春にローマに滞在した。目的は、日帰りでナポリとオルヴィエートを見て回ることである。夜20時半にローマのフィウミチーノ空港に到着し、レオナルドエクスプレスでローマ市内に向かった。ホテルはテルミニ駅から歩いて10分の所にある。安ホテルだったせいか、冷蔵庫や貴重品入れなどの備品もなく、朝食も甘いパンだけだった。(*後で判明したことだが、イタリアでは朝食に甘いものを食べるのだそうだ。イタリアでも少しお金を出すと朝食はホテルのビュッフェであるが、むしろ菓子パンだけの朝食の方が地元の人の食べているものに近い。)翌日朝8時の特急フレッチャロッサに乗って、ナポリへ発つ。この電車はほぼ時刻表通り到着した。これは電車の遅れることが多いイタリアなので、意外であった。しかし、帰りの電車で痛い目を見ることになる。
ナポリに着くと中央駅から地下鉄A線でムニチピオ駅へ行く。駅を出ると、すぐに海岸沿いに出る。駅を出た所にあるムニチピオ広場でネプチューンの噴水を見ました。これは、ローマの有名な彫刻群を作ったジャン・ロレンツォ・ベルニーニの父親である、ピエトロ・ベルニーニほか何人かの共作である。柵があるので、出てくる水を飲むことはできなかった。ヨーロッパだと、公共の広場にある噴水が芸術作品となっていることが多い。それほどガイドブックで取り上げられているわけでもないので、見逃しがちであるが、近くでじっと見てみることをお勧めする。有名な彫刻家が作っている場合も多く、無料で見れる。
それから、ヌオーヴォ城やサンカルロ劇場、ウンベルト1世のガレリアを見て、プレビシート広場へ出た。ミラノのガレリアの方が人がたくさんいて、流行っている店が多そうである。王宮はくまなく見て回ったが、そこまで重要なものは無かった。(ちなみに王宮博物館のチケット売り場の女性は超美人だったが,とてつもなく愛想が悪かった。ナポリの男があまりにも言い寄ってくるので、男性全員に塩対応なのだろうか、と思ってしまった。)プレビシート広場と王宮は、ナポリの中心という雰囲気がある。
そこからサンタルチア地区の海岸沿いの道を歩いた。晴れていて、気持ちがよく、人もたくさんいた。サンタルチアからは、海の向こうにうっすらとヴェスビオ火山が見えた。その日は少し霧がかかったようで、最初はヴェスビオ火山かどうか判別できなかった。湾にはボートが多く係留してあった。卵城の手前に巨人の噴水がある。巨人という名前がついてはいても、巨人像は無い。どうやら、元々はプレビシート広場に設置されていて、そのときには巨人像も隣にあったようです。その後で噴水だけが今の場所に移設されたということらしい。この噴水も、ピエトロ・ベルニーニとミケランジェロ・ナッケリノの共作です。この噴水の彫刻はかなり出来が良いです。先ほどのネプチューンの噴水よりも優れていると感じます。建っている場所も良いです。噴水の周りには人がたくさん集まっていました。ここから見るサンタルチア湾の景色も良いです。パルテノぺ通りは歩行者天国になっていて、人の流れのまま、ヴィットーリア広場のあたりまで行きました。ここに、日本橋にも出店している、Gino Sorbilloというピッツェリアがあるので、そこでピザを食べました。日本のお店で食べるのと、味はそれほど変わりませんでした。ITA Airwaysの飛行機の中で見たperoni社のビールが美味しそうだったので、それも頼んだ。500mlの瓶を頼んでしまい少し多かったかなと後悔したが、勢いで全部飲んだ。
そこから元来た道を戻り、トリエステ・エ・トレント広場のラウンドアバウトまで来ました。この広場は時刻がお昼過ぎになり、人で溢れかえっていました。歩行者で道が埋まり、車が前に進めなくなるほどでした。私の目の前で車とバイクが接触しそうになり、クラクションが鳴りました。そこからトレド通りを北に進みます。この辺りまで人が溢れかえり、カオスの様相を呈していました。途中、ピンタウロというケーキ屋で地元のお菓子である、ババを買って食べました。日本人からしたら油分が多すぎるようです。値段の割には量が多いです。お店にはイートインスペースがないので、道端で立って食べました。そこからトレド通りを北上し、国立考古学博物館に着きました。
国立考古学博物館では、期待していたよりも多くのことが学べました。この博物館のことは、また別のところで書きます。イタリアではトイレがあまりないので、考古学博物館のカフェで水を買って中庭のベンチに座って飲み、博物館のトイレに2回行きました。昔、サッカー選手のクリスティアーノ・ロナウドが、会見の時にコカコーラをどけて、水!と言ったことがありました。イタリアにいると、そんな彼の気持ちが分かります。日本のように当たり前に水が出てきませんし、濃い甘い味のついた飲み物も多いです。身体のことを考えると、水を飲むのがベストです。イタリアにいる間、毎日水ばかり飲んでいました。水があれば十分です。
考古学博物館からさらにトレド通りを北に向かい、カポディモンテ美術館に行きました。カポ(=頂上)ディ=ofモンテ(=山)と言うことで、丘の上にあります。ここにはミケランジェロやラファエロ、ティツィアーノなどの有名な絵もいくつかあるはずなのですが、美術館が改修工事中のため、2階のファルネーゼ・コレクションの部分がまるまる見れませんでした。3階のナポリ絵画の部分のみ見ました。それほど有名な絵はなくて、観客もまばらでした。カポディモンテ美術館は市中心部から遠いので,元々観光客はそんなに来ないのかもしれません。ゲーテのイタリア紀行の中にもカポディモンテ美術館に絵画を見に行った記述があります。観光客も少ないので,時間のある時にじっくりと見にくるところです。カポディモンテの周りには芝生の公園があり、多くの人が居ました。ここからのナポリの景色も素晴らしかったです。
歩いてスパッカナポリまで戻ります。ドゥオモ(街で一番重要な教会)や、それ以外の教会もいくつか見ました。イタリアではどの街もドゥオモを中心にして作られていますが、ナポリはそうではないという印象を受けました。ナポリはやはり王宮が中心です。しかし教会の数では,イタリアの他のどの町よりもナポリが多いです。ダウンタウンにはあちこちに教会があります。これがナポリの一つの特徴と言えるでしょう。イースター期間のため、ドゥオモの周りでは地元の小さなお祭りらしいものをやっていました。
有名なニーロ像は、ナイル川を具神化したものと言われています。ナイルのことをイタリア語でニーロと言います。それがいつの間にかナポリの守護神となったということです。誰がつけたのか,像の上に屋根があり,雨が降ってもニーロ像が濡れないようになっていました。動物の角でワインを飲み,豊穣を祝っている様子だそうです。同じような彫像がローマのカンピドリオ広場にもありますが、個人的には、ローマの方がよくできているように感じました。ニーロ像のあたりは旧市街の中心で,人が多く活気があります。街中にはいまだにマラドーナの写真が貼ってあります。
夜はナポリ中央駅近くのDa Ciroというピッツェリアでピザを食べました。Rick Steve'sのガイドブックに載っていたので訪れました。たまたまなのかもしれませんが,ワインがもう切れていたり、店の前で店員がタバコを吸っていたり、ピザの生地が美味しくなかったです。日本では飲食店の入り口で従業員がタバコを吸っていたら,100%パスするのですが,イタリアだし、ということで入ってしまいました。値段が高くないので今回はこれで良かったですが、次回はもうちょっと違うところに行くと思います。ピザばかりでビタミンが足りないと感じたので,お店を出てすぐのところにある露店でその場で絞ったオレンジジュースを買って飲みました。これは美味かったです。露店なので全然英語が通じませんでしたが、なんとかなりました。
帰りはナポリ中央駅から特急フレッチャロッサでローマに戻るつもりでしたが,駅の電光掲示板を見ると私の乗るはずの20:30発の電車が見つからず、20:31発のローマ行きの電車があるので,それに乗りました。しかし,これは急行列車だったらしく、私が座った席は別のイタリア人が予約していました。周りのイタリア人に助けてもらって,そのままその電車にいてもよいと言われて、誰も座っていない座席に移動しました。最近、「最後にはうまくいくイタリア人」という本が話題になっています。イタリアではトラブルも起こりますが、周りの人が助けてくれて、最後にはなんとかなることが多いようです。
ただ,この電車が遅れに遅れ,22:30頃到着の予定が、ローマに着いたのは日付も変わった1:30頃になっていました。明日の朝も早いので,電車の中ではひたすら寝ていました。電車内にトイレもあったので,一度トイレにも行きました。そうか、乗る時に駅員に聞いた方が良かったな…と思いましたが、後の祭り。これもイタリアの思い出のうちの一つかな…ということで,人生初めてのナポリの一日は終わりました。