Oh! Sweet Nuthin'

音楽を「dig」る楽しさを伝えるブログ

LIVEレポート「ROCK IN JAPAN FES. 2017 1日目(2017年8月5日) 」

かなり遅くなってしまいましたが...

ROCK IN JAPAN FES. 2017」LIVEレポートします!

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当フェスは2014年より4日間開催となっており、今年の来場者数は4日間で計27万4000人にものぼるそうな...ざっくり計算で「一日券13,000円×動員数27万4000人」してみると、単純売上予測は35億!

人数・金額ともにこのフェスがいかに異常な大きさなのかよくわかります…

さて、今回は4日間全日程にたった一人で参加。

決して、ライブに一緒に行ってくれる友達がいないわけではない、この前もBillboardで友達とShaggy見たし、サマソニは友達カップルと合流したし...たまたま…たまたまです…

とにかく、たった一人で4日間、会場を縦横無尽に歩き回り、上野の格安カプセルホテルを根城に、東京と茨城の片道2時間を鈍行で往復しました...さびしい…凄く当たり前だけれど、フェスは必ず友達と行った方がいいです…

 

まず現場で感じたフェス全体の印象を。

邦楽フェスという事もありお客さんは日本人ばかり、外国の方はほとんど見かけません。年齢は20~30代が一番多い印象です。

初日の会場到着前から、別年度に開催された「ROCK IN JAPAN FES.」の公式グッズを身に着けている人が非常に多かった、リピーターの多さがここからうかがえました。

会場のインフラや交通アクセスは申し分なし、お客さんもフェス慣れしている人が多い様子、全日程通して目立ったトラブルや混乱もなく、皆が快適そうに過ごしていました。

 

それでは以下、LIVEレポートです。

 

【1日目】

「LIVEスタートから終演まで見たアクト」

11:50 Dragon Ash (Grass Stage)

13:10 Suchmos (Grass Stage)

14:40 Creepy Nuts (Wing Stage)

15:45 ZAZEN BOYS (Sound Of Forest)

17:30 tofubeats (Buzz Stage)

18:15 岡崎体育 (Lake Stage)

 以上の6組

 

「 チラ見したアクト」

Monoeyes

The Oral Cigarettes

マキシマムザホルモン

以上の3組

 

「見たかったけど全く見れなかったアクト」

B'z

水曜日のカンパネラ

ビッケブランカ

フレデリック

打首獄門同好会

The Birthday

Nulbarich

The Songbards

この8組はチラッとでも見たかったなー、参加初日という事もあり、最寄り駅からのバス待ちやステージ間移動の時間配分をミスってしまったのが悔しい!

 

「この1日で多く見かけたグッズ」

Suchmosのフェイスタオル・バスタオル

マキシマムザホルモンのTシャツ

Pizza Of DeathのTシャツ

 

まずは1日目のベストアクト「岡崎体育

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「MUSIC VIDEO」という「予算6万円で2300万再生」という衝撃のPVを作り出し、昨年の第20回文化庁メディア芸術祭「新人賞」を受賞。

6月リリースの新作アルバム「XXL」では、「感情のピクセル」という「①メタルコア調の楽曲に、②エモ系パンクいじりの歌詞と③けものフレンズいじりの歌詞をブレンドする」という荒業をやってのけ、生粋のエンターテイナーぶりとその才能を証明して見せた、大注目のアーティストです。

そんな彼がどんなLIVEを見せてくれるのか…今回の初参戦が世間的に話題となっているB’zという大トリを置いても、どうしても体験してみたくて...B’zの真裏のLake Stageで堪能してきました!

セットリストは以下の通り↓

岡崎体育│ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017 クイックレポート

 

結果!

LIVEを見る前よりも、更に彼の事が好きになってしまいました!

星野源もラジオで同様の内容を語っていましたが、この人「音楽自体」と「楽曲のモチーフ」に対する誠実さが他のアーティストと比べても群を抜いて強いです!

楽曲はもちろん、MCや動きまで含めて、計算され尽くしてます。行き当たりばったりで反応をうかがう部分は一切ありません。「こう行動するとリスナーに理解しやすい」「この音楽はこういう風に使うと効果的だ」「ここでこういう合いの手を貰うと盛り上がる」「このモチーフに対してリスナーの多くはこう考えている」等々...一つ一つの要素に誠実に向き合い、練りに練った作戦と演出でリスナーをしっかり楽しませてくれます。

「大トリのB’zの真裏の出番」というヒエラルキー(前回の随筆で書いたやつです)をフル活用し、大トリの真裏の自分を選んでくれたお客さんの気持ちを汲み取りつつ、その気持ちへの感謝もしっかり込めた、この日だけのオリジナル曲「B’zの裏はキツい」。

モッシュ・ダイブ禁止の本フェスにおいて、どうやったらお客さんの一体感を生み出せるのか、考えに考えた末でのギミック「Walk Of Death」。(Lamb Of GodのLIVEで有名なWall Of Deathを安全に歩いて行うという代物、文書化するとつまらないけど、現場で見たその光景はシュールで、かつMCの盛り上げもありとても楽しかった!)。

他にも例を挙げればきりがないですが、「自分の音楽で楽しんでもらいたい」という気持ちが、どのパフォーマンスからもひしひしと伝わってきました。

残念ながら今回はアンコールを実施せずに終了。それでも、鳴りやまぬ観客からのアンコール要請に対し、再度Stageへ登場して挨拶をしてくれた彼。

その際の事、「アンコールは運営の関係上今回はありません」という弁明と共に、冗談交じりに言っていた「さいたまスーパーアリーナでLIVEやるまで業界の人とは仲良くやっていきたいので、今日は勘弁して下さい」というMCがありました。この言葉が妙に心に残りました。

彼はBasinTechno収録の「Explain」や、自身の紹介動画である「盆地テクノと生きる」でも掲げている通り、「30歳までにさいたまスーパーアリーナで単独LIVEを実現する」という目標を掲げています。

冗談めかしたMCながらも、その表情には目標に向けた情熱が垣間見えた。冗談と熱意、このバランスこそが彼のアーティストとしての最大の魅力なのだなとうなづきつつ、「さいたまスーパーアリーナ絶対見に行こう、それまで岡崎体育を応援し続けよう」としみじみと思ったりしました。来年はGrass Stageで見たいなー!

 

「鴨川等間隔」 「エクレア」「観察日記」のような、叙情性に満ちた楽曲は今回はいっさいなし。最後まで「笑える楽しいLIVE」に徹していた彼。でも、LIVEの背景に込められた「より多くの人に楽しんでもらって音楽で成功したい!」という誠実な気持ちが見ている側にひしひしと伝わってくる...本当によいLIVEでした。

最後に、セトリには無いですがここで一曲だけ「鴨川等間隔」のPVを、彼の誠実さを少しでも覗いて頂けたら幸いです↓

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同日程の他のアーティストについても、順次更新していきます!

随筆「邦楽フェスの最高峰:ROCK IN JAPAN FES. が生み出すヒエラルキーとドラマ」

僕がROCK IN JAPAN FES.」で発見した事、それは…

ROCK IN JAPAN FES.=邦楽シーンの縮図・覇権争いのコロシアム」である。

表のテーマ 「邦楽フェスの最高峰=邦楽アーティストの見本市」 × 裏テーマ「邦楽シーンのヒエラルキーの縮図」この2つが巧妙に作用するためだ

故に「ROCK IN JAPAN FES.」は必ず毎年チェックした方がいい!

というものです。それではこの2つのテーマがどのように作用し、ROCK IN JAPAN FES.」を特別なものにしているのか...考察していきます!

 

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【2大テーマがアーティストの下剋上を加熱する】

まず始めに、現代のシーンにおいて、音楽リスナー・アーティストの双方が抱える事情について掘り下げ、「フェスの役割」について考察してみます。

 

・リスナー側の事情

音楽は、「全員が納得するようなオープンなランク付け」を行いにくい分野です。もちろん、音源の売上や再生回数、ライブの動員数等々、比較する尺度はたくさんあります。ディスクガイドや音楽メディアが年末に行う「今年の10枚」のような、豊富な知識と綿密な取材をもとに作成される有用なチャートも確かに存在します。しかし、人間の好みは、確からしい尺度をいくつか提供したからといって、そう簡単には変わりません。さらに、雑多な情報が優劣も曖昧に氾濫する現代では尚の事。「音楽は大好きだけれど、最近はどの情報を頼りに好きな音楽を探せばいいのか分からなくて…昔好きだったバンドをフォローしてるくらいで更新してないな」こんな人あなたの周りでよく見かけないでしょうか?みんな各々の「心のベスト10」を更新したいと考えているけれど、自分からどう動いたらいいのか分からない…現代の邦楽リスナーの多くはこんな事情を抱えていると思います。

 

・アーティスト側の事情

アーティストは生き残っていくために人気にならなければなりません。しかし、「心のベスト10」に収まるために、アーティストが越えなければならない壁はかなり多いのが現状です。「ライブ」「広告」「プロモーション活動」「タイアップ」...練りに練った作戦を元に、これらの活動を精一杯に行う...多くの壁を乗り越え、ようやくリスナーの耳に届いてから、既存の「心のベスト10」との勝負が始まります。壁は多いし、リスナーの顔も見えない...ミュージシャンは非常に非効率な活動を強いられます。しかし、この努力の有無こそが「人気」に直結する訳であり、目を背けるわけには行きません。

上記のような「リスナーの事情」と「アーティストの事情」双方によって、「心のベスト10」は中々入れ替わりません。

せめて条件をそろえて、アーティスト・リスナーが一堂に会し、「せーの」で勝負をする場があれば…あります、それこそが「音楽フェス」です。

 

そして、ROCK IN JAPAN FES.」は邦楽リスナーが「心のベスト10」の入れ替えるのに、邦楽アーティストが「心のベスト10」へ下剋上を仕掛けるのに、この上無い程に最高のステージとなっています。

表のテーマ「邦楽フェスの最高峰=邦楽アーティストの見本市」がリスナーを鼓舞し、裏テーマ「邦楽シーンのヒエラルキーの縮図」がアーティストを鼓舞し、双方が大きな揺さぶりをかけるからです。

 

「メインステージの大トリだったバンドAよりも、同時刻ウラの準メインステージだったバンドBの方が、俺の中ではベストアクトだったよ」こんな会話、フェス帰りの鉄板の話題ですよね。フェス終わりに「ベストアクトの選定」をする。音楽ファンなら当然の儀式です。この「ベストアクトの選定」は、他のフェスでも頻繁に行わる現象であり、「ROCK IN JAPAN FES.」に限ったものではありません。しかし、「ROCK IN JAPAN FES.」の2大テーマは、「ベストアクトの選定」をより加熱させます。

 

・「邦楽フェスの最高峰=邦楽アーティストの見本市」

デビュー1年目のフレッシュな若手から今年の桑田佳祐のような生ける伝説まで…このフェスは「心のベスト10」の入れ替えに必要な「材料」が山盛りに揃ってます。そして、アーティストは同じ会場で同じリスナーを前に、「邦楽フェス最高峰におけるベストアクト」の栄冠を競い合う...この結果から生まれるROCK IN JAPAN FES.のベストアクト」は、当然に他のフェスのベストアクトよりも、その重要性を増します。

さらに、このフェスは「洋楽勢」が不在です。「洋楽と邦楽の線引き・比較」は日本の音楽ファンの永遠の問題とも言えるものですが、他の権威あるフェス、「FUJI ROCK」や「SUMMER SONIC」と異なり、その問題の影響は皆無です。

即ち、「ROCK IN JAPAN FES.」はリスナーにとって、邦楽アーティストの最良の見本市として機能している訳です。

 

・「邦楽シーンのヒエラルキーの縮図」

繰り返しになりますが、このフェスはデビュー1年目のフレッシュな若手から今年の桑田佳祐のような生ける伝説までキャリアを問いません。さらには欅坂46のようなアイドル、Crossfaithのようなメタルコアまで、ジャンルも問いません。結果、「マニアックな音楽性だから動員がとれなかった」「アイドルは固定のおっかけがいるからズルい」なんて言い訳のできない、シビアな環境:邦楽シーンの縮図が出来上がっています。

さらに、タイムテーブルがこのシビアさに拍車をかけます。「タイムテーブルの並び=No1.業界誌が動員を予測して格付けした結果という露骨なヒエラルキー」「タイムテーブル真裏の大物バンドに客を取られ、スカスカな客席を前に演奏を強いられるであろう中堅」「同期デビューで同時間帯にも関わらず、片方はメインステージ、対するもう片方はサブステージに配置された若手2組」etc...裏事情を依り代に、フェスのタイムテーブルは非常に複雑なヒエラルキーを描き出します。

もちろん主催者側だって「同じような客層のバンドは時間帯をずらす」「ベテランと若手はバランスよく配置する」等、精一杯配慮をしているでしょう。しかし、これだけの大規模フェスで、そのバランスを完璧にとる事は不可能なのです。

 

さて、見本市としての役割と、複雑なヒエラルキーの顕在化で何が起こるのか...

リスナーは積極的にランクづけを行うよう動くようになり、アーティストは普段以上の鬼気迫るパフォーマンスを見せるよう努力するのです!

結果、フェス会場が覇権争いのコロシアムと化し、その熱気はアーティストの闘争心に火を点けます。特に若手アーティストに顕著なこの傾向、「人気の有無」が死活問題に直結する若手アーティスト達の燃え方は殊更です。真裏で公演を行うアーティストへの闘志を4日間の中で頻繁に耳にした事か。「あいつらには負けねえ」が様々なドラマを生むのです。

 

【結果生み出される下剋上ドラマ】

【可視化されたアーティストの実力】

 

は非常に興味深いものでした。既に長文のためここでは割愛しますが、後日「ライブレポート」として別記事にまとめますのでそちらも御覧頂けたら幸いです。

 

【まとめ】

ROCK IN JAPAN FES.」はリスナーにとって「アーティストのむき出しの人間性を見る事で音楽をより深く知る事のできる場所」であり、アーティストにとって「自らのポジションとアーティストパワーの正確な把握」ができる場所です。

こんな風に「音楽業界」という世界の中で起きている事を顕在化してくれるフェスは国内には他にありません。「邦楽ファン」と「邦楽アーティスト」は、毎年絶対にチェックしなければならない特別なフェス...今後もどんなドラマを生み出すのか追い続けたいと思います。

随筆「邦楽フェスの最高峰:ROCK IN JAPAN FES. へのいざない」

2017年8月5日・6日・11日・12日 茨城県 国営ひたち海浜公園

ROCK IN JAPAN FES. 2017

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ROCK IN JAPAN FES. 2017に行ってきました。この記事を書いている現時点では前半の5日・6日が終了したところ、明日より後半の11日・12日へ参加します。

 

僕は年に2・3件程度フェスに行きますが、「ROCK IN JAPAN FES.」は今回が初。ブログを立ち上げ、音楽シーンについて考察する中で、「Suchmos」「Never Young Beach」「Creepy Nuts」「岡崎体育」「ヤバイTシャツ屋さん」等々…自分と同世代の20代後半でシーンの最先端を賑わせているアーティスト達が初参戦する事を知り、邦楽最大のフェスでどんな活躍を見せるのか気になったのがきっかけでした。

 

はじめに断っておきますが、今回はライブレポではありません。(ライブレポは後日、別記事で掲載しますので、そちらもぜひ。)

参加を通して得た「ROCK IN JAPAN FES.フェスそのものに対する一つの重要な発見について、ブログで色んな人に伝えられたらなと思い、筆を取りました。

 

それでは以下前段です、長いです、僕の悪い性格がフルに発揮されています、ので「早く結論に進めよ…」という人は、読み飛ばして次の記事へどうぞ、冒頭にこの記事の中身をコンパクトに書いてあるので安心!

 

その発見は…

ROCK IN JAPAN FES.=邦楽シーンの縮図・覇権争いのコロシアム」

 

そして、この発見を踏まえて「邦楽ファンと邦楽バンドマンは必ず毎年チェックすべし」と言い切りたいと思います。

たかだか1回参加しただけで、なんでそんな事言い切るの!?

フェスなんて毎年出演者が代わるんだから目当てがいなけりゃ行く意味無いよ!?

という反論、よくわかります。というか行く前だったら自分も「毎年」は大げさだろ…と思っていたと思います。しかし、参加してびっくり、「最新の邦楽シーンのファン」である僕にとって、想像以上にこのフェス、収穫が大きかった! 

 

蛇足にはなりますが、まずここで、この説により強い説得力をつけるため、自分が「音楽ライブどれだけ好きなのか」を書きます。というか、うぬぼれます。恥ずかしいけど。

僕は少なくとも年間30本以上はライブ・フェスを見てます。邦楽・洋楽問わず気になるアーティストがいれば時間と金の許す限り足を運びます。王道ならフジロックサマソニ、変わり種なら反原発フェス、プログレフェス、アイドルイベント、自分が今最も夢中になっているRobert Glasper Experimentの来日時はツアーの全公演を有給休暇とって全国追いかけたり、翌日の事を全く考えずに来日アーティストのアフターパーティーを探してクラブを何軒も駆け回ったり…正直自分でも、音楽と関係ない仕事をしている社会人のやることじゃないと思います…

 

こんなにライブ大好きな僕ですが、今までこのROCK IN JAPAN FES.にはなかなか参加できずにいました。音楽大好きだけどROCK IN JAPAN FES.」に参加せずにいる人、けっこういると思います。ここで、そんな音楽ファンの心理を、2パターンに分けて分析してみます。

ROCK IN JAPAN FES.」で見なくても単独公演に行けばいいや…

このフェスは「邦楽フェス」です。邦楽アーティストはフェスの他に、単独公演を国内で頻繁に行います、のでROCK IN JAPAN FES.」で見れなかったとしても単独公演に行けば見られるし大丈夫…そんな心理が参加に二の足を踏ませてしまうパターンです。

対する、洋楽アーティストはその機会を逃すとしばらく日本でのライブが見れなくなってしまうようなケースが結構あります。例えば今年のFuji Rock Fes.の「Aphex Twin」なんてその代表格だと思います。次の来日いつになるんだろう…その不安が「これは今回見ておかなきゃな」と後押ししてフェスに参戦した経験、音楽好きだったら結構あると思います。

フジロックとかサマソニとか、邦楽・洋楽混合の他のフェスで今年は「見た」、もしくは「見る予定ある」ので、ROCK IN JAPAN FES.はいいや…

上のパターンと似ているけれど、こちらは少し毛色が異なります。他のフェスで見たor見る予定があるのでもういいや、というパターンです。これ結構あると思います。今回の僕のケースだと今年のサマソニにも参戦する「Suchmos」なんてこれに該当します。

 

こんな人けっこういるんじゃないでしょうか。ちなみに自分は今回参加するまで、①と②の両方が働いて、ROCK IN JAPAN FES.」への足が遠のいていました。この①と②の心理、根底には「フェスのライブも好きだけど、どこで見てもそんなに変わらないでしょ!」という思考があると思います。

 

90年代の後半からスタートした日本の音楽フェスは、約20年の時を得て完全に音楽文化の一要素として定着しました。現代の邦楽シーンの最前線で活躍するアーティストにとって、フェスへの参加はメジャーアーティストとして認知される上で最低限乗り越えていなければならないハードルとなっています。つまりどのアーテイストもフェス対策をしっかりと考えているし、リスナーもフェス慣れしているのです。故に、「フェスのライブも好きだけど、どこで見てもそんなに変わらないでしょ!」こんな考えが頭をもたげるのではないかなーと思います。

しかし、このROCK IN JAPAN FES.は違いました。このフェスでしか生まれない様々なドラマがあったのです。

 

本題に入りますROCK IN JAPAN FES.=邦楽シーンの縮図・覇権争いのコロシアム」について…

このフェスはその成り立ちから、嫌が応にも参加するミュージシャン同士の「争い・対立」を煽るような作りになっています。

それは日本の音楽フェスで唯一このフェスのみが抱えている2つの大きなテーマと密接に関わっています。

「邦楽フェスの最高峰」という表のテーマ × 「邦楽シーンのヒエラルキーの縮図」という裏のテーマの2つです。

 

長いところ読み飛ばさずに最後まで目を通して頂いてありがとうございます!

この2つのテーマが生み出すドラマについて、次の記事へ!

7月のPV(邦楽編) 「星野 源 - Family Song」「宇多田ヒカル - Forevermore」

7月リリースのPVの続き…

 

4つ目↓

星野 源 - Family Song

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自身が主演を務めるドラマ「逃げ恥」とのタイアップで大ヒットしたSingle「恋」に続く10ヶ月ぶりのNew Single。

このPVを見て驚いたのはその情報量の多さだ。

楽曲「Family Song」はドラマ「過保護のカホコ」とのタイアップで、ドラマのタイトルからも理解できる通り、テーマは「家庭」。加えて星野源自身がホストを務める話題のTV番組「おげんさんといっしょ」とのコラボレーションもあり、PVの内容は「音楽家族の日常」を描いたストーリーになっている。さらにPVの最中の障子越しのどんちゃん騒ぎに、最後のCM部分での告知と、サザエさんのパロディーも追加。「家庭」という一つのテーマに3つのモチーフが相乗りした盛り沢山な内容だ。

その内容を演じる出演陣も超豪華、超売れっ子である「星野源」自身の「おげんさんVer.」に加えて、ドラマ主演の「高畑充希」、友情出演?の「藤井隆」、バンドメンバーの「長岡亮介 aka 浮雲東京事変・Petorolz)」が何の断りもなく各々突然に登場。

さらにさらに、2016年の4thアルバム「Yellow Dancer」のAlbumジャケットデザインを手掛け、「ジャケット大賞2016」を受賞した「吉田ユニ」制作の植木のオブジェ(野球帽を被った植木)もPV内の随所で象徴的に配置されている。

さすが売れっ子、「星野源のPV」という一つの仕事に、様々な仕事・情報が相乗りしまくっている…正直「音楽」自体から読み取れる情報よりも、このPVから読み取れる情報の方が遥かに多い。このインパクトのおかげで、今回のPVでは、楽曲自体の出来不出来よりも、このPV自体の出来不出来の方が気になってしまった。PVの役割の本質である「楽曲への注目を集める」という機能をギリギリのラインでキープしながら、上記の情報の整理をしっかりと行った上で効果的に配置し、人物以外やオブジェ以外の背景をモノトーンにする事で不要な情報を徹底的に脱色する事で楽曲のイメージを守りつつ不要な情報の脱色を図る…「星野源」「ドラマ」「出演者」「デザイナー」の全員の顔を立てるために監督が相当頑張ったんだろうな…名采配だと思う。

また、この情報量を投入されても、押しつぶされる事無くしっかりと乗りこなしてしまう、「星野源」というアーティストのキャラクター性も凄い。「多才」という枕詞が付くアーティストは山ほどいるが、その「多才」さを、ここまでPOPに広く受け入れられる形で披露できるアーティストは、過去を遡っても彼くらいだろう。根底にあるのはPOPな文化への尊敬と憧れではなかろうか。PV内で「ナイトプールいきたい」なんてやり取りがあったが、彼は最新のPOP(大衆)文化を純粋な気持ちでフルに楽しむ能力が非常に長けている。リスナーが求める最新の文化・情報を上手に取り込みながら、作品として成立させる、この強力なスキルの研磨が続く限り、ヒットチャートにおける彼の天下は続くだろう。

 

最後5つ目↓

宇多田ヒカル - Forevermore

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長年の沈黙を破って「Fantôme」という大作Albumを投下、世間の話題を唐突にかっさらい、ヒットチャートのトップへと華麗に返り咲いた彼女。その後、紅白出場やネットイベント「30代はほどほど」を経て、今年2017年2月にレコード会社をデビュー当時からの古巣である東芝EMIからSony系列のEPIC Records Japanに移籍した。

今作「Forevermore」は移籍後2作目となるSingle曲だ。今作はそのPVの内容と参加ミュージシャンが非常に話題となった。

PVは宇多田ヒカル自身がコンテポラリーダンスを踊るというシンプルながらインパクト大な内容。振付はAtoms For Peaceの「Ingenue」でThom Yorkeの個性的な振付を監修して世間の注目を集めた「高瀬譜希子」。続いて参加ミュージシャン。昨今のJazzに注目している音楽ファンには朗報!なんと、Robert Glasper Experiment、D'Angeloに参加する超売れっ子ドラマーの「Chris Dave」がドラムで参加している。

凄いぜ宇多田ヒカル!コンテポラリーダンスに自ら挑戦する姿勢とそのとんがり方、参加ミュージシャンのチョイス、オーケストレーションとJazzのフレーズを取り込みながらなお宇多田ヒカル色を維持するその音楽スキル、そして自然体ながらも彼女独特で力強い日本語の配置・歌いまわし…彼女の才能と個性、そしてパーソナリティーが、一つに集約されて爆発している。

 

と、さらっとありきたりな紹介に留めます。宇多田ヒカルの新作については、ここでまとめるのに足らない程、書きたい事がたくさん思い浮かんでおります。ので、後日別途トピックを立てて分析してみようと思います。もしよければ、そちらもお読み下さい。

 

という事で 以上5つ。

今月は一曲一曲についてかなりdigったなー。そしてdigればdigるほど音楽にのめり込んでいく…いい傾向だ!ブログ始めてよかった!

読んで下さった方々、本当にありがとうございます!

7月のPV(洋楽編) 「Jay Som - NPR Music Tiny Desk Concert」「Jack Johnson - My Mind Is For Sale」

7月リリースのPVの続き…

 

2つ目はこちら↓

Jay Som: NPR Music Tiny Desk Concert

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アメリカのラジオ局であるNPRがPodcast向けに配信している「Tiny Desk Concert」という企画シリーズ。このPVにも使用されている「Tiny Desk」と呼ばれるオフィスの一角をライブ会場として利用するというルールの元、週1~2回程度のペースで、毎回様々なアーティストが代わる代わる登場するのが本企画の特徴だ。

登場するアーティストはジャンル・知名度・キャリアともにばらばらで、Chance The Rapperのような現代の最重要ラッパーから、今回のJay Somのようなカッティング・エッジな新人ロックアーティスト、果てはSun Ra ArkestraのようなマニアックなJazzの大御所まで多岐に渡る。

Jay Somはアメリカはオークランド出身のSSW。2017年3月に発売となった最新作「Everbody Works」が現在注目を集めている。「ブルーアイドソウルをアジア人がロックアレンジで演奏する」といった作風で、現代のアメリカの音楽シーンでは相当マニアックなキャラクターを有するミュージシャンだ。情報が非常に少ない彼女、Wikipedia情報だとフィリピンがルーツに関係しているみたい。

僕は彼女をPitchforkの高評価で発見、Tiny Desk の出演者をチェックする中で最近よく耳にする名前だな、と気になり今回紹介するに至った。

今回の動画では、自身の最新作より「The Bus Song」「Bay Bee」とBandcampで昨年公開された同名EPより「I Think You're Alright」の3曲を披露している。

Liveの一発録りという環境が、彼女の持つ「個性的なボーカル・リズム」という魅力を存分に引き立たせている。フレーズの後に残るアジアンポップス風の余韻や、ラップとは異なるSSWならではの不思議なフローがたまらない。

2017年2月にデビューしたVagabonのLaetitia Tamkoや2016年のデビュー盤でロック界の台風の目となったMitskiをなどなど、昨今のロック界では「多様なルーツ X 女性ボーカル」という特徴を持つアーティストの、その特徴を活かした活躍が目覚ましい。米国のカルチャーが「人種」と「性別」の2点を軸に盛り上がりを見せている事を鑑みれば、この流れはしばらく続いていくだろう。彼女の表現するマニアックな音楽が、今後どのように活躍するのか、気になるところだ。

 

3つ目↓ 

 Jack Johnson - My Mind Is For Sale

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突如公開されたJack Johnsonの新曲。この曲の公開と同時に4年ぶり、7枚目となるNew Album「All The Light Above It Too」のリリースがアナウンスされた。

New Albumに関するジャックのコメントをネットで調べると、どうやらパーソナルな内容になるみたい。この曲も大胆なバンドアレンジはなく、シンプルなギターと鍵盤だけでなりたってしまう内容だし、PVもハンドメイド感が強い。個人的に彼のパーソナルな作品という点には凄く興味がわく。というのも彼の哲学ってかなりユニークで興味深いものだからだ。

彼の存在を知る人に、彼がどんなアーティストなのか説明を求めれば、十中八九「海」「サーフィン」「ギター」というイメージを含んだ回答が返ってくるだろう。それ程にJack Johnsonというアーティストのイメージは特徴的だ。誤解を恐れずに言えば、記号的と言ってもいい。「Jack Johnson」=「海」「サーフィン」「ギター」という記号・方程式は、彼のデビュー当初から、世間が彼に対して抱えている非常に強固なものだ。

しかし、彼の楽曲を一歩踏み込んで聴きこんでみると、彼がその記号・方程式に「ただ忠実なだけ」のミュージシャンではない事がよくわかる。それらはあくまで彼の土台でしかなく、彼の作り出す作品の核になるのは、その土台から育まれたジャック独自の哲学だ。一部ではトランプ批判なんて解釈もある今回の楽曲もそうなのだが、彼の作る歌の内容は、現代を生きる人々が抱えるエゴや問題を、彼独自の哲学で見つめたものが多い。この哲学があってこその彼の音楽なのだ。巷ではこの土台ばかりが話題になりがちだし、ショウビジネスの世界でそれは仕方のない事なのはよく理解している、しかしそれは非常にもったいない事だと僕は常々感じていた。のでこんなに長文で書いてしまいました…

とにもかくにも、彼は間違いなく現代のSSWの最高峰だ。土台・哲学・スキルの三転倒立を長年に渡って維持し、その作品のクオリティを維持し続けている存在は珍しい。そんな彼の作るパーソナルなアルバム。彼がこの混乱の世の中で何を訴え、どのように世界に影響を与えるのか、非常に興味深い。発売が待ち遠しいぜ!

 

(蛇足だけれど、彼と同じサーファーでサラリーマンをやっている僕としては…PVのジャックの日焼けから、サーフィン三昧な日々を想像してしまった…上記の通り、彼が環境に恵まれているだけの人間ではなく、日々の努力を通して磨き上げた感性と哲学で今のポジションを維持し続けているのはよくわかっているんだけどね…でもなーやっぱりその環境は羨ましすぎるよ。)

 

また書きすぎた…邦楽編へ続きます。

7月のPV(今月のTOP)「Tyler, The Creator - Boredom」

7月にYouTube上で公開された音楽PVより、個人的に気になるPVを5作ご紹介。 楽曲のリリースタイミングとは異なりますのであしからず。

 

まずは今月の要注目作品から!↓

Tyler, The Creator - Boredom

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Tyler The Creator の新作 Flower Boy より、アルバム発売に先行して発表されたSingle Cut曲。

トラックはメロウなイントロより終始一貫してSOULxPOPで色どられている。このトラックだけなら「センスの良い懐古主義の若者の戯れ」といった評価で終わるだろう。しかし、そこに皮肉たっぷりのコーラスとデモニックなラップが加わると、一挙に「最高にクールな若者の主張」に楽曲は姿を代えてまう。このギャップは従来からタイラーが18番とするものだが、そのスキルは全く錆びてない。しっかりと機能し、相変わらずの不健全な魅力たっぷりでリスナーをしっかりと捕まえて離さない。

OFWGTAが世の中に登場してもう5年程度経つ。タイラー、アール、ドモ・ジェネシス、ジ・インターネットとメンバーはそれぞれにデビューを果たし、その勢いはとどまるところを知らない。しかし、彼らはデビュー当時の「最先端を行くクールでサイコな若者集団」から「独自の価値観を持ったクールでメジャーなタレント集団」へと確実に成長している。

一挙一動が注目される大スターが、現代人のありふれた退屈を作品にした本作。従来からタイラーは、パーソナルな心理描写で世の中の多くの人の深層心理を浮き彫りにしてきたが、彼が本楽曲で訴える内容は、サイコ野郎の内面から現代人の内面へと変わり、リスナーにより接近した普遍性を伴う内容へ移行した。そして「退屈」を歌ったこの楽曲は、そのテーマにも関わらず、従来のタイラーの持ち味であった躍動感と刺激で満ち溢れている。

かくして、奇をてらわずともしっかりとリスナーを刺激する作品を作り上げるスキルを証明した今作は、デビュー以来、前作まで酷評を続けていたPitchforkに手のひらを返させ、Best New Musicの評価をもぎ取った。

繰り返しになるが、タイラーとOFWGTAはそのタレントを確実に成長させている、今後も彼の快進撃をは続くだろう。世間が彼の一挙一動をフォローする日々はしばらく続く事だろう。

(蛇足:タイラーの作品初参加ながらも、大先輩のカリスマFrank Oceanと同路線のチル&メロウ100%で勝負し、見事に楽曲を成功へと導いたRex Orange Countyもタイラーに負けじと本当に凄まじい才能だと思う...若干19歳の彼の活躍にも今後期待大…)

 

 タイラーに夢中になって長くなり過ぎた…続きます!

6月のPV(洋楽編) 「Yellow Days - That Easy」「Mura Masa - Blu」「Sheer Mag - Suffer Me」

6月リリースのPVの続き…

 

3つ目はUKの期待のニューカマー Yellow Days - That Easy

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6月28日にリリースしたSingle曲。PVも楽曲もサイケ100%...空間系のエフェクトに白人が歌うねちっこいソウルがからみつく、ありそうでなかったサイケ・ソウル…ポップさもキャッチーさも皆無だけど、なぜかふっと聞きたくなる…そんな不思議な楽曲。

間もなくデビューアルバムをリリース予定のUK在住の彼は、なんとまだ17歳!最近だとOFWGKTAのTyler The Creatorの新作に参加したRex Orange Countyや、少し前だとJames BlakeにThe XXもうそうだけれど、イギリスのアンダーグラウンドの若手達の独創性って凄まじい。現行のシーンの流れと全くリンクしない新しいムーブメントを、ゼロから生み出し、UK独自の流れを作り出してしまう。

現行のシーンはHIP HOPとJAZZがメインでアメリカの音楽にばかり注目が行きがちだけれど、UKのシーンは絶対に見逃せないなー…とそんな事を再認識させられる一曲でした。

 

4つ目もUKの期待のニューカマーが続きます、Mura Masa - Blu

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7月14日にリリースとなった1st アルバム「MURA MASA」収録。BlurのDamon Alburnをフィーチャリングに迎えて制作された、ゆったりとしたBeatが心地よい名曲。Beat Musicはどうしても無機質になりがちだけれど、コーラスパート上手に組み込み、非常に温かみのある一曲に仕上げている。このクオリティでまだ20歳だと...UKの若手の音楽オタクっぷりってホントに凄まじい。

アーティスト名は言うまでもなく日本の名刀「村正」が由来、昨年のFuji Rockでも来日する等、日本との所縁が非常に深い彼。今後日本人アーティストとのコラボが行われる可能性大と睨んでいます。個人的には宇多田ヒカルと組んで欲しいなー。

 

最後はアメリカのロックンロールを!

Sheer Mag - Suffer Me をお届け!

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Pitchforkが現在猛プッシュしているHard Rock バンド。こちらも7月14日リリースのデビューアルバムからの一曲です。Gary Moore期のThin Lizzyみたいな超正統派のRock N Roll をパワフルな女性ボーカルTina Halladayが歌いあげる、このバンドはこの説明が全て!時流と全く関係なく、Vo.の存在感でねじ伏せる!それだけ!

ネットで記事漁るとPunkバンドって紹介あるけど、Punkの枠にとどまらずHard Rock、Southern Rockなんかの影響も色濃く感じられます。しかし、正直音楽性はもう完成しきっている…後はこのスタイルに磨きをかけまくって、2年以内に全米を席巻するようなポピュラー性のあるキラーチューンを作り出せるかどうか、このバンドの今後はその一点が分かれ目になるだろうなー。ラッパーやDJと違ってRockバンド(特に彼らのようにクラシックを演奏するバンド)って「ft.」による改造や話題作りが行いにくい。シーンの移り変わりが激しい現代で彼らのようなバンドは苦戦を強いられると予感します。今後この予感は当たるのか...バンドがどのような展開を見せるのかと共に見守りたいと思います。

 

以上5曲!

今月は以前から話題になっていた新人たちの新作を中心に取り上げてみました。今回紹介した5組のうち新たなムーブメントを生み出すのはどのバンドなのか...頑張ってブログを続けてフォローし続けたいと思います。