銘仙(めいせん)が好き♪
久々の更新です。
最近仕事が決まり、着物を着る機会もめっきり減ってしまいました。
そうこうしているうちに、もう単も着れる季節になってしまいましたね。
単の時期は短いので、夏着物の季節になるまでに出かける機会があれば、多少無理してでも着ていきたいなあと思っています。
今回は、私が大島紬、辻が花と並んで大好きな、銘仙についてお話しします。
少し前に、ネットのリサイクルショップで銘仙の着物を見つけ、一目惚れして一気に二枚ゲットしてしまいました。
それらがこちらです。
着物好きな方ならご存知かと思いますが、恥ずかしながら私はこれらの商品に出会うまで、銘仙という名前しか知りませんでした。
ご覧の通り、とっても斬新でモダンな柄にゾッコンです。
正直、二枚目は自分には似合わないかもと悩みましたが、娘が着たら可愛いかなと思い直し、思い切って買いました。
だって、一枚目が1000円、二枚目は500円だったんですよ!
これは買うっきゃないでしょ♪
一見、プリント柄に見えるかもしれませんが、実はこれ、織り模様なんです。
銘仙は、経糸の色と緯糸の色を故意的にずらすことによって、独特のぼかし効果を出しているのが特長です。
この技法を絣(かすり)と言います。
歴史を辿ると、江戸時代に織子さんが、売り物にならない繭からとったくず糸で、自分たち用の着物を作ったのが始まりだと言われています。
その後、女学校で紫の矢絣(やがすり)が流行し、流行に敏感な女の子たちの間に広まったみたいです。(現在、卒業式用などとして売られている矢絣の多くは、プリント柄です)
引用
https://www.amazon.co.jp/卒業式着物袴セット-矢絣柄-エンジ-紫×無地袴-黒/dp/B00RF829YK
おそらく当時の生地はこんな感じだったのでしょう↓
引用
http://819529.com/2014/10/大正女学生浪漫 矢絣お召と行灯袴/
大正から昭和初期にかけては、海外から入ってきたアールヌーボーやアールデコの影響を受けて、斬新なデザインのものが百貨店から次々と売り出され、人気を博したとのこと。
安い糸を使った大量生産品とはいえ、絹製ですから表面には滑らかなツヤがあり、軽くてハリもあるのでとても着やすく、私は気に入っています。
ただね。
私の母や、それ以上の世代の方には「安物」というイメージがあるらしく、銘仙というと、ちょっと蔑(さげす)まれる感があったりするんですよ。
確かに、歴史的にはくず糸を使ったり、無名のデザイナーを登用することで安く売られていたので、そういうイメージが強いんでしょうね。
でもその製造工程を調べてみると、一旦仮織りして糸を染め、それをまたほぐして本織りするという、手間暇のかかったもの。
そりゃあ、うん十万もする着物に比べれば普段着用ですし、安物かもしれないけど、現在国産品でこんな手の込んだものを買おうと思ったら、結構なお値段になるのではないでしょうか。
そして、何よりこの勢いのある意匠。
時代的には、第二次世界大戦勃発前の、おそらく日本が最も平和で華やかだった頃。
着物のジャンルでも人気がある、いわゆる「大正ロマン」のモダンなカラフルさが色濃く出ています。
こんなデザイン性が高い絹の着物が、ランチ代程度で手に入り、袖を通せるなんて、本当に幸せなことです。
最近よくお邪魔する「紙カフェ」のある堺市の宿院あたりは、与謝野晶子ゆかりの場所。
まさにこの時代を生き、当時の女性としては先進的な考えを持っていた彼女なら、こんな斬新な着物をさらりと着こなしていたんじゃないかなと思いつつ、先日、銘仙を着てお店の周辺を歩いてみました。
そして、その後、足を伸ばしたリサイクル着物屋さんで、目利きのおじさんに「銘仙をうまいこと着てくれてる!」とお褒めの言葉をいただけたので、その日は一日ご機嫌に過ごすことができました。
着物に歴史あり!
そして、それを感じながら着ると、また楽しみが膨らみますね。
筥迫(はこせこ)を作ってみました
みなさま、ハコセコってご存知ですか?
和装の花嫁さんや、七五三の女の子の懐に差し込まれている綺麗な箱みたいなもの。
あれがハコセコです。
和服の装飾品で,女性用の紙入れの一種。昔は厚手の色紙を折って,その間に櫛や笄 (こうがい) などをはさんで懐中にしたが,江戸時代に広く流行するに及んで,華麗な織布などが使われるようになった。また袋物としてよりも女性の正装の際に欠かせない装飾品となり,その頃から筥迫と呼ばれるようになった。現在では七五三の女児や婚礼の際の和装の花嫁などの装飾品となっている。
出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について | 情報
今回は、見よう見真似でこれを作ってみました。
ハコセコを作るきっかけになったのは、こちらでもちょこちょこ登場する着物仲間のK氏。
彼がタバコケースになった根付を作っていたのを見たのが発端です。
↓こんなの
箱から木を張り合わせて作ったという力作。
この前会った時には、螺鈿細工を施してさらにグレードアップしてました。
で、その時、「男の人って根付で信玄袋や印ろうなどをぶら下げたりできるけど、女の人はどうやって小物を持ち歩いてたんだろう」と思ったわけです。
実際、バッグを置いて携帯やリップなどだけを持ち歩きたい時、不便を感じていたのです。
携帯をそのまま懐や帯に差し込んだこともありましたが、滑って落ちやすいし、見た目もイマイチ。
まあ、でも多分、女性の場合、風呂敷包みなどを携えている方が風情があるし、上品に見えるから、そのようなものはないのだろうと思っていました。
※あとから調べると、もともと日本人には、手提げ文化がなかったそう。
何か物を携帯するときは、掛ける、(帯に)下げる、懐中する、背負う、(風呂敷を)抱える
というのが一般的だったみたいです。
参考サイト http://rombako.hakoseko.mods.jp/?eid=981727
でもある日、ふと「花嫁さんの懐に入っている小さなバッグみたいなのはなんぞや?」と思いつき、調べてみたのです。
それが筥迫(はこせこ)でした。
ハコセコの歴史は以下のような感じ。
江戸時代に女子が懐中して用いた紙入れの一種。箱迫,函迫とも書く。近世以後,小袖と帯の発達につれて,帯でしっかりおさえられた衿の合せ目,すなわちふところへ物を入れる習慣が一般に行われるようになり,さげ袋や掛け袋に代わって携帯用のアクセサリーとして筥迫が発達した。筥迫は江戸時代には武家の女性が打掛をつけたときには必ず持つべきものとされていた。筥迫には紙,箸差(はしさし),懐中鏡などを入れ,二つ折りになって,とじ帯に小さい香袋がついている。
出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報
調べれば調べるほど興味が湧き、画像を見ればみるほど欲しくなってきました。
今は主に正装の際に使われているけど、「もともとアクセサリーなら、普段に持っててもいいんじゃない?」という勝手な判断で、試しに作ってみようと思い立ちました。
私はK氏ほど器用ではありませんので、とりあえず材料は紙で。
サラダ油ギフトが入っていた箱が自宅にありましたので、それを使うことにしました。
カットして折り曲げたらこんな形。
これに、リサイクル着物の端切れを貼りました。
本体の表面には、キルト用の綿を入れて、少しふっくらさせました。
左の細長いのは、胴締めといって、本体の胴に巻いて開かないようにするもの。
下のつまみ細工は、装飾に使います。
中は携帯電話とリップが二本入る仕様。
化粧直しする時用に、壊れたコンパクトの鏡を貼り付けました。
私はメンタム必須なので、リップ収納は二本分いるのです。
その分大きくなっちゃって、懐に収まるのかちょっと不安……。
携帯とリップは、吸着シートに貼り付ける形にしました。
次に胴巻きを作ります。
キリで穴を開けて紐を通し、匂い袋をぶら下げます。
こんなところにさりげなく、匂い袋を忍ばせるところが、昔の女性はおしゃれですよね。(形が悪いのはご愛嬌ww)
紐に使ったのはこちら。
手芸屋さんで170円くらいでした。
赤と白を買って悩んだ挙句、赤を使用。
この紐で房も作りました。
そしてこちらがつまみ細工の飾り。
胴巻きに差し込んで飾ります。
あえて取り外しできるようになっているのは、飾りを付け替えて楽しむためかな?
かんざしを差して、装飾に使う場合もあるそうです。(それがまた可愛い!!)
また、かんざしを差し込んだアレンジも楽しんでみようっと♪
(今回は、薄くてしなりがいいようにと、プラ板に布を巻いたものを使用しました)
すべてをセットするとこんな感じ。
懐に収めてみました。
着物の色とは合ってないけど、結構可愛いかも。
ちょっと大きすぎるかなとも思いましたが、意外に大丈夫そうです。
(あとから調べると、匂い袋は懐の中に収めるそうです)
ただ、作ってみて改良点もいくつか。
1、携帯を取り出すたびに胴巻きをはずして、また通すのが面倒。
昔の人は携帯を入れるつもりで作っていないので当然といえば当然。
当時は時間をかけてゆったり出し入れするのが、美意識だったかもしれませんしね。
2、付け外しできておしゃれを楽しむにはいいけど飾りが邪魔。
中身を使おうとすると、胴、胴巻き、飾りの3パーツがバラバラになるので、手がいっぱいになります。
これも、かんざしを飾りにしていれば、その時だけ髪に挿したりしたのかなあ。
3、吸着シートが強力すぎて、携帯を取り外すのに苦労する。
現在、わざわざ手垢をつけて、吸着力を弱めようとしています(笑)
4、内側に貼った生地では、糊ムラが透けて汚い。
フエルトなどを貼った方が綺麗だったかな。
と、反省点はいろいろありますが、見よう見まねで初めて作った割には、いいものができたかなと満足しています。
1〜3は、昔では有りえない用途に使おうとしているのだから、ある意味仕方がありませんね。
次回作る時には、以上の点を考慮して、より使いやすいものにしたいと思っています。
あと、ハコセコと併用した「袂落し」というものもあるそうです。
詳しくはこちらをご覧ください↓
時代劇などでよく袂から小銭を出したりしてるのを見て、「落とさないの?」と不思議に思っていましたが、このような道具があったとは……。
てか、最初からこれに携帯を入れておけばよかった?
いいんです!
ハコセコ可愛いから!!
でも便利そうだし、形もシンプルなので、今度はこれも作ってみようと思います。
切らない作り帯の作り方
私はお太鼓結びができません。
何度か練習はしてみるんですけどね。
形が崩れたり、ゆるくなったり、なかなかうまくなりません。
そんな私がいつもしているのが「切らない作り帯」。
よく方法を聞かれるので、今回はその解説をさせていただこうと思います。
見た目は普通に結んだ場合と、ほとんど見分けがつかないと思います。
※名古屋帯でのやり方です
【用意するもの】
帯枕
帯揚げ
洗濯バサミ4つ(着物クリップでもOK)
事務用クリップ2本
1 帯をT字型にセッティングします
簡単な図で申し訳ありませんが……。
お太鼓を上方向に伸ばし、右側に「て」の部分を残して、胴に巻く部分を裏側に折り曲げます。
2 三角部分にクリップを留め、その上に乗せるように帯揚げで包んだ帯枕を置きます。
この時必要なら、胴巻き帯をつまんで前面の柄の出方を調整します。
※画像はつまんでクリップを留めています。
3 お太鼓を下方向へ畳み、「たれ」を作ります。
「たれ」の長さは、胴巻き帯の下線から7〜10cmくらい。
4 帯枕を起点にして畳み、お太鼓を作ります。
お太鼓の下線は胴巻き帯の下線と合わせる。
※横から見た図。
5 お太鼓の真下に「て」を通します。
6 「て」の上に帯締めを通します。
7 お太鼓を崩れないように固定します。
「たれ」を上方向に畳んで左右二箇所と、帯枕の下あたりを左右二箇所を洗濯バサミで留めます。
※帯枕の下を留める時は斜めに差し込んで、胴巻きの帯まで全部はさみます。
8 お太鼓をランドセルのように背負って、帯枕の紐をきっちり前で結びます。
※この時帯揚げは、邪魔にならないように仮結びしておきます。
9 胴に帯を巻いて、余った部分はお太鼓の下に入れ込みます。
巻き始めと巻いてきた帯を、たれの裏でクリップで留めておくと、崩れにくいです。
※最後に洗濯バサミを外して、たれを下ろすのをお忘れなく!
肝心の装着部分の写真が自分では撮れなかったのですが、おわかりいただけたでしょうか?
「帯結びが難しくて着物が着れない!」と思っている方は、一度この方法をお試しください。
出かける前日にセットしておけば、当日は巻くだけなので時間短縮にもなりますよ。
私の解説でよく分からなかった方は、こちらの動画を御覧ください。
最初からこれを見ればよかったじゃんって?
ははは。
でも、ある程度行程を把握してから動画を見た方が、より理解しやすいと思うの……たぶん。
先日「大正浪漫」の奥様の講座を受けて結び方の理屈はわかったのですが、時間はかかるし、結んでいる間に襟元が崩れるしで、未だにこの方法を使っています。
でもやはりプロに結んでいただいた帯は、安定しているのに苦しくもなく、さすがだなあと思います。
あとその講座を聞いて、私が思っていたより上(バストトップくらい)を帯の上線にした方がいいとも知りました。(今まではアンダーにしていた)
そうすると、下線が骨盤に乗るような形になって、帯が下がりにくいんですね。
もう若くないので、下気味の方がいいのかなと勝手に思っていましたが、思い込みでした。←私はこういう思い込みが多い
こういう細かいポイントは、実際に教えていただかないと、なかなかわからないものですね。
その点、どんな些細な疑問にも、丁寧に答えてくださるのでとても勉強になります。
講座を受けたいと思われる方は、大正浪漫さんのfacebookから問い合わせてみてくださいね。