2021年3月静岡旅行記② 沢間の林鉄跡
※これは緊急事態宣言が解除されていた2021年3月における旅行の記録です。
こんにちは、みしぇるです。
今回の記事は前回の記事の続きとなります。
沢間の林鉄跡を歩く
前回は沢間駅に到着したところまで書いたのだった。
奥に見える道こそが、今回の旅の主目的であるところの千頭森林鉄道の軌道跡である。千頭林鉄については「山さ行がねが」の記事を参照されたい。
私は山行に関する知識も技術も持ち合わせていないので、当然「奥地攻略作戦」編のように林鉄跡の深部まで赴いて紹介することはできないわけだが、その入り口だけでも自分の足で体験してみて、林鉄の歴史に思いを馳せてみたいと思い、今回の旅行を企画したのである。沢間駅は、まさに千頭林鉄の始点があった場所であり、探索を始めるにふさわしい場所なのである。
というわけで沢間駅で降りたわけだが、やはりふつう観光客が来るような場所ではないらしく、井川線の乗務員さんにはかなり訝しがられた。井川線では始点・千頭駅の次の駅である川根両国駅を過ぎたあたりで車内改札があり、どこで降りるか聞かれたので沢間までと答えたら、「え?」という感じの厳しい表情をされ「沢間で何をされるんですか」と聞かれてしまった。細かいことを答えても仕方ないと思い「散策でもしようかと」と答えたら、乗務員さんの表情が緩んでそれ以上何も言われなかった。おそらく、明らかに旅行者風なのに「旅行者的」でない目的地(たとえば奥大井湖上駅は「旅行者的」だろう)を伝えたので、私が何か勘違いをしているのかもしれないと思ったのだろう。
さて、千頭林鉄の始点があったと推定される場所を駅のホームから眺めたのが次の写真である。
奥 (線路の向かって右側) にトンネルっぽい感じの構造物が見えるが、これはホッパーらしい。前回の記事には書かなかったが、列車が沢間駅に差し掛かるあたりで車窓からすぐそばに見えるので、「これ見たことあるやつだ!!」と降車前からテンションが爆上がりしていた。
また、前回の記事にも書いたが、図らずも桜の季節真っ只中だったので、沢間駅周辺でも桜を楽しむことができた。上の写真から少し後ろに下がると立派な桜がある。
沢間駅を後にし、いよいよ鉄道跡を辿っていく。
写真では伝わりにくいと思うが、この道はかなり広く立派なものだ。鉄道が走っていたのだから当たり前といえば当たり前だが、逆にその広さが鉄道跡という特別な背景を感じさせた。
歩を進めると、線路跡沿いの大きな桜たちが出迎えてくれた。私には確かめようもないが、林鉄時代からのものなのだろうか。だとしたら、鉄道運転手もこの桜を楽しんだのかな、などと思いを馳せながらしばし立ち止まって鑑賞した。
この記事を書く際に山さ行がねがのレポートを読み返していたところ、この木の11年前の写真があって感動した。
少し進むと同レポートで見た交差点に到着する。ここも桜が綺麗だった。
上の写真にわずかに踏切が写り込んでいるのが見えるだろうか。これは井川線の踏切で、上の写真のガードレール始点右の部分から踏切に降りる道が続いている(林鉄は基本的に緩やかな上り勾配で、この写真の時点で井川線よりもそこそこ高い位置まで来ている)。その地点が次の写真である。
こうして見ると、林鉄が緩やかな上り勾配を持っていることがわかりやすい。
引き続き林鉄跡を進むと、見覚えのある跨道橋に出くわす。
さらに進むと、これまた見覚えのある広場が見えてくる。
林鉄跡は広場沿いの道を直進……ではなく、広場の中を突っ切っているらしい。中に入りたかったが、ブルーシートが見えることからわかるように何かの工事中らしく、関係者以外立ち入り禁止とのことだった。しかし、上の写真にもちらりと写っているが、林鉄の痕跡は見ることができた。
かすかに「一時止まれ」が読み取れる標識と、これまたかすかに「沢間」が読み取れる謎の看板だ。これらは林鉄に関係するものと推定されるらしい。
広場に入れないので「道沿いに迂回」していくと再び軌道跡に合流できる。合流地点にはこんな看板があった。
この道を進んで寸又峡に通り抜けることはできないという。Google map で見ると細い道がつながっているように見えるが、途中に発電所があるし、電力会社が所有している道とかなんだろうか。まあ、そもそも通り抜ける予定は無かったので良いのだが。
むしろ問題は、ここで軌道跡が別の道と合流して、交通量が大幅に増えていたことだった。しかも大型車が多く、基本的に人なんて歩いていないのでみんな飛ばしている。詳細はわからないが、電力会社の関係者だろうか。あるいはキャンプ場があるのでその関係者? ともかく、このまま徒歩で行くのは危険に感じたので、この先には林鉄の痕跡である横澤隧道・ウムシトンネルおよびアカイシトンネルがあるはずだが、沢間駅に引き返した。
列車が来るまでの間は辺りをうろついたりぼーっとしたりして過ごした。
沢間駅から千頭駅には戻らず、下り列車に乗って奥泉(おくいずみ)駅で降りる。路線バス(寸又峡線)に乗るためだ。
バスの中で写真は取らなかったが、この寸又峡線がまた凄い路線だった。そもそもこのバスが通る県道77号川根寸又峡線の奥泉以奥の部分は寸又川に沿って深い山の中に入っていく路線で、基本的に崖みたいなところに辛うじて道が一本通っているという感じだ。具体的には、道幅がどう見ても1車線分しかない。しかし、一方通行というわけでもないのである。じゃあどうやって対向車とすれ違うのかというと、たまに崖が出っ張っているところで退避するとか、たまに道が若干太くなっているところですれ違うなどということになる。自分なら絶対にこんな道運転したくない。
バスの運転手さんへの敬意を胸に抱きつつ寸又峡温泉に到着。
時間はそこまで遅くないのだが、けっこう暗い感じがする。辺りを険しい山に囲まれているので、山が影を落としているのだと思う。
さて、寸又峡温泉をうろついていたらこんな道を見つけました。
次回、寸又峡温泉の林鉄跡を歩く。