世界が終わる日が休日ならいいな

好きなものを好きなときに好きなだけ

劇場版「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」を観たよ

【事件が起こるラブコメ作品 名探偵コナン


※映画本編、および原作本編の重要なネタバレを含みます。
今年も毎度おなじみ最速上映から!

5年振りのキッド様映画で平和ラブコメ回、どうやら重要な秘密も明かされるらしい……?いうことで期待度マシマシ、いや〜〜〜期待は裏切られず面白かった!!
事件パートは「思ったより真面目に普通のミステリしてるな……」という感想で笑、と言いつつもそんなに捻らず推理も予想もできやすい、かと言って簡単すぎず、と「名探偵コナンの掲載誌は少年誌」というのが忘れられていない感じがして嬉しかったです。わたしはいつだってそれを忘れてほしくないんだ……。
あ、あとわたしは園子が「鈴木財閥の人間として仕事をしている姿」がめちゃくちゃ好きなので、今作もそれが見られてめちゃくちゃ嬉しかったです。出番が少ないながらもミステリに関わっているのも嬉しい。
洋ちゃんの声優が上手いことはハウルとかで知ってはいたけど、今回もめちゃくちゃよかった!最初こそ洋ちゃんだ!ってキャッキャしちゃったけど、観ている間に洋ちゃんの顔忘れていくのがとてもよかった……。道民だからこそわかる違いを入れているようでそれがわからないの悔しいな!と思います。「わやになっちゃった〜」かわいすぎた。
突然金カム始まりそうになったりゲ謎始まりそうになったりで笑いそうになったものの面白かった!
最終目的のものが「宝を隠した人にとっては価値のあるものだったが、他の人にはそうでもないもの」だったの、「青の古城」を思い出したし、良衛さんの親指の付け根に傷があるから居合の心得がある人というのも「骨董品コレクター殺人事件」を思い出し、初期原作へのリスペクトを感じて嬉しい……。
さらには、コナン本編に登場していたとはいえYAIBAの沖田くんと鬼丸くんが登場したのも「コナン映画」を飛び越え「青山剛昌映画」であり、ちょうど原作30周年にあたることもあり、感慨深いものがありました。キッド様がそもそも「まじっく快斗」の子だからね。

そして今回の平和ラブコメよ……!
和葉に男の影がチラつくとキレる平次はいつだって最高なのですが、相手(聖さん)からの明らかな好意があり、対決までする(未遂)の最高だった〜!君ら早よ付き合いなよ!!
蘭ちゃんが和葉ちゃんのために平次の背中を押しまくってるのもよかったな。特に「ごめん新一!」って言いながら「函館の夜景はビッグベンより上!!」って頷くところ大好きでした。
コナンヒロインに共通したことではありますが、和葉ちゃんは守られるだけのヒロインじゃなくて平次を守れるヒロインなところもかっこよくていい。今回は出番がなかったけど合気道の有段者でもあるし。何も考えずにスタングレネードから守れるのすごいのよ。
あと、和葉ちゃんがポニーテール結わえようとしてるところに平次から電話かかってきて、まとめた髪を躊躇わずに離すところが愛を感じた……ポニーテール結わえるのって大変じゃん……。
紅葉が初登場した頃から平和のラヴを脅かす存在……として紹介されていて、平和原理主義者なのでえぇ……と思いながらその登場を見ていて、紅葉ちゃん本人が魅力的で可愛い子であればあるほど苦しくかったのですが、今回もそうだった。ただし最高に可愛い!!
平次の告白を阻止したい紅葉ちゃん→でも伊織のポンコツナビ(紅葉目線)によってうまくいかない→(結果論ではあるが)遠隔で平次をサポートする、それも劇中では紅葉ちゃんしかできない方法で!!
というのが、制作陣がキャラクターそれぞれに愛を持ってるんだなとめちゃくちゃじんわりしました。
伊織が準備していたブツ、最初はパラシュートとかかな〜と思っていたのですがドデカバッグ満杯のスタングレネードは笑った。どうしてそうなるんだ……。
コナンくんを「平次くんといつも一緒にいる子」だから助けるの、「好きな人の好きなものは全部好き(ただし恋敵は除く)」で高校生ぽくてとてもよかった。でも紅葉ちゃんは結局は和葉ちゃんのこと好ましいお友達と思ってますからね。かわいいね……。

キッド様も最初から最後までずっと最高を更新し続けてくれて最高でした。本当にありがとうございます!!!!!
「ビッグジュエルではないお宝を狙う理由」を、今までわざと宙ぶらりんにしていた設定とこうやって合わせてくるの、クーッ 原作者監修じゃないとあまりにもできない構成!隙がない!
コナンとまじ快は一応別の世界線なので(コナンに紅子はいないと明言されている)コナン映画で黒羽快斗の顔が見られるのとても新鮮でした。
中森警部が撃たれたことで激昂するキッド様、本当に黒羽快斗だった……幼馴染のお父さん、小さい頃から顔を知ってる近所のおじさん、を、大事に思っている黒羽快斗……お父さんが家にいない快斗にとってはお父さん代わりというか、父性を感じる対象でもあったと思うのでとても大事な存在だし、キッドとして追われてるのも少し遊んでいる気分でもあったのでしょうね。中森警部にとっては真剣なお仕事なんですけど。高校生っぽい……。
今後どこまで絡ませるんだろ〜!

最速で観てよかった……とは毎年思っていますが、今年ほど思ったことも珍しい。異次元のときは最速なかった(はず)もんね。
いや〜……いやさぁ……盗一さんは死んでねーし!ってどっかで剛昌も言ってたけど……いやさぁ……。
優作が「生き別れた双子の兄さん」発言したときから客席がざわつきはじめ、メール文面が出た瞬間の悲鳴は最速でしか許されなかったよね笑。しかも最速なんて〝ガチ〟しかいないし。
最速はいつも予告まで終わったところで拍手が起きるけど、今年はそこまで待てずに起こったのもいやそりゃそうなるってわけで。
こんなこと誰も予想してないよ!!
今年の広報でやたら新一と快斗の顔が似てること押すけど今さらどうした?とは思っていましたけど……まさかそんな……いとこ……!
いやこれ単純にネタだと思ってたんですよ、似た顔のキャラデザで声優も同じ勝平にさせるなんて悪ノリなんじゃないかなって。
いやまぁ剛昌は「これ面白いな!やっちゃえ!」でゴリゴリ後付け設定を作る人ですが(ex.諸伏兄弟)これいつから考えてたんだろう……。
盗一さんのことはさすがにコナンじゃなくてまじ快で展開させていうのかな?とは思うので、となるともう何年かかるんだよ!とは思いますが楽しみに待ちたいと思います。

2024.04.12.

最高キッド様映画

ミュージカル「カムフロムアウェイ」を観たよ

【わたしはここにいます この世界のどこか あなたの隣に】


2001年9月11日。当時小学生だったわたしは、繰り返し流される映像を見ながら「よくわからないけれど何かとんでもない、取り返しのつかないことが起きている」と感じていた。
まさにその時、領空封鎖のためアメリカ領空に進入できず、カナダのガンダー国際空港に着陸させられた38機の飛行機に乗っていた乗客たちと、空港があるニューファンドランド島の住人たちを描いた群像劇。
BW版の配信もあるけれど、初見の演目は劇場で初めて観て感じたことを大事にしたいので、映像・音源は見ず、インタビューや記事もさらっとだけ見て観劇しました。稽古場潜入番組だけ好奇心に負けて見てしまった……笑。


日本初演とともにキャストが発表されたときに一番に浮かんだのが「よくこのメンバーのスケジュールが確保できたな……」ということ。恐らく多くの人が同じことを感じたと思いますが笑。
BW版を知っている人たちからは「スター俳優ではなく、普段アンサンブルをしているような人たちをオーディションでキャスティングしてほしかった」という声も上がっていたのを見かけていたが、実際観劇してその意見にも納得しました。
けれどわたしはこのキャストで観られてよかったとも心底思った。というのも「12人全員がほぼずっと舞台上に出たまま100人以上の人を演じ分ける」ためには実力以上の説得力が必要であると感じたから。
メインでお話が進んでいるときにはスッと目線が向くのに、その場にいるただのひとりになったときにサッと意識の外にいってしまう、オーラというか存在感の出し入れを全員が同じように(それも高いレベルで)自在にできて、なおかつ全員が同程度の知名度でないといけない。誰か突出したスターがいると演目のバランスが崩れてしまう。となると今の日本ではこのキャストになるだろうと思った。演目や役に合っていることも含めて。
全員「このキャストのこんな役もう見たことある」と感じるほどぴったりだったし、「いるいる、こんな人」とも思えるくらいに自然だった。めぐさんの機長なんてみんな見たことあったでしょ幻覚を。
ケルト調の音楽も楽しく軽快で、それでいてノスタルジックな気持ちにさせてくれた。あのスターたちがコーラスをやっている……!という、もはや逆に新鮮な気持ちにもなった笑。

見せ場以外で特に印象的だったシーンがある。
飛行機を降ろされて町に向かうバスで不安になっている加藤和樹・モリクミさんの英語の分からない夫婦に、浦井くんだったかな?モリクミさんの持っている聖書の一節(思い煩うことなかれ)を示してメッセージを伝えるところ。宗教に端を発したテロが起きている状況の裏で、宗教によって分かり合える人たちもいるのだと妙に印象的だった。
そしてその隣では宗教によって差別される人の姿も。まりおが演じたエジプト系のイスラム教徒のアリは執拗な身体検査を受けたりキッチンに入らせてもらえなかったりお祈りを白い目で見られたり……。とても象徴的な役だと思った。プロデューサーがまりおにこの役を演じてもらいたいと思ったのもわかる。
積極的な差別をする人もいるし、「この人個人が何かしたわけじゃない、でも」と消極的な差別をする人もいるだろう。分かり合える人も分かり合えない人も、馴染める人も馴染めない人もいる。「様々な人種で演じるべき作品だ」という感想があったのも分かる。
加藤和樹が演じた人たちがすごく印象に残っていて(終演後ロビーで偶然会った知人と「加藤和樹おいしいよね」って話した)、BW版では彼は黒人がキャスティングされていることを聞いてなるほど、と納得した。
「撃ち殺されるかも」という台詞が俄然説得力を持ってしまったのだ、悲しいことに。
今この瞬間も、世界のどこかで差別があって、世界のどこかで分断があって、世界のどこかで戦争が起きている。過去の話といえどもたった20数年前の話、世界はまだまだ問題を抱えている。
日本で暮らしていると、興味を持って報道を見ないと実感を持って人種や宗教での差別を認識することが少ない。そういう意味では日本以外のルーツを持つ人が少ないキャスト(他国にルーツがあるのはとうことシルビアさんだけかな?)で、日本に暮らす日本人が多く観ていると、実感するのにハードルが高いのかなとも思った。
のんべんだらりと暮らして学が浅いわたしがこの演目が持つメッセージをすべて受け止められているとも思わない。
終盤、ガンダーから飛び立つカムフロムアウェイたちからお金を受け取らない町長が言う。
「あなたたちも同じことをしたでしょう」
わたしは正直自信がない。自信がないどころか、客席で「無理だろ」と反射的に思った。
人災である9.11と一緒にするべきではないけれど、日本は天災で「避難してくる人たち」を想像しやすいから、この状況を「自分だったら」に置き換えやすいのではないかと思う。
ただ偶然の出来事が重なってそこに降り立った世界中の人たち。悪人なのか善人なのか、どんな人なのか分からない。町に受け入れ、家に受け入れ、いつまで続くか分からない中で不眠不休でケアをし続ける。無理だ。
それでも、例えば劇中でもあったように古着を寄付することなら?募金をすることなら?信頼できる情報をシェアすることなら?
「今ここにいる自分にできること」。それをこれからも考え続けるのかもしれない、そして「これはいつかのわたしの物語」だと強く実感する台詞だった。

何という言葉が正解なのかな。この言葉もちょっとずれているかもしれないけれど、受容と理解、そして祈りの物語だなと思った。どのシーンがきっかけだったか、中盤以降ミュージカル「MITSUKO」のこの台詞を思い出していた。
「戒めねばならないほど、人は隣人を憎むのだよ」
それでもわたしはこの演目で観た愛や優しさ、10年後のシーンの歓びを信じたいし、この演目が現実にあったことを基にしていることに希望を持ちたいです。
奇しくも「MITSUKO」で主演していたとうこと、ちえのアフタートーク回だったのですが、とうこが「もうちょっと、人間力とかそういうことを言じてもいいんじゃないかな」って言っていたのが不思議な緑を感じました。
*「MITSUKO」日本で初めての国際結婚をしたクーデンホーフ=カレルギー・光子の生涯を描いたミュージカル。2011年上演。
子どもたちが聖書を読んでいるシーンで「隣人とは、すべての〝自分とは違う人〟のこと」という台詞がある。


上演前後は撮影OKだったので一眼レフを持ち込みました笑。
中央上手寄りの折れた木はワールドトレードセンターを表現しているのだそう。

2024.04.06. 17時

ドキュメンタリー映画「成功したオタク」を観たよ

【推しが犯罪者になるということ】


監督オ・セヨン氏の推し、チョン・ジュニョンが逮捕されたのは『バーニング・サン事件』でのこと。この事件にはわたしの好きだったグループ、BIGBANGに所属していたV.I.ことスンリと、CNBLUEに所属していたイ・ジョンヒョンが関わっていたこともあり、ある種の義務感を持って観た。
最推しではなくとも好きだったアイドルが犯罪者になっている現実がわたしにもある。ファンはその現実にどのように向き合い、感情を整理すればよいのか。

いちばん印象に残る話をしていたのはインディーバンドのファンだったお姉さん。
雨に降られながら野外ライブで聴いた曲。ファン仲間の結婚式でその曲を歌う約束をしていたのに性犯罪報道があって歌えなくなり、違う曲を歌ったのだそう。
「それもいい曲だけどわたしたちにとっては特別な曲ではない」
犯罪行為はファンの思い出もすべて踏み躙る……といった内容。
それと同じ文脈で、ジュニョンペンの監督とスンリペンの友達がグッズ供養してるシーンは泣いてしまった。
「今は憎いけど当時は好きだった」
サイン入りのCDをひとつひとつ取り出して「このサイン会では……」「こんなこと言ってくれて」などと思い出を語るふたり。
「オッパ大好き!」という感情ももちろんだけど、思い出、記憶が穢されているんだよね。
犯罪を、犯罪を犯した人を許すことはできない。熱狂的に好きだったことを後悔するときが来てしまった。けれど確かに好きだった。それなのに好きだったことが汚点になる。
ファンが買ったCDでお金を稼いだのだからファンに恩を返すべきじゃない?そのお金でお酒を飲んで犯罪を犯すの?」と言っていた人もいた。
「元からそういう人だったのか、お金を稼いでしまったからそういうことをしてしまったのか」と言う人も。
「ファンの応援が加害に加担したということかもしれない」と悩む人もいて。さすがにそれは極論だしわたしはそうとは思わない。
だが、それほどファンは傷ついたのだ。ファンは間接的な被害者である、と。
監督のお母さんの推しはセクハラ疑惑をかけられてすぐ自死したそう 。
「悪いことは死んだこと、その次に悪いことは償わずに死んだこと。生きていたら違った感情を持てたかもしれないのに、そうさせてもくれなかった」

〝推し活〟とはファンのエゴイズムに溢れた活動だと思う。
芸能人、アイドルだってひとりの人間だ。ファンに見せていない部分だって、むしろ見せていない部分のほうが多いはず。
それなのにイメージや理想を押し付け、そこから逸脱すると悪口を言い、唾を吐いてファンダムから去っていく。
けれど、犯罪行為を、ましてや性犯罪を犯す人だなんて誰も予想しえないことだろう。
わたしは常々、「推しとは究極自分の人生には関係ない人だからちょっとクズなほうが興奮する」などと言ってはいるが、それはファンと繋がったり付き合ったりといったレベルのことで、犯罪行為をしてしまうのとは違う。
まぁそれだって自分の理想を押し付けているのですが。
俳優や映画監督が同じことをしたときに言われること。
「本人の罪と作品は違う」
それも当たり前だとは思うが、では性犯罪を犯した人間の姿が表に出ているのを苦しむ被害者の存在は?犯人を支持するファンの存在は二次加害にならないか?
性犯罪ではなくとも、大麻や薬物は?犯罪ではないけれど不倫や不誠実な恋愛関係は?
それを許せる/許せないの差は一体なんなのか。
この問いにいまだに答えは出ない。ずっと心の整理がつかない。あらゆる不祥事の報道を見ながら何度も何度も問い直す。
好きの気持ちがあったからこそ犯罪を犯したことがファンは苦しいのだ。好きだったからこそ理想のイメージ通りの誠実な人でいてほしかったのだ。そしてその気持ちが推しの負担になっていたのではないかと苦しいのだ。
もちろん、期待が負担だからといって犯罪を犯すことは社会的に許されることはないのだけれど。

二度の飲酒運転をしてSuper Juniorを脱退したカンインペンのお姉さんが「表に出てこないでほしい。静かに暮らしてほしい。結婚もしないで。飼い犬とひっそりと幸せに暮らして」って言ってて、わたしはこれがいちばん自分と近い感情だなと思った。
「つらくなったらお酒を一杯飲んで。でも飲んだら外出禁止ね」。
そう言って笑うお姉さんの言葉がとても優しく、そしてとてもつらい。

2024.04.05.

ドラマ「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」を観たよ

【価値観アップデート!人間関係は対話と理解】


通称おっパン!!
原作はこちら 全話無料で読めるよ

とてもいいドラマだったな、と思ったので書き記しておきます。有料サービス登録していないので記憶が曖昧なところもあるのですが……。
昨年秋に観た舞台の配信でとんちゃんこと東啓介くんに転がり落ちてしまい、このタイミングで連ドラだなんて!というのが見始めたきっかけです(とんちゃん元々好意的に見ていた役者さんだったけど、突然転がり落ちてしまった……)。

軽い気持ちで見始めたものの、脚本や演出、芝居のテンポもよくて面白いし、内容もファミリーもの・世代間ギャップ・セクシュアルマイノリティ・思春期の人間関係……他にももろもろ、と結構いろんなテーマが詰め込まれているもののすっきりとまとまっていた。
3話あたりで原作を読み始めたのですが、そのときは「キャラ単体で見たらわりとイメージが違う配役なんだな」と感じた。
ただドラマ自体にそんなに違和感を覚えなかったのは作品の本質(とわたしが言うのも烏滸がましいのですが)がそのまま反映されているからだと思う。
これは最終回までそうで、原作が意外と短いから60分枠×11話になると時間が足りないからオリジナルエピソードが必要になってくる。そのオリジナルエピソードが「キャラクターと剥離していない」「本質からブレていない」とても真摯に感じられる作り方でびっくりした。
原作者さんたちの撮影現場レポにあったプロデューサーさんたちのこの言葉が、なんというか、覚悟を感じました。

何か不安なところや気になることがあったらすぐに言ってください
完成したものでキャラの意にそぐわないものができたらそれは監督ではなく私達の責任です

折しも、漫画の実写化における改編に端を発する痛ましい出来事が報道され始めていた。
この出来事の要因は複合的なものであろうし、現時点で調査結果が出ていないこともあり、あまり触れるのも話がズレるのでこれに留めますが、メディアミックスというものは恐らく原作よりも格段に関わる人間の数が増えるぶん舵取りが重要で、その船頭たるプロデューサーがこれほどの覚悟を持って仕事をしているのは素直にすごいな、と感じるし、だからこそいいドラマになったんだなと思う。

1月期は他にも世代間ギャップを描くドラマと、セクシュアルマイノリティおよびその結婚を描くドラマがあった。そこと比べるとどうしても前評判は及ばなかったけれど、3本とも見てみていちばんストレスを感じなかったのはおっパンだった。
特に、おっパンでも原作・ドラマともにクライマックスに据えられていたゲイカップルの結婚。
先んじた他ドラマは「法律婚できなくても仲間に祝福してもらえればそれでいい」という結末でがっかりしていたし悲しくなってしまっていたので、「今は法律婚できないし、世間ではまだまだ偏見の目で見られることも多いけれど、祝福してくれる人たちと一緒に法律婚できる未来を待とう」って着地してくれて本当に嬉しかった。結婚式までしてくれたし!
大地くん役の中島颯太くん、円先輩役の東啓介くんが丁寧に演じてくれたのもとても嬉しい。大地くんパパが心配している顔で(心配だって本心ではあるだろうけど)現状ある偏見や差別を並べてきて悩む様子や、それを周囲の力を借りて乗り越えていくドラマオリジナルの展開が素晴らしかったな。
原作は円先輩の両親への挨拶を通して乗り越えていく。原作の最終回が決まるより前にドラマの脚本が書かれたようなのですが、どちらも未来に希望を持てる展開で嬉しかった。
欲を言えば、最終回の2日前に東京地裁と札幌高裁で同性婚を認めないのは違憲との判決が出たところだったので、公式アカウントでMarriage for allのアクションに連帯を示してほしかったかな……これはドラマもだけど原作のほうも。せっかく同性婚を丁寧に描いてくれたので。

年明けにある映画のレビューを読んでいて「他人が自分と違うということを受け入れられない」人が自分が思っている以上に世間には多いのだな……と感じていた。
「多様性」という言葉は正直とても乱暴で、人間は誰しも同じ人はいないし、属性ではなくただその人を尊重すればいいだけなのにと思っている。
おっパンのメインキャラクターはそういう人たちばかりで、最初こそ頑なだった人たちも優しさに触れて心が柔らかくなっていく。
毎週「優しい世界だな〜!」って見てたけど、これが普通の世の中になっていけばいいなと思います。
キャストも、主演の原田泰造をはじめ、妻の美香さんの富田靖子、美穂子さんの松下由樹に豪華だな〜と思っていたら渡辺哲に佐野史郎相島一之と大人組の贅沢っぷりよ!!
前述の通りキャラ単体で見たときにはわりとイメージが違うのですが、作品として原作との差異を感じないのは、脚本だけでなくこの堅実な俳優陣だったのもあるよな〜と思いました。子ども世代を優しく見守りながらも自身もまた成長していく。
「アップデート」という言葉も乱暴だなと思うし、アップデートというよりは理解であるんじゃないかな。そして理解のためには対話が必要。それを丁寧に描いたドラマでした。面白かった!

舞台「オデッサ」を観たよ

【真実はどこに 実力者三人の会話バトル】


※ネタバレがあります
早くも年間ベスト決定だよ……と言ってしまいたくなるほどの完成度。面白かった~!
当て書きオリジナル作品の醍醐味とはこのこと。三人をよく知る三谷幸喜だからこその脚本・演出でもあるし、その期待に十二分に応えた三人の実力を改めて見せつけられた気がします。
何より、オリジナル作品であるからこそ先が見えない面白さがありました。
日本語しか話せない殺人事件の重要参考人、それを取り調べる英語しか話せない警部、そして通訳する男。この設定だけならまぁあるかもなというところなんですが(トリオコントでありそう) 一筋縄ではいかないのが三谷幸喜
なぜ取り調べは警察署で行われないのか?なぜこの男は目立った観光スポットがないオデッサに来たのか?なぜ通訳が本業ではない日本人が通訳をすることになったのか?
台詞の端々にあらゆる理由が散りばめられていて、それがひとつずつ意味を持っていく様子がとても滑らか。使われすぎてあまりこの言葉を使いたくないのですが、伏線が伏線とわからず用意されている脚本はお見事。話の軸が殺人事件ということもあり、ミステリの様相を呈しているのもコメディの中に効いたスパイスといった感じ。
客席がどっかんどっかん沸いていて、わたし自身も劇場でこんなに笑ったのいつぶり……!?となるくらいに面白かった!

前情報から大変そうなことが察せられたかっきー、本当に大変そうだった笑。
かっきーとエマちゃんふたりのシーンでは「英語を話している」体で日本語で喋っているのでエマちゃんも日本語の台詞があるのはあるのだけれど、「日本語と英語を同じシーンで話す」のはかっきーひとり。頭こんがらがりそう……。
こんな無理難題を与えられ、雨の中捨てられた仔犬みたい、なんて表現に三谷幸喜のミューズなんだな……と改めて思いました笑。
けれどそれを難なくこなしているように見せ、なおかついつも通り芝居は安定していて、それがあまりに自然なので、観ている最中というよりかは終わったあとに「いや、すごかったな!?」と気付く感じ。
渡米して4年、あまり深く考えていないながらも漠然と「このままでいいのかな」と感じている若者としてそこに「在る」のがさすが。児島に捕まってほしくないのも優しい人なんだなと感じます。オデッサのことを表した詩も美しいし……。
それが柿澤勇人本人にも見えてくる。でもそこにいるのはかっきーじゃなくスティーブ日高で……と軽く混乱するくらいに役とかっきーが一体化している感覚だった。
かっきーのジキハイやSoRのただひとつの輝きのようなお芝居も、「どこにでもいそうな人だな」という感じるお芝居も大好きです。

凛とした顔立ちで、取り調べをひとりで任されているのでずいぶんやり手……と思いきや遺失物係のカチンスキー警部。後半になるにつれそのポンコツ……おっちょこちょいっぷりが明らかになっていく愛くるしい人物でした。NY市警からオデッサ警察に左遷された理由がポンコツすぎて笑。
シングルマザーで息子のことを大事に育てていて、自身のルーツにほんの少しコンプレックスを抱いている。目の前のことに必死に向き合ってはいるけれど、ままならないことも多い。でもきっとルーツに誇りも持っていて、だからこそ苦しいのかも。とエマちゃんのお芝居を見て思いました。
取り調べのときと息子からの電話とで声色が違うのがとてもよかったな〜ランチじゃなくてお弁当を作るのも愛情だよね。
小柄な身体から発散されるエネルギーがとんでもなかった。ふたりと並ぶととても小さいのにそれを感じさせないくらいのエネルギー。エマちゃんを舞台で観るのは久し振りでしたが、そうそう、そうだった!と思い出せたのが嬉しかったな。

すべての謎を握る男!というと、わたしが迫田さんの名前を認識した「天国と地獄」を思い出します。それまでは顔は知っていたけど失礼ながら名前を覚えていなかった。
最初から最後まで疑っていなかったのに、正体がわかった瞬間の驚きよ……!「嘘をつくときには真実を混ぜる」のセオリーもきちんと取り入れられていて、二回目を観たときにちょっとした仕草や行動が「あ、これ!」と気付くのが面白かった!連続殺人事件の資料をめくっていたり、SOVAのときに本当の現場の状況と矛盾のない説明ができたのも英語を理解していたから!……と気付いたときのアハ体験。
英語を話し始めてからの印象ががらりと変わるのも、「バイリンガルの人は言語ごとに違う性格になる」を思い出して面白かったです。いや児島の演技でしょうけど……笑。
ティーブと警部が真相に辿り着いたのは児島のうっかりが原因なので、登場人物みんなおっちょこちょいやな!というのも含めて楽しかったな。

脚本そのものが単純明快で、二回目を観たときの面白さというのも確実に存在はするんですけど、一回目だけでも大満足な内容でした。何度も見返せる映像作品とは違い、一度きりの体験になりがちな舞台は正直こうあってほしいです。
難しい、明確ではない脚本をやるなというわけではないんですが、「これ複数回観劇すること前提の作劇だよね?」って感じた瞬間に一気に白けてしまう。
それから、三谷作品は「観ている瞬間は面白くて楽しいけれど、後で思い返したときにハラスメント等疑問に思うことがある」ことが多かったんですけど、今回はそれをあまり感じないのも嬉しい。
あと、当て書き作品ではあるけれど「他の人がやったらどうなるんだろう」と思えるところもいい脚本だなぁと個人的には思います。いろんな可能性を感じられる、演じ継がれていく脚本。1,000人規模の劇場でやる商業演劇だけど、200席くらいの劇場でやっても面白そう。
今回は英語監修をエマちゃん、鹿児島弁指導を迫田さんがやっているのも「現場で作っている」感覚があっていいなと思う。
今回は二回の観劇でしたが、もっと観たい!の気持ちもこれで満足!の気持ちも両方あるいい観劇でした。お座席位置も劇場ど真ん中あたりで全体を、サイドだけど最前列!で観劇できてめいいっぱいの熱量を感じることができて本当に楽しかった!またこんな観劇をしたいです!

2024.02.03. 13時
2024.02.12. 13時(大阪千秋楽)

小田原旅行に行ったよ

「そろそろ会いたいからどっか行こうよ!」ということでそろそろ20年とそろそろ10年の付き合いになる友人たちと小田原旅行してきた!
わたしの家族がヒルトン・オナーズ会員でして、ポイント貯まってるから使ってどっか泊まってきていいよ〜と言われたので、せっかくなら泊まりたいねってことで休みの都合やアクセスの都合(大阪・東京・岩手から現地集合)を鑑みて小田原に決定。
小田原に行くなら鎌倉行って鎌倉殿聖地巡礼したい♡って話してたんですが、意外と遠いんですね小田原・鎌倉……(同エリアだと思ってた地理に疎い大阪人)
ということで2日目はレンタカーを借りて箱根に行くことに。楽しみだぞっ

【一日目】

小田原、いうて神奈川やろと思ってたので新幹線苦手なわたしは一旦羽田に飛んで、東京で合流して小田原に向かうことに。JALがセールしてたので……。
(これ結局交通費としては新幹線で行ってもあまり変わらなかったどころかむしろちょっと高かったし、ダイヤ的に結構空き時間ができちゃったので新幹線で直接行ってもよかったかな。あまりに時間がありすぎたので、起きて着替えだけして羽田行ってからコンタクト入れてヘアセとメイクした笑。でも「みんなで向かう」わくわくがあったので今回はこれでヨシ)

小田原だー!

相模湾の小田原漁港は一駅移動した早川駅から徒歩。

アジフライが有名とのことで、お刺身とセットの定食があるでしょ!といくつかお店を覗きこちらのお店へ。

かご平 - 早川/食堂 | 食べログ
マグロ・かんぱちさしみとアジフライ定食をいただきました。
アジフライって三角に開いたものを想像していたので違う形のものが出てきてびっくり。そして身が詰まって固めのものを想像していたのでふわっふわの身にまたびっくり!
3人並んで「美味しい……」って舌鼓を打ちました。お刺身ももちろん美味しかったです!

食後は小田原に戻って観光といえばで小田原城へ。
駅から向かって、おっここが入り口か〜って入ったら二の丸広場だったんですけど農業まつりが開催されていて賑やかでした。写真はない……。

とってもいいお天気で、白い外壁と青い空が映えてとっても綺麗でした。

ホテル周辺にはあんまり飲食店なさそうなので買い込んで行こうね、ということで駅ビルであるミナカ小田原へ。

城下町を模してる?作りでかわいい。忍者ショーやってた(○年前に追っかけてた忍者ショーを思い出して古傷が痛むおたく)
小田原は風魔忍者の里なんですね。あんまり意識してなかったので点と点が線で繋がった感覚でした。
おやつも食べたよ

一〇八抹茶茶廊
小田原駅前はミナカとラスカがメインの駅ビルなのかな?一階にはお土産屋さんも入ってて、コンパクトにいろいろまとまってるな〜と思いました。
あとちょっと枚方市駅っぽい……って思いました、ローカルな話ですが。ちょっと開けた駅前からちょっと歩くとランドマーク(ひらパー)がある感じ。
規模的には三ノ宮くらいはあるかな?

さくっと買い出しを済ませてホテルへGO!
小田原→電車で根府川シャトルバスでホテルのアクセスです。まじで山の上なので車じゃないとまじでむり笑。
(そして移動中にあまりの渋滞を見て「明日の箱根、どうする……?」という不安が発生)
クリスマスっ


お部屋はスーペリアツインの3人利用。
小上がりにマットレスが敷いてある仕様らしく、詰めて3枚敷いてありました。気の置けない友人なので、隣と距離が近くてよかったな。ツインの3人利用のときってひとりは横向きになることが多いし……。

スーペリアツインは全室オーシャンビュー。大阪いると海を見ないから単純にテンション上がる笑。

ウェルカムドリンク(瓶入りミネラルウォーター)とおやつもあったよ。

そしてホテルのメインイベント、プール!!
【公式】屋内外10種のプール バーデゾーン|小田原のホテル【ヒルトン小田原リゾート&スパ】
全体的なお写真は公式サイトを参照で……笑。
入る?持って行くよね?って事前に相談してそれぞれちゃんと準備していたのでした。沖縄以来の水着だー!
プールってだけでなんだかわくわくするし、水着着て遊ぶのも楽しかったな。
プールに入ったまま屋内から屋外に行けるんだけど、もう日が沈んで星がきれいに見えたのも素敵でした。さすが山。これがほんとのナイトプール。

一旦お部屋に戻って晩ごはん。



お行儀悪いけどベッドの上に広げてみんなでつまんだよ。
かまぼこはミナカに入っていた籠清さん、神奈川なので崎陽軒のシウマイに、ラスカに入っていたたごさくさんです。美味しかった〜!
創作煉處(そうさくねりどころ)籠淸 ミナカ小田原店|店舗を探す|小田原かごせい
ラスカ小田原店 – 崎陽軒
たごさく ラスカ小田原店 - 小田原/弁当 | 食べログ

腹ごしらえしたら浴衣に着替えて温泉へ。
【公式】天然温泉大浴場|小田原のホテル【ヒルトン小田原リゾート&スパ】
こちらもお写真は公式サイトで笑。
あんまり大きい!お風呂ではなかったんですが、混んでなくてゆっくりできました。露天も入ったよ。
そして翌日の相談。
渋滞が怖いし、電車で行く範囲も人が多そうだし……そして何より、チェックアウト後でも施設が使えるのである!!
ということでレンタカーをキャンセルし、ぎりぎりまでホテルステイすることに決定。
夜はお部屋でごろごろして舞台映像観つついろんな話をぽつぽつして日付が変わる前に就寝。もう若くないのだ我々は。

【二日目】

せっかくなのでホテルでビュッフェ食べたいよね、晩ごはんは買って帰るとして朝ごはんで食べよ!!ということでビュッフェを付けました。

オムレツは本日の具材から好きなものを入れて目の前で焼いてくれます。目玉は自分で作れる海鮮丼かな?あとでお出汁を入れてお茶漬けにもできます。
人が多い時間帯に予約してしまったのでわりと並んだのですが、いうてもそこまで……って感じです。
お写真撮り損ねたのですが、ヒルトン・オナーズ会員特典で特別ドリンク(レモネードとかピーチティーとかビュッフェに置いてないやつ)を一杯と、デザートのさつまいもプリンもいただきました。
会員本人じゃないとこのへんの特典もらえないって聞いていたのにな?よくわからん。

お腹いっぱいになったのでチェックアウトまで部屋でずーーーっとごろごろ。
かっきーのアルバムとかMR!サントラとか海宝くんのアルバムとか聴いたり一緒に歌ったり、お互い最近観た舞台の話をしたり。
SNSや通話じゃなくて顔合わせて話せるとやっぱり楽しいですね。らぶ。
そして12時チェックアウト。精算するとですね、朝食がなぜか2人分無料で……?朝食付いてないって旅行前にオナーズデスクに確認したのにおかしいな……?たぶん会員本人と同じ特典を受けた気がします。よくわからない。

チェックアウト後にプール。

快晴でプール日和!二日ともお天気に恵まれてよかったです。去年の旅行は一日目が雨でめちゃくちゃ寒かったんよ。
たくさんぷかぷかして気が済んだらまた大浴場へ。露天からは海も見えました。入りながらじゃ見えなかったけど……笑。
夕方時間帯よりも子連れが多かったです。たくさん遊ばせて帰りの車の中で寝てもらうやつかな。
プールはおむつをしていれば一歳から入れるので、子連れ界隈では人気だそう。
あんまりたくさん他のお客さんとすれ違ったわけではないのですが、確かに二人連れや若者グループより家族連れのほうが多かったです。車じゃないとアクセス悪いのもあるかも?
ゆっくり遊んでゆっくり準備して、ホテルを出たのは14時すぎ。
チェックアウト後も遊べるのはとってもありがたい!!当初の予定だった鎌倉や箱根も行きたかったのは行きたかったんですが、諦めたことでゆーっくり過ごせてとてもよかったです。


https://www.kaitensusi-hojo.com/
最後にさくっと回転寿司を食べて、それぞれ帰路へ。
遠出だったけどばたばたせずゆっくり過ごせた週末でした。

連絡自体はいつも取り合ってるけど、こうやって遠征じゃなく旅行でゆっくり遊べる友人がいるのが嬉しいし有り難いことだなと思います。人間関係ってどちらかが諦めたら切れてしまうので……。
出逢いこそインターネットだったけど、長年の友人に出逢えて幸せです。またみんなで遊ぶぞ〜!!


2023.11.18.〜2023.11.19.

ミュージカル「スリル・ミー」2023年公演を観たよ

【捉えどころがない2023年】


現地観劇は2019年1月以来でした。
というのもわたしは大阪在住なので、2021年は取っていたチケットがすべて消えてしまい、そのときにはもう名古屋のチケットは売り止めがかかり、譲渡チケットも問い合わせ激戦……という状況で、かなり悔しい思いをしました。いつもなら意地でもぎ取るんですけど、オールキャンセルのショックと「今遠出していいのか?」という逡巡でそんな気力が無くなっており……。
配信は有り難く3ペアとも観たものの、やはりこの演目はあの息苦しさの中、劇場で観ることがいちばんだと痛感した出来事でもありました。
ということで、今年の再演が発表されてまだまだ予断を許さない世情の中、大阪オールキャンセルが相当なトラウマになっておりまして(笑)各地方へ遠征することを決めたのでした。リスクの分散。あと前回劇場で観られなかった松岡×山崎ペアがまさかの大阪一回公演ということで遠征を余儀なくされたところもある……。
尾上×廣瀬ペア、木村×前田ペアは高崎も予定していましたが、都合が変わり大阪のみになってしまったのが少し悔しい。けれど観劇自体は悔いなく終えられたなと思います。大満足でした。

演出について。
この初演から基本的に変わらない演出が、最高に研ぎ澄まされていて「やっぱり好き〜!!」と観るたびに噛み締めてしまう。
そろそろ演出変えたりしない?って思うときも正直あるけれど、観劇しては「やっぱり最高ッ……」てなるので結局大好きなんですよねぇ……。
変更点は私の登場がブリーゼでは袖からになったのと、Superiorの「世の中騒ぎ出す」で客席降りが追加されたこと、ラストの公園で彼が登場する背景が白になっていることくらいかな?
友達が「セットはリアリティラインになっているのでは?」って言っていたのが面白かった。縦軸が下に行けば行くほど現実、上に行けば行くほど幻想。
なるほど〜と思って観劇してみると、私は決して二階には行かないんですよね。
Keep Your Deal With Meも、地面=現実にいる私をセット上=現実味のないところにいる彼が引き上げようとして(キスシーンですね)断られてる、っていう画ができていてめちゃくちゃ面白いな……!ってなりました。

さて、2023年の3ペア。志半ばであった松山ペアの続投はやはり嬉しかった。若い年齢ならではのスリル・ミーが大好きなので。
2014年に遠征できず見逃した松也私が、新彼である廣瀬くんとともに再登板するのは驚いたし(柿澤の私、どっちもよそに男作ったなってちょっと笑いました)、達成と前田くんの組み合わせも意外だった(これは文句と懺悔ですが、堀会長がした「前田をスリル・ミーに出演させようかな?」という趣旨のツイートに心底キレており、発表されたときは「会長の秘蔵っ子きちゃったな、マジで嫌だな」と本人が悪くないところでげんなりしていた。実際観劇して前田くんごめんな……と思い直したので、キャスティング背景を想像させるツイートをした会長は本当に反省してほしいし SNSをやめてほしい)

あっ今さらなんですけど、わたしは史実の事件を肯定など一切しないし、モデルとなったふたりのことをかわいそうと思いませんが、スリル・ミーはあくまでフィクションなので私と彼のことを憐れんだりしています。

前置きが長くなりました。
一公演ずつ観たあとの「最高!!」という感情や「このペアのここが良かった」「この公演のここが良かった」というのはもちろんあります。けれど「2023年のスリル・ミー、どうだった?」となると「よくわからない」というのが正直なところです。
そもそも全体的に3ペアともあっさりとした造りだなと感じた。特に「超人」というワードにあまり引っ掛かりを覚えなかったことに自分でびっくりした。毎回「このペアは私も彼も超人だな」とか「この彼めちゃくちゃ凡人じゃん」とか、はたまた「この私は超人というよりか……」みたいなことをつらつら考える時間があるのですけど、今回はそれがなかった。強いて言うなら全員凡人だった。
全ペア感じなかったということはわたしの受け取り方の問題なのかもしれない。慣れかな……。
それからこれはビジュアル発表のときから一部で言われていたけれど、今年は性的要素を意図的に排除しているのでしょうかね?わたしはこのふたりが恋愛関係であることはとても重要な要素であると思っているし、わざわざ広報から排除する必要性も感じない(まぁ2014は前面に出しすぎて「それだけじゃないだろ!?」になっちゃってたけど……2018と、特に2021のバランスは見事だった)。
ピンポイントなことで言うと達成私個人は「性欲強いな~」と感じたし、前田彼もそれに応えるくらいには性欲あるんだろうなと感じたけど、ふたりの関係性を見たときにこのふたりは性的接触を重要視していないのでは?って思った。
山崎彼はノンセクシュアルっぽいと感じるくらい性的接触を避けているようにも感じたし、廣瀬彼もあまり性的接触好きではなさそう。こう書いてみると彼側の反応で判断しているのかな。
……と思ったけど、福士彼は不感症では?とは思ったけど性的接触はごりごりあると感じてたな。よくわからん。まぁだからこそ「性的要素は演出で意図的に排除しているのでは?」と感じているのですけど……。
今まで一組は「愛です!!!!!」を全力でお出しされていたからか、今回の芝居に結構戸惑っている。なんというか「初恋」止まりというか……「自分たち以外は壊れてもいいと思えるほどの強く情熱的で破滅的な愛」があるからこそ別ペアも引き立つ(そしてその逆も然り)と思っているので、「愛による破滅」を強く感じられなくて、全ペア観終わってからちょっと拍子抜けした(これはわたしが日本のスリル・ミーに感じることであって、他国はまたちょっと違うかもしれません)。
毎回複数ペアをキャスティングしてるのは興行的に公演回数をこなすのもそうだけど、そういう対比を見せるためだとも思うので、3ペアのバランスがあんまりよくないなぁという感想でした。
いや民也がいいならいいんだけど……。

そう、この「民也がいいならいいんだけど……」って、今年何回言ったかわからんくらいにたくさん言った。3ペアのバランスもそうなんだけど、各ペアともミクロとマクロで観たときの印象が違ったり、「今のこの台詞と役者の感情、剥離してない?」って感じることがあり、「でもまぁ民也がいいって言うんなら……(着席)」ってなっている。
この感想も思考を止めてしまうのでよくないなとは思いつつ、栗山先生への絶対的信頼があるのでちょっと様子を見るか……みたいなところがあります。
たぶんこの答えを得られるのは次回の再演のときだと思うので、それまではこねこねしておきます。

今年もまた新鮮なキャストがいたからか、SNSでちょっと異様なくらい盛り上がっているのに驚いています。昨今の考察ブームにマッチしたところもあるのかな。
しかしいつからこんなにチケット取りづらくなったんだ……こんなに大きな演目になってちょっと寂しい……なんて厄介バンギャムーブをかまして、今回の感想を〆ておきます。
スリルで遠征してお友達とたくさん会うの楽しかったな。また次回!やるよね再演!?

ホリプロくんアーカイブ付き配信ありがとうな!!全ペア収録の円盤も売って!!

2023.09.30.〜2023.10.22.

各ペア感想