Newtonの展開公式
Taylorの展開公式に対して、Newtonの展開公式 が知られている。
ここで、、、、、、とする。
下降階乗の差分と冪乗関数の微分は類似している。
、
Taylorの展開公式が、収束半径内という制限付きで成り立つのと同様に、Newtonの展開公式にも制約がある。例えばとして多項式関数を考えると、有限回の差分によって多項式関数は消滅するので都合がよい。
*部分和分(部分積分の離散版)
Taylor展開が部分積分を繰り返して得られるように、Newtonの展開公式も「部分和分」を繰り返すことで得られる。
部分和分の公式 :
ただし、かつは正の整数とする。
に対して、として部分和分を行う。を選ぶと、
を得る。
に対して再び部分和分を行う。
とみなして、関数を求める。より、とおけばよい。
となるので、となるが、ここでより、を得る。
に対して再び部分和分を行う。
とみなしてとおけばよい。
より、となるが、より、を得る。このような計算を繰り返すことにより、
を得る。
として多項式関数を考えると、有限回の差分によって剰余項は消滅し、Newtonの展開公式が得られる。
関 Bernoulli 多項式 と Faulhaber の公式
*差分・和分
において、とした極限を微分係数とよび、と表すことにする。
また、としたものを差分(階差)とよび、と表す。
を和分とよぶ。
微分・積分と差分・和分には類似の関係が成り立っている。
*下降階乗
を下降階乗とよぶ。
下降階乗はが自然数でないときにも定義できる。
下降階乗の差分は、冪乗の微分と類似の式が成り立つ。
二項係数を使うと、と表せるが、この式は であり、パスカルの恒等式を意味している。
*関 Bernoulli 多項式と関 Bernoulli 数
整数について、が関 Bernoulli 多項式であるとは、
およびが成り立つこととする。
この2つの条件があれば計算できるのである。と表すことにすると、
より、は定数関数である。
より、と表せる。
より、である。
より、である。
より、となるので、を得る。
より、である。
より、となるので、である。以下同様の計算が続く。
を、それぞれ第1種関 Bernoulli数、第2種関 Bernoulli数とよぶ。
と表すと、が成り立つ。
が3以上の奇数であるとき、第1種関 Bernoulli数となるので、第1種と第2種が本当に異なる値となるのは、との場合のみとなる。
Taylorの展開公式により、 ここで、
これを適用すると、
よって、を得る。
*冪乗数列の和の公式(Faulhaber の公式)
ここで、より、
Taylorの展開公式により、である。
そこで、と形式的に表現する。これは、による。
さすれば、が成り立つ。ただし、によって微分作用素を定義する。
一方、は成り立つだろうか?
そのためには、微分作用素の意味をはっきりさせなければならない。
Taylorの展開公式の離散版として、以下のNewtonの展開公式が知られている。
どちらも無条件で成り立つ訳ではなく、Taylorの展開公式は、関数の無限回の微分可能性と収束半径の存在を仮定するとき、収束半径内において成り立つ。
Newtonの展開公式も、限られた関数(例えば整関数)において成立する。このとき、とおくと、
両辺をすれば、はに収束するので、が成り立つ。
ここで、より、形式的に と表すことにすると、が成り立ち、に対応していることが分かる。したがってをによって定義すれば、が成立することが諒解できるであろう。
格子点問題
「Dirichletの約数問題」ともよばれる。1838年に証明された。
での約数の個数を表し、とおく。
座標軸をとり、双曲線を考える。はひとまず変数では なく定数とみなしていることを注意しておく。
によって囲まれる領域内の格子点を数えるとに一致する。なぜなら、はとなる正の整数のペアの個数に等しい。
をの範囲で動かすと、が求まる。
を以下の3つの領域に分ける。
最も簡単に求まるのは内の格子点であって、で求まる。
ここではガウス記号で以下の最大の整数を表す。
内の格子点の個数は互いに等しく、 で表すことができる。
この値を近似する式を与えよう。 をほぼと見積もる。このとき、 について考えよう。
【補題】
(証明)
ここで、より求める式を得る(終)
Euler–Mascheroni定数を、で定義する。
を、Euler–Mascheroni定数を使いながら変形してみよう。
とにより、
ユークリッドアルゴリズム
ニュートンの恒等式
今回は以下のサイトを参考にしています。
https://proofwiki.org/wiki/Newton%27s_Identities/Proof_1
とおく。
次多項式を定義する。
このときを基本対称式とよぶ。ただしと定める。
を乗の和とする。
ニュートンの恒等式とは、「基本対称式」と「冪乗和」の関係式である。
[Theorem](Newton)
(example 1)
(proof)
にを代入するととなるので、
これらの等式をについて和を行うと、
より
すなわち のときの解答を得る。
[Lemma 1] とする。
文字を取り除く操作をで表すことにする。
(1)
(2)
()(1)は基本対称式の定義を使う。(2)はをで1階微分してを代入すればよい。
上記の補題を利用する。
以下では、の場合について証明する。
ここでを補題を利用して計算する。
によって添字を置き換えると、
あとはについての和を計算すればよい。
よって求める等式を得る。
フィボナッチ数列とチェビシェフ多項式
今回は上記のブログを参考にさせてもらっています。
第1種チェビシェフ多項式
第2種チェビシェフ多項式
【命題】
1
2
以下の性質も簡単に分かる。
○ はについての次式である。
○ はが偶数のとき偶関数、が奇数のとき奇関数である。
○ の最高次数の項はである。
第2種チェビシェフ多項式の零点を調べてみよう。
が偶数のときチェビシェフ多項式は偶関数となるので、が零点であれば、もまた零点となる。
であることから、のとき零点となるので、がすべての零点である。したがって、のときを因数分解すると、
この式にを代入すると、を得るが、実はこの値はフィボナッチ数に一致する。
【命題】
- リュカ数
- フィボナッチ数
ただし、、(黄金比)とする。したがって、をに代入すると、となる。
Cayley–Hamilton theorem
行列の随伴行列とは、余因子行列の転置行列のことである。
余因子行列の成分は、行列の小行列式によって定義され、である。小行列式は、行列の行と列を削除することによって得られる行列の行列式である。
随伴行列について、detが成り立つ。
detとおく。これを固有多項式と呼ぶ。
とおくと、が成り立つ。
ここで、行列を係数とする多項式を考える。係数の行列はの正方行列とする。
行列係数の多項式との正方行列について、と定める。行列の掛け算については、一般に交換法則が成立しないので、この定義はの位置に依存する。
行列係数の多項式とについて、にを代入した式とが一致するためには、任意のとが可換であれば十分である。
そこで、とおく。
の各成分はを不定元とする多項式であるので、の係数だけを残した行列をとおくと、が成り立つ。
より、 となるので、とは可換である。これは、にを代入した式とが一致することを意味している。だから、が成り立つ。
なので、が成り立つ。
ここでとは、多項式に対して、行列をにより代入して得られる行列を意味する。