誰かのための読書記録

こんな人が読んだら楽しめる、ためになる、っていう

動物農場 著:ジョージ・オーウェル

人にこき使われている動物さん達がクーデターをおこして、人を追い出し農場を乗っ取るというお話。

知能の高い豚達がみんなをまとめ、最初は1人当たりの食べ物も増え、働き方改革も起こり、皆それに喜んで新しい農場の発展に邁進していく。

しかし段々と権力を持った豚達(3匹)が次第に農場を我が物にしようと、法律を書き換え、動物たちを騙し、権力を奮いはじめる。

人間社会の権力の腐敗を農場に投影する、皮肉がたっぷりと詰まった小説で、読んでいて胸糞悪くなるが大変に面白く、また首筋が冷やりとするそんな小説。

新訳が秀逸なので、ハヤカワepi文庫がオススメである。

反脆弱性 上・下 著:ナシーム・ニコラス・タレブ

脆弱性とは著者の造語であり、脆弱性の対義語にあたるこの言葉があらゆる言語で存在しないことをまず著者は指摘している。

 そもそも脆弱とは、外部からの衝撃によって破壊されてしまう性質のことであり、対して反脆弱とは外部からの衝撃によって(たとえ一度は破壊されたとしても)より良いものへと昇華する性質のことだ。

 反脆弱が単に頑丈であることとは異なるのは、外部刺激によってよりよく改善されるところ、この概念を深く理解できるかが本書のキモである。

 著者は政治、経済、医学、ビジネス、あらゆるものに反脆弱性の概念をあてはめて説明していく。

 例えばリーマンショックのような大きな事象に対して脆弱であったのはどんな分野の職業か、あるいは反脆弱性を持った人はどのように行動したか、などなど、

 その論旨は分かり易く明快なのでさくさく読み進めて行くことで痛快な知的刺激を次々と得られる。

 今後の世界に対する見方に、新たな視座を与えてくれる本であった。

 

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わたしを離さないで 著:カズオ イシグロ

ヘールシャム、という名の世界からある種隔離された施設で育つ子どもたち。

主人公キャシーの視点から書き起こされていくのは、自分の身体の一部を「提供」するためだけに施設で育てられる、彼らの葛藤や人間模様。

設定が異色でありながらも、彼らの抱えるものは人間が抱える普遍的な悩みに通じていて、所々で胸にくるものがある。

特に施設内の友人には、傷つけたり傷つけられたり、そして傷つける自分を許してもらうことを期待したり、そしてそれを後悔したりと、とても人間臭い。

人間同士は深く付き合えば付き合っていくほどに複雑になっていくが、きっとそれは過程として必要なことなのだ。

昔からの友人とたっぷり酒を飲んで語り合った翌日に、1人ベッドの中で色んなことがあったなぁと思いながら読むのがいい。

 

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本が好きな人なんて、そんなに多くは無いけれど


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本が好きだ。
 
作家のイマジネーションと、編集によって洗練されたセンテンス、それを読むだけ、ただそれだけで新たな景色や知識が脳内に染み込んでくる。
 
その瞬間の喜びを、好きなだけ享受出来る時代に生まれた私たちは、きっと幸せだ。
 
そういうことをもっと多くの人が知っていたらいいのにと、思うわけです。