GWも終わり、日常生活が再び始まった。
毎朝、仕事に行く前に父にLINEでメッセージを送る。
ほぼ、返信は来ないけれど、既読になればそれで安心。
母とは週に1度くらいの割合で電話をする。
声はいつも元気そうで、気が乗ると30分以上、乗らないと5分もしないうちに電話を切られる。
それでも、電話に出てくれるだけで、安心。
先週、名古屋に3泊4日滞在した。
その最中、母は一度もお風呂に入らなかった。
父は、とりあえず1度だけ。
実家のお風呂は、35年ほど前に増築した。
その頃は家族全員若かったし、自分が年を取るなんて思っても見なかったから、足腰の弱い老齢の人が入るのに適さないお風呂。
深いお風呂で、手すりも無い。
だったら、せめてシャワーくらい浴びてもいいのにと思うけれど、今の母にはすべてが億劫で仕方が無いんだと思う。
あんなに温泉が大好きだった母。
週に一度、父に連れて行ってもらえる温泉が楽しみで仕方がない人だったのに、それすらもいかなくなった。
それは、一人でお風呂に入ることへの不安と足のせいだと思う。
この数年、実家に泊まることなく帰ってしまっていたので気が付かなかったけれど、母の左足が象の足のように浮腫んでいた。
歩くのもままならないほど。
それを人に見られるのが嫌で、温泉から文字通り足が遠のいたんだと思う。
その足を見て、どう考えても内科的な病気だと思ったので、病院に行ったのかと尋ねると、塗り薬をもらった。とだけ。
よくよく話を聞いてみると、父に連れられて病院に行ったけれど、ろくに診察も受けずに帰ってきたらしい。
悲しくて、悲しくて。
その浮腫んだ足に病院でもらったという軟膏を塗りながら、マッサージをする。
お母さん、ちゃんとお風呂に入って清潔にしておかないと、いかんよ。
でもさぁ、寒いんだもん。
よーく温まってから、出りゃいいじゃん。
でもさぁ。でもさぁ。
母の中で、いろいろ反論しようとしても、言葉が思い浮かばないようで、でもさぁ、でもさぁと繰り返す。
悲しくて、悲しくて。
素人が見ても、病気のせいでの浮腫みだとわかっているのに、病院に連れて行くように説得できない無力さとか、あんなに好きだった温泉すらも行く気を無くしてしまっている無気力な母とか、お風呂に入ることがこんなにハードルが高くなることを思い至らなかった無知さとか、そのすべてが、悲しくて、切なくて。
もういいよ、ありがとね。
そう言って、母はそっと足をおろした。
たっぷり塗った軟膏は、浮腫んだ母の足に吸い込まれていく。
1日目は、拒否反応があったけれど、2日目は自分から足を出してくれた。
少しは楽になったのかもしれない。
GWが終わり、日常生活が始まった。
父から、田植えが終わったと、珍しくメッセージが来た。
今日は二人ともお風呂に入ったかな。
ケンカしてないかな。
賞味期限の過ぎた食べモノ食べてないかな。
軟膏を、塗ってあげたいな。