令和2年度 編入体験記 筑波大学応用理工学類
はじめに
筑波大学 理工学群 応用理工学類 令和2年度(2020年度)学群編入学試験の体験記です。
応用理工学類の筆記試験では、数学2題(必須)に加えて、物理学2題、化学2題の計4題から2題を選択し、解答します。私は2題とも化学を選択しました。
これは志望する主専攻に関わらず同じです。
去年までに投稿されている体験記では物理学を選択した人がほとんどでしたから、化学を選択する予定の受験生の皆さんの助けになれば幸いです。
スペック
茨城高専物質工学科5年次に在学中です。
化学、生物学の分野のほか、線形代数、微分積分、力学などを学びました。
学科順位は5位~10位くらい。
電磁気学はカリキュラムの都合上ほとんど学んでいません。
部活は、軽音楽同好会に所属し、担当パートはベースでした。
志望理由
興味のある分野はたくさんありましたが、将来の専門分野がまだはっきりしていなかったので、自然科学の幅広い分野を学ぶことができ、研究室の選択肢も理学から工学にわたって豊富な応用理工学類を志望しました。
高専で深く学ぶことができなかった物理学のカリキュラムが豊富な点も魅力的でした。
また、生物物理のような学際領域に興味を持っているので、そこも面接でアピールしました。
受験した大学
6/15 茨城高専専攻科 応用化学コース 学力選抜(合格)
7/13 - 7/14 筑波大学 理工学群 応用理工学類(合格)
第一志望:物質・分子工学主専攻、第二志望:物性工学主専攻
試験について
応用理工学類の編入試験は専門科目と外国語(英語)および面接が含まれます。
専門科目
専門科目の試験範囲は以下の通りです。
試験時間は150分で、数学2題 +(物理学2題、化学2題から2題選択)= 合計4題を同時に解答します。
当たり前ですが、時間配分をよく考えないと死にます。解き始める順番や、解けなさそうな問題の対処法など、事前にある程度計画立てておく必要があると思われます。
外国語(英語)
筆記試験当日にTOEICまたはTOEFLのスコアシートの原本を持参します(IPは不可)。忘れたらその時点で失格となるらしいので気をつけましょう。
面接
1人10分程度。詳細は後半で。
筆記試験対策と使用した参考書
応用理工学類の受験を決めたのは4年の8月頃、本格的な受験勉強を始めたのは4年の11月頃からでした。
例年過去問通りとの噂が全く信用できず、学べる限りのことをできるだけ広く基礎から勉強しました。その分時間はかかってしまいましたが……
(実際のところ数学はほとんど過去問通りでしたが、化学は若干傾向が変わっていたので、過去問の過信は禁物です。)
数学
個々の分野の勉強内容について記していきます。
微分積分
使用した教科書はこちらです。
理工系向けなのでそこまで厳密じゃないらしいです。
ノートを取りながら理解するまでじっくり読む→演習で理解度確認、復習という流れで勉強してました。全部読み終えるまでに4ヵ月くらいかかりました。
演習問題も非常に豊富なので勉強しやすいと思います。
線形代数
学校の授業と並行しながら編入対策の勉強が慣れてきたころに、線形代数の勉強を始めました。
使用したのは以下の2冊です。
演習書の方は図書館で借りて、1ヵ月くらいで解き終えた気がします。編入対策ならこれだけで十分だったかも。
当時ベクトル空間からの出題が噂されていたので、川久保先生の教科書は、これを機に線形代数を一からしっかり勉強しようと購入しました。
筑波大学数学類の照井 章先生がYouTubeにアップロードされている講義動画にも非常に助けられました。春休みを利用して、線形代数I、IIともに全部視聴。
すばらしい講義で、筑波大生が羨ましくなりました。
線形代数I (2013) (2) 平面ベクトルのスカラー倍,和,線形結合 (Linear Algebra I (2013), Lecture 2)
照井先生にこの場を借りてお礼申し上げます。
微分方程式
4年生の前期に習った内容を元に過去問特訓の問題を解いて編入試験に挑みました。
得意意識はありましたが、もう少しちゃんと勉強しても良かった気がします。
授業で使ってた教科書はこれです。
複素関数
ここ2年間出題されていませんが、複素関数論の勉強にもかなり時間を使いました。
春休みを利用して、慶應大学の山本直樹先生の講義動画を視聴しました。
こちらも名講義です。
慶應大学 講義 物理情報数学A 第一回 高校数学からの復習 2010
高専の授業では1度も習っていなかったので、非常に助かりました。
山本先生、ありがとうございます。
教科書は次のものを購入しました。
『複素関数論の基礎』は講義をされている山本先生の本です。
『なっとくする複素関数』は編入対策かつ復習用として非常にオススメです。
総復習、演習
ある程度基礎学力がついてきたなと感じた頃、定番の演習書に手を出しました。
使用したのは以下の2冊。
徹底研究は冬休みに友人と集まってちょこちょこ解いてました。
過去問特訓は5月から解き始めて、結局全部は解いてません。
編入試験直前に過去問特訓の問題がスラスラ解けていると精神的に非常に良いので、初めからこれを解くのではなくあくまで総仕上げとして利用することを強くおすすめします。
化学
理学部編入等と比べると難易度は控えめな印象です。
しかし、出題範囲が広いため油断はできません。
物理化学
物理化学といいつつも毎年出題範囲がバラバラです。
今年は反応速度論(ミカエリスメンテン式)と気体分子運動論から出題されました。
化学熱力学を重点的に勉強した上で試験に臨みましたが、今年は出題されませんでした。
ミカエリスメンテン式は完全に盲点でしたが、速度論の知識と3年生に生物の授業で習ったときの記憶を併せてなんとか解けました。
こういうこともあるので怪しいと思ったところは全部復習するくらいの気持ちで勉強しましょう。
なんとヨビノリに講義動画がありました。半端ない。
化学熱力学の演習書はこれがいいと思います。
これも良書。
有機化学
有機化学は他の科目に比べて難易度が低い方だと思います。
演習問題も含めてマクマリーだけで十分戦えます。
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教科書の解説部分をしっかり読みつつ、演習問題は春休みを利用して全部解きました。
今まで出題されたことはないみたいですが、反応機構も書けるようにしておくといいです。
『有機化学演習―基本から大学院入試まで』も中古で購入しましたが結局解かずに終わってしまいました。
院試の定番書らしいです。有機合成の研究室に所属している友人や、東工大に編入した友人も使ってました。
応用理工の過去問でも似た雰囲気の問題が多く出題されているので、お金に余裕がある人は是非。
英語
11月に受験したTOEICのスコアを提出しました。スコアは700点です。
金のフレーズと公式問題集を使って対策しました。
TOEIC L & R TEST 出る単特急 金のフレーズ (TOEIC TEST 特急シリーズ)
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公式 TOEIC Listening & Reading 問題集 3
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金のフレーズは半分くらい覚えた気がします。
公式問題集を何週もすれば、もっといいスコアが取れたかもしれません。
試験前日
一日目は親が同伴してくれたので、車でつくばまで向かいました。
ホテルグランド東雲にチェックイン後、試験会場を下見しに第三エリアへ。
試験会場前の掲示板で志願者数が55人であることを知り、メールで担任に報告。去年は62名志願だったので、少し減ってラッキーと思いながら戻りました。
その後、ホテルの目の前にあったとんかつ屋さんでヒレかつ定食を食べて、ホテルに戻りました。
10時頃にはもう寝てたと思います。
試験1日目 筆記試験
6時頃に起きて、すぐホテルのバイキングで朝食を摂りました。
時間に余裕があったので、1時間くらい音楽を聴きながらイメトレしてました。
9時に試験会場に到着。席は一番後ろでした。
最終的な受験人数は48人だったみたいです。
試験開始
はじめに解答用紙が4枚配られ、それぞれに名前を書くように指示されました。
罫線が引かれているのは表のみでしたが、裏面も使用可とのことでした。
その後問題用紙が配られ、10:00に試験開始でした。
数学2(線形代数)
試験開始の合図のあと、まずすべての問題を確認。
数学2(線形代数)は傾向通りだったので、 これから解き始めることに。
対称行列の対角化を(1)~(3)で行い、それを利用した連立微分方程式を2問解くという、小問が合計5問の構成でした。
途中で書いてて気づきましたが全然解答スペースが足りません。全部解ききれる自信があったのですが、(4)まで解いたところで裏面の余白が尽きたので(5)の解答は諦めることに。
(後で分かったことですが、試験官に言えば追加で貰えたらしいです・・・)
今後受験する予定の人は是非気をつけてください。
(5)を完全に捨てたので8割の出来という印象です。
化学2(有機化学)
2番目に解いたのは有機化学。
大問1は各化合物の沸点、融点、酸性度、塩基性度の差を論じる問題でした。
分からない問題も何問かあったのでヤバイな~とか考えてた気がします。
大問2は有機合成の問題でした。こちらはおそらく完答。
7~8割くらいの出来という印象です。
化学1(物理化学)
3番目に物理化学の問題を開くと、大問1が生命化学の授業で習ったミカエリスメンテン式に関する問題でした。
受験勉強で全く触れてなかったところだったので、終わった・・・と一瞬思いましたが、誘導付きだったので案外解けました。なんとか完答。
大問2はほとんどサービス問題でしたが、(4)のみが分からず空白に。
9割くらいの出来という印象です。
数学1(微分積分)
大問は1つのみで、小問は(3)まで。z=1/xyという関数に関する問題。
(1)と(2)は問題なく解けましたが、(3)の体積を求める問題の積分範囲が分からず、時間がかかりそうだったので他の問題の答え合わせに時間を回すことに。
ホテルに帰ってから解きましたが、ちゃんと考えれば解ける問題だったと思います。
6割くらいの出来という印象です。
残りの30分くらいを使って自分の解答を見直して、書けたところを完璧に仕上げました。
試験終了
12:30に試験官の合図で試験終了。
試験官が解答用紙を問題ごとに回収して、編入試験1日目が終了しました。
回収しているときに試験官が黒板で集計していたのですが、化学1、化学2を選択した受験生はどちらも10人以下でした。
(曖昧な記憶なのでちゃんと覚えているがいたら教えてください。)
化学1の選択者が異様に少なくて驚いた気がします。
試験会場から出たあと、どうしてもお風呂に入りたかったので、喜楽里別邸に行って、温泉とおいしいご飯で疲れを癒しました。
タクシー代がシャレになりませんが、合格を左右するレベルでリラックスできたので個人的にはオススメです。
温泉効果で極限までリラックスしていたので、面接の対策などはせずに9時には寝ました。
試験2日目 面接
暑すぎて5時半に起床。
空調のせいか体調があまり良くなかったので、ストレッチをしてなるべくコンディションを整えました。
前日と同様、1時間くらい部屋の中でイメトレしてました。
9時に試験会場に到着し、10時まで筆記試験を行った部屋で待機。
9時半に出席確認をしていました。
面接前
受験番号順で4人ずつ呼ばれて、面接官のいる部屋まで案内されるという形式でした。
はじめの人から数えて8人目が私だったので、2週目の最後に呼ばれるかな~とか思ってたらなぜか飛ばされて呼ばれたのは3週目か4週目でした。
志望した主専攻との兼ね合いかと思われます。
面接開始
試験官の方がドアを開けてくれたので、ノックはせずに入室。
面接官は3人。
以下、面接官に聞かれたこと、言われたことの一覧です。
一部は受け答えも載せておきます。
- 名前と受験番号
- 出身校と学科
- 合否には関係ないが、併願校はどこか
- 両方受かったときはどうするか
ー筑波に進学する旨を伝えました。
- 志望理由
ー正直に伝えると、納得された様子でした。
- 大学院に行く意思はあるか
- 筑波大学に来るのは初めてか
ー文化祭に来たことがあると伝えました。
ーあまり詳しくは知らないが、連携事業を行っているということをHPで観たと伝えました。
- 数学以外に何を選択したか
- 化学はできたか
ー正直に答えました。
- 物理化学と有機化学だとどっちが好きか
ー物理化学、特に化学熱力学が好きと答えました。
- その感じなら点数良いと思いますよ!と唐突に褒められる
- 選択しなかったようだが、物理は得意か
ー力学は授業でも習ったので得意な方だが、電磁気は学ぶ機会が少なく、苦手な科目であると伝えました。
- (電磁気をほとんど学べなかったという受け答えに対して)それはカリキュラムの都合か、選択しなかっただけか
-カリキュラムの都合(4年前期の期末でしか習えなかった)と説明すると、そうですかと言いながら何かメモを取る様子。(3年次編入でいいかの判断材料?)
―大学に入ってから学びたいという旨を伝えると、全員ニコニコしてました。
- 物理は好きか
―好きであり、興味のある分野に物理が必要と伝えました。
- 生物物理とはどのような分野か
ー説明を真摯に聞いて頂きました。
- 光合成に興味があるか(生物物理に興味ありという話から)
ー研究されている先生がいるということを知っており、こちらにも興味があると伝えました。
- TOEIC点数高いけど英語は得意か
ーリーディングが得意と伝えるとともに、研究室でのゼミの活動(毎週ネイチャー読む)を紹介しました。
- 部活は何かやってたか
- 筑波は音楽系のサークル多いが、入る意思はあるか
ー文化祭で見たサークルに入るか考えていると伝えました。
- 締めの言葉がかかり、退出
体感で8分くらいしか話さなかった気がします。あっという間でした。
全体的にフランクな雰囲気の面接だったと思います。
事前に用意していったことは喋らず、大体の質問に対してその場で考えたことを話すという形になりました。正直緊張でほとんど覚えていません。
私の受け答えが完璧だったとはとても思えませんが、自然な雰囲気で話せれば好印象だと思います。
面接対策として、スマホのメモに想定される質問の受け答えの一覧が残してあります。要望があれば別の記事に載せますので、気軽にコメントしてください。
面接終了
筆記試験はイマイチでしたが、面接の手ごたえが良かったのでいい気分で試験会場を後にしました。
土浦駅で氷結買って誰もいない特急に乗りながら帰りました。
結果
3年次編入で合格でした。授業がなかったので、学校の友人とTwitterで合否を確認しました。
今年は合格者数が26人と、かなり多かったです。
振り返り
応用理工を受験する友人が一人も居ない上、学校の先輩からの情報等も一切なかったので、不安が多かったです。
その分、両親、担任、指導教員、友人からの励ましが大変力になりました。
面接の練習を付き合ってくれたクラスメイトには感謝に堪えません。
基礎を徹底する方針で半年以上勉強を続けてきたので、演習より考える時間の方が多くなってしまった印象があります。
物理化学に関しては明らかに演習不足だった気がするので、反省点の一つです。
今年は出題されませんでしたが、ベクトル空間、複素関数など、高専4年次までに学ぶことができなかった範囲の独学に大変苦労しました。
一方で、この独学から得られたことが最も多かった気もしています。
伝えたいこと
受験勉強を始めるなら早ければ早い方がいいです。
11月から7月まで、ひらすらに時間が足りないと感じる毎日でした。
過去問は参考程度に留めて、様々な問題に柔軟に対応できるように、広く基礎を抑えるような勉強をオススメします。