渇きを待つ向日葵

消えゆく3月に

 

眠れないまま明けた朝を煙草で誤魔化して、馬鹿だった私は甘い地獄に居続ける方法を必死で探していた。割れたガラスの破片を適当に集めながら、言い訳の代わりに花を飾る人生で、夜明けに射す光を無垢に信じていた。

全部が過去形。それでも、心の皮を一枚づつ剥いでは海に浮かべて、じっと春を待ったあの虚しさのことを、まだ愛してる。

太陽みたいな人のために雨になりたかったただけの長くて短い季節だった。もう、思い出さない。

 

2018年5月6日

 透明な石になりたいとしか思えない日もあるし、帰りに絶対コンビニでスイーツ買おうって足取り軽くなる日もあるよ。死にたいなんて思わなくなったけど手首を切りたい気持ちは消えてない、 春がみんなに暖かくてやさしいこととかが気に入らない、夏のずるさはもっと嫌。君がすきって言ってた歌の無責任な歌詞とかディレイのかかったおしゃれなサウンドが全然気持ち悪いし、むしろそういうのイタいと思っちゃう。愛されるために不透明であるくらいなら内臓見えても正直に生きたいって本気で思うのにきみの笑顔が見たくて平気で嘘ついちゃうんだから人間ってクソつまんなくて、最悪だね

 

生まれ変わりたくない

 

ㅤむかしから家族そろった夕食のときは必ずニュース番組がついていて、普段は厳しくない母もテレビのチャンネルだけは譲らなかったので、私たちはニュースキャスターの無機質な声だけをbgmに食事をすることを余儀なくされていた。それはまったくゆるやかな拷問で、私はどこかの誰かが死んだ話を聞きながらものを食らってすくすくと大人になった、性格の節々が歪んでしまったのも おおかた原因はそこだろうと踏んでいる(諸説あり)。ㅤダイニングルームという監獄では飾った花さえ呼吸を忘れたみたいに静かだった。ㅤそんな心地悪い静寂が私にとっての家族である。


切れることには切れるけれど、傷付けたところから血が溢れてしまう。

 

ㅤ夏は世界の彩度と解像度があがるから嫌い。不運なことに今年もやってくるそれに私はきっとまた負けるだろう。生きることにめちゃくちゃお金かけるのも楽しみのひとつになってしまったけど、何もせずともきらきらしてる子を見ると全部ばからしくなる。いいなあ、もっとメンタル強くなったら大赤字の人生帳簿みて私赤色大好きって笑えるかな?

 

惑星は呼吸を

 

惑星は呼吸をしないということをもう随分前から忘れていた気がする。12月。幾年ぶりかに、星が空を滑るのをみた。 死んだ星が願いを叶えるなんて、つくづく笑える。  

夢の中で愛するひとを殺した。嬉しくもなく、悲しくもなく、想像よりはるかにやわい喉元の感触に、なんだか拍子抜けしたような気分。  夢からさめたあと、人の首を絞めた手でつかんで食べたサンドイッチは、野菜の水分がパンにしみていやに冷たくなっていた。

 

   べつに自分のことそんな理解してないけど、私って好きな色を聞かれたら、#496daaだよ って答えるタイプの人間だし、SNSに誰かを傷つけるようなことを平気でpostするし、ナイフを鏡代わりにして口紅を引くような女になりたいし、魔法になんかなりたくないし、もっともっと強く生きて、好きな人の前では、すこしだけ弱くありたいな

 

 

 

混血カクテル

 

生きるということは、何度も開く傷口をそのたびにやさしくつなぎ合わせることだ。奇跡は時々呪いになる。

 

      呼吸も浅いまま夏と別れ、秋を待たずに冬がきた。色を失くした世界で、君のための歌を、君じゃない誰かのために歌った。冬の空気はやさしいが、寄り添ってはくれない。僕は試されている。壊れた蛍光灯の下でページをめくる。知っているはずなのに知らない言葉。

まだ空気の生ぬるい9月、由比ヶ浜で、知らない人が灯す花火を見ていた。そこは水平線も見えない真っ暗な夜の底で、潮の香りに目眩がした。波の音が轟々と響いて、べたつく髪が頰にまとわりついて、缶チューハイじゃすこしも酔えなくて、たったひとりで小さく呻いた。 結局、「変わったね」という言葉が僕を変えていたのだ。変化は必ずしも進化じゃない。自分の棄てたものさえ忘れてしまう僕だから、君が笑って言った「相変わらずだね」の一言で、相変わらずな自分に戻ってしまう、こんなに簡単に。

知らないふりをすることだけが僕の唯一の特技だった。 浅い思い遣りなんて、猫の餌にもならない。

 

       嘘つきに出会った。彼は星であり、旋風であり、南国のにぎやかな鳥であり、生まれたばかりの子猫であり、はたまた人間であるのだ。  

彼にとって海は見つめるもので、道は佇むもので、明日は待つもので、そんな彼の嘘は僕らにとっての現実だった。それは深夜の駐車場で自販機の灯りを頼りにキーを探すみたいに、不毛で、もどかしくて、やわらかい。あの小さな国では、それを優しさと呼んでいた。

評価や視線が苦手なのは昔のままで、いつだって怯えているし、強くもやさしくも賢くもなれていない。きっと愛し尽くす前に冬は終わるだろう。
    春が嫌いな、根暗で独善者の僕でも、誰かのばらばらになった心の破片を探せるだろうか?