日日是好日

自身が読んだ本についての個人的備忘録のようなものです

雑記

一年ぶりの記事更新と言っていいものかどうか。

 

そもそもこのブログの存在を忘れてしまっていたというのが正直なところだった。

本は相変わらず読んでいるが(読まないとそもそも生きていけないw)、それ以上に私生活にゆとりがなさ過ぎて感想とかをまとめようという発想に思い至らなかった。

 

まぁ、趣味というか気まぐれで書いているものなのであまり思いつめすぎてもいけないし適当な感じでやっていこうと思う。

というか単純に日ごろ文章を書く機会が減ってしまったからこそ、読書にとらわれず色々書いていこうかなぁと思う。

 

昔の掲示板全盛期のころにふと見かけたつらつらと個人の、思ったことをつらつらと書いてあるだけのブログを探してコメントも読まずにひっそりと読むのが好きだった。

DL法だのなんだのでついででつぶされてしまったものも多くあるけどもあの頃のアンダーグラウンド的な要素が忘れられなかったから作ってみたのかもしれない。

私の中であそこにいた人たちは大人で、知識豊富に見えたものだ

 

なんかグダグダと書いてしまって何が言いたかったか忘れたけどそんな感じで。。。

加藤シゲアキ「Burn.ーバーンー」

 演出家として成功し子供の誕生を控え幸せの絶頂にいたレイジは、失っていた20年前の記憶を不慮の事故により取り戻す。

 天才子役としてもてはやされていたレイジの現実はただの孤独な少年。突如現れ、いじめから救ってくれた魔法使いのようなホームレスと優しきドラッグクイーンと奇妙な関係を築くうちに冷めきった心は溶け始めるが、幸せな時は続かなかった……。

少年の成長を通して愛と家族の本質に迫るエンタメ青春小説!

 読んだ本の備忘録といいながら、全然記録をつけれなくて自身の三日坊主っぷりも板についてるなぁと感じる今日この頃。

 

 本屋で表紙が気に入り即購入を決めた一冊。「まぁ、カドフェス対象だったので外れることはないだろう」くらいの軽い気持ちで手に取ったが久々にここの存在を思い出させるような作品だった。

 

 ストーリーはレイジとその周囲の人の20年前と現在について書かれているが、彼らをつなぎ、変えていくのはホームレスである徳さんだ。

 

 渋谷の街を舞台に過去と現在を語りながら、20年前何が起きたのか、そのことが彼らにどのような影響を引き起こしたのか。

 

 最後まで読み終わったとき、また最初から読みたくなる、そんな物語だ。

 

”魂、燃やせよ”

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乙一「The Book」

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この町には人殺しが住んでいる——。町の花はフクジュソウ。特産品は牛タンの味噌漬け。一九九四年の国勢調査によると人口五八七一三人。その町の名前は杜王町広瀬康一と漫画家・岸辺露伴は、ある日血まみれの猫と遭遇する。後をつけるうち、二人は死体を発見する。それが”本”をめぐる奇怪な事件の始まりだった……。 

  親がジョジョの大ファンでアニメとか実写とかそんな話題からほど遠いころから読んでいて自身もファンを自負していたつもりだったけれど、読み逃していたこと作品でした。

 

 乙一さんの作品もかなり好きではあるのだけれども、どうもジョジョの世界観と会わないような気が強すぎて手を出しにくかったというのも本音では少しありました。1部や2部ならまだしもかなり明るい4部ときていますしね。

 

 ところがこれがなかなかマッチしていて読み始めたら読了まであっという間でこんなにあっさりと読めてしまうものかと驚きでした。4部のキャラクターはそのままに、かつ乙一さん特有の薄暗い独特な感じも残してあり、絞め方も非常に乙一さんらしい終わりであったように感じられる。

 4部とそれから、乙一作品をもう一度読み返したくなる作品でした。

 

 

 

 

 

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葦船ナツ「ひきこもりの弟だった」

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 ラスト、読む人すべての心を揺さぶる。”愛”の物語。

 『質問が三つあります。彼女はいますか?煙草は吸いますか?さいごにあなたは—―』

 突然見知らぬ女にそう問いかけられた雪の日。僕はその女、大野千草と夫婦になった。

互いを何も知らない僕らを結ぶのは、三つ目の質問だけ。まるで白昼夢のような千草との生活は、僕に過去を追憶させていく——大嫌いな母、唯一心を許せた親友、そして僕の人生を壊した”ひきこもり”の兄と過ごした、あの日々を。

 これは、誰も愛せなくなった僕が君と出会い、”愛”を知る物語だ。

 三秋縋氏絶賛!!という文字だけで読みたくなる作品ではあったがそれよりも推薦文の方に引かれて購入。いわく「行き場のない思いに行き場を与えてくれる物語。この本を読んで何も感じなかったとしたら、それはある意味でとても幸せなことだと思う。」

 

出だしの一文が

誰をもすいたことがない。そんな僕が”妻”を持った

である。この一文で「あ、これは自分好みのストーリーだろうな」と薄々感じた。

 

 妻との生活と彼の過去(母、親友、そして兄との)話がつづられていく。彼女との距離が近づくのと同時に彼が母を、兄を憎む理由がわかっていく。彼ら二人を結びつけたのは”三つ目の質問”であるわけだが、彼の過去を踏まえながらそれに想像を膨らませて読んでいくのが非常に面白かった。

 

 後半の物語の展開がまさに怒涛であり、ラストの3ページに関しては文章では追えても感情が全く追いつかなかったというのが正しいだろうか。どうにも言語化が難しいがそれほどまでに受けた衝撃は大きかった。

 

 「この本を読んで何も感じない人はある意味でとても幸せ」と書いてあったがこの本を読んで何も感じない人がいるのだろうか。おそらく読んだ人の信条であったり境遇によって受ける印象はかなり違った物語になるのだろうなとは感じる。

 

 親和的欲求を捨て去ろうとした彼らがたどり着く結論について、是非一度書見いただきたい作品である。

 

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早見和真「イノセントデイズ」

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田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪で、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がる世論の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士たちが再審を求めて奔走するが、彼女は……筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。

  ”少女はなぜ、死刑囚になったのか”という帯に惹かれて本屋で思わず手に取ってしまった。

 〈主文、被告人を――死刑に処する!〉

〈覚悟のない十七歳の母のもと――〉

〈養父からの激しい暴力にさらされて――〉

〈中学時代には強盗致傷事件を――〉

〈罪なき過去の交際相手を――〉

〈その計画性と深い殺意を考えれば――〉

 マスコミによって数行で語られた彼女の半生を彼女を取り巻いた人々の視点から語られていくストーリー。各章ではその数行の各文を主題として実際はどのようなものだったのかが語られ、どんどん数行では語ることのできなかった彼女の人間性というものが明らかになっていく。

 彼女が数行で語られたような特別性のある奇異な人物などではなく、弱くて周りに流されやすいだけだった普通の少女であったことに気づかされてからは読者から見た話はがらりと変わってしまう。彼女の周りにいた人々が、彼女を気にかけていた人が少しでも手を差し伸べていれば…と思わずにはいられない。

 

 物語を読み終えたとき、ひどく哀しい気持ちに落ち込んだがそれは決して悲しい物語であったわけではないと信じたくなる。彼女の人生は確かに不遇で、救われなかったものであるとは思うし、その結末には正直ひどく落ち込ませられた部分もある。しかしながら最後の彼女の選択を考えると確かにそこには彼女の意思があり、希望があったとそう思えるのである。

 物語を読み終えたときに「あぁ、悲しい物語だったなぁ」で済ませてしまいたくはない確かな熱量が、そこにはあった。

 

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住野よる「君の膵臓を食べたい」

 

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 ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。それは、クラスメイトである山内桜良が密かに綴っていた日記帳だった。そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて——。
読後、きっとこのタイトルに涙する。

 「君の膵臓を食べたい」という一風変わったタイトルによって話題作になった本作。一度読んでみたかったので文庫化されたと聞き購入した。読後最初に思ったことは「確かにこれは売れるな」ということだった。ウェブ小説発ということでどこか一世を風靡した「恋空」や「赤い糸」のようなケータイ小説群とどこか似たような趣を感少し懐かしい気さえした。

 

 ”読後、タイトルに涙する”というキャッチコピーは的を射たものであるとは感じた。本作における「君の膵臓を食べたい」というフレーズは作中何度も登場している。

 始めは“悪いところがあるとほかの動物におけるその部分を食べることによって治ると信じられていたこと”をもとにした治るために食べたいといった意味合いであったが、登場するごとに意味を変えており読後に抱くそのフレーズにおける感情は確かに涙腺を刺激するものであったと思う。

 

 また、主人公の名前が終盤まで明かされることがないのだが、彼を周りの人が呼ぶ際には“【クラスメイト】くん”のように主人公から見た相手がどのように自身のことを思っているかを想像した呼び方に置き換えられていることで彼自身からみた相手を想像できるのは非常に面白い試みであった。

 

 

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三秋縋「いたいのいたいの、とんでいけ」

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自分で殺した女の子に恋をするなんて、どうかしている。

「私、死んじゃいました。どうしてくれるんですか?」

 何もかもに見捨てられて一人きりになった二十二歳の秋、僕は殺人犯になってしまった——はずだった。僕に殺された少女は、死の瞬間を”先送り”することによって十日間の猶予を得た。彼女はその貴重な十日間を、自分の人生を台無しにした連中への復讐に捧げる決意をする。

「当然あなたにも手伝ってもらいますよ、人殺しさん」

 復讐を重ねていく中で、僕たちは知らず知らずのうちに、二人の出会いの裏に隠された真実に近づいていく。

それは哀しくも温かい日々の記憶。そしてあの日の「さよなら」。

 ”先送り”によって復讐の時間を手に入れた少女の手伝いをすることになるが、あまりにも空虚な復讐であり、復讐劇にしては爽快感からはほど遠い作品。読み進めるごとに被害者の層に違和感を覚えるがそれ自体が物語における核心へとつながっており、読んでいて非常に面白い。

 

 著者の三秋縋さんの作品に通じていえることだが登場人物、特に主人公とヒロインの背景、人物設定がどうしようもないくらいに救われない。だからこそ、物語自体は鬱々とした展開になっているものが多いように感じるが、その中で彼らが得るものに言いようもない美しさを感じられる。はたから見たらどん底にいるはずの主人公たちは、そのどん底の暗い中で、これ以上ないくらいに幸せで、そしてそれを享受していることに満足しているような物語。

 

  ”薄暗い話なのに元気が出る話”彼が描きたかった話であるらしいがこれほどこの作品における紹介が合う物語も他にないのではなかろうか

 

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