剣道審査会寸評

八段寸評(2023年11月20日実施、合格率0.5%)「剣総」2024,1月号より

審査員の寸評(実技)

 昨年に続き日本武道館において八段審査会が8会場にて実施されました。八段審査で感じた事を述べさせていただきます。合格された皆様には衷心よりお祝いを申し上げ、更なるご精進を願います。

 審査では段位付与基準に相応しい内容があるか、充分な稽古をされているか、的確な技を身につけているか等、総合的に判断されます。しかし、実技審査では次のような問題点が散見されました。着装、構え、姿勢が悪く、礼法、所作が身についていない、打突については、正中線を攻めていない、上半身が力んでいる、捨てきっていない、踏み込みが弱い、気剣体が一致していない、といった打突が目立ちましたので、今後の課題としてください。

 気で攻めて、理で打つ(一刀流の訓え)、肚で打つ。苦しくなって出るところ、退くところ、打ちの尽きるところを身も心も捨て切って打突をする。立ち会ったら、「さあどこからでも来い」という気持ちを持ち相手の動きに反応しないことが大切です。若い時は技を学び、壮年は気を養う、高年は風格を養うと言われています。最後になりますが、剣の理法に基づき竹刀を通じて尚一層自己を磨き、剣風を高められ、次回の審査に立たれることを期待します。

篠塚 増穂
 
剣道七・六段審査寸評「剣総」2024,1月号より引く

審査員の寸評(実技)

 この度、エスフォルタアリーナ八王子での11月15日六段、同16日七段の昇段審査会の審査員として、受審者の皆様の剣道を拝見することが出来、大変勉強になりました。

 審査会当日の着装・所作事については指摘することも少なく、特に問題はなかったと思います。ただ、立合い開始から終了までについて、

一.立ち上がると同時に互いに「やあやあ」と発声している人が多かった。
 ケースバイケースとは思いますが、私は相手が発生した数秒置いて発声しています。その方が格上に見える気がするからです。

二.打ち切る打突が少なかった。
 打突を決めたとしても、打ち切っておらず評価を得ることが出来ない、あるいは評価が下がることになった、こんな損なことはないと思います。

三.一本技(単発)の打突が多かった。
 打ち切ることと連動すると思いますが、気持ちは切らずに初打ち、初打ち、初打ちの繰り返しで打突を決めきる。

 以上、3点が気になりました。

 これらを改善する為の稽古法について簡単に紹介します。
〇準備運動は必ず実施
〇素振りは空気を切る音(ブシュ)を感じること。
〇技の稽古については
ア、一足一刀の間合よりも近間から左足を継がないで一拍子(調子)の打突(上げ下ろしを素早く)
イ、竹刀が触れない間合から一歩攻めて打突
ウ、出端技の修得、最初は相対動作で実施

 細かい部分、他の稽古法もありますが、紙面の都合上、省略しました。

 以上、所感を述べましたが、合格された方はさらなる上位を目指し、残念ながら不合格だった方は再度自分の剣道を見つめ直すこと(周りの人に聞く、ビデオを撮る等)に努め、審査間近になったら直すことない様にしてほしいと思います。

 最後に稽古は嘘をつかない、ご指導いただいている先生、自分を信じて頑張ってください。皆様のご活躍を期待しています。

亀井 徹
 

剣道七・六段審査寸評(2023年7月)

剣道審査会の結果について、「剣 窓」令和5年7月号に掲載されたので、その内容を転載した。これからの稽古に活かしたいと思う。

 

剣道七・六段(愛知)審査会 

2023,5,13 名古屋市枇杷島スポーツセンター

七段合格率 18.7%(受審者878名、合格者164名)

六段合格率 26.9%(受審者836名、合格者225名)

 

◆審査員の寸評(抜粋)

・着装を整えた受審者の立会い前から充実した気勢で望む緊張感が伝わってきた。

・年齢層の若い受審者の力強い打突に石火の勢いが多く感じられた。

・女性や高齢者の方の立会いでは、円熟した経験を表すかの如くしなやかで、鎬を使った攻め合いも見られた。

・攻めの勢いを感じられる方たちの左脚に注目した。膕の適度な緊張と緩み、何時でも打突に転じられる構えと、左手の納まり、素晴らしい方が大勢見られた。

・勢いを感じる立会いは正しい姿勢、充実した気勢があり、剣道試合の有効打突の要件を満たし、打突後の余韻すら感じるものだと思いました。

・このような立会いが多く見られた反面、仕掛ける技も、相手を引き出し応じていく技も不十分なままの方もおられました。

 

  • ※充実した気勢で「攻める・ためる・打ち切る」の一連の動作を身につけたいものである。

剣道・居合道審査会の寸評

居合道八段審査会寸評

「剣窓2023年1月号」掲載

1.技の中に仮想敵は見えず、形のみで攻めの気迫が欠けた演武が目立った。

2.正座の姿勢からの抜き付けは、上体を真っ直ぐに丹田に力を入れ、腹・腰の力で腰の据わった力強い体勢で抜き付けるが、これができていない。

3.鞘放れの一瞬に手首のひねりを利かせ、手の内の締まりで迫力ある冴えが出る。切り下ろしにしても力のみで切ると力みが生じ、腕だけで切ると右拳が「居付き」になる。リキまず溜とネバリで力を抜くところは力を抜くことを覚えるのも大切。

4.呼吸の乱れを見せず演武することが必要となる。合格者は安定した体幹で腰の据わったリキミのない手の内の利いた攻めの演武が随所に見られた。

5.日々の稽古の際に、常に技の中に仮想敵を意識し、攻める気持ちで、一刀ずつ全力で気力を集中させた厳しい修業を望む。

◆剣道七・六段審査会寸評

「剣窓2023年1月号」掲載

1.剣道では気剣体の一致。かけ声、剣先の攻防、打突前・時・後の姿勢、捨て切った打突等が求められるが、審査を意識してか、緊張してか、単に表から間合を詰め一緒に面を打ち合っている単調な場面が多く見られた。

2.言い換えれば表・裏・下を攻める、押さえる等の攻防が少なかった。

居合道七・六段審査会寸評

1.着装・礼法について、紋服着用の場合は事前に身に合うように直し、着慣れておくこと。

2.技では、形や刀勢にこだわり気剣体の一位ができていないため、思い切りの悪い居合となっている。気剣体の一致は最重要課題です。