この作品は、アカデミー賞に縁がなかったり、賛否両論だったりしたが私はとても気に入っている。
映画館では一度しか見ておらず、先日U-NEXTでさらっと一回通しで観ただけだが、細かいことは抜きにしてざっくりと感想を書き留めておく。
映像がキレイ
どのシーンも一時停止するとそれだけで絵画のようである。
まるでVOGUEの写真集のようである。
観ていて自分の眼が喜んでいるのがわかる。
映画はわざわざお金を払って遠出して見に行くのだから観て喜ぶものであって欲しい。
日常を忘れてストレスを発散するものであって欲しい。
この映画はそれをとても満たしていた。
GUCCIに興味が湧く
私はいわゆるハイブランドにあまり興味がない。
今までの人生にほとんど必要がなかったからだ(貧乏だったともいう)。
まして、ハイブランド屋のお家騒動なんてどうでもよい。勝手にやってくれ。。。
などど思っていたがこの映画を見て考えが変わった。非常に興味深いお家騒動である。
しかしその前に、この映画はGUCCIのニューヨーク店の内部を見せてくれた。
主要人物がそこでやりとりするシーンがあるのだ。私はやりとりの内容よりもまず、「GUCCIのお店ってこんな風なんだ。」と眼が輝いてしまった。
日本の銀座のGUCCI店も入ったことがない(ていうか庶民は入りにくいよ)ので、内装のゴージャスさや店員の応対などが新鮮に映って見ていてワクワクした。
自分が買い物しているような気分になった。
日本が出てくる
アルド・グッチさんが弟のロドルフォ・グッチさんに「こんにちは。ミスターグッチ。最近どう?」と日本語で話すシーンがある。
日本人は上客なので日本語を勉強しているというのだ。
すごい。
これは日本がバブル時代のことだろうか。
そういえば、GUCCIのお店に日本人が集団で買い物に来ているシーンもあった。
原作では、イタリアのお店に買い付けに来た日本人のエピソードが添えられている。
アダム・ドライバーのダメっぷり
マウリツィオ・グッチ役なのだが、ダメ男全開!偉大な創始者の3代目でボンボンでカゴの鳥で世間知らずでどうしようもない感じ。よく出てました。
スターウォーズのカイロ・レンは偉大なダース・ヴェーダーの孫であるから同じような設定だな。カイロ・レンは軍人だったので強面でイカつい感じではあったが、ヴェイダーに比べれば小物で甘ちゃんな感じだった。
マウリツィオでは厳つさが剥がれ落ち、軟弱な部分がさらけ出され、ダメっぷりがMAXの小心男であった。
カイロ・レンもマウリツィオも偉大な祖父を持つボンボンという設定だが、アダムはそんなところも役柄に滲み出させていたと思う。
しかしながら、マウリツィオに関しては感情の振れ幅が小さかったようには感じた。淡々としていたというか。
マウリツィオさんご本人がそういう方だったのだろうか。
ざっくり感想
トム・フォードさんがこの作品を「うーん、イマイチ」的なことをおっしゃてたそうだが、ストーリーはブランドのデザインのことなどよりもパトリツィアの殺人の動機の部分を中心に描いているので、話が多少小さい感じになってしまったのだろうか。
彼女の動機はGUCCI株の取り合い競争の成れの果てに起こっているとは思う。
だから株式の話や経営の話が多くなり、ちょっと小難しいなぁ〜とは正直思った。
というか小難しい話だからもっとじっくりと説明して欲しかった。
しかしたった2時間半の上映でそれを語り尽くすのは無理があるのだろう。
原作も上下巻とかなり長い話になっている。
壮大なGUCCI帝国の崩壊を余すところなく2時間半でよくまとめるのは難しかったのかなと思う。
動機には株式のこともあるが、恋愛の部分も重要だ。やはり愛が憎しとなって殺人までいってしまうのだから。
ストーリーの中でパトリツィアの心境の変化なども考えながら見ていくと面白いと思う。
まだまだざっくりなので、今度いろいろ気になるところも繰り返し見直しながらこの作品を見ていきたい。