womb to tomb

KLCで顕微授精の末に授かった、まだ見ぬわが子の成長記録と自分の体調変化、その他思うところ。

W37 Day4

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東京衛生病院 無痛分娩実録

12/25
16:00 体重測定、採尿
16:06 着替
16:15 ブドウ糖点滴開始
針が太くて痛いが1〜2時間で慣れるとのこと、刺した後はシリコン製の部分だけが残っているので、動いても問題無いらしい
16:20 麻酔テスト開始
チクリとする痛み、打ってすぐにお尻の右側に違和感、
同時に目の前に蚊が沢山飛んでいるような症状が出て、それが一分程続く
16:45 麻酔追加
若干血圧が下がる、上が96
17:03 麻酔の効き具合確認
外陰部分を摘ままれるが、普通に痛みを感じるのでまだ効いてない様子
17:30 麻酔追加
特に異常なし、足の浮腫みが酷いので、医療用着圧ソックスを履かせてもらう
17:50 麻酔チェック
まだ効いていない
18:00 トイレタイム
尿意が我慢出来ず、ベッドの上でおまるに放尿
背徳感を感じつつも、スッキリ快感、恥ずかし気持ちいい
18:25 麻酔やり直し
腰に刺してあった針を抜き、もう少し上に刺し直し
左足に電気ショックの様な痛みが三回、思わず身体をよじってしまう程痛くて、看護婦さんに抑えてもらう、薬の注入時間が一度目より大分長いが、血圧異常なしで110
19:00 麻酔やり直し
針に血が逆流してしまい、再び麻酔やり直し
今回の痛みは局所麻酔の時のみで、これまでで一番耐えられる
19:20 麻酔追加
左足メインで痺れてきた、血圧が上がってしまい、電気を暗くされる
19:40 やっと麻酔が効く
徐々に麻酔が効いてきたので、さらに麻酔追加し、血圧上がって143、視界がぼんやりしてきた
右側に麻酔を回す為に、右側を下にして横になる
20:05 麻酔が完全に効いた
胸の下あたりまでつねっても殆ど何も感じない、舌が多少痺れている
上半身に薬が効きすぎとのことで、ベッドの角度を変えて上半身を持ち上げる
20:07 相方到着
今日はお見舞いは要らないと思っていたが、食事や歯磨きの介助をしてくれてとても助かった、いつものことながらありがとう
20:10 ラミナリア
子宮口を広げるラミナリア挿入の為、分娩室に移動
空調の排気口や諸々の医療器具まで部屋のアイテムがことごとくピンクで驚く
20:15 剃毛、導尿
20:20 ラミナリア挿入
14本挿入、振動だけが伝わって全く痛みはない
胎児は何事が起こっているのか、とズイズイ動く
20:50 抗生剤服用、食事
妊娠糖尿病な上に低血糖症なので、管理入院の時と同じ特別食でお願いします、としつこい程念を押したのに、通常食が出てきた
食事の前に抗生剤メイアクトを服用
首が強烈にこっていることに気づく、麻酔の副作用ではないらしいが、横を向いたり頷いたり出来ない程の痛み、まさかの伏兵がここに
21:50 陣痛もどき開始
生理痛の様な痛みを僅かに感じる、病棟消灯時刻が近づいてきた為相方帰宅
22:00 再び陣痛もどき
またお腹が痛み、以降波がありつつ夜中中痛みがずっと続く
足の痺れが取れてきたのでトイレまで歩くが、首が固まっている所為もあってなかなかきちんと自力で歩けない
22:40 消灯
お腹が痛い、安眠剤リスミーを処方される
23:15 血糖値測定
こちらからの催促でようやく血糖値測定してもらい115
血糖値は食事開始から2時間で測る筈だが、看護士は食事終了から2時間だと勘違いしている様子

12/26
お腹と首の痛みでなかなか寝られず、寝ても浅い途切れ途切れのうたた寝状態、夜中二回トイレに行く、寝る前より歩けるが首は激痛でコチコチ
夜間はいつもどおり胎動が活発
モニュモニュと可愛く動くお腹を撫でつつカーテンから漏れてくる外の薄明かりの中で微睡む
この時間が妊娠中ずっと大好きだった
3:00 力尽きて寝落ち
5:30 起床
体温血圧正常、血糖値測定86、心音モニター装着、再び抗生剤を服用、ブドウ糖点滴装着
首の痛みは変わらず、かろうじて左右にはかろうじて回るが上下に動かない
5:55 洗面
顔のむくみが酷い、やっぱり病院食はむくんでしまうので、減塩云々よりも前に調味料の質を見直してほしい
6:05 モニター装着
6:16 浣腸
そしてすぐさま排便、グリセリン浣腸のあまりの即効性に感動
それにしても何故看護士はみんな「お浣腸」とわざわざ「お」を着けて呼んで、やんごとない扱いをするのか
6:30 再びモニター装着
6:35 促進剤投与開始
投与前からお腹はけっこう張ってきているとのこと
7:00 陣痛スタート
お腹が五分刻みくらいで痛むので、ここから陣痛スタートとみなされた
7:15 麻酔投与開始
7:30 麻酔が効く
お腹の痛みがマシになる
7:45 麻酔追加
8:00 麻酔がさらに効く
足が痺れてきて、外陰周りの感覚が無くなり、首の痛みもましな気がする
ただ麻酔の所為か胎動を感じなくなって寂しい
8:10 ラミナリア除去、破膜
子宮口の開き4cm
8:38 血糖値測定
72、低め
8:50 一旦休憩
気づいたら寝落ちていた、仰向けの体制でいたら胎児の心音が弱まってしまったので、慌てて横向きの体制に変更、気づいてあげられてなくて申し訳ない
9:00 導尿
麻酔が効いてると尿意も感じないが、膀胱は張っているらしい
膀胱が空になることで胎児が下に下がる効果があるとのこと
子宮口の開き5.5cm
母体と胎児の体力回復の為に、さらに少し眠る
9:45 胎動強まる
10:00 胎児が下がる
順調に下がってきて、子宮口の開き8cm、お腹が痛い
10:05 麻酔追加
おなかの痛みが引いてきた
10:16 相方到着
10:55 酸素マスク装着
胎盤を通して酸素を胎児に送る為とのこと
11:05 子宮口全開
血圧正常103、体温平熱
麻酔の効きがいいので少し投与量を減らす
11:30 導尿
酸素マスクを一旦外す
11:47 血糖値測定
130、ブドウ糖点滴過剰か?
12:10 血圧測定
118
12:50 血糖値測定
101
12:55 いきみ練習
胎児が降りてきたのでいきみトライアル、やたら上手いと褒められ、何かやってたのかと聞かれた
13:00 分娩室へ移動
13:10 分娩開始
順調にいきんでいたのに、途中参加の助産師さんがわたしの左胸のあたりで他のスタッフと違うタイミングとやり方をギャアギャア騒ぎたてるのでイラっとする、それくらい全く痛みは無くて代わりに余裕が有る
13:26 娘誕生
スポーンと出てきて感動よりも先にビックリしてしまい、気の利いた言葉が出ない
13:50 後処理完了
分娩準備室へ移動
14:00 初期検査が終わって分娩準備室で娘と対面
体重2,626g、身長45cm
あなたはどれだけ26という数字が好きなのだろう
早くもおっぱいを吸い出している
14:30 血圧測定
146、頭痛がする
14:50 血糖値測定
116

W36 Day4

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(パソコンがいじれないので、画像の位置がブサイクです。)
ついに臨月に突入。羊水まで凍てつきそうな寒さの中、最後の妊婦健診を受けてきた。このところ、暴れ馬の様な我が血糖値を騙し騙し積極的にカロリーを摂取してきたのが功を奏したのか、あなたの推定体重もめでたく約2,600gにまで到達。
ただ測定誤差±300gを考慮すると、来週の出生までにあと200gは増えて欲しいなあと痛切に祈る。統計学的に2,500g以下で産まれた低体重児は、成人後に血糖調節異常を生じやすく、しかもその傾向は女児に顕著だという事実を踏まえれば、未熟児ギリギリで産まれ耐糖能異常に悩んできた身としては、出来るだけ同じリスクは回避してあげたいと願うのは当然のことだ。
母体の方もめでたく子宮口が1.5cm開き、お腹も下がってきて、いよいよ出産モードに突入といった感じ。不妊治療していた時は、子供が欲しいと思いつつも分娩のことを考えると正直不安や恐怖心でいっぱいだったのだが、その日を目前に控えた今、自分でもびっくりするくらい落ち着いていて、且つウキウキワクワクしている。母子共に無事でいられる保障なんてどこにも無いけれど、どんな事が起こっても自分はきっと受け止められるだろう。
ゾヨゾヨとお腹の中で動くあなたをあやしつつ、そんな穏やかな気持ちでぬいぐるみ付のリストバンドをフリーハンドで縫ったら、えらく穏やかな表情のクマが出来上がった。クマの顔の中には鈴が入っていて、赤ちゃんの腕や足につけて動かすとチリリンリンと鳴る仕様だ。今も胎内に微かに響いているであろうこの鈴の音を、あと何日か後には外に出てきたあなた自身が元気に鳴らしてくれますように。

W34 Day4

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本日は9回目の健診日。あなたの推定体重は2,200gになった。どうやら胴周りや脚の長さは平均値の様だが、頭囲だけが一週間分以上アヘッドらしい。わたしは骨盤が小さめなので、難産にならなければよいのだけれど。
このところ親族や友人が出産ラッシュなのだが、彼らが見せてくれる子供の写真や動画を通じて、ようやく自分のお腹からもいわゆる「赤ちゃん」が出てくるのだという実感が湧いてきた。勿論これまでもずっと胎動や母体の変化を通じて、自分は出産するのだという認識はあったのだが、なんせ初めての出産だし、健診の度に見るのは古い白黒エコー映像のエイリアン様の生命体でしかないので、その若干グロテスクな像とあの愛らしい新生児の姿とはなかなか結びつかず、本当に自分はヒトの赤ん坊を産み落とせるのか不安だったのである。しかし、胎児の時から馴染みのあったどの近親者のお腹の命も、産んでみたらちゃんと人間だったところからすると、間も無く出てくる予定のあなたも、必ずやホモサピエンスなのだろう。
いよいよ赤ちゃんを迎えるのだという思いも新たになったところで、計画分娩の日が12月26日に確定した。これから三週間、最後の追い込みであなたの体重もぐぐんと増えてくれるといい。そしてこちらもまた最後の追い込みで、ナーサリールームに授乳用の椅子とベビーモニターを設置し、全ての装備品を水通しし、後手になっていたおくるみも編み上げた。
さあこれで準備万端・・・と思いきや、冬だから布おむつの替えが多めに必要なことに今更気付いたので、改めてさらしを買いにしまむらに走っている。相変わらず肝心なところで、何かうっかり忘れている母だ。もしあなたが将来ツメが甘いと詰られたら、それは母親譲りの先天性のものだと思って間違いない。あとごめんなさい、あなたの頭がガッツリ大きいのも、残念ながらわたしの遺伝だ。

W32 Day5

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行楽風弁当を二つ抱えて日暮れからいそいそと向かった先は、いつもの産院のいつもの健診。妊娠後期に入っていよいよ血糖値を厳密にコントロールしようとなると、当然外食など出来るわけも無く、出先での食事も持参せざるを得ないのだ。

なかなかストレスの溜まる食生活ではあるけれど、地道に続けている甲斐があってか、あなたの発育に血糖増加による悪影響は出ていない様で、今日のエコーでも推定体重は約1,900gと過不足ない成長っぷりを確認することが出来た。

ちなみに日に日にあなたが重くなる一方で、わたしの体重は食べづわり花盛りの夏をピークに寧ろ減少傾向にあり、妊娠前から2.5kg増で留まっている。この状況が若干心配になって医師に確認したところ、胎児が適切に育っている限り母体の方は問題無いとのこと。それであれば、現在の自分の食習慣の中には太りたくない妊婦仲間にとってはヒントになることがあるかもしれないので、その中でも一般的認知度が低いポイントを幾つかつらつらと記しておこうと思う。

 

・六分割食による体重減効果

妊娠糖尿病の診断を受けてから朝昼晩の食事をそれぞれ二分割し、一日六回に分けて摂取する様にしたところ、食べる内容は以前と同様であるにも関わらず体重が減少した。通常食事を摂って血糖値が上昇すると、糖を体内に取り込むべくインスリンが放出されるが、このインスリンには過剰なブドウ糖を脂肪に変えて蓄積し、また既にある体脂肪を消費しにくくする働きがある。分食して一回あたりの食物摂取量を少なくすることで、血糖値の上昇幅が抑えられる為大量且つ急激なインスリン分泌も抑制されることになり、その結果痩せやすくなったのだと思われる。

なので体重増加を避けたいのであれば、妊娠糖尿病でなくとも食事を分けて、少量頻回にするとよい。なお分割食には、三度の食事の間に果物やパン等の軽食を摂るやり方もある様だが、それだと素人にはカロリーや血糖値の管理が難しいので、単純に一回の食事を二等分して摂る方法がお奨めである。

 

・浮腫み防止には減塩の前に変塩

浮腫みによる体重増加に効果があるとされる減塩だが、個人的な体験から述べると、調味料が起因と見られる浮腫みが発生するのは決まって外食した時である。外食店は一般的に味付けが濃い所為もあろうが、実はわたしは管理入院中の塩分制限された病院食でも四肢や舌が浮腫んでしまい、夜は喉の渇きで目が覚めたのだ。

一方自宅で調理したものは、多少塩辛いものを食べても浮腫みが悪化することはない。ここから推測するに、浮腫む要因は、塩分の量よりもその質である様に思う。というのも、一般的に使われている精製塩は成分の99%以上が塩化ナトリウムなのに対し、自宅で使用している天日塩はその割合が85%程度しかなく、残りはカリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄などで構成されているからだ。単に味が好ましいという理由で使ってきた我が家の天日塩だが、その優れたミネラルバランスが吸収においても排泄においても臓器の負担を軽減させており、敢えて減塩せずとも身体を浮腫ませることは無く、寧ろ必要な栄養素の供給源となっているのだろう。

巷では、塩を極力減らしているのに浮腫みが全く改善せず体重が増えまくって困る、という妊婦の声をよく聞く。それであれば、無闇に減塩をする前にまずは一度その質を見直してみてはどうだろうか。勿論塩だけでなく、醤油や味噌等全ての調味料を天日塩を使った良質のものに変更することになるし、科学調味料や加工食品等はほぼ使えなくなるけれど、徹底的にやればやる程その効果には目を見張ること請け合いである。

 

・ヨーグルトの自分への整腸効果を見極める

ホルモンバランスの変化や肥大した子宮による腸の圧迫の所為で、妊娠中は便秘からの体重増も起こりがち。そしてその対策として、腸内の善玉菌を増やそうとヨーグルトを積極的に摂取している妊婦も多い。が、毎日ヨーグルトを食べているにも関わらず、スムーズなお通じを実感出来ていないならば、ヨーグルトが整腸に効いていないばかりか寧ろ逆効果になっている可能性があるので、一度その食習慣を改めてみてはどうかと思う。

ヨーグルト自体は確かに多くの善玉菌を含んだ優れた食品ではあるけれど、それが我々個々の体質に合っているとは限らない。よしんばヨーグルトを食べてもお通じが滞らないとしても、便の形状が悪い、臭いが強い、お腹が張る、ガスが多い、等の症状があれば、腸内の環境は決して良いとは言い難い。

かくいうわたしも昔はヨーグルトを常食していたが、思い切ってヨーグルトを絶ってみたところ、明らかに便通が良くなって今では妊娠中でも有段者レベルの快便生活を享受できている。ここ数年我が家の乳酸菌摂取源は、ヨーグルトではなく専ら納豆、ぬか漬、漬物、味噌、しょうゆ、麹、酒粕、そして黒酢だ。日本人の腸には、こういった伝統的な日本の発酵食品の方が効果的であることが多いので、まずは二週間ヨーグルトに替えて積極的に摂ってみると日頃便秘がちな方も状況が改善するかもしれない。

「菌の種類によって体質に合うヨーグルトと合わないヨーグルトがある」という説もあるが、いかに身体に合った菌を含むヨーグルトを摂ったとしても、そもそも自分の様に乳たんぱくや乳脂肪が消化に負担となっている場合、腸内環境は決して良くならない。母体の腸内細菌叢が、分娩を通して子供にも受け継がれることを考えると、出産までに自分の腸内を整えることは、母体の体重管理の為だけではなく、将来の子供の健康の為にも非常に有益なことだ。

W32 Day0

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今日は夫婦揃って、自治体主催の両親学級なるものに初めて参加してきた。プログラムは、妊婦疑似体験や助産師によるお産前後の過ごし方に関する話、そして赤ちゃんの入浴と着替えの実習等である。相方は特に実習に積極的に挑戦。首の座らないゴム製のグネグネした人形(♂)の瞳をおっかなびっくり見つめながら、「気持ちいいねえ♪」と言葉をかけつつ丁寧に身体を洗った後、沐浴布からポロリしたあまりにリアルな股間のイチモツに狼狽していた。

そういえばこの講習に向かう途中、乗車していたバスが車両故障で立ち往生する、というハプニングがあったのだ。運転手は仕方なく途中の停留所で車を停めたが、本部との無線のやり取りで客のケアまでは手が回らず、放置せざるを得ないこと暫し。そのうち外の乗車待ちの列が苛立って騒ぎ出したのだが、状況を察した相方は窓を開け、今運転手は車両トラブル対応中なのでもう少し待って欲しいこと、そしてこのバスには乗れない可能性が高いことを手短に説明し、皆を落ち着かせたのである。

こういうさりげないリーダーシップは相方の持つ美点のひとつなのだが、実はあなたを宿して一番嬉しかったのが、これからは相方の色々な長所を見てとる度に、一緒に感心出来る仲間が増えるということだ。もちろんあなたは違う感じ方をする時があるかもしれないけれど、それでもわたしの選んだ人の良いところに少しでも共感してくれたら、そして願わくばそんな佳処をちょっとでも継いでくれたら、親としてこんなに嬉しいことはない。

と同時に、出来れば悪しき癖は似て欲しくないなあと思う。今日も食卓の椅子には、相変わらず放置されたままの着用済みフリースがダラリと鎮座。嗚呼どうかあなたは相方の真似をせずに、脱いだものは必ず始末する子になっておくれ。とりあえず、これはもう一度着られるのか、それとも洗濯すべきなのか。ジャッジすべくクンクンと鼻を擦り付けた後、あら悪くないじゃない、と思って自分で羽織ることにした。わたしには堪らなく心地よいこの香りだけれど、あなたは父親のにおいをこれからどんな風に感じるんだろうか。

W30 Day5

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妊娠後期に入り、健診が二週間毎になった。あなたの成長具合は大き過ぎることも小さ過ぎることもなく程良い塩梅で、体重もようやく1.5キロを超えたので一安心。よかった、これで万が一早産になってしまったとしても、医学の力を上手く借りられれば助かる可能性がかなり高くなった。
で、今日から10回の胎動を感じるのにかかった時間を計る、いわゆる胎動カウントを記録する様に病院から指示があった。当初のあなたの動きは、まるでチビマリオがプオーンプオーンと割れもしないレンガ目掛けてジャンプをしているような、微々たる振動だったと記憶しているが、今やすっかり勢いを増したそれは、紛れもなくキノコを食べてスーパーマリオ化した後の、力強い正拳突きである。まあ正確には、こぶしというより脚の動きな訳なのだが、ドフドフドフドフ胃のあたりを連続攻撃してくるので、コインというより消化途中の物体がわたしの口からキラキラと溢れだしてしまいそうだ。
身体を動かせる事が楽しくて堪らない、という感じのあなたは毎日実にアクティブで、上記のキック以外に目立つのは、全身を使って子宮に内側から上下にアイロンをかけて伸ばしているような、グウィーングウィーンというゆっくりと重厚な動きと、洗濯物がダンゴ状になって脱水機の中で右往左往回っているような、ドゥルンドゥルンドゥルンドゥルンという素早く小刻みな動きである。
振動の衝撃で夜中に目が覚めて寝不足になることもあるけれど、胎動はこれまでの人生で経験した中で、最も幸せでまろやかな気持ちにさせてくれる感動的な体内変化だ。これまでどんなに胎児の経過が順調だと言われても、何が起こるか分からない恐怖心が常にあったが、あなたのパワフルな一撃を受け止める度に、不安や邪念がひとつひとつ消滅するのと引き換えに、わたしの枯れたすすき野のような下垂体にも一輪一輪小さな花が咲く。ついにそのお花畑気分を具現化せずにはいられなくなって、早くもナーサリールームをせっせと準備し始めてしまった。ベッド以外はいつか子供部屋にと思ってとっておいた有りものと余り端切れを駆使して作った掘っ建てどケチ部屋だけれども、あなたが気に入ってくれたら嬉しい。

W28 Day5

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そういえば、以前つわりの床で書いた短歌が入選して1万円の商品券を頂き、ヒャッハー!していたのだが、今度は黒毛和牛と黒豚1キロプレゼント企画に見事当選してしまった。ハガキに牛の絵をてててっと描いて送っただけで、この幸運。そういえば妊娠3ヶ月目にも作家物のうつわセットを頂戴したし、妊婦は懸賞運が良くなるというのはあながちただの都市伝説ではないのかもしれない。
さらにヒャッハー!なことには、今日の健診であなたが既に妊娠30週半ば相当の1,346gまでスクスクと育っていることが判り、出産予定日が当初の想定よりもだいぶ早まって、クリスマスあたりとなった。知らせを聞いた当初は、わたしの妊娠糖尿病の所為であなたが巨大化しているのかとヒヤリとしたが、出産予定日の前倒しは単にあなたの発育状況が好ましいから、というのが理由らしい。実際、過去1〜2ヶ月程の血糖コントロールの指標であるHbA1Cの値は5.1%で問題なく、現在の血糖値も概ね理想値を保てているので、あまり心配しなくてもよさそうだ。
で、順調なあなたの成長っぷりに応える様に、わたしの乳房には早くも乳腺が幾つか開通し、乳汁もどきの白や透明の分泌物が滲み出る様になってきた。オッパイと呼ぶにはあまりにも小さなこんな貧弱なチッパイでも、一丁前に母乳を出そうとしているのは、我が身体ながら何とも愛おしいではないか。
せっかくなので乳汁したたる胸の写真でも記念に載っけておきたいところだが、プルーンの様な乳首がエロというよりグロ過ぎるので、自粛することにした。かといって、今日のあなたのエコーの写真も出来がいまひとつだったので、代わりに戦利品のお肉を掲載しておこうと思う。さあ、さくらこよ、美味なる和牛をたっぷり喰らって、お互い出産に向けてパワーをチャージしようではないか。