極!!モーツァルト塾

自称サックス吹きが音楽について色々と語ります。洋楽多めです。

パーシー・グレインジャーの曲を紹介していく#4『岸辺のモリー(Molly On The Shore)』

こんにちは。

今日は『岸辺のモリー(Molly On The Shore)』という曲について紹介したいと思います。

軽やかな舞曲風の一曲

この曲は「古いアイルランド音楽全集」から『岸辺のモリー』と『テンプルヒル』という2曲を合わせたもので、1907年にオーケストラ版が、1920年にウインド版が作曲されました。いずれもグレインジャーの母親へと贈られています。

『オーケストラ版』
youtu.be
ストリングスによる流れるようなリズムが繰り返されていきます。4分弱の短い曲ですが、その中でも2つの異なる2つのフレーズが変わるがわる現れ、徐々に盛り上がっていくところは聴いていて楽しいですね。

『ウインド版』
youtu.be
ストリングスの部分が木管楽器へと置き換わっています。オケ版よりもちょっと可愛らしい雰囲気が出ています。

テンポが速いので、実際に演奏するとなると中々難しそうです。

タイタニック号にまつわる話

この曲は映画でも有名なタイタニック号にて演奏されるはずだった曲というエピソードがあります。映画『タイタニック』にてバンド役として出演した、イ・サロニティによってそうした曲を集めた『タイタニック号の音楽』というアムバムがリリースされており、こちらも聴いてみるとオケ版とは違った面白さがあります。

タイタニック号の音楽 ~ イ・サロニスティ

タイタニック号の音楽 ~ イ・サロニスティ


もし、タイタニックが何事もなく海を渡っていたとしたら一体どのような演奏がなされていたのでしょうか?楽しげな曲ですが、少し悲しいエピソードです。

こういう民俗音楽の世界は結構面白いので、また取り上げたいと思います。

パーシー・グレインジャーの曲を紹介していく#3『植民地の歌(Colonial Song)』

こんにちは。

今日はグレインジャーの『植民地の歌(C olonial Song)』という曲をご紹介したいと思います。

祖国の情景

グレインジャーの曲は結構タイトル通りのモチーフの曲が多いです。この曲のタイトルにある"植民地"もまさにその通りで、これはグレインジャーの祖国であるオーストラリアを指しています。グレインジャーが活躍した1900年代初頭はオーストラリア連邦が成立してまだ間もない頃ですから、"イギリスの植民地としてのオーストラリア"という意識がまだ強かった時代です。

そんな時代背景の中、国民楽派の1人であるグリーグをリスペクトしていたことからもあり、思想としてこうしたその地域に根差した音楽を作ろうとする姿勢に前向きであったたことが伺えます。

この曲は祖国に住む家族へ当てられたものなのですが、グレインジャーはしばしばこうした曲を作曲しております(岸辺のモリーなど)。それまでの音楽はドイツやイタリアなどの地域が活動の中心でしたから、オーストラリア人であるグレインジャーにとって色々思う所があったのかもしれません。

この『植民地の歌』はそんなグレインジャーの故郷への情景が表現された一曲だと感じます。

荘厳なストリングスのオケ版、サックスとトランペットのソロが美しいウインド版

この曲も例に漏れず、様々な版が存在します。同じ曲でも調や編成の違いで聴こえ方が違ってくるのが面白いですね。

『オーケストラ版』

youtu.be

中低音のストリングスがやや重い雰囲気を醸し出しています。やはり弦楽器が入ると音の厚みが増すので、荘厳な雰囲気がありますね。こちらの版ではどちらかというと木管楽器が目立っています。

『ウインド版』

youtu.be

オケ版と異なり、金管楽器が目立っています。途中から始まるサックスとトランペットのソロが美しいです。ウインドの編成だと弦楽器がほとんど無いため、響きを持たせるために金管楽器を目立たせているのが特徴です。なのでファンファーレのような雰囲気があってこれもまた面白いです。

パーシー・グレインジャーの曲を紹介していく#2『モック・モリス(Mock Morris)』

こんにちは。

今日はグレインジャーの『モック・モリス(Mock Morris)』という曲をご紹介したいと思います。

オーケストラ版、吹奏楽版、ピアノ版の違い

この曲は1910年に作曲されたもので、見出しの通りこの曲は様々な版が存在しており、様々な演奏スタイルが楽しめます。

『オーケストラ版』

[youtu.be

ストリングスが全体のメインとなります。ピチカートなどでリズム打ちが表現されており、弦楽器の様々な演奏スタイルが楽しめます。
]

『ウインド版』

[youtu.be

ストリングスに代わって、クラリネットやサックスがメロディラインを担います。木管楽器がメインになる事で、木管アンサンブルのような雰囲気が増しているような気がします。調もちょっと違いますね。
]

『ピアノ版』

youtu.be

ピアノ版はより軽快な感じが出ている気がします。ある程度テンポが自由に動かせるので、民俗音楽特有の不規則なリズムも表現できています。

モリス"風"の作品

そもそも"モック・モリス"となんぞや?という話なのですが、これはイングランドの"モリスダンス"という伝統的な踊りに由来しています。

※こんなやつです
youtu.be

脚に鈴を付け、手に棒やハンカチを持って踊るみたいです。中々面白いですね。

"モック"とは日本語で言う"〜っぽい"という意味なので、"モック・モリス"は"モリスダンス風の曲"という意味になります。曲のタイトルも意識して見てみると、色々と勉強になりますね。

パーシー・グレインジャーの曲を紹介していく#1『リーンカーンシャーの花束(Lincolnshire Posy)』

こんにちは。

最近クラシック曲がマイブームです。
ロックの曲が聴きたくなったりすることもあれば、クラシックの曲を無性に聴きたくなる瞬間もあったりと節操が無いです…。

今日はその中でも、パーシー・グレインジャー(Percy Grainger)という作曲家の曲をご紹介したいと思います。

民俗音楽のスペシャリスト

グレインジャーは作曲家の中でもややマニアックな部類かもしれませんが、ウインドオーケストラのための曲を多く作曲しているのでもしかしたら吹奏楽に詳しい方であれば耳にしたことがあることがあるかもしれません。

見出しの通り、グレインジャーはその地方に根差した民謡などの民俗音楽にインスパイアされた曲を多く作っています。かのエジソンが発明した蝋管蓄音機を用いて、イングランドの各地を回ったりと精力的な活動を行なっていたようです。オーストラリア人作曲家というのも中々珍しいですね。

「リーンカーンシャーの花束」〜イングランド民謡をもとにした組曲

youtu.be
今回はその中でも、「リーンカーンシャーの花束」という曲をご紹介したいと思います。

この曲はイングランドリンカーンシャー地方に伝わる民謡の内6曲をもとに、ウインドオーケストラのための組曲として1937年に作曲されました。

民俗音楽特有の不思議なリズムがグレインジャーの手によって躍動感のあるオーケストラへと昇華されています。

第1曲『リスボン(船乗りの歌)』
軽快なリズムから始まる第1曲です。冒頭のトランペットとファゴットの旋律は復調と言って、異なる調が1つの曲で用いられています。これが不思議な雰囲気を醸し出しています。

第2曲『ホークストウ農場(守銭奴とその召使い:地方の悲劇)』
静かに雰囲気から始まり、徐々に盛り上がりを見せるドラマチックな曲です。途中のトランペットのソロが美しいです。

第3曲『ラフォード公園の密猟者(密猟の歌)』
冒頭の木管楽器による輪唱のようなメロディから徐々に低音域の重厚な音が重なっていき、また冒頭のメロディが奏でられる「緩・急・緩」の構成となっています。

様々な楽器が様々なリズムの音を奏でている非常に複雑な曲です。


第4曲『元気な若い水夫(恋人と結婚するために帰郷)』
第3曲と比べると明快で分かりやすいリズムの曲です。同じメロディを様々な楽器がかわるがわる奏でていますが、それに伴って伴奏のリズムも変わるのが面白いですね。


第5曲『メルボルン卿(戦いの歌)』
この曲の冒頭はなんと小節がありません(笑)
なんだか普通の曲と違う不思議なリズムです。
民俗音楽の面白い所は、こういった常識に囚われないリズムだと思います。


第6曲『行方不明のお嬢さんが見つかった(踊りの歌)』
最後を飾る、3拍子の舞曲風の曲です。この曲も、同じメロディが様々な楽器によってかわるがわる奏でられています。段々と厚みが増していく、クライマックスにふさわしい1曲です。

Haley Reinhart 『What's That Sound?』を聴いてみた!

こんにちは。

最近クラシックがマイブームになっており、ポップスの曲をあまり聴いていませんでした。

そんな中、たまたま良さげな曲を耳にしましたのでご紹介したいと思います。

どこかノスタルジックな60年代風サウンド

What's That Sound?

What's That Sound?

ジャケ絵もさることながら、どこか60年代を彷彿とさせるようなサウンドです。どこが?と言われると中々言い表すことが難しいのですが、電子音ではなくオーケストラやギターなどのアコースティックなサウンドが用いられている点がそうでしょうか?

話は変わりますが、60、70年代の洋楽って結構平易な英語で歌詞が綴られていることが多い気がします。The BeatlesCarpentersがまさにそうですね。英語の授業などでも取り上げられることがあるくらいなので、英語慣れしていない日本人の耳にも聴きやすい感じがします。テンポも最近のものよりもゆっくりな気がしますし。

せっかちな現代人の音楽はより速いテンポ、より速い口調のものが多く聴きとるのが難しいのです(貶しているわけではありませんが…)。

Let's Start

youtu.be

元々アルバムの存在を知らなかったのですが、たまたまラジオでこの曲を耳にした際に「これは!」と感じアルバムも聴いてみました。個人的にこういう曲は好きですね。

40年代のアメリカ音楽はちょいちょい聴いていたりするのですが、やはりこの頃の音楽は「ライブでノる!」みたいな感じではなく「聴いて楽しむ!」って感じがしますよね。そんな耳で聴いて楽しむといった聴き方が出来るアルバムだと思います。

The Letter

youtu.be

このHaley Reinhartというアーティストのすごい所は曲のレパートリーの幅の広さだと思います。先ほどの『Let's Start』のような可愛らしい曲もあれば、この『The Letter』のようや渋い曲もこなします。

特にこの曲のハスキーボイスがたまりません笑曲のアレンジも素晴らしいですが、様々な歌声を使いこなすHaley Reinhartの実力あっての一曲だと思います。

Time Of The Season

youtu.be

60年代に活躍したThe Zombiesのカヴァーです。CMでも使われたこともある曲なので、耳にしたことがある方もいるかもしれません。

youtu.be

The ZombiesはThe Beatlesと比べるとマニアックなバンドです。60年代当時3枚のアルバムのみを残し解散、その後に音楽が再評価されるというまさに"ゾンビ的な"バンドです。

Odessey & Oracle

Odessey & Oracle

  • アーティスト:THE ZOMBIES
  • 発売日: 2007/01/01
  • メディア: CD


この『Time Of The Season』が収録された『Odessey and Oracle』も素晴らしい曲ばかりなので、是非聴いてみて下さい!

ジャック・イベール 交響組曲『パリ』

久々にブログを書きました。

先日NHKのとあるラジオを聴いていた際に、面白い特集をやっていました。

こちらの×(かける)クラシックという番組です。この番組ではモデルの市川紗椰さんとサクソフォン奏者の上野耕平さんが進行役を務め、鉄道・小説・アニメ・旅行・ファッションといった内容を交えながら様々な音楽を紹介していく番組となっております。

僕が聴いていた回では"鉄道"がテーマで、まさしく鉄道をモチーフにしたクラシック曲が紹介されておりました。

クラシックなのにどこか近代的?ジャック・イベールの音楽

サクソフォンというと普通はジャズなどの音楽をイメージすると思いますが、上野耕平さんはクラシック音楽サクソフォン奏者ということで、サクソフォンが用いられたちょっと変わったクラシック曲を紹介してくれます。

アドルフ・サックスがサクソフォンを発明したのが1840年代と比較的最近のことなので、この楽器が用いられたクラシック音楽というものがそもそも珍しいのですね。

さて、そんな中で個人的に気になったのがこのジャック・イベールの交響組曲『パリ』という曲です。番組の中ではその中でも、第1曲の『地下鉄』が紹介されていました。

youtu.be

第1曲『地下鉄』
『地下鉄』というタイトルがいかにも近代的なものを象徴していますね。金管楽器による金属質な音の裏で流れるピアノの低音のリズムが、鉄道の走る姿をイメージさせられます。

第2曲『郊外』
物々しいスネアドラムから木管楽器金管楽器の掛け合いが始まります。不思議なリズム感で、2分という短い曲ながら番組が切り替わるかのような様々なメロディが楽しめる一曲です。

第3曲『パリのイスラム寺院
オーボエによる独奏。これもまた不思議なリズムです。第1曲が"急"とするならば、これは"緩"と言えるでしょう。

第4曲『ブローニュの森のレストラン』
交響組曲『パリ』の山場と言える曲です。アルトサックスとスウィングのリズムによる近代的なイメージが感じられます。

第5曲『旅客船「イル・ド・フランス」』
先ほどの華やかなイメージからうって変わって、ピアノの低音によるおどろおどろしい音が奏でられます。

第6曲『祭りの行列』
クライマックスのマーチ風の曲です。ちょっと軍歌風ですね。ホイッスルが用いられているのもクラシック音楽としては珍しいです。

正直イベールの曲は今まで知らなかったので、かなり新鮮でした。

The Smashing Pumpkins 『Mellon Collie and the Infinite Sadness』を聴いてみた!

最近、アメリカのオルタナバンドの曲を聴いております。

元々アメリカのバンドはそんなに聴く方ではなかった(そもそも存在を知らなかった)のですが、前回ご紹介しましたblurの5thアルバムなどを聴いているうちに徐々に聴くようになりました。

Nirvanaの『Smells Like Teen Spirit』なんかもつい最近まで聴いたことがなく、なぜ今まで聴かなかったのだろうという気持ちです。
青春時代に聴きたかったぜ!


youtu.be


そんなわけで、今回はそんなUSオルタナバンドの中でも有名なThe Smashing Pumpkins の『Mellon Collie and the Infinite Sadness』というアルバムを聴いてみました。

緩急自在な独特の世界観

Mellon Collie & the Infinite Sadness

Mellon Collie & the Infinite Sadness


90年代USオルタナバンドはなんといっても、ノイジー激しいギターサウンドが特徴的です。The Smashing Pumpkinsもやはり、そういったサウンドを得意としたバンドで、初期のアルバムではそういった傾向がよく見られます。

しかし、この3作目である『Mellon Collie and the Infinite Sadness』はそんなノイジーサウンドとはかけ離れたアンニュイな雰囲気から始まります。

Mellon Collie And The Infinite Sadness

youtu.be

インストオンリーの曲ですが、この穏やかに始まるピアノのサウンドがとても好きです。このアルバムを聴く際に、是非この1曲目から聴いていただきたいくらい素晴らしい始まり方だと思います。

Tonight, Tonight

youtu.be

このアルバムの始まりを予感させるかのように、盛大に始まる2曲目です。ギターではなく、ストリングスによるアレンジがなされているのが特徴的です。この1曲目からの流れを聴くだけで、『Mellon Collie and the Infinite Sadness』というアルバムの独特な雰囲気が感じられると思います。

そういえばこのアルバムは2枚組の構成となっているのですが、これはBeatlesの『White Album』にインスパイアされた結果だそうです。2時間にも及ぶ超大作で全部聴くのは中々大変ですが、それだけ気合の入ったアルバムなのでどの曲もクオリティが高いです。

Jellybelly

youtu.be
先ほどの1、2曲目とは打って変わってThe Smashing Pumpkins節全開のハードな一曲です。憂鬱な雰囲気もどこ吹く風のごとく、非常に元気が出ます。

これがこのアルバムの面白いところで、まさしく緩急自在なサウンドが次々と展開されていきます。

Bodies

youtu.be
唸るギターに、ボーカルのBilly Corganのシャウトが強烈な一曲です。まさに90年代のオルタナバンドの雰囲気をこれでもかと感じられるハードなサウンドでかっこいいいです。やっぱりUSオルタナバンドのこういう感じ、好きですねー。

1979

youtu.be
不思議なイントロから始まるThe Smashing Pumpkinsの真骨頂。僕はこの曲が一番好きです。なんというか、雨の日に聴きたい曲です笑


元気いっぱいな曲が続いたと思った矢先に、こういうちょっとナイーブでアコースティックな曲が挟まれるのでそのギャップで一気にその世界観に引き込まれますね。やっぱりこれが『Mellon Collie and the Infinite Sadness』のいいところなんです。決して元気いっぱいでないところが。

そんな曲を僕はしょっちゅうヘビロテしております。


そんな感じで、The Smashing Pumpkinsの 『Mellon Collie and the Infinite Sadness』でした。いやーいいですねやっぱりUSオルタナバンドは。もっと早くその存在を知りたかった…