チームレジェンド 心閉ざされし者の物語 第十二話 「VSクロノ!」

第十二話

クロノ「行くぞ!!」
クロノは一気に間合いを詰め、剣を振りかざす。
レオ「……!!」
レオは両剣で受け止める。そしてなんとか弾く。
レオ「…やあッ!!」
レオは持ち前の素早さで一撃食らわす。クロノは空中に吹き飛ぶ。
クロノ「くっ!だが、これはどうだ!!」
空中からの初級攻撃魔法、「ダ−クネス」を発動。小さな暗黒球がレオに襲いかかる。
レオ「…あっ!!」
闇属性アップのため、初級魔法でも油断できない。
レオ「…コメットブーメラン!!」
レオは両剣をブーメランの如く投げた。しかし、クロノに避けられた。
クロノ「当たらねえよ!」
丸腰になったレオに急接近。しかし……。
レオ「……ドンピシャだよ」
クロノ「!!」
クロノの背後から両剣が襲った。
クロノ「…なかなかやるな!」
レオは両剣を手元に戻す。するとラウルが
ラウル(面白いじゃねぇか……俺にも戦わせろ!!)
強い反応に思わずよろける。
レオ(わ、分かった……。)
と、目を閉じる。そして呟いた。
レオ「ソウルチェンジ」
するとレオの性格が一変。いや、ラウルの人格に変わったのだ。
ラウル「ちったあ楽しませろよ?」
クロノ「!?」
改めてプレイヤー名を見ると『レオ』ではなく、『ラウル』になっていた。
クロノ「ツインチェンジの1つか…!!それにお前、本当に二重人格だったのか……!!」
ラウル「ごちゃごちゃウルセェ!!」
レオと同じく、常人では有り得ない速さでクロノに襲いかかる。
クロノ「……ッ!!」
必死で受け止めるものの、ラウルの戦闘意欲に押される。
ラウル「こちとら退屈してたんだ……手ぇ抜いたら承知しねぇぞ!!!」
そのまま壁へと弾き飛ばす。
クロノ「ぐっ!!仕方ない。アレを使うか…!!!」
クロノはとっさに腕をラウルに向ける。
ラウル「!?体か動かねぇ!?」
そして、一気にラウルに斬撃を打ち込む。
クロノ「聖なる闇よ、我が剣に宿れ… 汝の枷となる亜空間の中で、全ての力を用いて正義を示さんっ!秘奥義!亜空、翔舞(しょうぶ)、聖闇(せいあん)斬ッ!!!」
ラウル「うぐあッ!!?」
ラウルは思い切り床に叩きつかれた。
ラウル「くそ…あと体力が500しかねぇ……」
レオ(ラウル!)
ラウル「仕方ねぇ。使うぞ。」
そう言うとレオとラウルは精神統一を始めた。
レオ&ラウル「はああああ……っ」
クロノ「もしかして、これが『ソウルレゾナンス』かっ!?」
そして、ゆっくりと目を開ける。
レオ&ラウル『行くぞ』
そう言った瞬間、いきなりクロノの前に瞬間移動した。
クロノ「うわっ!?」
紙一重で受け止めた。さっきより素早さが増している。
クロノ「なっ……素早さ500だとっ!?さっきまで470だったろ!?」
レオ&ラウル『終わりにするぞ』
クロノを蹴り上げ、空中に飛ばす。
レオ「空中戦なら……負けないッ!!!」
そして、一気に切り込む。気のせいだろうか。二人に見える……
クロノ(あまりにも速すぎるから分身して見えるんだ。それに、瞬間移動していた訳じゃない。音速の域で近づいたのか……!!)
レオ&ラウル『空に舞え、二つの心… 音速の域を超え、未来へと続け!秘奥義!ツインバァァァァァドッ!!!』
素早い斬撃からの猛烈な突進攻撃にクロノはものすごい速さで吹き飛ばされる。
クロノ「うぐぅ……HP、尽きた、か……。」
クロノのHPは0になり、バトルはレオ&ラウルの勝利となった。
が、しかし…………
レオ「はぁ……はぁ……」
クロノ「おい、大丈夫か?」
ラウル「……ツイン、バードは……反動が、強いんだ……アイツさえ居れば何とか、なるがな……。」
クロノ「アイツって……?」
ラウル「『リオ・ヴィジター』。レオは双子なんだ……そして俺は、本当の兄弟では、ない」
クロノ「レオは!?アイツは、無事なのか!?」
ラウル「今は休ませてくれ……そして、アイツを…リオを探してくれ。たの…む・・・・・・・・・・・・。」
クロノが名前を叫ぶ中で静かに目を閉じた――――――

チームレジェンド 心閉ざされし者の物語 第十一話 「戦いの予感」

第十一話

クロノ「お、レオ。ちょうどいい所に」
レオ「……?」
レオはクロノに呼び止められた。すると、ラウルが囁いた。
ラウル(コイツ、妙に戦う気満々だぞ)
クロノ「体調が万全なら、特訓に付き合え」
レオ「…特訓?」
クロノ「そうだ。俺、両剣の色んなことが知りたいんだ!」
レオ「……。」
クロノ「ここではあれだからな。ギルド内のVR施設へ行こう」
レオ「VR?」
クロノ「バーチャル・リアリティー。あそこなら体に傷付けなくでも勝負できるんだ。」
レオ(意外と最先端なんだ……。)

VR施設内部

クロノ「ここが施設内さ」
レオ「へえ……。」
何もない黒っぽい広い空間だが、ここがそうなのだろう。
クロノ「そこのコンソールで設定するんだ。」
そう言うと、カタカタとキーボードを操作し始めた。しかし、早い。
レオ「…そういうの、得意?」
クロノ「こういう系は任せてくれ。まあ、独学で学んだんだけどな」
意外な返事が帰ってきた。独学とはまた凄い。
クロノ「あとは、このスキャナーに手をかざすだけさ!」
コンソールの隣にさらに黒っぽい半透明のパネルがあった。レオはそのパネルに手をかざした。
クロノ「今回はRPG方式だ。コンソールを見てくれ」
レオはコンソールに目をやった。

1P クロノ・アークライド (闇)
クラス 魔法剣士(マジックフェンサー)
HP 17000
攻撃 360
防御 277
魔攻 301
魔防 275
素早 221
特殊 闇属性アップ (闇攻撃↑、闇被攻撃↓)、空間移動能力(瞬間移動が可能)、浮翔能力(羽を展開し、浮遊したり飛ぶことが出来る水の民固有能力)

クロノ「な?こういうことさ。HP以外の最高は500だ。んじゃ、レオはっと……」

2P レオ・ヴィジター(天)
クラス 複合武装士(マルチバトラー)
HP 20000
攻撃 347
防御 300
魔攻 323
魔防 311
素早 470
特殊 浮翔能力、ツインチェンジ(戦闘中、人格や武器の変更が可能)、ソウルレゾナンス(???)

クロノ「めっちゃ速っ!!お、お前、速すぎだろ・・・。スピードタイプなのか。能力も安定しているし・・・。ま、いっか。」
すると、周りの景色が一変。遺跡のような景色に変わった。
クロノ「さーて・・・。始めるとするか。レオ!」
レオ「…!」
クロノ「仲間だからって遠慮は要らないぜ。本気でかかってこいっ!!!」
ラウル(…来るぞ!!)

チームレジェンド 心閉ざされし者の物語 第十話「レオとラウル」

第十話

ラウルside

あのギルドに来てアイツは少しずつだが、変わり始めていた。
向こうにいたときより表情がソフトになってきている。皆と接し、少し心を開いてきたのだろう。
本来なら少しでも心を開こうとするとアイツの首元にある『制御石』が働くのだが……

次の朝。

レオ「うん……。」
ラウル「やっと起きたか」
体の制御をレオに戻す。すると、レオがこう言った。
レオ「レジェンドの皆は本当に優しいよね」
ラウル「……!」
レオ「向こうに居るよりもここの方がすごく暖かくて、優しくて……不思議な気持ち。」
ラウル「……そうか。」
ミューナに心を開かせるなと言われているが、やはり……
ラウル「レオ」
レオ「?」
ラウル「ずいぶんと表情がソフトじゃないか」
レオ「そう……かな。」
ラウル「ここに来てお前は変わりつつある、いや、変わってきている。」
レオ「…ラウルにそんな事言われたの、初めてだね」
ラウル「お、俺はよっぽどの事がないとそんなこと言わないぞ」
レオ「…クスクス。」
俺は驚いた。レオが笑っている。
初めて見たアイツの笑い顔。やはり、ミューナは間違っている。アイツの『計画』はなんとでも阻止せねばならない。
レオ「ラウル」
ラウル「……まだ何かあるのか」
レオ「俺……笑っていいんだよね」
ラウル「……ああ」
レオ「まだ、みんなの前では笑えないと思うけど、頑張ろうと思う」
ラウル「そうか。せいぜい……」
レオ「拒否しないの?」
ラウル「ハ。知らんな。」
レオ「…素直じゃないんだね」
困ったような笑みを浮かべていた。俺は決めた。
絶対にミューナの思い通りにはさせまい、と…………。

チームレジェンド 心閉ざされし者の物語 第七話「理由を求めて」

第七話

その日の夜。
レオは気が付き、そっとベッドから出るといつものテラスへ。
今日は空も晴れていて星たちがよく見えていた。
ふと見回すとそこにマスターがいた。
マスター「あ、レオか。」
レオ「……。」
マスター「何か、ごめんな。結構シリアスやったろ?」
レオ「……。」
マスター「……私、星、好きなんだよね。レオも好きだろ?」
レオ「……ああ」
マスター「……あいつと見たかったな。この星空の満天の下、告白されるのが夢なんだぁ」
改めて見ると、どこにでもいるごく普通の少女だ。特別な能力を除いて。
そういえば。あの時どうして助けたのだろうか……?
レオ「マスターは、何故俺を助けてくれたんだ……?」
マスター「信じられない話かもしれんけど、この世界は幻想……つまり、私が今まで考え、見てきた『夢』。存在しない世界なんだよね。私はこの世界で、ある夢を叶えに来たのさ。」
レオ「……?」
マスター「この世界を護ること。私はこの世界を『夢』として誕生させた。私は『神』と言ってもいい存在。けど、現実はごく普通のフォースも持たない人間さ。でも、守りたいんだ……。」
すると、マスターはレオの方を向いた。
マスター「幻想界(ヴィジョン)と現実(リアル)を」
レオ「……?」
マスター「あの大昔の約束が今、果たさなければならない時が近づいてる。お願い。力を貸してよ。」
レオ「……」
と、その時。
?「レオ……ここにいたの。」
2人の前に黒いマントの女が現れた。
レオ「……『ミューナ』。」
マスター「レオ?知ってるんか…?」
ミューナ「面倒な人に会ってしまったことだな。レオ、帰ってこい」
レオ「……。」
マスター「何よ!急に!レオはこのギルドで働いてるんだ!」
ミューナ「……何?アンタ。……ああ、あの暴行事件の被害者、ね」
マスター「なんで知ってるの!?あたしとレオとユウナしか知らないはず!……まさか、目撃者……!?」
ミューナ「ご明答。」
レオ「……それ以上、傷付けるな」
ミューナ「ハァ?何口答えしてんわけ?私に逆らおうなんて……」
レオ「俺はアンタの奴隷じゃないっ!!!」
レオは珍しく声を荒らげた。
ミューナ「……何熱くなってるのよ。」
レオ「俺はもうアンタの言うことなんて聞かない……いや、聞きたくない」
ミューナ「何ですって!?今まで無事に育ってきたのは」
レオ「お前は母親なんかじゃない。俺にはいたんだ。本物の母親が」
ミューナ「まさか……記憶が一部蘇ってきてしまっているんだわ。……まあ、いいわ。そのうちレオは何もかも失う。そして帰ってくるのよ。せいぜい楽しむといいわ。」
そう言うと一瞬で消えてしまった。
マスター「記憶が戻って……って、アンタ……」
レオ「…すまない。俺にも分からないんだ。でも、アイツは母親ではない。」
マスター「母親、か……」


一方、ミューナの方は……
ミューナ「厄介なことになったわね……」
?「なら、あれの封印を解くといいと。」
ミューナ「…そうね。これ以上邪魔されては困るしね」
そうするとポケットから一つの黒い水晶を取り出した。
ミューナ「さて……ここからじっくりと見させてもらおうかしら。目覚めなさい!もう一人のレオ!!」
そういうと水晶は粉ごなに砕け散った……。


7話 完

チームレジェンド 心閉ざされし者の物語 第九話「ユウナとラウル」

第九話

その日の夜。
本来ならいつもテラスへと行くのだが……。
ラウル「あんな女と共にするのは許さんぞ」
ラウルが体の制御をしているため、ベッドで寝ているしかなかった。仕方なくレオは寝ることにした。

そして一時間後。

ラウル「……うん?」
ラウルは体を起こす。すると向かい側に寝ていたユウナが見当たらない。
ふと、外を見た。
ラウル「……。」
まるで引き寄せられるようにテラスへふらっと出た。綺麗な満月が出ていた。
ラウル「……こんなにも、月というのは綺麗なのか」
ユウナ「でしょ?」
ラウル「っ!!お前は…!」
ユウナが後ろから出てきた。
ユウナ「私が居ないから気になったの?」
ラウル「……ハァ?俺がお前の事を心配すると思ったか。言っておくが、お前は俺らにとって邪魔なんだ」
ユウナ「私にとっては初めて好意を抱いてくれた人なのにな」
ラウル「どういう意味だ」
ユウナ「私、女王様だから、恋愛になるとどうしてもそのハードルが…ね。」
ラウル「…身分の違いのことか」
ユウナ「私、身分関係無しに恋人になってくれる人探してるのよ。姿形ではなく、心を好きになってくれる人。」
ラウル「夢がでかすぎるな。だから彼氏とか出来ないんじゃないか」
ユウナ「レオはきっと私を好きになってくれるわ。」
ラウル「…どうだか」
彼はこのとき嫉妬に似た感情を抱いていた。
ラウル「かなわん夢なんか捨てろ。」
ユウナ「もしかして、嫉妬してる?」
ラウル「……!?な、なぜ分かった!?」
ユウナ「ふふっ」
ラウル「……チッ」
ユウナ「貴方って図星だと言っちゃうのね♪」
こうして、ユウナのペースにまんまとはまっていったラウルあった。


第九話  完

チームレジェンド 心閉ざされし者の物語 第八話「光と影」

第八話

レオはいつもと変わらない朝を迎えた……が
レオ「…調子が優れないな…」
体がだるく、重い。昨日の夜に何かと立て続けに起きたせいだろうか。あるいは―――
レオ(きっと昨日、雨に打たれたせいだな)
ゆっくりと体を起こし、部屋を後にした。

ユウナ「あ、レオー」
アリシア「お早うございます」
2人はニコニコしながらレオに駆け寄ってきた。
アリシア「…なんか、体調が良くないですよ?」
レオ「……えっ」
ユウナ「アリシアはね、医者を目指してるんだよ。この子は見ただけで体調を言わなくても分かるんだ」
レオは世の中色んな力を持った人が居るんだなと思った。
アリシア「でも、これといった能力なんてフォースぐらいしか…」
ユウナ「アリシアは『水のフォース』を持っているんだ。そういえばメンバーの持ってる力について言ってなかったよね。」
そう言うと言い始めた。
ユウナ「リーダーのクロノは『闇のフォース』、私は『光のフォース』、バルトは『源のフォース』、レウェンは『影のフォース』、リアは『日のフォース』、ハヤテは『風のフォース』、ギルは『木のフォース』、カイは『雷のフォース』、アルセリーは『地のフォース』、アリシアはさっき言ったとおりね。所で、レオはなんのフォースを持っているの?」
レオ「……水晶」
ユウナ「…いま、何て?」
レオ「『水晶のフォース』」
2人「水晶……ですって!?あの、予言にあったあの!?」
レオは頷いた。
ユウナ「これは早く言わなくちゃ!行こう!」
レオの手を取ろうとした、その時。

パシッ

レオはユウナの手を振り払っていた。
レオ「……。」
ユウナ「レオ……?」
アリシア「レオさん、どうしたんですか……?」
レオ「気安く俺に触れるな」
2人「……!?」
レオは冷たい視線を向けてきた。
ユウナ「レオ…どうしちゃったの…?」
レオ(?)「コイツに触れるなと言っている!」
アリシア「まさか……二重人格!?」
レオ(裏)「ふん……それに近いかもな。いいか、アイツは俺であって俺じゃない。俺が本物のレオだ!!」
レオ「……うう……やめろ……っ」
レオ(裏)「チ……まだ本調子ではないか……。」
そう言うとレオはその場で倒れてしまった。

レオ「……うん…」
レオは自室のベッドで寝ていることに気がついた。
ユウナ「大丈夫?」
レオ「…また、出たのか……」
ユウナ「出た?」
レオ「アイツは『ラウル』って言う。ミューナに無理矢理植え付けられたもう一つの人格。」
ユウナ「無理矢理って……」
彼女は気味の悪い言葉を聞いてしまったような気持ちになった。
レオ「…だから、俺と仲良くできるなんて考えない方がいい…。このまま一人ぼっちで居させて欲しい……。」
ユウナ「駄目」
意外な返答に喋りかけた口が止まった。
ユウナ「私、決めたんだ。レオに幸せになって欲しいから何でもするって。私たち『水の民』決心は固いのよ?レオだって、ずっと一人で居るってことが決心だと思うけど、そんなの、可笑しいわ。」
レオ「でも、俺は」
ユウナ「じゃあ、女王様の命令でも?」
レオ「……!?」
ユウナ「あら、知らなかったの?私、水の民で一番偉い女王なのよ?」
実は、ユウナは水の民で一番の権利を持つ女王だったのだ。水の民は女王主権なのだ。だからどんなに固い決心でも変えてしまうほどの力を持つのだ。
レオ「…ユウナもミューナと同じく、俺を縛るのか」
ユウナ「ううん。そんな事しないわよ。少しでも変わってくれればなって。だからあんまり一人でいるのは止めて欲しいの。」
レオ「どうして」
ユウナ「…悲しいから。」
レオ「……。」
彼はこの時から初めて思った。
「一人では生きていけないのだ」と……。


第八話 完

チームレジェンド 心閉ざされし者の物語 第六話「レオ、回想にて」

第六話  レオside

そうか。思い出した。

俺は7才の誕生日、不治の病に冒された。

ひどく嘆き、悲しんだ母親は俺を抱えてあの『紫クリスタル』がある湖の祭壇にやって来た。

「どうか、この子から病からお救いください」

すると、どこからともなく1人の女の子が現れた。

条件と引換えに俺から病を消し去ってくれるという。

「その子に世界の守り手の証である『水晶の力』を宿らせること」

それが、条件だった。

『水晶の力』。

あの伝説に記された世界を救いへと導く存在。

俺はその力をさずけられ、命を救われた。

その、命を救ってくれた女の子は

『マスター・インフィア』

そう、言っていた。

何年も何年もずっと忘れないでいたあの、名前。

その女の子が今、ここに居る。

「やっと会えた」

マスターの言葉を返すように俺は微笑みながらこう言っていた。

「…俺も……俺も会いたかった」

そして急に視界が暗くなり、しだいに意識が薄れていった――――――


六話終了。 次回もお楽しみに