「よだかの星」

 

よだかの星宮沢賢治

 私はこのお話を、小学生の頃国語の教科書を読んで知りました。

 最初に読んだ時、あまりにもよだかが可哀想で堪らなくて、泣いてしまった事をよく覚えています。

 醜く生まれてしまったよだかが、皆から嫌われいるさまや、鷹にまで馬鹿にされて「名前を変えろ」なんて言われている姿には、とても悲しくて堪らなくなりました。

 名前も、姿も持って生まれたもので、自分にはどうすることも出来ないのに、こうやって理不尽に排除されることになる。

 人間の世界でもよくある事ですが、どうして人は自分と違うものを受け入れられないのでしょう、結局のところ平等だなんだと言ったところで、世間からいじめは無くならないし、醜かったり、劣っているモノを馬鹿にする風潮に、終わりが来ることはないのです。

 私は、人よりも劣っている為に、度々コミュニティから遠巻きにされることが良くあるので、よだかの辛い気持ちがとても分かります。

 誰かの傍に居たいのに排除されてしまう、大切な家族すら遠くに行ってしまったら縋る所なんて無くて、よだかはもうお日さまに縋るんですけど、お前はひるの鳥ではないから、星に頼んでごらんと、断られてしまうんですね。

 でも、夜になって色々な星に頼んでも、誰からも馬鹿を言うなと断られてしまう、断られる度に、よだかは力を無くしていき、とうとう地面に落ちるという時に、最後の力を振り絞り、鷹の様に鳴き声を上げながら空に空に昇ってゆき、いつしか青い光になって静かに燃える星となったのです。

 悲しくて、切なくて、でも美しい。

 よだかは、最後の時に少しだけ心安らかに笑う事が出来た、それが一番この話の救われるところです。

醜い鳥が、夜空で輝く美しい星になった、その星は今でも燃えていて、いつでもよだかは空にいるのだと教えてくれる。

 よだかは、星に成りたかった訳では無く、本当は何処か遠い所で、誰かと一緒に居たかったのだと私は思います。

 星になってもよだかは一人きり、でも誰も場所で輝ける存在に慣れたのなら、孤独ではあるけれど、前程悲しくは無いのかな、それだったら良いなと強く思います。

 

よだかの星青空文庫

https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/card473.html

 

 

『檸檬』を読んで

檸檬梶井基次郎

 酸っぱい檸檬の香りを嗅いだ時、ふといつも爽やかな香りに交じって、何処かモヤモヤとした感情が浮んでしまうのは、きっと、気分が重かったり、考えすぎて眠れない夜に、いつも本棚の手の届くところに置いてある、檸檬の短編集を開いて読み始めてしまう癖があるから、なのかも知れなかった。

 梶井基次郎は、若くして肺を患っており、その病から出る熱の熱さや、苦しさが、小説の文章からも酷く伝わってくるのだ、だからその辛さにとても共感できるのだと思う。

 檸檬の冒頭にある『得体のしれない不吉な塊』には、私も良く遭遇する。

 私も場合は精神が特に不安定なときに、その不吉な塊に遭遇してしまう、心が落ち着かなくて、頭が酷くモヤモヤして、不安で何処かやるせない、そんな時。

 若々しくて爽やかな、檸檬の香りを思い出す。

 そして、その黄色い果実を何処で爆発させてやろうかと、考えるのだ。

 きっと作者の梶井基次郎も、何処かで心のうっぷんを爆発させたくて、この話を書いたのではないかな?と、私はいつも思っている。

 苦しい事が続くと、昔好きだったものさえ苦痛になってしまうことがある、作者にとってそれは沢山の好きで溢れていた、丸善だったのだろう。

 私は、どうだろうか。

 頭で檸檬と言う名の爆弾を置く場所を考える、置いてみたい所は沢山あるけれど、一番はやはり、勤めている会社の入り口だろうか?

 クレームやら、無茶な要求やら、有休が通らないことやら、嫌な事が起きる度に、こんな会社爆発しろ!って思っているけれど。

 実際に檸檬が会社の入り口で爆発したら、きっと面白い、私は何食わぬ顔で慌てている人たちを眺めながら通り過ぎ、一人になったら、ひとしきり笑って、カバンから檸檬を一つ取り出して、匂いを嗅ぎ心を躍らせるのだ、次はいつ仕掛けてやろうかなと。

 なんて、そんな妄想をしながら、檸檬の文庫本を開く夜はとても楽しい。

 

 青空文庫

檸檬梶井基次郎

https://www.aozora.gr.jp/cards/000074/card424.html

こちらから無料で読めますので、気になったら是非読んでみて下さいね。

 

自己紹介

 初めまして、春雨ことりです。

 書くことが大好きで、noteでは主に小説を書いているのですが、このはてなブログでは、今まで読んできた本や漫画、映画などの感想を、好きに書き散らして行きたいなと思い始めてみることにしました。

 基本的に感想文なので、主観が入りまくりの文章になると思いますが、好きなモノを紹介することで、この本良いなとか、この漫画面白いかもと、手に取って貰えたら良いなと思っています。

 世の中に楽しい物、面白いものは沢山あるけれど、その中からベストなものを探し出すのは、結構難しいですよね。

 小説を読んでみたらと勧められたけど、何を読んでいいか分からないという時の、参考にしていただけたら有り難いです。

 私は時代小説や、明治の文豪小説も好きなので、かなりマニアックになったりすることもあると思いますが、そこはご了承くださいませ。

 今後アフェリエイトを貼る事もあるので、記事が気に入って頂けたら、購入して貰えると嬉しいです。

 それでは、よろしくお願いいたします。