と流れを決して殺さないこと
3. 手や指先ではなく全身で統合された最小限の動きで自然に美しい音を出すこと
4. 自分の身体的、メカニカルな限界を言い訳にしないこと
5. 自分の音をよく聴きつつも、現実を克服すべく丹念に練習を重ね、イメージした響を作り上げること

これをランニングに置き換えると:
1. 人間にとって自然な走りというものはバイオメカニカルにどういうテクニックの集合であるかを理解すること
2. 自分がその距離のランニングをどう組み立てるか(自分にとって最適なペース配分で、どういうマインドセットで走るか、自分にとっての歓喜の走り)のイメージを持つこと
3. 腕の振り、呼吸、前傾、骨盤の傾斜と回転、接地等個々の要素に過度に囚われず、またスタティックなイメージではなく、統合されたダイナミックなリズミカルな動きで美しく最も効率良く推進力を生み出し続けること
4. ただ単に苦しい辛いと思うのではなく、その苦しさ辛さを感じる原因は何か、克服するにはどうするかを建設的に考えること
5. 自分の身体と心の声をよく聴きつつも、あきらめることなく建設的に練習を重ね、イメージした走りを作り上げること

そして、日々の練習は1~4のどれを高めるためにやっているか(複数の目的があっても勿論OK)を明確に意識すること。
同じメニューであっても目的はいつも同じとは限りません。
たとえばぼくは今朝ショートインターバルとミックスインターバルをやりましたが、主な目的は1と4でした。特に、自分が「走るのが楽しくて仕方がない!」という気分で走るとどう走りが変わるのか、を垣間見ることができたのは本日の収穫です(想定タイムよりも体調を考えるとキロ20秒は速かった)。
ペース走であれば2が主な目的になるかもしれません。

まだ初心者なのでこれから考えは変わっていくと思いますが現時点の考察です。ではまた。

【ランニング】アメリカの怪物Galen Rupp

またすごいランナーをみつけてしまいました。
アメリカ、オレゴン州出身のゲーレン・ラップ。ゲーレンくんです。
オレゴン州出身でナイキのオレゴン・プロジェクトのメンバーに選ばれているとはなんともすごい。
コーチはあの伝説のアルベルト・サラザール。モハメド・ファラーとも2011年から練習パートナーだそう。

彼のPBは:
ラソン:2時間06分07秒(2018)
ハーフマラソン:59分47秒(2018)
10000m:26分44秒36(2014)・・・全米記録
5000m:12分58秒90(2012)
3000m:7分43秒24(2010)
1マイル:3分52秒11(2013)
1500m:3分34秒15(2014)
800m:1分50秒00(2009)

文句なしに速いですね。

怪物ぶりを紹介した動画です。

Galen Rupp - The American Beast


もう一つ。5000mレースです。全体にスローペースとはいえ、ラスト400mが56秒とは・・・

Galen Rupp Closes 5K In 56!!

彼は長距離界でひさしく世界の舞台から遠ざかっていたアメリカ勢の復活の象徴でもあります。
そして、東京オリンピックの男子マラソンアメリカ代表にも選ばれています。
まだしばらく彼の走りがみれそうですね。

期待の☆ランナー:Julien Wanders

こんにちは!
昨日のターサーエッジRunではしゃいで走って足をくじいて本日Runおやすみ(涙)のじむです。

先日ご紹介した期待の☆ランナー、ノルウェーヤコブくんに続き、スイスの誇るJulien Wanders(ジュリアン・ワンダース)くんにきょうは刮目しています。

ジュリアンくんは1996年3月18日スイス・ジュネーブ生まれの24歳。現在10km(ロード)とハーフマラソンの欧州記録保持者(それぞれ27分13秒、59分13秒)です。ハーフマラソンの欧州記録はファラーさんの記録を更新したものですね。

トラックのPBは:
800m 1:57.51
1,000m 2:36.15
1,500m 3:43.39
3,000m 7:50.35
5,000m 13:19.79
10,000m 27:17.29


Julien Wanders - Legends never die [HD]

ルックスを裏切る強靭な走りですね。

それもそのはず、とてもハードなトレーニングメニューなのだそうです。たとえば、3㎞(8'50"-8'55")+1㎞リカバリー(3'20")×5~6とか。

東京オリンピックでは5000mと10000mに出場するとか。オリンピックの楽しみが増えました。