メモ

油ぎった皿に落ちる一滴の洗剤のように、全身にパッと恐怖が拡散した/人間としての不能感/針で刺したような小さな穴から、徐々に空気が抜け出て萎んでしまった自転車のタイヤのように、弾力を失った僕の心は、どんな出来事にも、どんなはたらきかけにも、決してバウンドすることはなかった/この世にある美しいものは悉く、この醜く汚らわしい自分への当てつけに他ならないと感じていた/スタンド・バイ・ミーな時期/雨を啜って湿り気を帯びたセピア色の腐葉土サイケデリックな光の帯/水中に蠢動する/アナグラム/人はどんなに辛いことがあっても、信じられるものを“錨”にして危険な波に押し流されることなくこの世界と自分を繋ぎ留めておくことができる。その“錨”を失った時、魂は漂流船となる