大文字山
疎水沿いを気まぐれに散歩していると、天気が良いのでもう少し足を延ばしてみようと思い立つ。
しかし、神社の名前がどうしても思い出せない。
仕方ないのでとりあえず南禅寺へ向かってみた。
そこで、そのご老人が南禅寺から大文字に登れると言っていたのを思い出す。
しかし、どうしても山道が見つからない。
よし、行ってみよう。
銀閣寺の門をくぐらず左へ。突き当たりの神社の鳥居をくぐらず右へ。
ゆるやかな山道をてくてく登っていく。
ちなみに散歩がてらなので、靴は冬用の暖かブーツ。
ダメそうなら引き返そうと、緩めに構えて登って行った。
てくてくてくてく
途中ですれ違った軽快に歩く初老の女性グループに「まだかかりますか?」と尋ねてみた。
「そうね。ここで半分くらいかな。後は惰性で登って行ったら着くわよ」と教えてくれた。
よし、行けそうだ。
惰性…惰性…。
ブラブラと写真を撮りながら登って行く。
千人塚へ到着。後で調べてみると、おびただしい数の人骨が入った壺が発見された場所らしい。
そこからさらに惰性で登って行くと。
大文字山火床に到着。今日は遠足で来た子供たちでいっぱいだった。
昔は大阪城まで見えていたが今は空気が汚れていて見えなくなった。と、お弁当を食べていたお婆様は言う。
お婆様とひとしきりお話しして、お別れした後もぼんやりと景色を眺めていた。
すると、初老の男性に声をかけられた。
山頂まで登って、南禅寺や山科や蹴上…コースがたくさん選べると教えてくれた。
以前、伊勢神宮に参ったと同じくらいの御利益があるとされる神社があると聞いたと話すと、「ああ、それは日向大神宮やな」
そちら側にも抜けられるコースがあり、案内してくださると言うので、お言葉に甘える事にした。
火床の横の急な階段を登っていく。
「しんどい時は5秒間だけ深呼吸したらええ。休み過ぎたらあかん。また歩き出すのがしんどなる」
言われた通りに休む。確かに意外といける。
山登りは人生に例えられたものだとしみじみ思う。
そうこうしている間に山頂へ。アベノハルカスまでみえる。気軽に登れて絶景。私のためにあるような登山道だ。
さすがにこの靴で下りは厳しそうやなと思っていたら
「滑らないように気をつけたらええだけや。動く石と動かない石さえ見分ければ、後は練習するのみ。今は恐々降りてはるけど、そのうち走って降りれるようになるわ」
やる気の出る言葉の数々。有難い。
たくさんのアドバイスを受けながら下っていくと、七福思案処まで到着。
ここからいろんな降り口が選べる。
私達は天岩戸方向へ。
そして天岩戸。ここをくぐると何か良い事があるらしい。
日向大神宮に到着。また疎水沿いを通って南禅寺でお別れした。
「人生は誰のためでもない。誰がなんと言おうと自分が楽しめる道を行きなさい」
有難いお言葉をたくさん頂いた気がする。もしかしたら大文字山の仙人だったのかも。
出会いが出会いを呼んで、思わぬ1日になる。Life is like a chocolate box.
開けてみないと分からないものだ。