野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

木ノ脇道元さん/芸術運営論/第151回だじゃれ音楽研究会

フルートの木ノ脇道元さんと、ばったりお会いした。少しだけお話をする。また、何かでご一緒できることがあると嬉しい。

 

東京藝術大学にて『芸術運営論』(学部生)と『アートプロデュース概論/特論』(大学院生)の合同の授業にゲスト講師として参加。鍵盤ハーモニカの演奏を導入に、老人ホームでの共同作曲の話、梅田クラブとだじゃれ音楽研究会のコラボレーションの話などをした。熊倉純子先生、足立区の堀崇樹さん、学生の皆さんとのディスカッション。皆さんの発想を広げるための一助になれば嬉しい。

www.shobunsha.co.jp

 

音まち事務局の吉田武司さん、長尾聡子さん、石橋鼓太郎さんとミーティング。今年度と来年度のことを色々話す。

 

夜は第151回『だじゃれ音楽研究会』で、今年度の初回ということもあって、これから始まっていく感じの日だった。Memet Chairul Slametの《Rock Sing》の打ち込みバージョンをカンさんが作ってきてくれたので聞いて後、みんなで貝や楽器で練習/試演などなど。

 

 

油井集落豊年祭

里村さんと国立民族学博物館に出かけ、企画展『日本の仮面 芸能と祭りの世界』と『水俣病を伝える』を見た(もちろん常設展示も)。仮面という観点から紹介されていた奄美大島の油井集落の豊年祭りには、相撲、綱引き、音楽、ダンスも大変重要な役割を担っていて、見れば見るほど面白い。

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こちら、野村の綱引きと相撲とガムランに関する作品《タリック・タンバン》のプログラムノート

www.suntory.co.jp

 

硫黄島メンドンなど、他にも興味深い芸能に数々出会った。

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肥後琵琶6回目

肥後琵琶リサーチ6回目。肥後琵琶乃会の岩下小太郎さんと後藤昭子さんとの濃厚な時間。本日は後藤さんのお宅で。

 

鹿児島の薩摩琵琶の方々は、演奏という言葉を使わず弾奏と言われるそうだ。修練であるので、奉納であれば招聘されて弾奏することもあるが、いわゆる公演としての演奏活動は基本的にはされていないらしい。来週鹿児島に薩摩琵琶の弾奏を聴きに行くのだが、それはかなり貴重な機会らしく、東京で演奏活動をされている薩摩琵琶の人とは違う独特な雑味があるらしい。大変楽しみだ。

 

色々お話を聞いているうちに、国東盲僧琵琶の高木清玄さんのことも聞く。お経を読んでいても明るいのだ、とのこと。確かに決して陰気な感じではない。成仏するためには、これくらい明るく読経してもらうのがいいのかもしれない。

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肥後琵琶の山鹿良之さん、日向琵琶の永田法順さん、国東琵琶の高木清玄さんの3人による公演が、かつて熊本県立劇場でもあったそうだ。薩摩琵琶や筑前琵琶は腹から声を出すようだが、盲僧琵琶はお経なので発声の仕方が違う。肥後琵琶は、両方が交配したようなハイブリッドなものと言えるかもしれない。

 

孫文辛亥革命を支援した宮崎滔天は現在の熊本県荒尾市の出身で、浪曲師としても活動した。肥後琵琶の山鹿さんは、滔天の浪曲にも影響を受けていたとのこと。

 

と延々と3時間以上話を続け、その途中に熊本の県民性を教えていただいたり、琵琶の手も教えていただいたり、毎回新たな発見がある。次回は鹿児島に行く。

 

間宮芳生『現代音楽の冒険』

間宮芳生『現代音楽の冒険』(岩波新書)読了。昨年、国立音大に講義に行った時に、駅の近くの古本屋で見つけて購入したもの。日本のバルトークとも言われる間宮芳生さんの思考には、ずっと興味があったのに、これまで文章を読む機会がなかった。

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ヴァイオリン、ピアノ、打楽器、コントラバスというジャズのような編成のソナタの第2楽章は、ジャズのようで、1989年に京大西部講堂で開催したコンサート『ケージバン』でピアノをジャズピアノの芦津直人さんに弾いてもらったことを思い出す。間宮さんの民謡、ジャズ、現代音楽に対する独自の立ち位置は、とても面白いし、フィンランドのヨーイクに興味を抱いた経緯なども、興味深く読んだ。また改めて間宮作品を聞き返す良い機会になった。

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河合拓始「自然真営楽」/JACSHA/Percussionist 's Art

河合拓始さんのコンサート『自然真営楽』の動画が公開になったので、全編鑑賞。大いに刺激を受ける。シーンごとにテイストも大きく異なり、全編通して安藤昌益(1703-1762)のテキストに基づきシアター的な要素もあり、全体で一つの大きな作品となっている。とても面白い。

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JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)とKIAC(城崎国際アートセンター)のミーティング。今月中旬から下旬にかけてKIACでの滞在制作に向けて。今回はレコーディングをするが、レコーディングは市民に開かれたレコーディングを目指しているので、そのイメージの共有など。

 

Steven Schick著『The Percussionist's Art -Same Bed, Different Dreams』(University of Rochester Press)読了。以前、パーカッショニストのEnrico Bertelliの家に泊めてもらった時に、本棚にあったのでパラパラ斜め読みしたら面白そうだったので、自分でも購入してみた。現代音楽を専門にする打楽器奏者が書いた本で、打楽器奏者ならではの本だった。例えば、複雑な打楽器の曲をどうやって覚えるかについて、筆者の具体的な方法が書いてあったり、ツアー先で楽器をどう調達するかとか、楽器をどうやって並べるかとか、演奏家ならではのプラクティカルな視点での話もいっぱいあって面白い。また、実際に譜例を出しながら、具体的な楽曲について解説してもらえるのも面白い。ヘトヘトになるまで必死に叩くように指示されている曲で、脱力で超絶技巧の著者は本当にヘトヘトになる演技はしたくないので、楽器を自分から遠くにして物理的にヘトヘトになるように配置して本当にヘトヘトになるようにしたなどの話も面白かった。譜面に誠実に取り組む人なのだと思う。きっと良い演奏家であり良い先生だと思う。

books.google.co.jp

 

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門限ズ/竹野相撲甚句ファンファーレゲエ/高松市美術館

門限ズの打ち合わせ。大分県の佐伯でのプロジェクトに関して。演劇、音楽、ダンス、マネジメントとジャンル横断するバンド門限ズは、細々と、しかし活動が継続している。

mongens.wixsite.com

 

ちなみに佐伯では藤井光さんの個展もやっているらしい。

bijutsutecho.com

 

城崎国際アートセンターで昨年度、JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)としてレジデンスした際に、竹野中学校吹奏楽部にJACSHAの《竹野相撲甚句ファンファーレゲエ》を伝授したのだが、昨日、地域のお祭りで再演してくれたそうで動画を見せていただく。こうして展開していくのは嬉しい。中学生が「のむろんは?」と声をかけてくれたとの話を聞き、覚えてもらえててさらに嬉しい。

 

高松市美術館の開館閉館の音楽が、館内で流れているとのこと。YouTubeでも音源が聴けるように公開になった。サヌカイトという地域資源である石の楽器を、ワークショップで集まった地域の人々50人に好き勝手に慣らしてもらったり、少しだけディレクションしたりして作った曲。市民の皆さんの声で「ごゆっくり!」、「まーたーねーーー!」などの声も。滋賀県立美術館の閉館の音楽も、子どもの声が味わい深いことも思い出す。

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カライモブックス/発信の仕方/砂連尾との対話

本日も里村さんが仕事が休みで、お出かけすることに。京都にあったカライモブックスが昨年11月に水俣に移転したので、一度行ってみたかったのだが、ついに念願叶う。

 

karaimobooks.stores.jp

 

奥田順平さん、奥田直美さんのお二人に再会。順平さんから、水俣に移住しての生活のこと、こちらで石牟礼道子さんを知る人々のリアクション、水俣病チッソに対する様々な立ち位置の人のことなど、非常に生々しい体験談を聞かせていただき、2時間くらい長居をしてしまう。里村さんが編集で関わった中野裕介さんの石牟礼道子を参照した展覧会に基づく冊子も、販売していただけることに!本屋さんとは本を売り買いする場所のように思われるが、本を売り買いすることを介して、様々なコミュニケーションが行われる場でもある。

 

里村さんと色々話す。話すとアイディアが膨らみ飛び火する。情報をどう発信するかについて考える時に、次の4つを考える。

 

1 熊本ローカルの人に向けて

2 国内の遠くの人に向けて

3 海外の人に向けて

4 未来の人に向けて

 

(この4つだけ考えていると、「死者に向けて」とか「大地に向けて」とかがないと突っ込まれそうだが、、、、)

 

1つ目の熊本ローカルの人に向けては、人との直接的なコミュニケーションできる場を作りたいと思うし、大太鼓収蔵館、カライモブックスに行ったので、余計にそう思う。2つ目の国内の遠くの人に向けては、このブログを書いていることもあるのだけど、podcastとかやったらどうか、と以前、里村さんに提案いただき、まだ実現できていない。3つ目の海外向けなのだが、今後海外でどういう活動をしたいかを考えて、それに応じてウェブサイトの英語ページのコンテンツ(テキスト/音源など)を充実させてみたいと思う。せっかく九州に住んでいるので、韓国との交流プロジェクトを立ち上げたいと思っている。4つ目の未来の人々に向けては、自分の過去の活動の中から、未来の人が面白く活用/展開できる材料を発掘し公開することがしたい。

 

帰宅後、砂連尾さんに連絡しようと思ってパソコンを開くと、砂連尾さんからも連絡があり、砂連尾さんと話す。砂連尾さんから依頼の要件の話をして後は、里村さんも加わって歓談。近況報告に、琵琶を奏でると画面の向こうで砂連尾さんが踊ったり、砂連尾さんが新たに通い始めた合気道の教室の話を聞かせてもらったり。例によって、砂連尾さんから次々に質問をされるので答えているうちに、こちらが言語化できていないことが言葉になっていくので、さすが「理」という名前の人だなぁ、と思う(里村さんの名前は「真理」だ)。一年前に砂連尾さんが熊本に遊びに来てくれた時と比べて、里村さんもぼくも、熊本への向き合う態度が変わってきた、と砂連尾さんが感じてくれたことに、自分たちとしても手応えを感じる良い対話だった。