Derosa Corum(デローザ コルム)の組立記録第6回目。コンポはちょっと(かなり?)古いカンパニョーロの10S。前回はブレーキケーブルの取り付けについてお話ししました。
今回は、シフトケーブルとチェーンの取り付けについてです。
*本サイトのロードバイクの組立ては素人によるものです。内容を参照して作業される場合は自己責任でお願いいたします。
はじめに…
手順の整理
今回は組み立てで最後のパーツとなるリヤ&フロントシフトケーブルとチェーンの取り付けです。変速調整は次回行うつもりですが、シフトケーブル、チェーンの取り付けと変速調整は一体と思われるため、作業に入る前に一連の手順を以下の通り整理してみました。
1.リヤシフトケーブルの取り付け
1-1. RDの可動範囲のざっくり調整
1-2. リヤシフト~RD間のケーブル取り付け
2.フロントシフトケーブルの取り付け
2-1. FDの取り付け位置の調整 ※コルム組立記録4で実施済み
2-2. FDの可動範囲のざっくり調整
2-3. フロントシフト~FD間のケーブル取り付け
3.チェーンの取り付け
3-1. チェーンの装着
3-2.リヤ& フロントシフトケーブルの初期伸び取り
4.リヤの変速調整
4-1. RDの可動範囲の調整
4-2. ケーブルテンションの調整〜ワイヤーの固定
4-3. Bテンションの調整
5.フロントの変速調整
5-1. FDの可動範囲の調整(インナー側)
5-2. ケーブルテンションの調整〜ワイヤーの固定
5-3. FDの可動範囲の調整(アウター側)
1と2のシフトケーブルの取り付けはリヤ・フロントどちらが先でもOKです。シフトケーブルはアウターケーブルとインナーケーブル(ワイヤー)に分かれていますが、インナーケーブルをディレーラーにしっかり固定するのは4と5の変速調整のときで、それまでは仮り留めです。
正直なところ、まだ試行錯誤中のため上記手順が正しいかどうか自信がありません(^^; 実際はどうでもよかったり無駄なことがことが含まれている可能性もあります。ですが、ひとまず上記順番に沿って今回は1~3までお伝えしたいと思います。
部品・工具類の準備
いつもどおり部品、工具類を準備します。
まずはシフトケーブル関連。
ケーブルは前回のブレーキケーブル取り付けで使用したカンパ純正エルゴパワーケーブルセット(型番:CG-ER600)の残りを使用します。
アウターケーブル×3本
長い2本⇒エルゴパワー~ダウンチューブ間用でリヤ・フロント共通
短い1本⇒リヤのチェーンステー〜RD間用
取説によるとアウターケーブルの外径はブレーキ用の4.9㎜より細い4.1㎜(上記写真の赤マル)。
断面を見ると穴の周りを細いワイヤーがぐるっと取り囲む構造です。ブレーキ用は金属製のチューブが入っていました。
インナーケーブル×2本
長い方⇒リヤシフト用
短い方⇒フロントシフト用
アウターキャップ×5個(内1個はゴム製のダストカバー付き)
エンドキャップはブレーキケーブルに使用したのと同じノグチ製。
問題があったのはダストカバー付きのアウターキャップで、チェーンステーのダボ穴にセットするものです。ゴム製のダストカバーを外すと黒いヒゲのようなチューブが装着されていました。このヒゲをダボ穴にセットし反対側からダストカバーを被せる構造のようですが、ヒゲの径が細すぎてグラグラ。そこでダボ穴にぴったりハマる段付きアウターキャップを探します。
ヌーボクラシコを確認するとダストカバー無しのアウターキャップが付いているので(組み立てたショップが付けてくれたと思われます)このタイプがあるはず。ネットで検索するとカンパ純正品でCG-CS113という型番のものが該当する模様。ですが、ネットショップではどこも欠品のため代わりに使えそうなものを探します。
ダボ穴の内径は約4㎜。これに収まる段付きアウターキャップを探します。
アウターキャップで検索すると上記のシマノのパーツリストがヒットし、径4㎜の段付きタイプはSIS-SP50(上図の赤マル)というものが該当するようです。早速ネットショップでオーダー。
到着したのがこちら。下のダストカバー付きのと並べてみると全長は同じサイズ。
段付き部分の外形は4㎜。
ダボ穴にセットしてみるともちろんピッタリ。
ところが…、内径を測ってみると5㎜あります。
アウターケーブルの外径は上述のとおり4.1㎜です。はめてみると隙間が空いてグラグラ(泣)
リストを再確認。どうやらSIS-SP50ではなくSIS-SP40シールドタイプ(上図の赤マル)が正解のような気がします。型番のSPのあとの数字は内径(4.0㎜)を意味しているのかも?ということでSIS-SP40をオーダー。
到着したのがこちら。
下のSIS-SP50と比べると全長は少し長いですが、
段付き部分の外径は4㎜。
内径は予想どおり4㎜。これでバッチリ!と言いつつカンパのアウターケーブルの外径は4.1㎜。入るかどうか試してみます。
かなりきついですが、無理やり押し込んだら入りました(汗)。
ちなみに段付き側の穴の内径も違っていました。右側のSIS-SP40の方が狭くインナーケーブルの外径に合いそうです。アウターキャップひとつの調達に時間を費やしましたが、やっとピッタリ合うものが見つかりました。
工具類は前回のブレーキケーブル取り付けで使用した以下のものです。
ワイヤーカッター(HOZAN N-16)
やすり
千枚通し
ケーブルグリス(シマノ)
続いてチェーン関連。
チェーンはWippermannのCONNEX10S。工具なしで着脱できる便利なチェーン。
チェーンカッター。昔から使っているADEPT製。
チェーンフィクサー。チェーンを仮接続した状態でキープできる便利な工具。バイクハンド製。
その他の汎用的な工具やケミカル類は割愛します。それでは早速作業に入りましょう。
1.リヤシフトケーブルの取り付け
1-1. RDの可動範囲のざっくり調整
ケーブルを取り付ける前にまずRDの可動範囲をざっくり調整します。
厳密に言うと可動範囲を調整するのはRDのガイドプーリーと呼ぶ部分です。ガイドプーリーは、RD本体に付いている2枚のプーリーのうちスプロケの真下に来る方のこと。因みにもう1枚はテンションプーリーと呼ぶようです。
これが外側⇒内側に動くことでチェーンをトップギヤ⇒ローギヤへ移動させます。
反対に内側⇒外側に動くことでチェーンをローギヤ⇒トップギヤへ移動させます。
移動の際、このプーリーがトップギヤ/ローギヤより外側にはみ出るとチェーンが外れてしまいます。また、この範囲が適正でないとエルゴパワーでのシフトアップ/ダウンがレバーどおりに動作しません。そのため、ガイドプーリーがトップギヤ/ローギヤの真下の範囲で動くように調整します。
可動範囲の調整はチェーンの動きを見ながら行うため、通常はチェーンを装着してから変速調整のときに実施します(次回の「4.リヤの変速調整」に掲載予定)。ですが、チェーンが装着されていないこの段階の方がスプロケとガイドプーリーの位置関係が見やすく、また、ある程度調整を済ませておいた方が気持ち的にも楽なため、自分はここでざっくり調整しておくことにします。
可動範囲の調整はディレーラー本体に付いている2本のネジで行います。
右側:トップ側の調整ネジ
左側:ロー側の調整ネジ
最初にホームポジションであるトップギヤ側を調整します。RDをリヤハンガーに取り付けた初期状態ではガイドプーリーはトップギヤ側に位置しており、自分はこの位置を勝手にホームポジションと呼んでいます。ここからローギヤ側に移動してもバネの力でトップギヤ側に引き戻されるからです。
トップギヤとガイドプーリーの位置関係(写真の赤いライン)をバイクの真後ろから確認。
右側のネジでガイドプーリーがトップギヤの真下に来るように調整。
時計回りに締め込む:内側(奥)へ移動
反時計回りに緩める:外側(手前)へ移動
真後ろから見るとこのようになります。
参考のため、ネジがどのような働きをしているか見てみます。表側からだとネジの先端がよく見えないため、車体をひっくり返してホイール越しに裏側から覗いてみます。
そうすると一目瞭然。右側がトップ側調整ネジ、左側がロー側調整ネジの先端です。
トップ側の調整時は、右側のネジの先端がガイドプーリーに繋がる右プレート(写真の赤マル部分)に当たる構図になります。ネジを時計回りに締め込むとプレートが押されてガイドプーリーが内側に移動し、反時計回りに緩めるとバネの力でプレートが押し戻されてガイドプーリーが外側に移動します。
因みに右側のネジを最大限緩めた状態のガイドプーリー位置がこちら。この状態ではネジの先端は上記のプレートに当たっておらず、ガイドプーリーはバネに押されてトップギヤよりも外側に来ています。
右側のネジを最大限締め込んだ状態のガイドプーリー位置がこちら。ネジの先端がプレートを目いっぱい押して、ガイドプーリーはトップよりひとつ下のギヤ辺りに来ています。
続いてロー側の調整。ガイドプーリーを手で目いっぱい内側に移動させた位置がローギヤの真下に来るようにします(写真の赤いライン)。
ロー側の調整に使うのは左側のネジ。ネジの回転方向とガイドプーリーの動きの関係はトップ側と逆になります。
時計回り :内側への可動範囲縮小
反時計回り:内側への可動範囲拡大
真後ろから見るとこのようになります。ガイドプーリーを手で内側に押しながらネジを回して位置を調整します。ネジを回して変化するのは内側への可動範囲のため、内側に押さずに(ホームポジションで)ネジを回しても変化は分かりません。
参考のため、車体をひっくり返してネジの働きを確認。手でガイドプーリーを内側に押すと左側のネジの先端がシートステーのエンドブラケットに繋がる左プレート(写真の赤マル部分)に当たります。これがストッパーになり、ネジを時計回りに締め込むとガイドプーリーの内側への可動範囲が縮小し、反時計回りに緩めるとガイドプーリーの内側への可動範囲が拡大します。
因みに左側のネジを最大限緩めて内側に押した状態のガイドプーリー位置がこちら。この状態ではネジの先端は上記のプレートに当たっておらず、ローギヤよりも内側に来てしまいます(スポークに当たってしまいます)。
左側のネジを最大限締め込んだ状態のガイドプーリー位置がこちら。ネジの先端がストッパーになり、ローからひとつ上のギヤ辺りまでしか来ません。
以上でざっくり調整は完了ですが、正直なところ、スプロケとガイドプーリーの刃先が真っすぐになったかどうかはよく分かりません(汗)。真っすぐかどうかは後ろ側の見る角度で変わりますが、自分が本当に真後ろから見ているか分からないためです。また、スプロケ(特にトップ側)の各刃先には微妙に斜めの角度が付いていてそれぞれ向いている方向が違うため、各刃先の中心線で見なければいけないのもイマイチ分かりづらいところです。まあ、ここはざっくり調整なので、だいたい真っすぐになっていればOKです。
1-2. リヤシフト~RD間のケーブル取り付け
続いてケーブルの取り付けです。ブレーキのケーブル張りと同じように、まずアウターケーブルの長さを決め、その中にインナーケーブル(ワイヤー)を通してRDに借り留めするという順番です。
ケーブルを取り付ける前に、ダウンチューブのアジャスターを時計回りに目いっぱい締め込んでおきます。なぜ締め込むかは、ケーブルは装着後に伸びていく傾向にあり、その時はアジャスターを反時計回りに緩めてケーブルテンションを強めるためです。
アジャスターを時計回りに締め込む ⇒ ケーブルテンションを弱める
アジャスターを反時計回りに緩める ⇒ ケーブルテンションを強める
今回はせっかくなので、一旦アジャスターを取り外し、焼き付き防止剤を塗ってから締め込み直すことにしました。
締め込み完了。
RDについているアジャスターも時計回りに締め込んでおきます。RDケーブルのテンション調整では、ダウンチューブのアジャスターよりもこちらをメインで使用します。
続いて、エルゴパワーの親指レバーを目いっぱいクリックしトップの位置にしておきます。前述したRDのホームポジション=トップに合わせるためです。また、この位置にすることでエルゴパワーの真下にインナーケーブルの差込口が現れます。
それではアウターケーブルの取り付けに入ります。まずケーブルの長さ決めから。
エルゴパワーのブラケットカバーをめくってアウターケーブルを差込口にセットし、ハンドルの外側に這わせます。このハンドル(Deda 215)にはケーブルを這わせる溝が前後に付いており、シフトケーブルはブレーキケーブルと反対側の溝を使用します(ブレーキケーブルと一緒にしてもOK)。
ビニールテープで2,3箇所仮り留め。なお、仮り留めと言いながら、最後にバーテープを巻くときは自分はこれを剥がさず上に補強用のビニールテープを巻いてしまっています。
ダウンチューブのアジャスターに合わせて長さを調整します。ハンドルを目一杯左に切ってもケーブルが引っ張られないことを確認。
マジックでマーキング。これで長さが決まりました。
マーキングした位置をワイヤーカッターで切断。
ブレーキ用のアウターケーブルは切断面が乱れがちですが(内部の金属チューブがスパッと切れず潰れてしまうため)、ディレーラー用のアウターケーブルはきれいです。
それでも一応ヤスリを当てて、
千枚通しで形を整えます。切断したケーブル先端はダウンチューブのアジャスターに一旦はめておきます。
続いてインナーケーブル(ワイヤー)を取り付けます。インナーケーブルはエルゴパワーの真下から差し込みアウターケーブルに通したあと、ダウンチューブ〜BBの下を通してRDに繋げます。作業しやすいように車体をひっくり返しました。
インナーケーブルの差込口はここです(写真の赤マル内)。ここからケーブル先端を差し込み、後端のタイコをこの穴に引っ掛けます。先ほどエルゴパワーの親指レバーを目いっぱいクリックしたのはこの差し込み口の穴を出現させるためです。
インナーケーブルを通していきます。この穴は先ほどエルゴパワーに差し込んだアウターケーブルに繋がっていますが、手探りではアウターケーブルの入口に上手く到達しないかもしれません。その場合はハンドルにビニールテープで仮り留めしたアウターケーブルを取り外し、手でアウターケーブルの入口に入れてあげます。今回は取り外さないで無事通せました。
そのままケーブルを押し込んでいくとアウターケーブルの端からインナーケーブルが出てきます。
アウターケーブルの先端にアウターキャップを被せます。
ダウンチューブのアジャスターにセットし、
インナーケーブを引っ張りますが、
アウターケーブルの中を通る部分にはケーブルグリスを塗ります。
そして最後まで引っ張ると、インナーケーブル後端のタイコが穴にピッタリ収まりました。
続いてBBの下のガイドプレートに通します。
次の行先はチェーンステーのダボ穴(アウターキャップ受け)。
このあとダボ穴~RD間はアウターケーブルに通すため、ひっくり返した車体を元に戻します。
使用するのは残った短い方のアウターケーブル(写真の赤マル)。このアウターケーブルはカットせずそのまま使用します。
アウターケーブルに段付きアウターキャップを被せます。シマノ用なのでキツキツだったやつです(汗)。
インナーケーブルにケーブルグリスを塗ってから、アウターケーブルに通します。
アウターキャップをダボ穴にセット。
続いて、反対側のアウターケーブルの先端にアウターキャップを被せ、
RDのケーブルアジャスターの中にインナーケーブルを通し、
アウターキャップをアジャスターにセット。
ケーブル固定プレートのネジを5㎜の六角レンチで緩め、
ケーブル固定プレートの下にインナーケーブルを通し、引っ張ってケーブルが緩んでいないことを確認してからネジを締めます。ネジの固定は仮り留めなので締め過ぎないこと。
反対側から見るとこんな感じ。
仮り留め完了。余ったケーブルは変速調整が完了した後にカットするため、それまではくるっと巻いておくのがよいと思います。写真には写っていませんが、自分は邪魔なので長めに残してカットしてしまいました(短くカットしてしまうと引っ張りづらいです)。
※カットしたケーブル先端が目などに刺さらないように注意が必要です。また、変速調整時にチェーンやテンションプーリーに巻き込まれやすいのでそちらも注意。
2.フロントシフトケーブルの取り付け
2-1. FDの取り付け位置の調整 ※コルム組立記録4で実施済み
続いてフロントシフトケーブルの取り付けです。まず最初にフロントシフトで操作するFDの役割と構造を簡単にお話ししたいと思います。
先ほど作業したリヤにおいてチェーンをトップギヤ⇔ローギヤに移動させるのはRDに付いているガイドプーリーの役割でした。フロントにおいてチェーンをインナーリング⇔アウターリングに移動させるのはFDに付いているガイドプレートの役割です。
こちらがガイドプレート。※参考のためチェーン装着後の写真を載せています。
ガイドプレートはインナープレート(内側のプレート)とアウタープレート(外側のプレート)が繋がったケージのような構造になっており、そのケージの中をチェーンが通ります。そして、チェーンをインナー⇔アウターに切り替えるときはガイドプレートが次の動きをします。
インナー⇒アウターへの切り替え:インナープレートがチェーンを外側に押し出す
アウター⇒インナーへの切り替え:アウタープレートがチェーンを内側に押し出す
FDの役割と構造を頭に入れたら、最初にFDの取り付け位置を調整します。ガイドプレートの動きは取り付け位置で変わるため、最初の位置決めがとても重要です。FDはRDと違って取り付け位置を自分で決めなければならないため、シビアな調整が要求されます(RDはエンドブラケットにネジ止めすれば取り付け位置が自然に決まりますが)。
調整作業は「コルム組立記録4」でFDを取り付ける際に実施済みのためスキップしますが、取り付け位置をおさらいすると次のようになります。
横から見てアウタープレートとアウターリングの隙間が1.5~3㎜になる位置
マニュアルによっては1~2㎜としているものもあります。
上から見てアウタープレートがアウターリングの真上になる位置
FDをフレームに取り付けた初期状態ではFDのガイドプレートの中心(アウタープレートとインナープレートの間のチェーンが通るライン)はインナーリング上にあり、そこがFDのホームポジションです。
後ろから見るとこのような位置関係になっています。ガイドプレートはここからアウターリング側に移動してもバネの力でインナーリング側に引き戻されます。上記の「上から見てアウタープレートがアウターリングの真上になる位置」は、ガイドプレートの中心がインナーリングの上に来るよう合わせていたのですね、当時は全く理解していませんでした(汗)。
2-2. FDの可動範囲のざっくり調整
続いてFDの可動範囲をざっくり調整します。RD同様にFDも可動範囲の調整はチェーンを張ったあと変速調整のときに行いますが、ここに「ざっくり調整」を入れた理由は以下の苦い経験からです。
当初、マニュアルどおりフロントシフトケーブルとチェーンの取り付けを行い、フロント変速調整の作業時にインナー⇒アウターへ切り替えしようとしました(詳細は次回「5.フロントの変速調整」に掲載予定)。しかし、エルゴパワーの薬指レバーを内側に押し込もうとしても押し込めません。
レバーを内側に押し込めない理由はガイドプレートが外側に動かないからです。一旦ケーブルを外し、ガイドプレートを手で力いっぱい外側に押してみますがびくともしません。むむ…このFD壊れてる??一瞬パニック。
FDは一応新品なのでそんなことはないはず…深呼吸して原因を探ります。怪しいのはFDに付いている2つのネジ。確か「コルム組立記録4」でFDを取り付けた際は上のネジを回してガイドプレートの位置を調整しました(よく分からないまま適当に回していましたが…)。まだ触っていないのは下のネジ。
よく見ると下のネジは時計回りに締め込まれた状態でした。それを反時計回りに緩めてみますがガイドプレートの位置に変化はありません。
しかし、試しにガイドプレートを外側に押してみたところ動くようになっていました。
こちらは後ろから見たところ。ガイドプレートの中心がアウターリング上に来ています。ひとまずホッ…
このとき初めて、FDのネジもRD同様に可動範囲を調整する役目を果たしているのでは?と気付きました。マニュアルで確認すると、FDの2つのネジの役割は以下のようになっています。
上:内側の可動範囲調整ネジ
下:外側の可動範囲調整ネジ
ここで、上下のネジがどのような働きをしているか見てみることにします。
まず、上下のネジを目いっぱい緩めた状態でガイドプレートの位置を横から確認します。
ガイドプレートは2本の黒いアームでFD本体と繋がっており、内側アームの取り付け部分の真上付近に2本のネジがあります。アームの取り付け部分の隙間(写真の丸マル内)を覗くと、上下のネジを緩めた状態ではネジの先端は見えておらず、アームはバネの力で内側に押されています。
このとき、アウタープレートはホームポジション(アウターリングの真上=写真の赤い点線)の内側にあります。ここが可動範囲で最も内側の位置です。
そこから上のネジを時計回りに締め込んでいくと、ネジの先端がアームの左上の頭を押して(写真の赤マル内)、ガイドプレートが外側へ移動していくのが分かります。
上のネジを時計回りに最大限締め込んだ状態。アウタープレートがホームポジション(アウターリングの真上=写真の赤い点線)より右側に来ています。ここが可動範囲で最も外側の位置です。
以上のことから、上のネジの回転方向とガイドプレートの動きの関係は以下であることが分かります。
時計回りに締め込む:外側へ移動
反時計回りに緩める:内側へ移動
今度は下のネジの働きを確認してみます。上のネジを再度目いっぱい緩めてから、下のネジを時計回りに締め込んでいきます。するとネジの先端がアームの右上の頭付近に出てきます(写真の青マル内)。これがストッパーとなりガイドプレートの外側への可動範囲が制限されます。なお、ネジの先端が頭に当たってもストッパーになるだけでアーム自体は動かしません。
以上のことから下のネジの回転方向とガイドプレートの動きの関係は以下であることが分かります。
時計回りに締め込む:外側への可動範囲縮小
反時計回りに緩める:外側への可動範囲拡大
RDの右のネジの働きと同じですね。ネジの締め込み具合でガイドプレートの外側への可動範囲を調整するのです。
因みにこちらが下のネジを目いっぱい締め込んだ状態。ネジの先端がアームの右上の頭にがっちり当たっています(写真の青マル内)。これが今回ガイドプレートが全く動かなかった理由です。ネジの働きを知らないとこんな単純なことでもパニクります(汗)。
以上の経験から、ケーブル取り付け前にガイドプレートが外側に動くか確認するため、ここに「ざっくり調整」を入れました。
ざっくり調整は、手でガイドプレートを外側に押しながら下のネジを回し、左右のガイドプレートの中心がアウターリングの上(写真の赤い点線)辺りに来るようにします。ネジの回転方向とガイドプレートの動きをおさらいすると、
時計回りに締め込む:外側への可動範囲縮小
反時計回りに緩める:外側への可動範囲拡大
しつこくてすみません…。長々説明しましたが、作業自体はあっという間に終わります(汗)。
2-3. フロントシフト~FD間のケーブル張り
ようやく本題であるケーブル取り付け作業に入ります。RD同様にアウターケーブル⇒インナーケーブル(ワイヤー)の順番で取り付けていきます。
ケーブルを張る前にダウンチューブのケーブルアジャスターを時計回りに締め込んでおきます。
RD同様、一旦アジャスターを取り外し、焼き付き防止剤を塗ってから締め直します。RDと違ってFD本体にアジャスターはないため、FDのケーブルテンションを調整するときに使用するのはここだけです(最近のシマノのFDにはアジャスターのネジが付いているようですが)。
この後のアウターケーブルの取り付けは、実際はRDの作業のとき一緒に行っています。同じ作業はまとめて行った方が効率的なため。
まずアウターケーブルの長さ決めから。エルゴパワーのブラケットカバーをめくって差込口にアウターケーブルをセットし、ハンドルの外側に這わせます。
ビニールテープで2,3箇所仮り留め。
ダウンチューブのアジャスターにケーブルを合わせて長さを決めます。この時ハンドルを目いっぱい右に切って引っ張られないことを確認。因みにケーブルはブレーキケーブルの内側を通します。
マジックでマーキング。これで長さが決まりました。
マーキングした位置をケーブルカッターで切断。
先端をやすりで整え、
千枚通しで穴の形を整え、
先端にアウターキャップを被せて、
ダウンチューブのケーブルアジャスターにセット。リヤはインナーケーブルを張るときにアウターキャップを被せましたが、フロントは先に被せてアジャスターにセットしておきました(どちらでもよいと思います)。これでアウターケーブルの取り付けは完了。
続いてインナーケーブル(ワイヤー)の取り付けです。
取り付ける前にエルゴパワーの親指レバーを押し下げてインナーのポジションにします。これはFDのホームポジションがインナー側だからです。また、インナーポジションにすることでインナーケーブルを差し込む穴がレバーの裏側に現れます。
インナーケーブルのルートは、エルゴパワーの真下から差し込みアウターケーブルに通したあと、ダウンチューブのケーブルアジャスター~BB下のケーブルガイド~FDです。ケーブルを通しやすいようにまた車体をひっくり返します。
エルゴパワーのブラケットカバーをめくるとインナーケーブルを通す穴が見えます。
インナーケーブルの先端を差し込み穴に通していきます。
アウターケーブルの中を通る部分にはケーブルグリスを塗っておきます。
ケーブル先端がアウターケーブルを通ってダウンチューブのアジャスターから出てくるため、そのまま引っ張り出します。
引っ張り続けるとケーブル後端のタイコが穴にピッタリ収まりました。
続いてBB下のケーブルガイドに通します。そうしたら90度向きを変え左右のチェーンステーとタイヤの隙間からからFDに繋げるのですが…
ん?…何か変です。よく見るとFDへ繋がるケーブルガイドの先端が折れています。本当はもっと長いはず。フレームは中古なので入手したときから折れていたのですね、先ほどRDのケーブルを通したときは気づきませんでした…(汗)。
このまま使えないこともないかな?と考えましたが、これが原因で変速に不具合が生じるのも嫌なので一旦作業を中断。
代わりのケーブルガイドをCS-MARVERICKで手配しました。型番はPR6-RE。こういったレア部品でも午前中に発注すれば翌日に届くのが有難いですね。
折れた部品と比べると全然長さが違います。
それでは作業再開。取り付ける前にグリスを塗って、
付属のビズを3㎜の六角レンチで固定。
改めてインナーケーブルを通して、
ひっくり返した車体を元に戻し、チェーンステーとタイヤの隙間から引き出します。
5㎜の六角レンチでFDのケーブル取り付けボルトを緩めて、
ケーブルを引っ張りながらワッシャーの下に通し、ボルトを締め直します。仮り留めなので適当なトルクでよいのですが、くれぐれも強く締め過ぎないように。カンパ純正ケーブルは柔らかくほつれやすいので…。
余ったケーブルは変速調整が完了して本締めするまで、ぐるっと巻いてシートチューブにテープで固定しておくのがよいと思いますが、リヤ同様、邪魔なので長めに残して切ってしまいました。
※先端が上を向いているため目に刺さらないように注意。ビニールテープなどで保護しておくのがよいと思います。
以上でリヤ、フロントのシフトケーブルの取り付けが完了しました。
3.チェーンの取り付け
3-1. チェーンの装着
続いてチェーンを取り付けます。
チェーンはWippermannのCONNEX 10S。楽天で4,000円ぐらいで購入。
コネックスリンクという特殊なコマ部品のお陰で工具を使わず着脱できます。長年愛用しいるお気に入りでヌーボクラシコとママチャリ(!)にも装着しています。
15年ぐらい前、このチェーンの存在を知った時は目から鱗でした。それまでチェーンは取り外せないため掃除がとても面倒でしたが、これは簡単に取り外せるため劇的に楽になりました。ペットボトルに灯油と一緒に入れてシャカシャカするだけでピカピカに。いまやこのチェーン以外考えられません。
さて、チェーンを箱から取り出したら、ジップロックにパーツクリーナーを入れてシャカシャカします(さすがに今はもう灯油は使っていません…)。開封後のチェーンには透明なグリスのようなものがべったり付いていて動きが渋いため。
洗浄完了。
チェーンを取り付ける際のギヤのポジションは、フロント=インナー、リヤ=トップです。FD、RDそれぞれのホームポジションですね。チェーンを取り付けた時、チェーンがいちばん弛む(負荷がかからない)状態でもあります。
左エルゴパワーの親指レバーを押し下げて、FDをインナーのポジションにします。先ほどこのポジションでケーブルを取り付けているので既にそうなっているはずですね…。
続いて右エルゴパワーの親指レバーを押し下げて、RDをトップのポジションにします。こちらも既にそうなっているはずですね…。
それではチェーンをギヤに掛けていきます。フロントはインナーリング、リヤはトップギヤに掛かるように。まずチェーンをインナーリングに掛けてFDのガイドプレートのケージの中を通します。
続いてリヤのトップギヤに掛けます。
反転させてRDのガイドプーリーに掛けます。
ガイドプーリーとその下にあるテンションプーリーはプレートで繋がっています。プレートの中央でチェーンをS字に反転させてテンションプーリーに掛けます。
あとはそのまま引っ張ると、チェーンがぐるっと一周しチェーンステーの下辺りで繋がることになります。チェーンフィクサーの左右の爪をチェーンに引っ掛けて一旦このポジションをキープ。
続いてチェーンの長さを決めます。その目安になるのが上の写真の矢印の間隔。チェーンフィクサーの爪を掛ける位置を調整してこの間隔が8~15㎜になるように調整します。と言いながら、矢印の上端がどこを指しているのかよく分かりません。
別のマニュアルを見ると、裏側から見たときのガイドプーリーの下にあるプレートの出っ張りを指していることが分かりました。因みにこの間隔を10~15㎜としているマニュアルもあります。
コネックスリンクの片側をチェーン先端にはめ、どのコマで繋げるか確認します。コネックスリンクはコマとコマを繋ぐプレートに相当するため、コマのコネクトピン部分にコネックスリンクの穴(上記写真の赤マル)を重ねて上記の間隔が8~15㎜になるものを探します。
繋げるコマが決まったらマジックでマーキング。この先の余分なチェーンを切断します。
チェーンの切断にはチェーンカッターを使用。
チェーンをギヤから取り外し、切断するコマをチェーンカッターの台座にセット。コネクトピンの中央にシリンダーの先端が来るように合わせます。
チェーンカッターのハンドルを少しずつ右に回し、シリンダーの先端がコネクトピンに当たったら一旦ストップ。シリンダーの尖った先端がコネクトピン中央の凹みにぴったり当たっていることを確認します。ここがズレているとチェーンが台無しなってしまうため。
ハンドルに力を込めて回しピンを打ち抜きます。緊張の一瞬! ピンの固定が外れるまでは力が要りますが、ピンがズレ始めるとハンドルが一気に軽くなります。
無事コネクトピンが抜けました。コマの穴の周りが歪んだりしていないか確認。以前、シリンダーがピンの中心から少しズレていて穴が歪み、チェーンを台無しにしてしまったことがありました。そのため、実は本番前にいらない端っこのコマで練習しています(汗)。
チェーンをインナーリング&トップギヤに掛け直してチェーンフィクサーで固定。このあとコネックスリンクで繋ぎます。
取説に記載されている接続イメージ。コネックスリンクのプレートはひょうたんのような形をしていますが「くびれ」のカーブのRが上下で微妙に違っており、Rが緩い方(上図の上側)がギヤの歯に当たる向きにします。
上記の向きにするため、チェーン左端のコマには内側(奥側)から、右端のコマには外側(手前側)からコネックスリンクのピンを通し、互い違いになるよう90度曲げます。
お互いのプレートを重ね合わせ、それぞれ相手のピンを自分の中心側の穴にハメ込みます。
左右のチェーンを引っ張りプレートを水平にすると、ピンが中心の穴から外側の穴に移動しロックされます。これで接続完了。
改めてチェーンとディレーラーの間隔を確認すると、先ほどより広がった気がします。
裏側から計測するとMAXの15㎜を超えて16㎜でした。実は、最初は1コマ多い状態でチェーンを接続したところMINIMUMの8㎜に満たなかった(チェーンにテンションがほとんど掛からなかった)ため、1コマ減らしてこの状態になりました。チェーンはコマ⇔プレート⇔コマの順に並んでいるため1コマで長さがかなり変わります。なのでこれでよしとします。
クランクを回してみて異常が無ければチェーンの接続は完了です。
3-2. フロント&リヤシフトケーブルの初期伸び取り&張り直し
次回の変速調整の前に、フロント、リヤのシフトケーブル(ワイヤー)の初期伸び取りをしておきます。
まずリヤ側。ウエスで保護してケーブルをゆっくり下に引っ張ります。ブレーキケーブルの初期伸び取りはブレーキレバーの引きシロが変わるので分かりやすいですが、シフトケーブルは伸びた感じがよく分かりません。数回引っ張って終了。
RDのケーブル固定ボルトを5㎜の6角レンチで緩め、ケーブルを引っ張って張り直します。次回の変速調整でまた外すので仮り留めです。
同様にフロント側のケーブルも引っ張って伸びを取ります。
FDのケーブル固定ボルトを5㎜の6角レンチで緩め、ケーブルを引っ張って張り直します。こちらも次回の変速調整でまた外すため仮り留め。
これで本当に初期伸びが取れたかどうか分かりませんが完了とします。
以上で今回の作業は終了です。RDとFDの構造を理解するのに大分時間を費やしましたが、ずっと整理したいと思っていたので気持ちがすっきりしました。
これで基本パーツ全ての取り付けが完了し、あとは変速調整を残すのみ! 完成までいよいよあと1歩です(^^)