頑張ってる

今日は発熱しちゃったね。
意識はなくても時々動いていた手も今日はあまり動かさなかったね。

先生は『体力が落ちてきている。』と言ってたけど、こうも言ってたよ。
『すごく頑張ってくれてる』

カズもそう思うよ。頑張ってくれてる。
ずっと眠ってるけど、みんなの声は聞こえてるかな?
どんな夢をみてるのかな?
何を考えているのかな?

カズはね
頑張って、でももう充分頑張ってくれたよ
そんな気持ちだよ

姉弟

鎮静剤で意識を落としてから丸2日。
お父ちゃんが頑張ってくれてる間に姉弟3人で色んな話が出来たよ。
小さい時にセミとりに連れて行ってもらった話、春になると筍掘りに行った話、旅行に行った話、ケンカした話、入院中の大変やった付き添いの話…

去年の3月にお父ちゃんが入院してから付き添い、お母ちゃんの入院と死、それから今回のお父ちゃんの急変で姉弟がいっぱい話して助けあって連絡取り合う様になったよ。前よりいっそう仲良くなったよ。

今日はカズが泊まるからね。
いっぱい話しようね。

後悔そして航海へ

2/26 22:00 見覚えのない携帯電話からの着信。
父の入所している施設の訪問医からだった。

父の具合が良くない。
すぐに入院しますか?
それともこの施設で鎮静剤を投与するか?
3週間前に問われた事の解答を求められたのだ。

残胃ガンで終末期を迎えている父の最期をどこで迎えるのか?

母は5ヶ月前に旅立った。
二人の姉に確認して、家族の総意を伝えるために父の元へ。自宅から自転車でわずかに10分。
何故もっと頻繁に足を運べなかったのか。いや運ばなかったのか。頭の中で同じ思いがぐるぐる回る。
先週、あんなに元気そうだったのに。
5ヶ月前、同じ事を思った筈なのに、また同じ後悔をする僕はなんと馬鹿なのだろうか。

施設に着くと父は1週間前とはうって変わって辛そうだった。
『お父ちゃん、しんどいなぁ。病院行くの嫌なん?ここに居てる方がええか?』
医師に鎮静剤で意識を落としてもらう様に伝える。
もう治療として出来る事はない。
医師に出来る事はもうなくなった。

いま、医師ではなく家族である自分に出来る事は何か?
過ぎた事は後悔しても後戻りは出来ないのだ。
間もなく大好きな母の元に旅立とうとしている父をしっかりと見送る事しか出来ない。せめてそれだけはちゃんとしなきゃ、ね。

大好きなお母ちゃんの元にたどり着くまでは、お父ちゃんが漕ぎ出した舟をちゃんと見守ってるからね。お父ちゃんが迷子にならないようにちゃんと導いてあげてね、お母ちゃん。

安心してや、お父ちゃん。怖がりなお父ちゃんのためにお母ちゃん先に行って待っててくれてるから。

お父ちゃんの航海が穏やかな流れの中で大きな波や嵐に会うことかありませんように。