みぃねこの備忘録

いろいろなこと、主に趣味の備忘録として活用。アフィリエイトやってません。お気軽にリンクからどうぞ。

Celest Plutus Beast レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格A10000-U20000帯で発売された1BA+1SPD+1BCの3ドライバモデルのCelest Plutus Beastについてレビューをまとめたいと思います。

 

国内amazonのHiFiGoで取扱があります。

 

AliExpressでも取扱があります。

https://ja.aliexpress.com/item/1005006408658667.html?spm=a2g0o.home.0.0.14025c72tVvlCE&mp=1&gatewayAdapt=glo2jpn

 

HiFiGoのサイトはコチラ

Kinera Celest Plutus Beast 1 BC+1 BA+1 SPD™ In-Ear Monitorshifigo.com

 

 

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1. Celest Plutus Beast について 

CelestはKineraのサブブランドですが、中華イヤホン界に新風を吹き込んでいる注目のブランドです。そのCelestからA10K-U20K帯に新生が登場しました。それがPlutus Beastです。Plutus Beastは3つの異なるドライバを搭載したモデルですが、先日レビューした同社Pandamon 2.0同様にSPDを採用し、BAドライバに加え、BC(骨伝導)ドライバを搭載しています。これまでの中華イヤホンではBA(バランスドアーマチュア)とDD(ダイナミックドライバ)のハイブリッドドライバモデルが主流でしたが、近年はDDに代わり、PD(平面磁気ドライバ)との組合せが多く登場しています。今回のPlutus Beastではその組み合わせに加え、BC(骨伝導)ドライバを採用しトリプルハイブリッドドライバモデルとして登場しました。これは否応なしに注目してしまいます。

 

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さて、Celest Plutus Beastのスペックですが先述の通り近年の中華イヤホンのトレンドを取り入れた3種のドライバを搭載する多ドラハイブリッドモデルです。

 

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注目はPandamon 2.0同様に10mm x 10mmの四角形、Square Planar Driver(SPD)第二世代を採用しフルレンジを担っています。

 

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そして最も注目しているのはBone Conduction Driver(BCD)です。10mm径ドライバは低音域を担っています。骨伝導ドライバと云えば通常のイヤホンでは空気振動を利用したものに対し、直に振動を伝える事で音を形成するちょっとにわかには信じられない様な方式です。巷には耳を塞がないイヤホンとしてランニングのお供にという宣伝で有名各メーカーから発売されていますが、個人的には初めて触れるので楽しみです。

高音域はBAドライバが担うことで全域をバランス良く鳴らす事を狙っており、実際に聴いてみた感想もその全ての音域のバランスの良さが光ります。

 

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以前レビュー同様にメーカー発表のf特を引用します。

グラフからは2k過ぎの最大ピークを4kまで維持し、そこからやや下がったのちに8kと9kの間にピークがあり、10k付近からは右下がりになっています。音域全体でみるとf特は凹傾向ではありますが、中音域の凹みの少ない高音域寄りのフラット傾向であることがわかります。

 

※PhoenixCall のf特(メーカーHP抜粋)

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参考に同社PhoenixCallのf特です。PhoenixCallもPlutus Beast同様に3種のドライバを搭載した多ドラハイブリッドドライバモデルです。1DDには7mm径ダイナミックドライバを採用。低音域を担います。2つのBAには中音域を担うカスタマイズBAを1基と中高音域を担うカスタマイズBAを1基採用。高音域は超高音域までの広いレンジをカバーする6mm径FPDを2基搭載。このFPDはマイクロプレーナードライバとなり、このFPDがCelest PhoenixCallの最大の特徴と云えます。

PhoenixCallではやや中音域に凹みがありますが、全域フラットのf特です。特に高音域は1kを過ぎてから40kまでほぼフラット。10kで僅かに落ち込みますが低音域がら高音域まで横一直線となっています。ここまでのf特は珍しいです。

 

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次にPandamon 2.0のグラフです。9k手前のピークと2kと3kの間に最大ピークがあります。10kを超えてからは右下がりになっています。音域全体でみるとf特は凹傾向ではありますが、中音域の凹みの少ない高音域寄りのフラット傾向です。

一般的なf特のPlutus Beastに対し、ちょっと極端な例のPhoenixCallと前回レビューしたPandamon 2.0との比較ではPandamon 2.0の傾向に近いと云えますが、それでもPlutus Beastでは重低音域の落ち込みはなく高音域10k以上の落ち込みも抑えており、よりフラット傾向を窺えます。

 

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イヤホン本体にはステムノズル一体型の樹脂製シェルが採用されています。初代ではその名を冠するキャラクターがSUSフェイスプレートにデザインされていましたが、Pandamon 2.0では落ち着いたデザインとなりました。造形は初代同様に半球体と特徴的ものを踏襲しています。

付属ケーブルは5N銀メッキ銅線を線材に使用しており、高品質ケーブルは音質バランスを整えています。

 

※以前のレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

Celest Plutus Beastの納期として今回HiFiGoでオーダー、1週間強で届きました。現在(2024/4/13)は国内amazonでも取扱があります。昨今、HiFiGoやAliExpressで購入した本国発送の場合でも以前の様な感染症の影響で遅延は少なく回復したと云えます。尤も、万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかるのが、海外通販のリスクです。

そんな訳で一般的に海外通販での購入は国内通販で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが偶に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットがありましたが、最近では円安でその恩恵も受け難く、国内では入手できない商品を早く手に入れる事がメリットと云えます。それらを天秤にかけた場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. Celest Plutus Beast 実機レビュー 

それでは、実機レビューを以下、まとめていきます。


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パッケージングは黒色を基調とし橙色のうねりのある模様が炎をイメージする躍動感のあるもの。箱の表には商品名を印刷したスリーブタイプの化粧箱です。
箱の裏にはイヤホンスペック等が記載されています。

 

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スリーブを外すと黒色の内箱の上蓋に金色の商品名があり、内箱の上蓋を開けると黒地の台座にイヤホンとイヤホンケースが収納されています。

 

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イヤホンケースには付属品が収納されています。

 

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付属品は2種のシリコンイヤーピースS、M、Lが2セット。ケーブル、ケーブルバンド、イヤホンケース、クリーニングブラシ、ブックチャームです。中価格A10000-U20000帯として必要十分な付属品となります。

 

※イヤホンケース
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※クリーニングブラシ

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※ブックチャーム

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次にイヤホン本体を見ていきます。

 

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Plutus Beastのシェルはオール樹脂製です。フェイスプレートはメタリックブルーとゴールドをベースに銀色ラメを配置した綺麗なもの。イヤホンの造形はシンプルですが、厚みがありながらもそれを感じさせないコンパクトなシェルとなっています。オール樹脂製のシェルは軽量なことも相まって装着感は良好です。

ビルドクオリティには問題を感じられず、中華イヤホンで心配されるような雑なところ感じさせません。低価格帯でよくあるシェルの合わせ面等のズレや隙間は無く綺麗に仕上がっています。

また、ステムノズル部には金属フィルタがあります。音質に影響があるタイプではなさそうですが、異物の混入等による故障を防いでくれます。

そして、シェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、装着感はステムノズルの長さや太さに影響がありますので、イヤーピースのフィッティングは重要となります。

カラーバリエーションはフェイスプレートのカラー違いの青と金と青金の3種。今回は青金を選択しています。

 

次にケーブルをみていきます。

 

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付属ケーブルは5N4芯銀メッキ銅線の編込み線のホワイトカラー被覆です。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はフラット2ピン仕様。極性はKZと同じ上側がプラスです。この付属ケーブルは被膜に銀色ラメが含まれており綺麗なケーブルです。タッチノイズは殆ど感じませんし、肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に柔らかくしなやかなものとなり取り回しは悪くありません。購入時に3.5mmステレオミニプラグと4.4mmバランスプラグタイプを選択できます。今回は4.4mmバランスプラグタイプを選択しています。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、私はこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

 

最後に付属イヤーピースです。

 

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付属イヤーピースはCelestでお馴染みの音質の好みで使い分け可能な2種のタイプが付属しています。黒傘赤軸はバランスタイプ。黒傘黒軸は軸短め傘低めの開口部が大きいもの。こちらはボーカル等の中音域をくっきりとさせるタイプです。

音質的には好みにもよると思いますが、赤軸タイプのバランスが個人的にはしっくりきました。この赤軸イヤーピースを私は耳の奥に栓をするように装着しフィットしました。

低価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じます。今回は付属の赤軸イヤピで上手くフィットした為、そのまま使用しました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感はもとより音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えない他社製へ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. Celest Plutus Beast 音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

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今年4月から再生環境を更新しました。スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行うことは変わりませんが、USB-DACにはFiiO KA17を用います。これまではUSB-DACにShanling UP5を組み合わせていましたが、それを刷新します。スマホは変わらずSony Xperia 5 IIを用います。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。FiiO  KA17は同社のドングルタイプ最新USB-DACです。

KA17の音質傾向ですが、THXアンプを採用し中高音はくっきりはっきりと音像を描く解像感は高く、中低音は暖かみがある。これまでの同社のTHXアンプを搭載した機種とは異なる印象の個人的に好きな鳴り方です。

KiiO KA17のUSB-DACとして使用した音質が気になる方は以前の「FiiO KA17 レビュー」をご覧ください。

 

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以前使用していたUSB-DACとしてShanling UP5もご参考ください。

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属黒傘赤軸 Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「低音はしっかりと感じられ、高音域は華やかで明るく鳴らす。全音域で出音がしっかりとした音」でした。音量はやや取りにくく普段よりもややボリュームを上げる必要があります。

箱だしでは高音域にやや荒さと膨らむ低音は緩さを感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は低音は落ち着き高音域も角の取れた音に落ち着きました。

 

音場

普通からやや広い。前後の奥行と左右の空間に立体感は感じ広さも感じます。

 

高音域

華やかに明るく鳴りますが、煌めきもあり響きが良い鳴り方です。必要以上にシャンシャン、キンキンと鳴ることはありませんが、十分な煌びやかさは響きもあり心地良い。超高音域までの伸びも感じられますが、不快な高音域の刺さりや尖りを感じない整った音は存在感があります。悪く云えばやや誇張した音。音像の描写は僅かに丸めですが解像感は悪くありません。くっきりはっきりエッジの尖った音と云うよりはシャープに綺麗に描く印象。繊細な表現力もあり線はやや細めですが、十分な印象。どちらかと云えば音の消えゆく様をイメージしやすく爽やかな音。

 

中音域

空間は広さを感じられ、立体感のある音場。その空間に高音域同様に華やかにはっきりと鳴る音は多ドラの音数の多い空間を活かしています。そのため複数ドライバでよくある音が重なり中心に集まる団子感や音がゴチャつく印象は少なく、整理された分離の良さがあり整った中音域は好印象です。華やかに鳴りながらも音の大小に加え音像を思い描きやすい繊細な表現をしてくれます。ボーカルはクリアでやや近い位置から聴かせてくれ、ややドライ気味なものの息遣いを感じられます。

 

低音域

量感は十分にあり弾力のある音。余韻を楽しむような広がりは程々ですが、雰囲気良く躍動感のある音は聴いていて心躍ります。適度に強さのある音は中高音をマスクせずに適切な強さで響きます。音の強弱や音階を弾むように描写しながらベースラインは追いやすく、前に出すぎる事はありません。重低音は沈み込みは深さはそこそこ。音の強さはありますので十分な音。

 

出音のバランス

一言で云えば華やかで明るい中高音寄りの弱ドンシャリ。出音は中高音の主張がしっかりとした弾力のある低音は万人受けするバランスです。

 

高音の華やかさはやや誇張された印象を受けますが、弾力のある低音がそれを上手く和らげて心地良さを引き立ててくれます。バランスの良い適度なドンシャリは「こういうので良いんだよ」と頷く音質傾向。誇張された印象のある中高音は不自然さはなく丁度良い出音が音楽を聴いていて楽しい気分にさせてくれます。高音は響きが良く華やかさを感じられますので解像感よりも音楽性の高い印象。

中音は華やかで凹みを感じない。縦横の空間を立体的に感じられます。楽器の音はボーカルの周りやや後ろに離れた位置に感じます。中音域の音は統制されており、空間の見通しも良くクリアです。音の描写力は良好で分離の良い音は多ドラの音数の多さごちゃつかずに楽しめます。

ボーカルはやや近めの位置から聴きやすく、高音や低音の音に埋もれません。中音に重なり、かき消されることはありません。声色はややドライ気味でクリアに聴こえます。ブレスを感じられる息遣いはリアルさもある印象です。

低音は適度な量感ですが弾力のある音は、余韻も楽しめます。響きの良い広がる低音ではありませんが、雰囲気の良さを感じられ躍動感があります。適度に強く弾む音は、芯がある音ではありませんが、音楽を下支えするには丁度良い。全体的に雰囲気重視の音はタイトなキレの良い鳴り方ではありません。その分アップテンポな曲には相性の良さを発揮しますし、バラードでも相性は悪くありません。

重低音は沈み込みの深さはそれほどありませんが、強さがありますので十分な音。明るく華やかに鳴る高音中音域に弾力のある弾む低音は強さがあり音楽を楽しく聴く事ができます。

 

Pandamon 2.0との比較ではPandamon 2.0のもう少し足りなかったところを適切に補ってくれています。Plutus Beatsの方がドンシャリ感が強い印象を持ちますが、中高音の華やかさは嫌な感じではなく寧ろこのくらい欲しいと感じる音。Pandamon 2.0は自然な音ですが、それが大人しいと感じてしまう場合があり、物足りなさを埋めてくれるのはやはりPlutus Beatsの方です。低音もPandamon 2.0の方が締まった音がしますが、悪く云えば地味な印象です。弾力のある低音が苦手な方にはPandamon 2.0の方が好印象だと思いますが、音楽聴く楽しさはPlutus Beatsが一枚上手です。

次にPhoenixCallは多ドラのメリットを活かした広いレンジと各音域の解像感を得ながらそのデメリットであるごちゃつきを抑えた整った音。中高音域寄りの弱ドンシャリは高音域は上までの伸びとあくまでも自然な強さで鳴らし、中低音域を厚めに鳴らす音造りはバランスの良い音です。Plutus Beatsよりも上位モデルであるそれは音質傾向こそ似ていますが、高音域と中高音域の解像感と音楽性を両立した音はPhoenixCallに軍配が挙がります。価格帯が違うので参考までにとしても上位モデルのそれを感じさせるPlutus Beatsのレベルの高さには好印象を持ちます。

 

まとめるとPlutus BeatsはSPDのフルレンジにBCドライバによる低音域が支え、BAドライバにより高音域を補い整えたPandamon 2.0の上位クラスとして音の進化を感じられる高音質モデルと云えます。進化した第二世代SPDの性能の高さもあると思いますが、BCドライバにより躍動感のある低音域と物足りなかった高音域をBAドライバを採用し音質をブラッシュアップしました。その音質傾向は中高音域寄りの弱ドンシャリであり、音楽性を重視した明るく華やかさのある音は弾む低音域が特徴的でバランスが良いレベルの高い音と云えます。

なお、Plutus Beatsはリスニング用途としてのドンシャリの良さであり、解像感重視の音質傾向ではありませので何を重視するかによって評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   PhoenixCall ≧ Plutus Beats ≧ Pandamon 2.0 (質感の順)

中音   PhoenixCall ≧ Plutus Beats ≧ Pandamon 2.0 (質感の順)

低音   PhoenixCall ≧ Plutus Beats ≧ Pandamon 2.0 (質感の順)

ボーカル PhoenixCall ≧ Plutus Beats ≧ Pandamon 2.0 (質感の順)

※それぞれの価格帯が異なりますので参考として

 

 

4. Celest Plutus Beast の総評

Celest Plutus BeatsはBCドライバによる弾力のある低音域が特徴となりますが、音楽性の高いサウンドはバランスの良いドンシャリサウンドであり高音質と云えます。進化した第二世代SPDのフルレンジを高音域をBAドライバに。低音域をBCドライバにより補った高音質サウンドはレベルの高い音を安価な価格で実現しています。中高音域寄りの弱ドンシャリは音楽性の高い音質であり、同価格帯の複数ドライバモデルに遜色の無い高音質を実現しています。手ごろな価格でとにかく音楽性を重視したい方にはお勧めのモデルと云えます。

 

最後に、今回は中価格A10000-U20000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2024年4月13日)はHiFiGoで13,000円台で販売し、国内amazonでも13,000円台となっていますので国内amazonがおススメ。海外通販でもHiFiGoの発送は早く届くのも早い印象があります。これまでの中華イヤホンの中では手頃な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは十分満足できる内容となっておりますので、中価格帯中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでの取り扱いを待って。少しでも早く入手したい、新製品を少しでも早く(安く)手に入れたい方はHiFiGoでの購入も検討してみてくださいね。

 

Plutus Beats

以下、付属ケーブル、付属赤軸イヤピ M使用、DAC KA17
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★☆
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

Pandamon 2.0

以下、付属ケーブル、付属赤軸イヤピ M使用、DAC KA17
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

PhoenixCall

以下、付属ケーブル、付属白傘赤軸イヤピ SDAC KA17※1
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0 

※1 DAC変更して再評価

 

 

あとがき

今回はいつもの中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

Celest Pandamon 2.0 レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格A5000-U10000帯で発売された1PD、平面駆動モデルのCelest Pandamon 2.0についてレビューをまとめたいと思います。

 

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国内amazonのHiFiGoで取扱があります。

https://www.amazon.co.jp/dp/B0CZ91T1P2/celest+pandamon+2.0/?th=1

 

AliExpressでも取扱があります。

https://ja.aliexpress.com/item/1005006811792383.html?gatewayAdapt=glo2jpn

 

HiFiGoのサイトはコチラ

Kinera Celest Pandamon 2.0 10mm Square Planar Driver In-Ear Monitorshifigo.com

 

 

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1. Celest Pandamon 2.0について 

CelestはKineraのサブブランドとして、これまでに1BA+1SPD(Square Planar Driver)ハイブリッドモデルのGumiho(九尾)や1SPDモデルのPandamon等を発売し、U10Kの価格帯に新たな風を吹き込んでいます。そのCelestから今回Pandamon 2.0(Spec II)が登場しました。初代PandamonのSPDから進化した改良型SPDに注目しています。

 

さて、Celest Pandamon 2.0のスペックですが近年の中華イヤホンのトレンドの一つ。平面磁気駆動ドライバを片側一基搭載したシングルドライバ構成のモデルです。

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先述の通り、PandamonのドライバはKZ PR1シリーズ等の平面磁気駆動モデルで採用された直径14mm前後の円形ドライバとは異なり、10mm x 10mmの四角形のドライバを採用しています。PDの円形と四角形の優劣は分りませんが、SPDの方が安価にできるのだろうと推察します。

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以前レビューしたKZ PR1同様にメーカー発表のf特を引用します。グラフからは9k手前のピークと2kと3kの間に最大ピークがあります。10kを超えてからは右下がりになっています。音域全体でみるとf特は凹傾向ではありますが、中音域の凹みの少ない高音域寄りのフラット傾向であることがわかります。

 

※Pandamonのf特(メーカーHP抜粋)

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初代ではやや高音域寄りにピークがあり、2kと3kの間に最大ピークがあります。そこからは高音域に掛けてやや右下がりに振れ幅も大きめに上下しています。音域全体でみるとf特は凹傾向ではありますが、中音域の凹みの少ない高音域寄りのフラット傾向であることがわかります。

初代とPandamon 2.0の違いとしてはPandamon 2.0は9kのピークがあり、初代は10kを超えたところにピークがある違いです。実際に聴いてみるとPandamon 2.0の方が中高音域が綺麗に響いている印象です。初代の方が高音域の力強さを感じる一方で粗さも感じられます。

イヤホン本体にはステムノズル一体型の樹脂製シェルが採用されています。初代ではその名を冠するキャラクターがSUSフェイスプレートにデザインされていましたが、Pandamon 2.0では落ち着いたデザインとなりました。造形は初代同様に半球体と特徴的ものを踏襲しています。

付属ケーブルは初代よりグレードアップし5N銅線の銀メッキ線材を使用しています。

 

※以前のレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

miineco106.hatenadiary.jp

 

Celest Pandamon 2.0の納期として今回HiFiGoでオーダー、1週間強で届きました。現在(2024/4/9)は国内amazonでも取扱が始まりました。昨今、HiFiGoやAliExpressで購入した本国発送の場合でも以前の様な感染症の影響で遅延は少なく回復したと云えます。尤も、万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかるのが、海外通販のリスクです。

そんな訳で一般的に海外通販での購入は国内通販で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かることと、心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが偶に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットがありましたが、最近では円安でその恩恵も受け難く、国内では入手できない商品を早く手に入れる事がメリットと云えます。それらを天秤にかけた場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. Celest Pandamon 2.0実機レビュー 

それでは、実機レビューを以下、まとめていきます。


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パッケージングは紺色を基調としたもの。箱の表には商品名を印刷したスリーブタイプの化粧箱です。
箱の裏にはイヤホンスペック等が記載されています。

 

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スリーブを外すと黒色の内箱の上蓋に金色の商品名があり、内箱の上蓋を開けると黒地の台座にイヤホンとイヤホンケースが収納されています。

 

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イヤホンケースには付属品が収納されています。

 

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付属品は2種のシリコンイヤーピースS、M、Lが2セット。ケーブル、ケーブルバンド、イヤホンケースです。中価格A5000-U10000帯として必要十分な付属品となります。

 

※イヤホンケース
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次にイヤホン本体を見ていきます。

 

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初代Pandamonと同様にシェルは半球体です。初代と異なりフェイスプレートは樹脂にオーラをモチーフデザインとした綺麗なもの。初代のキャラをデザインされたタイプと異なり一般ウケは良いもの。イヤホンの造形は半球体。オール樹脂製で厚みはそれ程ありません。ビルドクオリティには問題を感じられず、中華イヤホンで心配されるような雑なところ感じさせません。低価格帯でよくあるシェルの合わせ面等のズレや隙間は無く綺麗に仕上がっています。

カラーバリエーションは黒色と青色。今回は青色を選択しています。

 

次にケーブルをみていきます。

 

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付属ケーブルは初代よりグレードアップ。一芯に0.06mm線材を49本を束ねた4芯5N銅線に銀メッキ処理を施した線材を編込み線はホワイトカラーの被覆です。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はフラット2ピン仕様。極性はKZと同じ上側がプラスです。この付属ケーブルは被膜に銀色ラメが含まれており綺麗なケーブルです。タッチノイズは殆ど感じませんし、肝心の耳への装着性や使用感は悪くなくシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に柔らかくしなやかなものとなり取り回しは悪くありません。購入時に3.5mmステレオミニプラグと4.4mmバランスプラグタイプを選択できます。今回は4.4mmバランスプラグタイプを選択しています。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、私はこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

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Pandamon 2.0は小ぶりの半球体シェルが特徴的です。以前レビューしたKZ PR1とは趣が異なるシェルの造形です。そのため、一般的なサイズ感のPR1が大きく見えてしまいます。初代同様にPandamon 2.0のシェルは厚みが少なくコンパクト。PR1は一般的なイヤホンと比べるとシェルの厚みがあるため、Pandamon 2.0のコンパクトさが引き立ちます。また、そのコンパクトさからもPandamonは軽量となり、装着感も良いです。

ステムノズルの長さや太さと角度はPandamon 2.0は太くやや短め。角度はやや起きています。

また、ステムノズル部には初代同様に金属フィルタはオレンジの輪切り状というか車のスポークホイールといった感じの特徴的なもの。音質に影響があるタイプではなさそうですが、異物の混入等による故障を防いでくれます。

そして、シェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、装着感はステムノズルの長さや太さに影響がありますので、イヤーピースのフィッティングは重要となります。

 

最後に付属イヤーピースです。

 

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付属イヤーピースは初代同様に音質の好みで使い分け可能な2種のタイプが付属しています。黒傘赤軸はバランスタイプ。黒傘黒軸は軸短め傘低めの開口部が大きいもの。こちらはボーカル等の中音域をしっかりとさせるタイプです。

音質的には好みにもよると思いますが、赤軸タイプのバランスが個人的にはしっくりきました。この赤軸イヤーピースを私は耳の奥に栓をするように装着しフィットしました。

低価格帯ではいつも付属イヤーピースでは装着感と音質的に実力を発揮できないと感じます。今回は付属のイヤピで上手くフィットした為、そのまま使用しました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感はもとより音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えない他社製へ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. Celest Pandamon 2.0音質レビュー

それではいよいよ音質についてまとめていきます。

 

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今回から再生環境を更新しました。スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行うことは変わりませんが、USB-DACにはFiiO KA17を用います。前回まではUSB-DACにShanling UP5を組み合わせていましたが、それを刷新します。スマホは変わらずSony Xperia 5 IIを用います。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。FiiO  KA17は同社のドングルタイプ最新USB-DACです。

KA17の音質傾向ですが、THXアンプを採用し中高音はくっきりはっきりと音像を描く解像感は高く、中低音は暖かみがある。これまでの同社のTHXアンプを搭載した機種とは異なる印象の個人的に好きな鳴り方です。

KiiO KA17のUSB-DACとして使用した音質が気になる方は以前の「FiiO KA17 レビュー」をご覧ください。

 

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以前使用していたUSB-DACとしてShanling UP5もご参考ください。

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属赤軸 Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「低音は適度に鳴り、高音域は華やかで明るく鳴らす。平面駆動らしい高音と中音域に解像感を感じられる音」でした。音量がやや取りにくく普段よりもややボリュームを上げる必要があります。

箱だしでは高音域にやや荒さと膨らむ低音は緩さを感じたので先に鳴らし込み。鳴らし込み後は低音は締まった音になり高音域も荒さが落ち着きました。

 

音場

普通の広さ。前後の奥行と左右の空間に立体感は感じますが広さはそれ程感じません。

 

高音域

華やかに明るく鳴りますが、煌めきはやや抑えた鳴り方です。必要以上にシャンシャン、キンキンと鳴ることはなく、適度な煌びやかさは響きも抑えめ。一方でキレが良い立ち上がりの良い音。超高音域までの伸びはそれ程感じませんが、その分不快な高音域の刺さりや尖りを感じない整った音は十分な存在感があります。悪く云えばやや大人しい音。音像の描写はやや甘めものの解像感は悪くありませんが切れ味の高いエッジの際立つ音と云うよりはシャープという印象。繊細に表現しますが線の細さとの表裏一体。好意的にとらえればドライバ一基のモデルとして十分。しっかりと鳴る高音域は刺さりや尖りはないため、不愉快に感じない上手く整えた高音域です。SPDの繊細で立ち上がりの良い音を活かした音という印象です。

 

中音域

空間はそれ程広さを感じられませんが、狭くはない普通の音場。その空間に高音域の様な線の細さはなく華やかに鳴る音は多ドラの様な音数の多い空間を再現しています。そして複数ドライバでよくある音が重なり中心に集まる団子感や音がゴチャつく印象は少なく、整理された分離の良さがあります。高音よりも線の太さのある音は音の大小に加え音像を思い描きやすく繊細に表現をしてくれます。ボーカルはクリアで近い位置から聴かせてくれ、ややドライ気味なものの息遣いを感じられます。

 

低音域

量感は適度に抑えられ、余韻を楽しむような広がりはありませんが、タイトな面白みのない音ではありません。適度に強さと芯を感じられる締まった音は全体的に中高音をマスクしない適度な低音です。音の強弱や音階を淡々と描写しながらもベースラインは追いやすく、それは前に出すぎる事はありませんので、音を掴みやすい。重低音は沈み込みはそれほど深さを感じませんが、芯の強さを感じる音。

 

出音のバランス

一言で云えば華やかで明るい中高音寄りの弱ドンシャリ。出音はやや中高音の主張があり低音は適度に強さがあるので万人受けするバランスです。

 

高音の華やかさは嫌味がなく、低音もしっかりと鳴るバランスからはバランスの良いドンシャリのお手本の様な音質傾向。中高音はやや誇張された印象を受けますが、それほど不自然ではなく寧ろ丁度良く音を強調しているため音楽を聴いていて楽しい気分にさせてくれます。一方で高音は線の細さが大人しい音に聞こえてしまうかもしれませんが、中高音域を華やかに強調することで解像感よりも音楽性を優先した印象。高音域の小さな音も繊細に描写してくれますが線が細く輪郭はやや甘め。超高音までの伸びももう少しといったところ。強めの音でも尖りはなく、小さな音はかき消されずに耳に届きます。解像感よりも音楽性を重視した音です。

中音は華やかさがあります。凹みを感じ難く縦横の空間を感じられますが、それ程広さを感じません。楽器の音はボーカルの周りやや後ろに離れた位置に感じ立体感はありますが、曲によってやや狭く感じられる事があります。中音域の音は統制されており、空間の見通しも良くクリアです。音の描写力は悪くなく分離の良い音を感じられます。

ボーカルは近めの位置から聴きやすく、高音や低音の音に埋もれません。中音に重なり、かき消されることはありませんが、声色はややドライ気味でクリアに聴こえます。

低音は量感は適度に抑えられ、余韻を楽しむような広がりはあまり感じません。強さのある音は、芯がありダイナミックさもあります。全体的に締りの良い音はキレの良い鳴り方です。万能な低音域はアップテンポな曲にもバラードでも相性は悪くはありませんが、しっとりとした雰囲気は今一つ。

重低音は沈み込みはそれほど深くありませんが、芯のある強さがあります。明るく華やかに鳴る高音中音域に強く芯のある低音は音楽を聴く楽しさを感じられ、中高音寄りの弱ドンシャリの出音は低音が出しゃばることなくバランスの良い鳴り方です。

 

初代Pandamonとの比較では初代の方がドンシャリ感が強い印象。高音はマイルドになりましたがその分中高音には華やかさがあります。低音も初代の方が量感がありPandamon 2.0の方が締まった印象です。低音を強くしたい場合は付属の黒傘赤軸イヤピの方が印象が良いと思います。

次にKZ PR1シリーズとの比較ではHiFi EDITIONの方に寄っている印象。Balanced EDITIONはドンシャリが強く感じられる為、Pandamon 2.0の音はHiFi EDITION寄りと云えます。しかし、HiFi EDITIONは中高音域の解像感を重視した事による逆三角の音質傾向が極端であり、強いて言えばそれに寄っているだけで似てはいません。線が細いのに音数で殴る中高音域は私は苦手でした。Pandamon 2.0はその初代がBalanced EDITIONに近しい音質傾向であったのに対し、高音域の華やかさをやや抑え、低音域も初代よりも抑えた上のクラスでよくあるサウンドはバランスが良いと云えます。

一方、Pandamon 2.0も完ぺきとは云えず、初代と同様にネガティブな面もあります。高音域では繊細な音という特徴に対しやや線が細くなる部分と、上までの伸びはそこまで感じません。それでもSPD第二世代のバージョンアップした音は初代よりも繊細で音楽的なバランスを重視した印象です。

 

まとめるとPandamon 2.0は進化した第二世代SPDを採用し音質をブラッシュアップしました。初代同様に平面磁気駆動モデルのエントリー機として安価に平面磁気駆動ドライバを試してみたい方にお勧めできます。その音質傾向はやや高音域寄りの弱ドンシャリであり、中高音域の華やかさのある音は低音域とバランスが良く、レベルの高い音と云えます。

なお、PR1 Balanced Editionはリスニング用途としてのドンシャリの良さがあり、Pandamon 2.0はそれよりも大人の音質傾向ですので評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   Pandamon 2.0 ≧ Pandamon ≧ PR1 Balanced (質感の順)

中音   Pandamon 2.0 ≧ Pandamon ≧ PR1 Balanced (質感の順)

低音   PR1 Balanced ≧ Pandamon 2.0 ≧ Pandamon (質感の順)

ボーカル Pandamon ≧ Pandamon 2.0 ≧ PR1 Balanced (質感の順)

 

 

4. Celest Pandamon 2.0の総評

Celest Pandamon 2.0は初代の奇抜なデザインから一線を画す落ち着いたデザインは手に取りやすく、進化した第二世代SPDにより高音質を安価な価格で実現しています。中高音域寄りの弱ドンシャリは中高音域の華やかさと低音のバランス良いの音は、レベルの高い音質であり、同価格帯の複数ドライバモデルを凌ぐ高音質を実現しています。初代のデザインで躊躇した方にも進化したSPDの音を試してもらいたいお勧めのモデルと云えます。

 

最後に、今回は今年春に発売した中価格A5000-U10000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2024年4月9日)はHiFiGoで8,000円後半で販売し、国内amazonでは9千円台となっています。海外通販でもHiFiGoの発送は早く届くのも早い印象があります。これまでの中華イヤホンの中では手頃な実売価格でありながら、その音質を含めクオリティは十分満足できる内容となっておりますので、中価格帯中華イヤホンの中で間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実なamazonでの取り扱いを待って。少しでも早く入手したい、新製品を少しでも早く(安く)手に入れたい方はHiFiGoでの購入も検討してみてくださいね。

 

Pandamon 2.0

以下、付属ケーブル、付属赤軸イヤピ M使用、DAC KA17
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

Pandamon

以下、付属ケーブル、付属赤軸イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★☆
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

PR1 Balanced Edition

以下、付属ケーブル、KZ付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回はいつもの中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後も低価格?を中心に、中華据え置き機器や複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンにも挑戦していきたいと考えています。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

FiiO KA17 レビュー

こんにちは。

今回は中華イヤホンレビュー編をお休みし、今年2月に国内で発売されたポータブルUSB-DACアンプのFiiO KA17についてまとめたいと思います。

FiiO KA17は国内amazonにて国内代理店によるマーケットプレイス扱いやイヤホン&ヘッドホン専門店のeイヤホン店頭及び同社WEB本店、有名家電量販店等で発売されています。

 

 

www.e-earphone.jp

 

製品情報詳細はコチラ

 

www.fiio.jp

 

 

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1. FiiO KA17とは 

1.1. FiiOとは

FiiO Electronicsは中国のポータブルオーディオ機器メーカーです。同社は2007年に設立された比較的新しい企業です。設立当初から他社を寄せ付けないコストパフォーマンスの高い製品がポータブルヘッドホンアンプのマーケットを席巻し、昨今有名ブランドとしての地位を確立しています。近年は市場のシェアを拡大し企業としての成長を遂げていくと共に、現在ではガジェット寄りのポータブルオーディオ機器に注力し発売しています。

 

※以前のFiiO BTR7レビューもご参考ください

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1.2. FiiO KA17って何?

FiiO KA17は簡単に説明するとスマホで音楽を聴く際にイヤホンをスマホ直挿しで聴くよりも高音質で聴く事ができるUSB-DACアンプ機器です。

以前レビューした同社BTR7がBluetoothレシーバー機能とUSB-DACアンプ機能を持つ複合機器であったのに対し、KA17ではBluetoothレシーバー機能が無くUSB-DACアンプ機能のみの単能機となります。

具体的にはイヤホンをスマホに有線接続で使う場合を例に説明すると普段スマホApple Music等の音楽を聴く際にスマホに付属している有線イヤホン等を使われていると思います。一般的なスマホと有線イヤホンで音楽を聴く際の接続方法はイヤホンのステレオミニプラグをスマホのイヤフォンジャックに直挿し接続します。これをスマホのUSB C端子にFiiO KA17を付属のUSB C to Cケーブルで接続し、KA17のイヤフォンジャックにイヤホンのステレオミニプラグを接続して音楽を聴くという使い方です。

 

  • 通常の直挿し

  スマホ → イヤホン

から、

  • USB-DAC接続

  スマホ → KA17 → イヤホン

 

と、上記の様にスマホとイヤホンの間にKA17を挟み込み「中継」し外部DACアンプとして使用することで、スマホにイヤホンを直挿しで聴くよりも音楽を高音質に。動画を迫力のあるサウンドで楽しむ事ができるようになります。

そのため、自宅等でゆっくり音楽に浸りたい時にDAPまでは手がだせないけれど、スマホで音楽や動画をもっと良い音で聴きたいというニーズにこのFiiO KA17は応えてくれます。

 

少し話は逸れますが最近のスマホはイヤフォンジャックの無い機種が増えており、Bluetooth接続の左右独立型完全ワイヤレス(TWS)イヤホンが主流になりつつあります。TWSイヤホンも最近は無線接続のコーデックにLDAC等の無線接続の高音質化技術を採用し良い音で音楽を聴く事ができる製品が増えてきました。そして何よりも「ケーブルレス」という身軽さが最大のメリットです。一方でイヤホンケーブルのある有線接続では同価格比でTWSイヤホンよりも高音質で音楽を聴く事ができます。これは「現状では」と前置きしますが、近い将来無線接続の高音質化技術が更に進化する可能性を秘めた市場と云えます。これはこれで楽しみです。

 

さて、最近はスマホで音楽を聴く方の多くが音楽配信サブスクリプションサービスを利用していると思います。私もスマホApple Musicをメインに。PCではamazon musicをメインにスマホでも利用しロスレスハイレゾ音質で楽しんでいます。一方、手持ちのCDをリッピングしたロスレス音楽ファイルやダウンロード購入したハイレゾ音楽ファイルを高音質で聴きたい場合はPCやandroidスマホDAPが使いやすく「使い分け」をしています。

私のスマートフォンiPhoneをメインに使用していますが、先述の手持ちの音楽ファイルを高音質で聴きたい場合には使い勝手がそれらに一歩譲ります。そのためandroidスマホをサブで所有し活用しています。androidスマホはPCやクラウドからファイルを取り込む又は、スマホのブラウザで直接配信サイトから直接ダウンロードする事ができますので、後はハイレゾ再生対応アプリで再生…という便利さがあります。とは云えApple Music等の音楽配信サービスをロスレスハイレゾ音質で利用する場合には実はiPhoneでFiiO KA17等の外部DACアンプを使用する方が有利だったりします。

 

※以前の同カテゴリ商品レビューもご参考ください

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1.3. FiiO KA17の仕様

FiiO KA17の機能詳細は後述するとして、先ずは仕様をチェックしてみます。

主な特徴は以下の通りです(メーカーHP抜粋)。

 

  • 低消費電力ながら高性能なESS製DACチップ「ES9069Q」を2基搭載
  • デスクトップモードを搭載、クラス最高峰650mWの高出力を実現
  • 独立した給電用USB Type-Cを搭載し、安定した高出力を実現
  • 緻密な電源回路設計によりハイパフォーマンス化を実現
  • アナログ、デジタル回路を完全に切り離した基板構成による高音質設計
  • FiiO ControlアプリによるPEQ調整でお好みの音質にチューニング可能
  • 高速処理型USBインターフェースチップ「XU316」により様々な音源に対応
  • マルチプロテクションシステムにより安心のリスニング環境
  • 0.91インチドットマトリックスディスプレイにより、多くのステータスを表示可能
  • 屋外での使用にも適したデザイン性の高い専用レザーケース付属
  • S/PDIFデジタル出力にも対応、DDコンバータとしての使用も可能
  • UAC1.0をサポートし、ゲーミング使用にも対応
  • デザイン性と使い勝手の良さを兼ね備えた筐体設計を採用

 

ドングルDACとして比較的コンパクトな媒体と云えますが、小型ながらも外部DACアンプとして高出力を得ています。

次に、KA17のスペックは以下の通り(メーカーHP抜粋)。

 

基本スペック

  • 電源    USBバスパワー駆動
  • DACチップ    2 x ES9069Q
  • オペアンプ    2 x OPA1662
  • ヘッドホンアンプ    THX AAA 78+
  • USBインターフェース    XMOS XU316
  • デジタル入力端子    USB Type C
  • アナログ出力端子    3.5mmシングルエンドヘッドホン出力(S/PDIFデジタル出力と排他)
  • 4.4mmバランスヘッドホン出力
  • デジタル出力端子    3.5mm4極S/PDIF出力(シングルエンドヘッドホン出力と排他)
  • 最大出力    バランス:650mW(32Ω,THD+N<1%)
  • アンバランス:270mW(32Ω,THD+N<1%)
  • S/N比    バランス:≥126dB(デスクトップモード A-weighted)
  • アンバランス:≥123dB(デスクトップモード A-weighted)
  • ノイズフロア    <2.2uV(バランス出力時、A-weighted)
  • <2uV(アンバランス出力時、A-weighted)
  • THD+N    <0.0004%(1kHz, 32kΩ)
  • 対応フォーマット    PCM768kHz/32bit,DSD512/1bit, MQAフルデコード
  • 本体カラー    ブラック/ブルー
  • 寸法    約64.0mm x 27.7mm x 12.7mm
  • 重量    約33.5g(ケーブルを除く)
  • 付属品    レザーケース/USB Type A to Cアダプター/USB Type C to Cケーブル/USB Type C キャップ ×2/クイックスタートガイド/保証書

 

音質に拘った仕様も目を見張るところですが、特に外部給電によるデスクトップモード機能搭載に注目です。

 

さて、ここからは技術的な話になります。KA17はUSBコントローラーに16コアを搭載する高速処理型USBインターフェースチップ「XU316」を採用。更にデュアルオーディオ水晶発振子を搭載することで、高い演算能力を引き出し、低遅延で安定した伝送を実現しました。XU316は互換性に優れており、さまざまな音源とサンプリングレートをサポートします。

※USB DAC機能はドライバー不要のUSB Audio Class 1.0モードと、フルスペックでの再生が可能な2.0モードの2つのモードに対応しています。後者の場合、FiiOオフィシャルウェブサイトからドライバーのダウンロードとインストールが必要となります。

 

つまり、手持ちのロッシー(圧縮)だけでなく、ロスレスハイレゾ音楽ファイル及び、DSDファイルに加えMQAファイルの再生が可能ですので、一般ユーザーでは困ることはないと思います。また、昨今のサブスクリプション音楽配信サービスのApple Musicやamazon musicハイレゾロスレス)音楽データ(24bit/48kHz以上)の再生にも対応しています。もちろん手持ちのCDから非圧縮でリッピングした場合、16bit/44.1kHzのロスレス音楽ファイルとして再生可能なため、CD音質のまま聴く事ができます。

分かり易く区別すれば殆ど全ての音楽ファイル形式の再生が可能であり、例えばiTunes等で購入したロッシーのAAC-LC(iPhoneで再生可能な圧縮された320kbpsの16bit/44.1kHz)ファイルや、mora等で購入したAAC-LCファイルやFLAC形式ファイル等のロスレス(16bit/44.1kHz)やハイレゾ音楽ファイル(24bit/48kHz以上)に対応していますので、手持ちの音楽ファイル財産をそれらが持つ本来の性能でそのまま再生することが可能となります。

尤も、iPhone等のiOSモバイル機器単体では標準再生アプリApple Musicで手持ちの音楽ファイルを再生できるのは現在(2024/03/23)もAAC-LCファイルの再生までとなっています。もしも手持ちのALAC形式のロスレスハイレゾロスレス)音楽ファイルを24bit/48kHzを超えた本来の性能で再生したい場合にはiPhoneに別途KA17を接続しNePLAYER等のハイレゾ音楽再生対応アプリを使うことで可能になります。

 

上記の意味が良く分からないという方のために、論より証拠。いつも通りiOS端末を使って検証します。iPhoneはSE3を。amazon musicはunlimited(従来のHD会員)有料会員です。

 

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KA17のファームウェアはVer.0.84で検証しています。

※2024/3/23現在は最新Ver.0.99

 

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外部給電のデスクトップモード(D MODE)は「OFF」設定です。

 

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iOSamazon musicアプリはVer.24.4.1で検証しています。

 

iPhone SE3にKA17をUSB-DACとして接続し、amazon musicで24bit/96kHzの曲を再生してみます。

 

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再生中の曲をアプリ上でチェックします。KA17をUSB-DACとして接続している場合の再生中の曲の表示です。

再生している「楽曲の品質」が「Ultra HDの24bit/96kHz」、端末の性能を示す「デバイス」が「24bit/96kHz」、再生している楽曲の「出力」が「24bit/96kHz」と表示されています。

ハイレゾ楽曲24bit/96kHzが端末の性能に制限されず24bit/96kHzで再生されています。これは端末の性能が24bit/96kHzに対応しているので、音源通り24bit/96kHzで再生できています。

しかし、気になるのはKA17のLCDは192kHzと表示しています。

詳しくは後述するとして、端末の性能が楽曲と再生中と同じ又はそれ以上の数値の場合、ロスレス又はハイレゾロスレス)音質で再生できていると云えます。

では、KA17を外してiPhone付属のApple Lightning - 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタに変更してみます。

 

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Apple Lightning - 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタを接続している場合の再生中の曲の表示です。KA17を接続した場合には端末の性能を示す「デバイス」が24bit/96kHzでしたが、Apple純正のApple Lightning - 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタではデバイスだけ24bit/48kHzに下がっています。楽曲の品質と出力が24bit/96kHzと表示されていますが、デバイスが24bit/48kHzに制限されていますので24bit/48kHzの音質に制限され再生されていることになります。

とはいえ厳密には24bit/48kHzでもハイレゾロスレス)と云えますので、ハイレゾロスレス)で聴く事ができていることになります。それでも楽曲の品質と出力の24bit/96kHzからダウンコンバートされて再生されているために、楽曲本来の音を聴く事ができていません。また、Apple純正のApple Lightning - 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタではアンプとしての増幅はありませんし、KA17のアンプを通すことでパワフルでノイズレスの音を楽しむことができません。

ここで注意いただきたいのは楽曲の品質が24bit/96kHzと表示されていますが、amazon musicアプリの仕様上、端末の性能に制限されるという事です。仕様上、iPhone SE3やiPad Air4は端末性能が24bit/48kHzまで対応しています。つまり、iPhoneではApple純正のLightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタを接続することでamazon musicを24bit/48kHzまでのハイレゾ音楽データの再生が可能になります。iPad Air4の場合もApple純正のUSB-C-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタを使用すれば同様に可能になりますが、24bit/48kHzを超える音源は端末の性能に依存していますので、例えば音源が24bit/96kHz以上のハイレゾ音楽データは24bit/48kHzにダウンサンプリングされて再生されてしまいます。折角の24bit/96kHz以上のハイレゾ音楽データは劣化させずに本来の音で聴きたいものです。

まとめると、Apple純正のApple Lightning - 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタでもamazon musicApple Music等の音楽配信サービスにおいて、ハイレゾロスレス)音質を一定の水準の音質で楽しめますが、KA17を使用することで配信されている楽曲本来の音をノイズレスの高音質で楽しめる事ができます。

ここまで読んでみて「言っている意味がよくわからない」、「いや、よくわからんが面倒そう…」という方へ簡単に説明をさせていただくと、「iOS端末に単純にKA17を接続し標準アプリ Apple Musicでロスレス配信サービスを利用すればiPhoneiPadでサブスクの(ハイレゾロスレス配信サービスを良い音で楽しむことができます。」と、なります(「三行でお願い」って凄い)。

 

Apple Musicアプリの設定は以下記事内、2.2.項をご参考ください。

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2. FiiO KA17の実機レビュー

それでは実際に実機をみていきます。

 

2.1. KA17の実機&パッケージ

 

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黒を基調としたパッケージは光の反射で青?緑?の模様が浮かび上がる近未来感のあるスリーブタイプの化粧箱です。

 

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内箱は黒を基調としたパッケージで一転シンプル。

 

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中蓋を開けると黒の内装に本体が収納されています。本体横には専用ケースが収納されています。

 

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内装上段を取り出すと付属品が収納されています。

 

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付属品はKA17本体、USB C to Cケーブル、USB C to A変換、専用ケース、取説類です。取説には中国語、英語、日本語の記載があります。

 

それではKA17本体を見てみます。

 

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※KA17とShanling UP5とのサイズ感

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KA17はUP5同様に入力側端子はUSB Cを採用。ケーブル交換が可能です。

 

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KA17の方がやや縦横短く、厚さも薄くなっています。

※KA17の左から4.4mmバランス、3.5mmフォンアウト

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KA17はShanling UP5に対し、縦横が短く、厚みも薄くコンパクトです。尤もUP5はバッテリー内臓のため致し方が無いサイズです。

KA17本体の質感は同社最新のKAシリーズのデザインが踏襲されています。同シリーズ旗艦モデルとしてディスプレイが搭載されています。また専用ケースが付属するのもポイントが高いです。

サイズ感としてはUSB-DACの各社旗艦モデル製品と比べ同程度。同社BTR7と比較するとかなりコンパクトです。

 

付属のUSB C-USB Cケーブルはコネクタ部含め全長約100mmと丁度良い長さのケーブルです。短すぎず、長すぎず、使い勝手は悪くありません。

 

2.1.1. Lightning-USB Cケーブル

付属品では主にandroid端末やiPad等のUSB C端子との接続を想定してUSB C to Cケーブルのみです。そのためiPhoneでも使えるサードパーティー製ケーブルを紹介します。

 

サードパーティ製のiPhoneとの接続用Lightning-USB Cケーブル

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iPhoneとの接続用Lightning-USB Cケーブルに「ddHiFi MFi06 Lightning to USB Type C データケーブル」が使用できます。型番が二種ありますが、その違いはMFi06Sはストレートコネクタ、MFi06はL字コネクタです。

 

ja.aliexpress.com

 

私はamazonから購入しましたが、残念ながら現在は販売していないようです。AliExpressではまだ販売していますのでどうしてもこれが必要な方はご検討ください。販売価格3,000円程度と少々値が張りますが、コネクタがL字タイプなので使いやすいです。

また、それ以外ではAliExpressでUSB C-USB Cケーブルを購入しドングルDACアンプに使用しています。私が購入したのは8芯銀メッキ銅線の被覆が銀(白?)色タイプ。単品購入では1,000円ですが、Lightning-USB CケーブルとUSB C-USB Aショートケーブルの3本セットで約3,000円で購入できますのでお得です。

 

2.2. KA17とSony Xperia 5 IIの接続

次に、androidスマホXperia 5 IIで試してみます。android 12、SnapDragon 865、メモリ 8GのSonyの三世代前のモデルです(最新は5 V)。

接続手順は以下の通り。

Xperia 5 IIはUSB C端子です。付属のUSB Cケーブルがそのまま使用できます。

始めに付属のUSB C to Cケーブルの一端をKA17本体のUSB C端子に接続し、もう一端をXperia 5 IIのUSB C端子に接続します。

次にイヤホンを接続します。今回はHidizs MP145の4.4mmバランスプラグ仕様を使用します。そのためKA17の4.4mmバランスジャックに接続します。手持ちのイヤホンが3.5mmステレオミニプラグの場合はKA17の3.5mmヘッドフォン(ステレオミニ)ジャックの方に接続します。

最後にXperia 5 IIのApple Musicアプリ (Ver.4.7.0-bata(1356)で検証)を起動します。ちなみにApple Musicの有料会員の場合を想定しております。

アプリの(ハイレゾロスレス設定済みを想定し検証をしていますので、ご容赦ください。※本記事1.3.項最後の過去記事を参照

KA17とXperia 5 IIを接続してApple Musicを聴く注意点としてはアプリの設定で「ドルビーアトモス」はオフにして下さい。ドルビーアトモス対応の楽曲の場合、「ロスレス」が正しく表示されない事があります。

次に、音量はスマホ側を最大値に固定。音量はKA17側で調整することで音質を損なわずに聴く事ができます(2.2.4.項参照)。ただし、必ずこの音量設定はKA17と接続した状態で行ってください。KA17を未接続の状態で設定した場合、スマホ単体で聴いた際に爆音で耳を傷めてしまいます。最大音量の固定は心配になると思いますが、KA17を外すと普段の音量に自動的に戻ります。それでも心配な方は音量は何をするときでも最小値から徐々に上げる事を徹底してください。

Xperia 5 IIとKA17の接続自体は難しいことは無く、順番を守っていれば問題なく認識されます。こういうところでストレスフリーというのは良いことです。amazon等で数多ある同様の商品ではそもそも認識しない。認識するけどコツが有る。そのコツを見つけるのに試行錯誤が必要等があったりします。中華製品では割とよくあることですので、その過程も楽しめる方は自己責任となりますが国内代理店取扱いの正規品に拘る必要はないかもしれません。程度はどうあれ国内代理店のサポートを受けたいのであれば国内代理店扱いの正規品を購入して下さい。

 

2.2.1. Apple Musicアプリで試す

KA17の接続後にandroid用のApple Musicアプリ(Ver.4.7.0-bata(1356))を起動します。

2.2.項の通り接続自体に難しいことはありません。KA17をXperia 5 IIに接続するだけで認識してくれます。

 

※音源は192kHz、KA17のLCDに192kと表示

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※音源は176.4kHz、KA17のLCDに192kと表示

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※音源は96kHz、KA17のLCDに192kと表示

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※音源は48kHz、KA17のLCDに48kと表示

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※音源は44.1kHz、KA17のLCDに48kと表示

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android用のApple Musicアプリの画面、UIはiOS版と大きく変わったところはありません。

そしてiOS版同様に「再生」キーの上の「(ハイレゾロスレス」表示がありますので、そこをタップし音質のチェックをします。

気になるところはアプリでは176.4kHz表示がKA17では192k表示です。また、アプリが44.1kHzなのにKA17では48k表示となっています。音源48kのみ一致していますが、96k以上も192k表示となっています。

これはandroidApple Musicアプリの仕様又はandroidスマホの仕様と考えますが、(ハイレゾロスレスがロッシーにダウンサンプリングされているわけでもなく、ロッシーがロスレスロスレスハイレゾロスレスにアップサンプリングされているわけではありませんので、(ハイレゾロスレス音質で聴く事は出来ていると云えます。

 

2.2.2. amazon musicアプリで試す

次にandroid版、amazon musicアプリ(Ver17.15.6で検証)も試してみます。

私はamazon musicアプリはバージョンアップの度に何かしら不具合が出るので古いバージョンを使っています。iOS版は機種交換時に勝手にアプデされたので最新にしていますが、android版は古いバージョンのまま使っています。

 

※音源は192kHz、KA17のLCDに192kと表示

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※音源は96kHz、KA17のLCDに192kと表示

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※音源は48kHz、KA17のLCDに192kと表示

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※音源は44.1kHz、KA17のLCDに192kと表示

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amazon musicで聴きたい音楽を選択した際に曲名の上に黄色い文字で「ULTRA HD」または「HD」と表示がありますので、そこをタップすると現在の音質が分かります。

 

 音質・・・ここが24bit/48kHz以上であればハイレゾ音質

 端末の性能・・・ここが当該端末の再生可能なファイルの音質の最大値

 現在・・・ここが実際に再生できている音質

 Codec・・・ここが再生中のデータ形式

 ※上記はVer.17の時。最新はiOS版Ver.24と同様に表記等異なります。

 

通常は端末の性能が配信されている音源の音質よりも高くなります(あくまでも端末の性能に依存)。例えば音源(音質の値)がハイレゾ音楽データ24bit/96kHzで端末の性能の値と現在の音質の値が同じであれば、「ちゃんと」ハイレゾ音質で聴くことができています。

また、そもそも先述の「ULTRA HD」表示ではない、「HD」表示される配信楽曲はCD音質(16bit/44.1kHz 1000kbps前後)となります。 

実際にアプリで表示されている(音源の)音質と(再生している)現在(の音質)は一致しており、これはiOSamazon musicアプリとは挙動が異なりandroid用アプリの方が正しい動きをしている様に見えます。しかし、KA17の表示は全ての曲でアプリの端末の性能と一致した値192kを表示となっていますので、実際に再生している値が現在の値の筈なのに、端末の性能に依存する「再生できる最大値」を表示しているようです。

amazon musicアプリのこの仕様だけは本当に理解に苦しみます。そういう意味ではアプリからの出力が正しく機能しているのはiPhone等のiOS端末のApple Musicアプリのみ。androidApple Musicアプリも48kHzを除き、44.1kHzが48kHzや96kHz以上が192kHzと異なりますので、androidスマホはKA17の表示が微妙に異なっていることになります。

 

実際のところ、amazon musicが端末の性能最大値にアップサンプリングして出力しているのかどうか確かめるすべもありません。それでも音源がハイレゾ音質ならばそれはハイレゾで聴く事が出来ています。問題となるのはロッシー配信とCD品質のHD音源が意図せずにハイレゾ相当にアップサンプリングされていなければ良いので、従来の全てロッシーで配信されていたころに比べれば高音質で色々な音楽を定額で楽しめるのは(ハイレゾロスレス音楽配信サービスの良いところです。

 

個人的にはamazon musicはPCオーディオ用として作業中BGMとして活用しています。スマホApple Musicをメインで利用しています。今後WindowsでもApple Musicのロスレス配信に対応する噂もありますので、それまでは併用で我慢です。

 

2.2.3. サードパーティー製の再生アプリで試す

更にandroid用の他の再生アプリとしてUAPP(USB Audio Player PRO)アプリ(Ver.7.0.2.0)で手持ちのハイレゾ音源をSDカードに入れて再生した場合はどうなるのか?を試してみました。

 

※音源はFLAC、44.1kHz、KA17のLCDに44.1kと表示

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※音源はFLAC、48kHz、KA17のLCDに48kと表示

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※音源はFLAC、96kHz、KA17のLCDに96kと表示

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※音源はFLAC、192kHz、KA17のLCDに192kと表示

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結果は音源通りにKA17は表示しました。44.1kは44.1k、48kは48k、96kは96k、192kは192kと期待通りの結果になります。

Xperia 5 IIとKA17ではサンプリングレート表示は問題なく手持ちのハイレゾ音源をそのままの音質で再生できることが分かりました。

なお、ダウンロード購入した音源ファイル形式がAAC-LCの場合、ロッシー音源です。その場合KA17の表示も44.1kHzとなりますので、UAPPの画面で320kbps以下がロッシーです。CD音質は同じ44.1kHzでも1000kbps前後となりますので誤解の無いようにお願いします。 

 

2.2.4. KA17接続時の注意点

最後にandroidスマホXperia 5 IIでKA17をUSB-DACとして使用する場合の注意点を以下記載します。記事は5 IIで検証していますが、android 12のスマホならば独自のandroidカスタムOSを除き同じ考え方です。

 

通常の音量調整とは異なる

5 IIにKA17を接続した場合、5 IIの音量出力「メディアの音量」を最大値に固定してください。

音量調整はその代わり、KA17本体のボリュームで調整できます。

 設定メニュー > 音設定 > メディアの音量

で音量を最大値に固定します。

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実際には最大値でなくても構いませんが、KA17のボリュームを上げる必要がありますので、5 IIの方である程度上げておくと、KA17で微調整しやすいです。

またこの設定は、必ず5 IIとKA17を接続した状態で行ってください。5 IIがKA17を接続した場合の初期値として記憶してくれます。5 II単独で行うと爆音で耳を傷める可能性があります。

 

KA17接続時の挙動

インストールしているアプリによってKA17を5 IIに接続した直後に表示されますが、その時は基本的にキャンセルで構いません。実際にアプリを使うために起動した際、再度確認されますので、その時には許可(OK)を選択します。

 

※KA17を5IIに接続した画面。アプリ選択が出ますがここではキャンセルします

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※UAPPアプリを起動した画面

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例としてKA17を接続した状態でUAPPアプリを起動するとKA17へのアクセス許可をするかどうかを確認するメッセージが表示されます。KA17をUSB-DACとして接続したままUAPPアプリで再生する場合は、基本的に「OK」を選択してください。誤ってキャンセルを選択した場合は一度Xperia 5 IIからKA17を外し、改めてKA17を接続してください。改めて確認メッセージが表示されます。

 

2.3. KA17とiPhone SE3(第三世代)の接続

最後にiPhoneとの接続です。

私のiPhoneはSE3ですのでLightning端子です。USB-DACのレビューで毎度のことですが、そろそろ独自規格のLightning端子を廃止して欲しいと切に願います。

というのもLightning端子が厄介でMFI認証という壁に加え、他にも供給電力制限が存在している為にサードパーティー製品は対応を謳っていても実際に使ってみないと分からないというのが現状です。今回はddHiFiのLightning-USB Cケーブルで問題なく使える事を確認済みですが、今回はAliExpressで購入したLightning-USB Cケーブルで検証していますのでご容赦ください(※本記事2.1.1.項参照)。

 

接続の手順を以下説明します。基本的にiPadも同様となりますが、接続に使うケーブルが付属のC to Cケーブルに変わります。

 

始めにLightning-USB CケーブルのUSB C側をKA17本体のUSB C端子に接続し、Lightning側をiPhoneのLightning端子に接続します。

次にKA17にイヤホンを接続します。

最後にiPhoneApple Musicアプリ(iOS17.2.1 ※OS依存)を起動します。

 

接続に難しいところはありませんし、サードパーティ製Lightning-USB Cケーブルで問題なくKA17を認識しています。

 

※音源は192kHz、KA17のLCDに192kと表示

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※音源は176.4kHz、KA17のLCDに176.4kと表示

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※音源は96kHz、KA17のLCDに96kと表示

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※音源は48kHz、KA17のLCDに48kと表示

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※音源は44.1kHz、KA17のLCDに44.1kと表示

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動作確認の結果はアプリで音源が44.1k表示のものはKA17でも44.1k表示となり、確認した限り音源通りに出力され再生できています。また、iPadも同様に音源のサンプリングレート通り正しくLCDに表示されます。

 

なお、iPhoneiPadiOS端末の注意点があります。

音量が小さすぎる又は大きすぎる等の音量調整がうまくいかない場合、以下の設定をお試しください。

 設定 > ミュージック > オーディオ項【音量を自動調整】

の「オン」「オフ」を試してください。

 

※画像は「音量を自動調整」がオン。「ドルビーアトモス」はオフ。

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私はiPhoneでもiPadでも「オン」の方が音量が調整しやすかったです。「オフ」にすると音量が大きくなります。

個々の設定により変わるかもしれませんが、音量に困ったときにお試しください。

 

2.4. FiiO Controlアプリとの連携

ここではandroidスマホを例に紹介します。FiiO製品の設定を管理できる「FiiO Control」アプリと連携することができます。

先ず、androidスマホとKA17を付属USB C to Cケーブルで接続し、アプリを起動します。このアプリではKA17のイコライザ機能ON/OFFとイコライジングが可能です。というか、それしかできません。イコライザ設定は一度設定してしまえばKA17に記憶されます。

それでは以下、アプリの導入編です。

 

先ず、google play storeから「FiiO Control」アプリ(Ver.3.19で検証)をインストールします。

インストール後、前述の通りKA17とスマホを付属USB C to Cケーブルで接続します。

 

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スマホにKA17が認識されるとアプリへの権限付与が求められますがここでは一旦無視してください。

次にFiiO Controlアプリを起動します。

 

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アプリ起動後、デバイス選択でKA17を選択します。

 

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アプリの権限を求められますので「OK」を選択。


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注意メッセージが表示されますので「OK」を選択。


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アプリ画面が使えるようになりました。

購入初期(本体で設定を変更していない場合)状態でイコライザ設定のデフォルトは「オフ」です。

イコライザ機能を有効にするには画面右上のスライドバーをタップしてください。

アプリを終了する際は画面左上の「<」をタップしてください。


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画面左上の「<」をタップすると、FiiO Controlアプリの接続デバイス選択画面に戻ります。

現在接続されているデバイスが赤文字で「接続」と表示されています。

 

アプリにはこれだけの機能しかありません。

率直にアプリを使わなくてもKA17を使う上で困ることはありません。KA17本体で各種機能の設定が可能ですし、イコライザ機能のON/OFFもできます。アプリは積極的にイコライジングしたい方には有用だと思います。

 

2.5. 本体設定

2.4.項の通りアプリはイコライザ機能を使わない方には無用です。ですが、KA17ではほぼ本体で設定が可能となりますので、困ることはありません。

設定項目は以下の通り

  • LANGU(表示言語)
  • VERSION(本体ファームウェア番号)
  • RECOVER(工場出荷状態へのリセット)
  • GAIN(ゲイン)
  • FLT(デジタルフィルタ)
  • VOL・STEP(音量調整ステップ数)
  • S/PDIF(デジタル出力)
  • ADV・L/R(音量の左右バランス)
  • DIMMER(画面輝度)
  • MQA(MQAファイル再生)
  • EQ(イコライザ機能有効)
  • MAX・VOL(最大音量)
  • ROT・DISP(画面上下回転)
  • OFF・DISP(画面消灯時間)
  • U・AUDIO(出力モード)

本体のファンクションボタン(∞)を長押しすると設定メニューが表示されます。

上記の設定項目の何れか表示されていますので、必要に応じボリュームの「+/-」ボタンを押して変更してください。

別項目を設定したい場合はファンクションボタンを短押しして切り替えます。押す毎に項目が変わっていきます。

再度ファンクションボタンを長押しで確定し再生画面に戻ります(キー操作しないと自動的に戻ります)。

 

ちなみに個人的なお勧めの設定は以下の通りです。

  • GAIN(ゲイン):LOW
  • FLT(デジタルフィルタ):MINI(Minimum Phase fast roll-off)
  • VOL・STEP(音量調整ステップ数):120
  • ROT・DISP(画面上下回転):OFF
  • D MODE(外部給電):OFF(注:本体物理スイッチ)

ノイズの少ないクリアで情熱的な音を楽しめます。

 

それでは次項ではいよいよKA17の音質を確認してみます。

 

 

3. FiiO KA17の音質レビュー

3.1. 試聴機材

前項までにKA17とiPhone及びXperia 5 IIとの接続テストと、アプリを含めたKA17の設定を行いました。

ここからは実際にKA17の音質を試してみたいと思います。

今回はandroidスマホSony Xperia 5 IIで試してみます。

イヤホンは先述の通り、HIDIZS MP145を4.4mmバランス接続、再生アプリはUAPPを用います。

KA17は2.5.項の個人的お勧め設定にしています。

 

※HIDIZS MP145の音質について過去記事もご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

3.2. KA17を使用した音質

それではXperia 5 IIにKA17をUSB-DACとして接続し実際に聴いてみます。

 

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ソースはいつもの宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先ず一聴して驚きから入ります。これまでのFiiOとは異なる印象です。FiiOと云えばTHXアンプを採用してからはクリアで高解像度。だけど無味寒色というクールさの塊は悪く云えばデジタル音。アナログさというか暖かみの無いドライな音という認識でしたが、やられました。これは良い。何が良いって、確かにクリアで高解像度の音は良い音なんですけど、やっぱり長く付き合うには面白くない音。飽きが来てしまうし最新製品の方がもっと良くなっているかもしれないという探求の旅が終わらないこと。電子デバイスは日進月歩なので当たり前ですが、終わりが見えないのです。しかもショートスパンで、です。これって結構重要で、何事も程々って大事なんです。特に趣味の世界では。

話を戻せばKA17はTHX 78+という従来品のアップデート版を採用しています。これが功を奏したのか、それともチューニングを変えてきたのかわかりませんが、兎に角従来のデジタル臭を抑えたウォームさを感じる音。クリアで高解像度を最優先した攻撃的で隙の無い音とは違う、暖かさを感じながら情熱的な音の唸りが音楽は余韻を楽しむものという事を思い出させてくれます。そう。つまりここをゴールとしても良いと思う程に。

華やかさを感じられる中高音と締まった低音は分かり易く高音質という印象。高音は華やかで伸びやか。中音は音場が広く音の分離も良く聴きやすい。くっきりはっきりと音を鳴らしますがエッジが立つ研ぎ澄まされた感覚ではない。音の輪郭を捉えながら、自然な音の響きを感じられる様な鳴り方です。その分、解像感は重視のくっきりはっきりとまでは届きません。音の輪郭十分に感じられますので、この鳴り方が好きな方にはドングルDACの中では欠かせないものになりそうです。

低音は大別すれば締まっている鳴り方ですがタイトというよりは、強調されていない自然な響きを残した適度に締まった印象です。深みや濃厚な音の低音とまではいきませんが中低音の暖かさを感じる響きが心地良さがあります。

KA17は全体を弱ドンシャリとした僅かに中高音域寄りの暖かみのあるリスニングサウンドという印象です。

 

次に同クラスの商品のShanling UP5との比較です。

先ずUP5の音質傾向ですが、音場は広めです。高音もUP5では煌びやかで響きの良さを感じます。低音はUP5でも量感が控えめですが、芯が感じられ締りとキレは良好。ベースラインは追いやすく、重低音は沈み込みも深く、芯の強さもあります。中音はUP5が高音同様に響きが良く華やかさがありますが、団子感やゴチャつきを感じません。ボーカルはクリアで自然な位置からクリアで聴きやすい。UP5は一言で云えば中高音寄りのフラット寄りのリスニングサウンドという印象です。

KA17との比較では一言で云うとUP5の方が大人しく暗い音。KA17の方が中高音がくっきりはっきり煌びやかさがあり伸びも良い。明るく華やかに鳴らします。UP5の中高音は適度な主張と響きはKA17よりも自然な印象。低音は量感はKA17とほぼ同じ。UP5の広がる低音はKA17よりも緩い印象です。KA17の方が締まった鳴り方ですが、UP5よりも適度な締まりと雰囲気のある鳴り方を両立させています。

まとめるとUP5に比べKA17は明るくくっきりと鳴らし情緒を感じられるリスニングサウンド。一方のUP5はそれと比べるとモニター寄りに感じられます。その分、やや暗めに誇張なく音を自然に鳴らす印象です。

どちらも良い音ですが用途に応じて使い分けが可能と云うのが素直な感想です。

 

次に同社BTR7との比較です。

BTR7は華やかさな中高音と締まった低音の一聴して分かり易い高音質という印象です。高音は華やかで伸びやか。中音は音場が広く音の分離も良く聴きやすい。特にくっきりはっきりと音を鳴らす傾向があります。一方でそのくっきりはっきりはやや癖がある印象を受けます。適切な表現はし辛いですが、ナチュラルな感じではなくデジタルっぽい創られた鳴り方です。その分、くっきりはっきりと聴こえますし、音像の輪郭が感じやすく、クリアな音場に高解像度です。低音は締まりのあるタイトな鳴り方。不自然に強調されていない分、あっさりとした印象です。そのため深みというか濃厚な音の低音ではないので注意が必要です。BTR7は全体をフラット寄りの弱ドンシャリ。やや中高音域寄りに鳴らす明るいリスニングサウンドという印象です。

KA17との比較ではBTR7の中高音域がデジタルっぽい音に対し、それを抑えて自然な響きを聴かせてくれます。どちらもくっきりはっきりと音の輪郭を掴みやすいですが、BTR7の方がエッジが立ち輪郭がはっきりしています。一方のKA17は波打ち際のような残像を感じられます。低音では割とあっさりとしたBTR7に対しKA17は情緒を感じられる暖かさや深みを感じられます。音場はどちらも広めで窮屈な印象はありません。

まとめるとBTR7に比べKA17はデジタルっぽさを抑え自然で明るくくっきりと鳴らし情緒を感じられるリスニングサウンド。一方のBTR7はそれと比べるととにかく明るく華やかなリスニングサウンドです。

どちらも音楽を楽しく聴く事ができるリスニングサウンドですが、従来のFiiOサウンドのBTR7に対し、より音楽的なサウンドのKA17という新たな選択肢と云えそうです。

 

最後にデスクトップモードを試してみます。

 

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KA17本体のD MODEスイッチをONにし外部電源を接続します。私はANKERのPD充電器を使用しています。

一聴して全体的に躍動感がでてきます。音が暴れるのではなく音の強弱の波がうねり音が強く欲しいところを強く、弱く繊細に聴かせたいところはより詳細に聴かせてくれます。KA17の音質傾向をそのままに躍動感の音はレベルが高く、高音質と云えます。

そしてKA17のデスクトップモードは外部給電によりミドルクラスのDAPと遜色の無い音を楽しむ事ができます。これはスマホで音楽を楽しんでいるユーザーに手軽に有線イヤホンを楽しむ事ができますので面白い機能と云えます。

 

4. FiiO KA17のまとめ

さて、FiiO KA17はドングルタイプのUSB-DACアンプとして動画や音楽を高音質で楽しむ事ができる商品です。本体サイズも他社の同価格製品と比較してほぼ同じサイズ感はコンパクトな商品と云えます。特にスマホ音楽配信サービスや動画を利用している方に良い音を手軽に楽しめことができるようになります。

KA17は販売価格が2万円半ばとドングルDACアンプ商品群の中では他社よりも手が出しやすい価格帯となります。機能面でもディスプレイ搭載により直感的に操作可能。アプリは役に立ちませんが、本体だけで設定可能なので使い勝手は良く、その音質について満足できる商品と云えます。

現在(2024年3月29日)はamazonECサイト、国内家電量販店店頭等でも発売されており、入手しやすいのも利点の一つです。KA17は機能に対し満足感の高い価格と云えますが、AliExpressでは約2万円とより安価に購入できます。しかし万が一の保証の際のリスクが有ります。勿論保証の面からは安心確実な国内正規代理店取扱品の購入が安心ですが、あまり評判が良くないのが玉に瑕。それならば、自己責任の安い方が良いと個人的には考えています。

 

 

あとがき  

あとがきとして、今回は久しぶりに中華製USB-DACアンプの取り上げてみました。中華F社は純粋なオーディオ製品というよりもガジェットに寄せた機能を取り込んだオーディオ製品という製品を得意としており、何故この仕様?という製品を販売することもありますが、偶に当ててきますので、無視できないですね。とはいえ、売れれば限定商品を追加生産したり、売れなければ即終売と既存ユーザーの意向は無視する企業ファーストは折角良い商品でもちょっと個人的にはお勧めし難いです。加えて本国との価格差が大きい代理店構造も個人的にはお勧めし難いです。とはいえ、この商品を気になっている方に少しでも参考になれば幸いです。

今後も低価格?を中心に、複数BA及び多ドラハイブリッド中価格中華イヤホンや、中華DAC及びヘッドホンアンプにも挑戦していきたいと考えています。気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

※2024/4/5 3.1.項にMP145レビュー記事リンク追加

 

NICEHCK DB2 レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、低価格U5000帯で発売された1BA+1DDハイブリッドドライバモデルのNICEHCK DB2についてレビューをまとめたいと思います。

 

国内amazonで取り扱いがあります。

 

AliExpressでも取扱があります。

https://aliexpress.com/item/1005006486403517.html

 

amazon USはコチラ↓

https://amazon.com/dp/B0CT5F6FHY/nicehck+db2/

HiFiGoはコチラ

http:// https://hifigo.com/products/nicehck-db2

 

 

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1. NICEHCK DB2 について 

NICEHCKはAliExpressやamazonでポータブルオーディオ製品を販売する中華オーディオセラーです。数多の中華ポータブルオーディオ製品を販売するだけでなく、セラーオリジナルの製品を販売しており、中華ポータブルオーディオファンには有名なセラーです。特にイヤホンの自社オリジナルモデルは他社のOEM供給ではなく、開発にも携わることでセラーオリジナルモデルの「音」を確立している希少なセラーはブランド価値を高めていると云え、かくいう私もその音に魅かれている一人です。なので個人的に近年はケーブル開発に注力していると推察される商品展開は少し残念な思いを抱えています。同様の業態として同じ中華セラーのY社が競い合いセラーオリジナルイヤホンを販売していたあの頃が熱くて一番楽しかったという想い出です。

そのNICEHCKが低価格帯王道の1BA+1DDハイブリッドドライバモデルを新発売すると発表があり、早々にオーダーしたのはやはり期待値の高さです。決して先行限定缶バッチが欲しかったわけではありません。勿論無事に入手できましたが(嬉)。

閑話休題

近年の低価格帯のトレンドは1DD、シングルダイナミックドライバモデルと云えました。各社は次々にダイナミックドライバの振動膜(ダイヤフラム)を新たに採用したり、ダイナミックドライバの空間であるキャビティ構造の設計に力を入れ採用した素材のスペックを売りにするのではなくドライバの性能を上げる事に注力し、従来のダイナミックドライバを凌駕する特性を得る事に成功しました。それは、低価格帯の制約条件の壁を打ち破ることに繋がりました。従来定番だった安価なDDの特性を補うためにBAを追加する手法は、二種類のドライバを組合せることのデメリット、クロスオーバー調整が音質評価の肝となっており、初期はそれぞれ無調整で二つのドライバが自己主張する頭の悪い音(当時は誉め言葉)を価格帯で実現し話題を呼び人気が出ましたが、イヤホン本来の「音質の良し悪し」というものによってそれぞれのドライバの出力を調整したり、クロスオーバー調整を念密にしたり。調整しすぎてBAが鳴っていない問題等も騒がれたりもしました。そんな過去を振り返りましたが、実際にはビジネス文化の違いは顕著で、端的に「苦労しても低価格では実入りが少ない」ため複数ドライバモデルは廃れ、代わりにダイナミックドライバが見直されその可能性が追求され性能が向上し、シングルダイナミックモデルで十分という結論になったためと云えます。

 

さて、NICEHCK DB2のスペックですが、先述の通りバランスドアーマチュア(BA)ドライバを一基とダイナミックドライバ(DD)を一基づつ。異なるドライバを二基搭載するハイブリッドドライバモデルです。BAはカスタマイズドライバを。ダイナミックドライバは10mm径チタンメッキグラフェンダイヤフラムのドライバユニットを採用。特に従来のダイナミックドライバと比べ、バランスの取れたサウンドが期待できます。また、BAとDDのクロスオーバーをPCBボードを採用し最適化。音質を妥協しない姿勢が窺えます。

 

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NICEHCK DB2は同社のカスタマイズBAとチタンメッキグラフェンダイヤフラムのDDにより優れたオーディオ性能を得ることに成功しています。メーカー発表のf特からは全体的にフラットに寄せたサウンドを示しており、ハイブリッドモデルの強みを活かした高音域チューニングに期待させられます。実際に聴いてみるとフラットというよりはドンシャリという印象を受けますが、ただ高音と低音が強調されたリスニングサウンドではない音像を感じやすい描写のしっかりとしたサウンドを届けてくれます。

 

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シェル本体はPC製樹脂シェル本体に、アルミニウム合金のフェイスプレートベースにレジン樹脂のフェイスプレートが組み合わされています。 この方法は高級感のある外観を備えるのに最も合理的な方法と云えます。

 

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シェル内には10mm径DDユニットを配置し、BAドライバはステムノズル内に配置することでシェル本体をコンパクトにまとめ快適な着用感を実現。シェル本体に樹脂材を用いる事で軽量化を図っています。軽量なシェルによる快適なフィット感を確保することに成功しています。

 

最後に付属ケーブルです。DB2には取り扱いのし易い0.78径2ピンを採用しリケーブル可能としています。しかし、シェル側コネクタ部にはTFZタイプ(四角の凸タイプ)が採用されており、リケーブルの場合は通常の2ピンタイプでも可能となりますが、二本のピンで固定する形となる為、耐久性の面からはTFZタイプのコネクタを採用したケーブルを選択する方が良いでしょう。

商品購入時に3.5mmステレオミニプラグとマイク付き3.5mmステレオミニプラグが選択できます。この付属ケーブルはどちらも4芯線の高純度OFC導線が採用されています。一芯が太めの1mm線材はしなやかで取り回しの良いケーブルとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしている場合がありますが、DB2では初期セットケーブルとしてTFZコネクタタイプの十分な品質のものが付属しています。そのため、バランス接続を試したい方はTFZコネクタの4.4mmバランスプラグモデルを選択してください。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

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NICEHCK DB2の納期としては現在(2024/2/3)国内amazonでは、本国発送扱いのため、AliExpressでやHiFiGoでオーダーした場合と同様の日数がかかります。それらの配送は現在はかなり安定しており、一週間前後で届くと思います。ほぼ平時に戻った印象です(※現在は中国春節休みとなっておりますので配送遅延の影響が予想されますので、ご注意ください)。尤も従来の平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressや海外サイトでの購入は国内で購入した場合より安いというメリットがありますが、反面届くのに少し日数が掛かること。不具合時の対応に英語は必須となるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. NICEHCK DB2 実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは白を基調としたスリーブタイプの中サイズの箱です。表面にはイメージキャラクターのイラストがほぼ全面にプリントされており、メーカー名とイヤホン名は上の方に小さく記載があります。

一見してイヤホンのパッケージには見えませんが、それがこの商品のキャッチーなポイントと云えます。

 

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スリーブを外すと先ほどのスリーブ表面に有ったメーカー名等の文字が消えたイラストのみの内箱が現れます。

 

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上蓋を外すと白を基調とした内装にイヤホン等が収納されています。

箱の下側にはイメージキャラクターイラストカードとその下に付属品が収納されたイヤホンポーチが収められています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプ2種の2セットと他にはケーブル、ケーブルバンド、イヤホンポーチです。低価格U5000帯としては十分必要なものが揃った付属品となります。

 

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NICEHCKのロゴと文字が入ったイヤホンポーチはコインケースタイプです。鞄に放り込む使い方には不向きですので、持ち運びの際は別途ハードタイプのケースを用意した方が実用的です。

 

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イメージキャラクター、Tian Huiのイラストカードが付属します。イヤホンの商品性を分かり易くしてくれるアイテムです。

 

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こちらはAliExpressのNICEHCK公式STOREにて購入者先着800名に付属した缶バッチです。2024/2/3現在付属終了していますが、これだけでこの商品を買う価値はあったとかなかったとか。

 

次に本体を見ていきます。

 

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シェルの造形は上位モデルのNX7 mk4同様にオーソドックスなIEM風のもの。シェルは厚みが無く平らなデザインです。シェルが厚くないため耳へ収まる部分が薄くなっており耳から出っ張ることも無く収まるので装着感も良好です。フェイスプレート部はゴールドカラーのアルミニウム合金のベースプレートにレジン樹脂のフェイスプレートが組み込まれており綺麗な模様が特徴的です。シェル本体の透明PC樹脂が内部のドライバを視認できるメカニカルなデザインと相反する見た目は刺さる方も多いのではないでしょうか。樹脂と金属によるハイブリッド素材のシェル本体緒は重量感が少なく耳への装着時はその装着感の良さから重さを殆ど感じません。

フェイスプレートはカラーバリエーションがあり、紫の場合は鉱物の結晶を思い浮かべる模様が内部で光を反射して綺麗に輝きます。黒や青の場合はマーブル模様でありそれよりは落ち着いた雰囲気。この辺りは好みが分かれるところかもしれません。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの低価格帯と馬鹿にできないほど綺麗に仕上っており、シェルの合わせ面も上位モデル同様に綺麗です。

カラーバリエーションは紫、青、黒の三色展開。加えて3.5mmステレオミニプラグのマイク有り無しを選択できます。今回は紫のマイク無しを選びました。

続いてケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り高純度の4芯OFC線の編込みタイプです。ケーブルの被覆カラーは薄い茶色と落ち着いた色合いでありながら、被覆の外側がクリアの綺麗な線材が採用されています。プレイヤー側コネクタはL字タイプ。イヤホン側はTFZタイプ2ピン仕様。極性は上側がプラスです。

この付属ケーブルは一芯あたり約1mm径とやや太さがありますが、しなやかで取り回しに苦労することはありません。また、タッチノイズを感じにくく、肝心の耳への装着性や使用感は悪くありません。イヤホン側にはシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に取り回しは良く使い勝手も悪くないため、バランス接続をしたい方以外はそのままでも十分楽しめると思います。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

次に他機種との造形の比較です。

 

※画像左からNICEHCK DB2、KZ ZES

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NICEHCK DB2とKZ ZESの外観の比較として、サイズ感はZESは厚みがある為かなり大きく見えます。DB2のシェルは薄く平らですが、ZESは厚く立体的です。DB2は同社上位モデル同様のシェル造形であり、コンパクトと云えます。

ステムノズルの長さと太さ、角度ですが、長さはDB2は短く、太さはほぼDB2が太いものの一般的な太さです。ZESがかなり細いと云えます。角度は両機共にほぼ同じ。

DB2はZESと比べかなりコンパクトであり、オーソドックスな造形の見た目通り耳への収まりが良く装着感は良好です。

ケーブルを接続するイヤホン側のコネクタ部はDB2がTFZタイプ2ピン。ZESはKZ-Cタイプです。DB2のリケーブルの際は先述の通り通常の2ピンコネクタでも可能ですが、接続強度を考えるとTFZタイプを選択したいところです。

シェルの材質は、どちらも樹脂と金属のハイブリッドタイプですが、DB2の方がやはり軽量。装着時の重量は感じにくくなります。尤も耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくDB2は一般的なやや太めのためイヤピ選びは通常よりもやや小さいサイズ感で良いと思います。

ステムノズル部には全てにフィルターがあります。どちらもステムノズル部に金属製フィルタがあり、異物混入による故障を防ぐ事ができます。

二機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、前述の通りDB2はステムノズルがやや太めですので小さめのイヤーピースを選択し装着することで圧迫感は少なくなります。付属の小さめのイヤーピースで耳の奥に栓をするように耳に密着させ装着するとフィットしました。そのため付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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※NICEHCK07イヤーピースサイズ表

付属のシリコンイヤーピースは黒色のS、M、Lの3サイズセットはやや背が高く口径小さめの弾丸形状と同社オリジナルのNICEHCK 07(以下07)がS、M-、M、M+、Lの5サイズセットです。07は傘がやや背が低い開口部が大きめのもの。某イヤピに似ていますが、それとはMサイズにバリエーションがあるオマージュモデルです。今回記事を書いていて初めて気が付いたのはMが2種有って、従来の白軸MがM+相当のサイズ。軸が青がMサイズ相当ということ。ずっと逆だと思っていて画像もその順番で並べていました。この場で訂正させていただき、今後はそれを元に説明していきます。

イヤホンに装着済みのイヤーピースは黒色タイプ Mサイズです。DB2は他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的なステムノズル形状は選択肢が増えますので安心です。

付属黒タイプは音質的にはダイレクトに音を届けてくれ、やや低音がしっかりとするタイプの印象です。07は中高音をクリアにして僅かに低音を弱めてタイトにさせ全体のバランスをやや腰高にしてくれる印象で、いつも通り07 M-サイズ(黒軸)を耳の奥に栓をする装着でフィットしました。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸いいつもの付属07タイプのイヤーピースで私はフィッティングが上手くいきましたが、音質的にもメーカーの意図するタイプは07の方という印象で、そのまま付属の07 M-サイズを使用しています。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピで上手くフィットできました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. NICEHCK DB2 音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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いつも通り再生環境はスマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

以前はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えています。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属07イヤーピース M-サイズ(白傘黒軸)、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「僅かに中高音寄りだが中低音にも厚みがある音。高音は華やかで低音はしっかりと鳴る僅かに中高音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しでは低音が膨らみボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は低音は落ち着き、高音とのバランスが取れた音という印象です。

 

音場

やや普通からやや広めの印象。前後はそれほど奥行を感じませんが、左右はやや広さを感じられます。奥行きはそれほどありませんのでやや平面的な印象です。空間はそれほど広さを感じませんが窮屈な印象はありません。

 

高音域

華やかさは十分感じられます。華やかに鳴りますが煌びやかさは余韻が少なく上までの伸びやかさはそこそこ感じます。響きや余韻がやや弱く明るい音がしますので存在感はある華やかな音。ただ単に明るく騒がしく感じるような鳴り方ではありませんが繊細よりも割と荒々しさのある鳴り方。一方で線が細い印象もあり刺さりや尖りは感じませんので比較的攻めた高音域という印象です。解像感は悪くありませんが、描写の正確さよりもスパイスの効いたパンチのある味を楽しめます。

 

中音域

ハイブリッドの弱点である中音域の薄く感じられるところを上手く厚みを持たせて華やかさと濃さを持たせた音は、やや真ん中に音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきは感じられますが、このクラスでは出来が良いと云えます。音の分離は悪くなく線の細さも感じさせない鳴り方はDDの性能の高さを感じられます。音の立ち上がりは良好でキレの良い音を楽しめます。ボーカルはクリアでやや近い位置から寒色の声色を聴かせてくれます。

 

低音域

量感は十分で響きや広がりを感じられますが、大きく強く鳴らし音圧で誤魔化すような鳴らし方ではありません。それでも音階や強弱といった低音域の解像感を重視した音を目指していることを窺わてくれます。ベースラインは追いやすく感じられますが、ボーカルよりも前にでて邪魔するような不躾さはありません。重低音は沈み込みはそれほど深くありませんが、力強さがありますので力不足を感じません。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中高音寄りの弱ドンシャリ。中高音域は明るく華やかにクリアで快活に鳴らしますが響きはもう少し。低音は十分な量感で力強さがあり不足は感じません。過度なバランスの音ではなく聴き易い出音のバランスは素直に良い音と云えます。

 

高音は明るく華やかになりますが、騒々しく感じるギリギリを攻めた印象は、解像感の演出を感じられます。とはいえ嫌な感じではなくハイブリッドモデルを良い意味で感じられます。上までの伸びやかさはそれ程感じられず、響きや余韻が感じられないことがその理由の一つと鳴りますが、過度な華やかさではなく聴き手が音楽を楽しく聴くために十分な鳴り方です。一方で高音域の誇張はあるため原音忠実とは違う強調感は嫌味の無い音に上手くまとめられているという印象を持ちます。無駄に強調した誇張の強い音は一聴して「おぉっ!」と好印象となりますが、暫くすると聴き辛い音になってしまうような脆さはありません。

中音は凹みを抑えられていて、ボーカルはやや近い位置にあり楽器の音はその周りにやや近い位置にあるためごちゃつきは否めません。分離悪くありませんが、厚みを持たせた結果のトレードオフという印象です。それでも薄く線の細いハイブリッドモデルの中音域とは異なり、充実感のある中音域に加え中音の域の下の方に厚みもある音は一体感を感じられます。

ボーカルはやや近い位置からクリアに聴く事ができます。演奏の音にも埋もれることはありませんが声色は寒色寄りで息遣いを感じられます。そのため女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声は分が悪いですが、アップテンポな曲では明快に聴かせてくれます。

低音の量感は十分。響きや広がりも感じられますが伸びやかとまではいかず。一発の力強さもありますが、音階や強弱の描写よりも音の濃さを重視した音は低音を疎かにしていません。

重低音は沈み込みはそれほど深くありませんが、力強さを感じられる音。従来の低価格帯でよくあるただ強く大きく鳴らす音ではなく、低音域の質感を重視した広がりを感じられる音です。

 

他機種との比較として同社のDB3では兎に角中低音域が濃厚な音。DB2の高音域を疎かにしない弱ドンシャリバランスとは異なります。DB3の2DDの内、小径1基を取り除いてもDB2の様なバランスの良い音にはならないと想定できますので、DB2のバランスの良いドンシャリが高レベルであることは確かです。

KZ ZESと比較した場合、BAの代わりにESMドライバを採用したモデルのZESはその音質傾向は高音はしっかりと上品に。低音はノリ良く鳴らし、中音は音に厚みがあります。音楽を聴く事を楽しませてくれる従来のKZサウンドは抑えられております。何よりも従来のBAを使った高音とは違いESMドライバは尖りがなく自然に解像感の高い音を聴かせてくれるところが最大の特徴です。そのため、DB2と最も近しい音でありますが、やはり高音域がBAというところに最も違いが出ます。なめらかさはESMには敵わないです。

Trn TA1 Maxと比較した場合、TA1 MaxはZES寄りの傾向。中高音寄りで、それらと比べるとTrnらしさのある音を聴かせてくれます。それでも低音はTA1 Maxの方がしっかりと鳴らします。とはいえ低価格帯で評価の高いKZ ZSN pro Xのドンシャリとも異なります。KZ ZSN pro Xでは中・高音が派手に鳴り、低音は強さがありますので、それとは出音の傾向が違います。やはりあの頃のKZは強ドンシャリなんだと思い返します。

 

一言で云えば同じ中高音寄りで評判の良い音の傾向という印象です。DB2の出音は中高音を重視したキレの良い音を鳴らし低音をやや抑えながら疎かにしない音。比較対象はKZ ZSN pro Xを除き明確なドンシャリ傾向とは一線を引きます。そのため、DB2は一聴すると明るく楽しい音を聴かせてくれますが、高音域の印象次第で評価が変わると云えます。尤も、Trn TA1 Maxは少し価格帯が上。KZ ZESはそもそも入手が難しい(色々あったので売ってない)ので、一択ですね。

 

※過去レビューも参考ください

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まとめるとNICEHCK DB2はセラーオリジナルモデルとしてレベルの高い音を聴かせてくれます。中高音域寄りの弱ドンシャリは低音もしっかりと鳴らし高音域はハイブリッドらしい明るい音を鳴らす。またハイブリッドモデルの中音域を仕上げるときの泣き所となる線の細さを改善した厚く鳴らす音造りは音楽的であり聴いていて楽しい音です。それは同価格帯で新しい形を魅せてくれた高音質モデルと云えます。

一方で従来のような中華イヤホンの強ドンシャリの音が好きな方や中高音重視、低音は邪魔という方には評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   ZES ≧ TA1 Max ≧ DB2 (質感の順。出音の強さはDB2

中音   ZES ≧ DB2 ≧ TA1 Max (質感の順)

低音   ZES ≧ DB2 ≧ TA1 Max (質感の順。出音の強さはTA1 Max)

ボーカル TA1 Max ≧ DB2 ≧ ZES (質感の順)

※終売、価格帯違いのため参考程度に

 

 

4. NICEHCK DB2 の総評

NICEHCK DB2は安定の高音質モデルと云えます。もちろん価格帯での評価となりますが、セラーオリジナルモデルでは評価の高い製品を世に送り出していると云えます。このDB2は音楽を楽しめる高音質イヤホンと同時にコレクションアイテムとしても評価できます。尤も同価格帯では間違いなく高音質と云えますし、ハイブリッドモデルを上手くまとめた製品と云えそうです。個人的に普通に高音質のイヤホンとしてお勧めできます。

 

最後に、今回は低価格U5000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2024年2月3日)は国内amazonでは4,000円台。HiFiGoやAliExpress等で約3,000円台で発売されており、現在は海外購入が安価です。それでもHiFiGoやAliExpressの本国発送は納期が掛かりますし、万が一の際には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中華イヤホンでちょっとよいものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

DB2

以下、付属ケーブル、付属07イヤピ M-使用、DAC UP5
高音★★★★ 
中音★★★★  
低音★★★★ 
音場★★★★
分離★★★☆
お勧め度★★★★★  

※☆0.5、★1.0

 

TA1 Max

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★ 
中音★★★★  
低音★★★★ 
音場★★★☆
分離★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

ZES

以下、付属ケーブル、Trn付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★ 
中音★★★★  
低音★★★★ 
音場★★★★
分離★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.5、★1.0

 

ZSN pro X

以下、付属ケーブル、付属溝無黒イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★ 
中音★★★☆  
低音★★★★ 
音場★★★☆
分離★★★
お勧め度★★★★★ (演奏重視の方に)

※☆0.5、★1.0

 

 

あとがき

今回は中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後は低価格だけではなく、中価格の中華イヤホンも扱っていきます。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

Hidizs MP145 レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格A20000帯で発売された1PDモデルのHidizs MP145についてレビューをまとめたいと思います。

 

国内amazonで取り扱いがあります。

 

AliExpressでも取扱があります。

https://00m.in/oyxsM

 

HIDIZS直販サイトはコチラ↓

Hidizs MP145 Ultra-large Planar Magnetic HiFi In-ear Monitorswww.hidizs.net

 

 

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1. Hidizs MP145 について 

Hidizsは数多ある中華オーディオメーカーの中でも本格的なポータブルオーディオメーカーです。HidizsはAP80 Pro X等の小型のDAPが最も有名ですが、実はイヤホンにも評判の良いものが多くリリースされています。HidizsのイヤホンラインナップはフラッグシップモデルのMS5がA60000帯の4BA+1DDモデルとなり価格帯は頭一つ抜けております。同社の小型DAPと組合せて使用することを考慮するとMD4MS3等がボリュームゾーンと云え、狙い目のモデルとなります。そのMD4は4BAモデル。MS3は2BA+1DDモデルとなり、同社のイヤホンとDAPで揃えても約5万円で高音質で音楽を聴く事ができる環境を構築する事ができます。もっと云えば、HidizsのAP80 Pro Xは他社の小型DAP群と比べてもスペックが充実しており、デュアルDACチップとFPGAチップによる高音質化に加え、音楽ファイルフォーマットはFLACはもちろんのこと、ネイティブDSD64/128/256とMQA 8Xデコードに対応した高音質対応のモデルです。また、最近主流のTWSイヤホンとBluetooth接続が可能。BluetoothコーデックはLDACに対応していますので、手軽に無線接続で高音質を楽しむ事ができます。そういう意味では、スマホ以外に音楽再生機として小型DAPを検討している方には有力な選択肢と云えそうです。

そんなサブ機・入門機におすすめしたい小型DAP、Hidizs AP80 Pro Xと組合せたい同社のイヤホンラインナップに今回MP145が追加され早速入手しました。昨年クラウドファンディングで先行販売されていましたので既に入手している方も多いかもしれません。

MP145は大型の平面磁気ドライバを1基搭載したシングルドライバモデルです。シェルの素材に航空グレードアルミニウム合金を採用し、フェイスプレートデザインには鯨の尾鰭がモチーフされている印象的なモデルとなっています。

また、MP145にはシェル素材にチタンを採用したTitanium Editionもありますが、チタンは高価なことと加工が難しい素材ということもあり限定199本、通常モデルの倍の価格となっており現在(2024/1/6)は直販サイトで入手可能です。

 

HIDIZS MP145のスペックですが、先述の通り平面磁気ドライバを1基搭載したシングルプレーナードライバ(PD)モデルです。

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PDは14.5mm径と大型ドライバを採用。磁気回路はシンメトリーになるように正確に組付けられ、7+7個のN52H磁石を配置しています。この磁気回路設計により、高周波歪みが低減され効率が向上し、磁気間の最大磁束が約1テスラになります。

その結果、クリアで明瞭な深みのあるサウンドは音楽を生々しく魅惑的に感じる事ができるとHidizsは説明しています。

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メーカー発表のf特は厳正にテストされており、H-2019のターゲットカーブを正確にトレースしています。これは後述するMP145の全ての音質調整フィルタで確保されています。あくまでも音質調整フィルタは「味付け」としていて音質チューニングがしっかりとしていることへの裏付けとも云えます。

さらに、頭部伝達関数(HRTF)に基づき、バランスの取れたレスポンスの細部を慎重に調整することで、MP145の音場に奥行きをもたらすことに成功しています。その結果、ボーカルと演奏の定位感を正確に感じられ、ライブ会場にいるような感覚を得られるようにしています。

MP145 IEMの内部スペースは、14.5mmの大型PDユニットを搭載できるように設計されており、魅力的なオーディオパフォーマンスを得るために十分な音響空間を確保しています。さらに、クジラの尾鰭の形をしたフェイスプレート部には、2つの目立たず隠れた通気口があります。これらの通気口は、イヤホンキャビティ内の空気の流れを最適化し、音のクリアさと音圧バランスを調整しています。深みがあり没入感のある低音と上まで伸びる高音が特徴的です。

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MP145には、Hidizsの革新的な空気圧式サウンドチューニングフィルター交換技術を採用しています。これは3種のフィルタがそれぞれ高域強調のシルバー、バランスのピンクゴールド、低域強調のレッドという音質調整が可能です。

加えて、付属イヤーピースがボーカル強調、バランス型、低音強調という音質調整の一端を担っており異なる9種のサウンドスタイルを提供可能としています。この最先端のテクノロジーにより、MP145は9つのサウンドスタイルの組合せによりユーザーに多様な選択肢を提示することで、幅広い音楽ジャンルとユーザーの好みに対応できるとしています。

最後に付属ケーブルです。

MP145は、99.9999%の6N高純度単結晶無酸素銅銀メッキ線材を4芯編込み線としたケーブルを採用しています。この付属ケーブルは、低抵抗でより大きな電流を通すことが可能です。さらに銀メッキ層が単結晶銅線の表面の導電率を高め、信号損失を最小限に抑えています。その結果、中高域の解像度が向上し、驚くほどクリアなボーカルを聴かせてくれます。

また、1本あたりが太めの線材は程良い堅さがありながらもしなやかで取り回しの良いケーブルとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしている場合がありますが、MP145ではそんな心配はありません。そのためバランス接続を試したい方は初めから4.4mmバランスプラグモデルを選択してください。個人的に付属ケーブルの相性が良く、リケーブルする必要を感じません。

Hidizs MP145は、ドングルDACDAPでの使用に最適となるように設計されています。もちろんHidizsブランドの製品と互換性があります。プラグハウジング等は銅メッキされており耐久性が高くなっていますので長く愛用したい方には安心ですね。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

MP145の納期としては現在(2024/1/6)国内amazonで取扱があり、Prime扱いのため当日発送、翌日配達と安心です。AliExpressでオーダーした場合でも現在はかなり安定しており、7日前後で届くと思います。感染症が流行した以前よりも早くなった印象です。尤も従来の平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressや海外サイトでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. Hidizs MP145 実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは黒を基調としたスリーブタイプの中箱です。表面にはイヤホンイラストがあり、メーカー名やロゴ、製品名等がピンクゴールドの文字で記載があります。


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パッケージ裏面にはスペックの記載があります。

 

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スリーブを外すとプラスチックケースの中箱がでてきます。上蓋にはメーカー名とロゴが刻印されています。金型一体成形ですね。


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上蓋を開けると黒を基調とした内装にイヤホンが収納されています。

その下側には付属品が収納された小箱が収められています。


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イヤホン台座と小箱を取り出すと、箱底部にイヤーピースが収納されています。


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小箱を開けると付属品が収納されたイヤホンポーチ等が収められています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が3セット。他にはケーブルとケーブルバンド、イヤホンポーチ、交換用フィルタ3種(内、1種はイヤホン本体組付け済)です。中価格A20000帯として必要十分なものが揃った付属品となります。

 

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Hidizsの刻印が入ったイヤホンポーチはソフトタイプですが、内部が起毛生地がありイヤホンを優しく包んでくれます。ただし、ポーチの外圧からは弱くなりますので完全に保護することを目的とするならば別途ハードケースタイプを用意する必要があります。

 

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ステムノズル部の交換用フィルタが三種付属します。内、ピンクゴールドフィルタはイヤホン取付済み。高域強調のシルバー、バランスのピンクゴールド、低域強調のレッドにより音質調整が可能になっています。それぞれ外側の金属フィルタの内側に繊維フィルタがあり、その膜厚によって調整されています。

 

次に本体を見ていきます。

 

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シェルの角を落とした丸みを帯びた造形は比較的オーソドックスなIEMの体です。シェルは一般的には大柄と云え、厚みもあるために結構大きく感じます。実際には耳へ収まる部分が上手く絞られており装着感は意外に良好です。航空グレードのアルミニウム合金素材をCNC切削加工されたオール金属製シェルは見た目よりも重量感が感じ難く、耳への装着時は装着感の良さから重さをそれ程感じません。

フェイスプレートには先述の通りクジラの尾鰭をモチーフしたデザインが施されており、印象的なフェイスプレートデザインとなりますが、想像していたよりも実物は派手でも奇抜でもないため普通のイヤホンと云えます。シェルカラーが単色で大人しいところがそういう印象を持たせているのかもしれません。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの中価格帯として綺麗に仕上っており、シェルの合わせ面も綺麗に仕上がっています。

カラーバリエーションはシルバー、ダークブルー、チタンゴールドの三色展開にそれぞれ3.5mmステレオミニプラグと4.4mmバランスプラグが選べます。加えて特別限定仕様のシェル素材がチタンのTitanium EDITIONがあります。今回は標準モデル、シルバーカラーの4.4mmバランスプラグを選択しています。

続いてケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り高品質99.9999%の6N4芯高純度単結晶無酸素銅(OCC)銀メッキ線の編込みケーブルです。ケーブル被覆のカラーは白色。一芯あたりが太い線材を贅沢に採用しています。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はフラット2ピン仕様。極性は上側がプラスです。この付属ケーブルは太めのためやや堅さがありますが、意外にしなやかさがあります。また、タッチノイズを感じにくく、肝心の耳への装着性や使用感は悪くありません。イヤホン側にはシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に取り回しは悪くありませんので、音質的にもそのまま使用できます。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

次に他機種との造形の比較です。

 

※画像左からHidizs MP145、LETSHUOER S12 Pro

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Hidizs MP145とLETSHUOER S12 Proの外観の比較として、サイズ感はMP145が大きい。MP145はシェルも厚みがありますし、S12 Proと比べると体積の大きさが分かります。まあS12 Proが比較的コンパクトですので、相手が悪いですね。

ステムノズルの長さと太さ、角度ですが、長さは太さはMP145が長く太くなります。角度はどちらもやや起きています。

MP145はS12 Proと比べシェルが大きくなりますが、耳に収まる方は絞られた造形となっており思っていたよりも耳への収まりが良く装着感は良好です。

ケーブルを接続するイヤホン側のコネクタ部はどちらもフラット2ピンです。リケーブルの際は通常の2ピンコネクタを選択しておけばそれほど気にする必要はないと思います。

シェルの材質は、どちらもオール金属製ですがMP145が大柄のためやや重量感はあります。それでもMP145の造形は工夫されており、耳への装着感が良いため、重さをそれほど感じません。寧ろ耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくMP145は太めのためイヤピ選びは通常よりもやや小さいサイズ感で良いと思います。

ステムノズル部にはどちらもフィルタがあります。MP145には音導管の先、ステムノズル外側に金属フィルタがあり、その内側に繊維フィルタがあります(MP145では内側繊維フィルタの肉厚によって三種の音質調整を実現)。そのためどちらも異物混入による故障を防ぐ事ができますし、MP145では音質にも寄与しています。

二機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、前述の通りMP145はステムノズルが太めですので小さめのイヤーピースを選択し装着することで圧迫感は少なくなります。そのため付属イヤーピースで耳の奥に栓をするように耳に密着させ装着するとフィットしました。そのため付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。

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付属のHidizs Liquid Silicone イヤーピースは高透過性の液体シリコン製で、外耳道にぴったりとフィットするように人間工学に基づいて設計されています。高音に干渉することなく低音性能を向上させ、全体的なオーディオ品質を向上させる事ができるとメーカーは説明しています。

三種類のイヤーピースはそれぞれボーカル強調の白傘白軸短タイプ、バランス型の白傘黒軸タイプ、低音強調の黒傘黒軸長タイプのS、M、Lの3サイズセットです。

黒傘黒軸長タイプは低音強調という名の通り中低音域に厚みが出ます。白傘白軸短タイプはボーカル強調の名の通りボーカルが目立つようになりますが、高音と低音が細くなるために結果としてボーカルが目立つ印象です。白傘黒軸タイプはバランスの名の通り一番メーカーが想定している音質と云えます。実際中高音は過不足なく、低音も十分なバランス良く鳴ります。

また、他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的なイヤーピース形状は選択肢が増えますので安心です。

黒傘黒軸長タイプと白傘黒軸タイプのイヤピを耳奥へ挿入し栓をするように耳へ密着させることで私はフィットしました。一方白傘白軸短タイプは傘が一番柔らかくコシが無いため、ワンサイズ大きくして耳に浅めに蓋をする装着としました。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸い私は付属イヤーピース、白傘黒軸タイプでフィッティングが上手くいきましたし音質的には一番バランスが良く感じたため、付属白傘黒軸(バランス型) Mサイズを使用しています。

一般的に中華イヤホンの低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピで上手くフィットできました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. Hidizs MP145 音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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いつも通り再生環境はスマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

以前はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えています。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。

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USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

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それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りフィルタはバランス(ピンクゴールド)、イヤピは付属白傘黒軸バランス型イヤーピース Mサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「中低音に厚みがある音。高音は華やかで低音はしっかりと鳴るやや中低音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しでは低音が膨らみボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は低音は落ち着き、相対的に高音とのバランスが取れた音という印象です。

 

音場

やや広めから広めの印象。前後は奥行を感じ、左右は広さを感じられます。奥行きを感じられ立体感もあります。空間は広さもあり音の立体感を感じます。

 

高音域

華やかさのある印象を持ちます。過不足なく煌めき、音の消え入る様を描写し上までの伸びやかさを感じられます。響きや余韻の感じられる明るさのある存在感は明瞭に音を届けてくれます。華やかさはあるものの、無駄に騒がしいと感じるような常に前に出る音ではなく繊細さのある鳴り方は刺さりや尖りは感じません。解像感は良好ですが、解像感に全振りした刺々しさはなく、爽快に描写しています。

 

中音域

華やかさがありますが、真ん中に音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきは感じません。音の分離が良く整理された鳴り方は距離感を正確に感じ易い。音の立ち上がりも良く解像感の良さを感じられ中音域を見渡せます。ボーカルはクリアで僅かに近い位置にあり、ニュートラルな声色の印象です。

 

低音域

量感は適度で響きや広がりも感じられますが、響き渡るような広がりではなく、適度に落ち着く制動の良さが感じられます。厚みがある低音は大きく強く鳴らすことで解像感を妨げる様な鳴らし方ではありません。そのため音階や強弱といった低音域の解像感は感じ易く、ベースラインも追いやすい。中低音域に厚みがあるため気難しいことを考えずに没入感を得やすい印象です。ボーカルよりも前に出るような不自然さはなく距離感は不自然さはありません。重低音は沈み込みはそこまで深さはありませんが十分な深さ、力強さがありますので不足を感じません。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中低音寄りの弱ドンシャリ。中高音域は明るく爽快に鳴らしてくれますが中低音に厚みがあるため強さをそれ程感じません。低音は適度な量感で力強さがあり不足は感じません。出音のバランスが良い音と云えます。

 

高音は明るく華やかで上まで伸びる煌めきがあり、響きや余韻を感じられます。遠くの小さな音が消え入る様をしっかりと描写してくれますので寸止め感はありません。誇張を感じない高音域は自然な耳心地の良い音。超高音域まで伸びやかになめらかに鳴り、小さな音も逃さず描写してくれます。解像感は良好で爽やかに小さな音を鳴らし、鮮明に大きな音を響かせる。高音の出力バランスを僅かに抑えながら上手く調整し整えている印象です。

中音は僅かに凹みを感じます。楽器の音はボーカルの周りに位置し距離感を適切に感じられます。ボーカルを邪魔しないやや後方に位置する演奏は立体的な音場を表現しています。そして中音域の下の方に厚みがある音はボーカルを邪魔することを心配しますが、分離が良く距離感の間違っていない整った音は解像感も良好です。

ボーカルは僅かに近い位置からクリアに聴く事ができます。周りの音や高音や低音にも埋もれることはありません。声色は自然で息遣いを感じられ艶も感じられます。そのため女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声を楽しめますし、アップテンポな曲でも伸びやかさを感じられます。

低音の量感は適度で響きや広がりも感じられます。広がりはありますが地響きの様な響きというよりもブワッ~と広がりスーッと収まる様はここぞという一発の力強さも兼ね備えた音。音階や強弱の揺らぎの描写が良く、解像感と雰囲気の良さを両立しています。

重低音は沈み込みはそこまで深く沈みませんが、力強くズドゥーンと感じられる音。それは低価格帯でよくあるただ強く大きく鳴らすだけの低音とは異なります

 

他機種との比較としてLETSHUOER S12 Proと比較します。一言で云えばS12 Proの中高音寄りの弱ドンシャリとは異なる傾向です。S12 Proの出音は高音と低音が不自然な強調感もなく、それに埋もれない中音が華やかに鳴る。全域のバランスはフラットに近い強調感の少ない音。地味な音ではなく明るさのある音。派手過ぎず、地味過ぎない丁度良い音で、特長的だったのは広い空間を感じる音場です。左右や奥行きのある音は描写が確かで、あくまでも自然な強さで音を奏でます。

MP145は中低音寄りの傾向となり異なるのですが、空間の広さや自然な音色はS12 Proよりも良い印象があります。一方、中高音域の空気感はやや分が悪い印象ですが、中低音の厚みがある鳴り方は雰囲気の良さで勝る印象。尤も、MP145では音質調整フィルタにより調整が可能となりますので、そもそもS12 Proの中高音寄りの音が好きな方には分が悪くなります。

まとめとしてMP145はS12 Proとは異なる音質であり、音場の広い解像感の高い中高音寄りの音が好きならS12 Pro。音場の広い解像感の高い中低音音寄りの音が好きならMP145という嗜好に依る選択ができそうです。どちらも音場の広い解像感の高い音ですし高音質と云えます。

 

次にMP145の音質調整フィルタによる変化を試してみます。

先ずシルバーの高域強調フィルタです。

空間の広さや解像感に大きな変化はありませんが、バランスフィルタに比べ高音域の主張がはっきりと出てきます。その分音場の立体感が薄れ僅かに平面的に感じられる印象もありますが、バランスフィルタでは高音域がもの足りないと感じる方にはシルバーフィルタの方が印象は良いと思います。中低音域もやや薄くなりますので、シルバーフィルタの方がMP145の実力を掴みやすいかもしれません。個人的にはシルバーフィルタとバランス型イヤーピースの組合せが好みです。

 

次にレッドの低域強調フィルタです。

こちらも空間の広さや解像感に大きな変化はありません。バランスフィルタと比べ中低音域の厚みのある音にも大きな変化は感じませんが、高音域がすっきりとして大人しい空間に変化します。大袈裟に云えばやや暗い音に感じます。シルバーの高域強調フィルタとレッドの低域強調フィルタの違いは感じ易く鳴りますが、間にバランスフィルタを挟み入れ替えてみるとほんの少しの味付けの違いとなりそうですが、しっかりと音質の変化を感じられます。

 

最後に現在はやや下の価格帯となりますが、比較対象としてTrn Kirinとの比較です。

中価格A10000-U20000帯の平面磁気ドライバ(PD)モデルの一つです。MP145と同じサイズ、14.5mm径のPDをシングルで搭載したモデルとなります。

Kirinの音質はPDの特徴を体感できる普通に良い音がするイヤホンです。整った出音は近しいと感じましたが、違いは音場。空間の広さや立体感はMP145が上。どちらも全音域をバランス良く聴かせてくれ、出音や音色は普通に音質の良いイヤホンです。過度に強調するところが無く自然に鳴らすところも同じ傾向ですが、中低音域の解像感や、全体的な解像感の高い音を聴かせてくれるのはMP145です。MP145の方は分離感が自然で高音域のレンジの広さと低音域の解像感の高さがあります。

 

※過去レビューも参考ください

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miineco106.hatenadiary.jp

 

まとめるとMP145は大径平面磁気ドライバと音響空間による広い空間表現と音場をの正確さを感じられ広いレンジと高い解像感の高音質イヤホンと云えます。中低音域寄りの弱ドンシャリは高音域は伸びの良さと自然な強さで爽快に鳴らしながら、中低音域を厚めに鳴らす音造りは万人が受け入れやすい音質です。同価格帯では納得の高音質と云えますし、フィルタ交換によりイヤホンの持つベースの音質傾向をそのままに味付けを変えられますので安心感があります。そして個人的には高域強調フィルタとバランス型イヤーピースの組合せが好きな音でした。

一方で従来のような中華イヤホンの強ドンシャリの音が好きな方には評価が分かれてしまうかもしれませんが、A20000帯でそれを求めるのかぁ…と、思います。

 

高音   S12 Pro ≧ MP145 ≧ Kirin (質感の順)

中音   S12 Pro ≧ MP145 ≧ Kirin (質感の順)

低音   MP145 ≧ S12 Pro ≧ Kirin (質感の順)

ボーカル MP145 ≧ S12 Pro ≧ Kirin (質感の順)

※Kirinは価格帯が異なる為、参考程度に

 

4. Hidizs MP145 の総評

Hidizs MP145はHidizsブランドの確かな実力を示してくれる商品と云えます。価格帯でも間違いなく高音質と云えますし、納得の高い高音質のイヤホンとしてお勧めできます。また、同社の小型DAPとの組合せても納得の高音質を体験できると考えます。今回は同社の小型DAPではなくスマホにドングルDACとの組合せでレビューしましたが、HidizsのドングルDACも試してみたくなりました。個人的にはA20000帯では失敗したくないという想いが強く不安がありましたが、実際に聴いてみれば非常にバランスの良い音質は音楽を楽しく聴く事ができる良いイヤホンと評価できます。

 

最後に、今回は中価格A20000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2024年1月6日)は国内amazonやAliExpress等で20,000円台で発売されており、価格差が殆どありません。それ故に昨今の円安からは国内amazonでの購入が安心感があってお勧めです。HiFiGoやAliExpressでは本国発送は勿論のこと、納期が掛かりますし、万が一の際には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中華イヤホンでちょっとよいものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

MP145

以下、付属ケーブル、付属白傘黒軸イヤピ M、バランスフィルタ、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

S12 Pro

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

Kirin

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、Referenceノズル、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回は中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後は低価格だけではなく、中価格の中華イヤホンも扱っていきます。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

AFUL MagicOne レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格A20000帯で発売された1BAモデルのAFUL MagicOneについてレビューをまとめたいと思います。

 

国内amazonのHiFiGoで取り扱いがあります。

 

AliExpressでも取扱があります。

https://00m.in/T6IwI

 

HiFiGoのサイトはコチラ

AFUL MagicOne Single BA Driver IEMshifigo.com

 

 

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1. AFUL MagicOne について 

AFULは中華のオーディオメーカーです。AFULと云えば、多ドラハイブリッドモデルのPerformer 5とPerformer 8をラインナップに持つ、新興メーカーです。Performer 5をローンチ後、上位モデルのPerformer 8を発売し今注目のオーディオブランドと云えます。2021年に発売されたPerformer 5はその名の通り5つのドライバを搭載する4BA+1DDハイブリッドドライバモデルですが、自社の音響技術による音質は世界で認められており、ブラッシュアップさせた上位のPerformer 8は7BA+1DDハイブリッドドライバモデルとしての完成度の高い音質を評価されたモデルです。

そのAFULから今回新たに登場したのが、これまで評価されていた多ドラハイブリッドモデルから一変。シングルドライバ、それもバランスドアーマチュアドライバのみのMagicOneを発売しました。

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一般的にバランスドアーマチュア(BA)とダイナミックドライバ(DD)のハイブリッドドライバ構成のモデルは複数のドライバが個々に各音域を担当することで音の歪みを低減させながら厚みを持たせる事ができますが、シングルドライバのモデルでは全ての音域を一つのドライバが担うため、ドライバの性能が重要となります。加えて、今回はシングルBAドライバモデルです。BAは繊細な音を表現することに長けていますが、低音はDDに比べ不利と云えます。これをAFULの音響技術と自社開発のワイド周波数応答を実現したバランスアーマチュアドライバによってどんな音に仕上げているのか非常に楽しみです。

 

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さて、気になるAFUL MagicOneのスペックです。先述の通り革新的と云えるSE-Math電気音響相互変調技術を採用しています。このコア技術「SE-Math」は自社開発であり、RLC電気音響ネットワークと複雑な音響構造を通じて、ドライバによる原音との差を小さくし、高周波帯域の伸びも向上させ、レスポンスの良さとクリアな音場によりサウンドを快適にします。

次に、自社設計のMagicOne用特製のバランスドアーマチュアドライバーを採用。ワイドレンジの全周波数応答を可能とし、なめらかで自然な音色とトーンを実現しています。

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これらのドライバユニットを特許取得済みの3Dプリント音響管構造技術は物理的な周波数分割を実現。物理的なクロスオーバーによりMagicOneの各周波数応答を調整します。また、全長77mm x 外径0.91mmの共鳴管は長く超薄厚により音響設計が施され、深く響く厚い低音域を実現しています。このユニークなリアキャビティ・エアフロー設計を採用することで低音域を大幅に向上させています。

MagicOneは38オームの低インピーダンスにより、省電力化にを実現しています。これにより最適な音量レベルを得やすく、スマホやポータブルUSB DAC/AMP等でも、優れた音質を楽しむことができ、AFUL MagicOneの特徴と云えます。

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MagicOneは1BAドライバでありながら自社音響技術により優れたオーディオ性能を得ることに成功しています。メーカー発表のf特はフラットな特性を示していますが、1BAドライバモデルにありがちなかまぼこサウンドとはとは異なり、言われなければ1BAドライバモデルとは思わないような弱ドンシャリのダイナミックなサウンドです。

また、AFULではMagicOneのサウンドの特色を以下のように説明しています。

  • 低音域は強力で弾力のある低音に応答性が高く高密度
  • 中音域はボーカルを正確に、リアルなディテールを再現
  • 高音域は伸びに優れ、18KHzまで達してから徐々に減衰。やや明るいながらも耳障りで聴き疲れすることなく、さまざまな楽器の正確な音を再現
  • 解像度はなめらかでワイドレンジの全周波数応答。 ボーカルと楽器の両方を正確かつ精密なサウンドを楽しむことができ、全体的なリスニング体験を向上させる

 

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次に、シェル本体はオール樹脂製です。3Dプリント製の透明樹脂シェルはフェースプレートに雪の結晶の様なデザインが施されており、白いフェイスプレートと相まって美麗で高級感のある造形となっています。尤も、先述の通りこの3Dプリント製造による最適な内部音響も実現しています。

最後に付属ケーブルです。高純度素材のハイブリッドケーブルはワイヤーコアを使用した32+37芯線構成の高純度無酸素銅および無酸素銅銀メッキケーブルを採用。リッツ4芯線は同軸シールド構造の線材を特徴とし、外部ノイズの影響を受け難くスムーズな伝送を実現します。また、リケーブル可能とし、お好みのケーブルに交換することで、より多くの音への変化を楽しむことができます。更に、1本あたりが太めのシールド線材は程良い堅さがありながらもしなやかで取り回しの良いケーブルとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしている場合がありますが、MagicOneでは付属ケーブルの質が高くそのまま使用可能です。そのためバランス接続で使用したい方は購入時に4.4mmバランスプラグ仕様を選択することでメーカーの意図する音を楽しめます。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

AFUL MagicOneの納期としては現在(2023/12/16)国内amazonで取扱があり、Prime扱いのため当日発送、翌日配達と安心です。HiFiGoやAliExpressでオーダーした場合でも現在はかなり安定しており、10日前後で届くと思います。ほぼ平時に戻った印象です。尤も従来の平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressや海外サイトでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. AFUL MagicOne 実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは黒を基調としたスリーブタイプの中箱です。表面にはイヤホンイラストがプリントされ、製品名の記載があります。

 

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スリーブを外すと内箱もシックな黒箱。中央にメーカー名が刻印されています。


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上箱を開けると黒を基調とした内装に白いフェイスプレートのイヤホンが収納されています。

箱の下側に付属品が収納されたイヤホンケースが収められています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの3種が2セット。他にはケーブルとイヤホンケースです。中価格A20000帯としてはやや物足りなさはありますが、必要なものが揃った付属品となります。

 

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AFULの文字が入ったイヤホンケースはハードタイプでケースの底にはフェルト生地があり、イヤホン収納時の傷を防いでくれます。

 

次に本体を見ていきます。

 

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シェルの造形は丸みを帯びたオーソドックスなカスタムIEM風のもの。シェルは無色透明で一般的な大きさですが、厚みがあり耳甲介艇に部の突起があるためにやや大きく感じます。実際には耳へ収まる部分がコンパクトになっており装着感は良好です。3Dプリントの樹脂製シェルはその見た目から重量があるような印象を受けますが、実際には軽量であり耳への装着時はその装着感の良さから重さを殆ど感じません。

フェイスプレートは先述の通りベースの白地に雪の結晶の様な模様を銀色で模られています。特徴的なフェイスプレートデザインと美麗な本体のイヤホンは高級感のあるデザインを求める人には良さそうです。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの中価格帯として綺麗に仕上っており、シェルの合わせ面は判らないです。

カラーバリエーションは無色透明(白)の一色のみです。付属ケーブルが3.5mmステレオミニプラグと4.4mmバランスプラグを選択できますが、今回は4.4mmバランスプラグを選択しています。

続いてケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り高純度素材の4芯ミックス線です。高純度無酸素銅線と無酸素銅銀メッキ線の同軸シールド線材を2芯づつ使用した銀色被覆の編込み線です。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はフラット2ピン仕様。極性は上側がプラスです。この付属ケーブルは1芯が太いためやや堅さがありますが、太い線材としては思ったよりもしなやかさがあります。また、タッチノイズを感じにくく、肝心の耳への装着性や使用感は悪くありません。イヤホン側にはシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に取り回しは悪くありませんので、お気に入りのケーブルを使いたい方以外は音質的にもバランスが良いためそのまま使用できます。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

次に他機種との造形の比較です。

 

※画像左からCelest PhoenixCall、AFUL MagicOne

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AFUL MagicOneとCelest PhoenixCallの外観の比較として、サイズ感はPhoenixCallが一回り以上大きく見えます。MagicOneのシェルはカスタムIEM風でありシェルに厚みがありますが、PhoenixCallのシェルの方がもっと厚みがあります。まあ、PhoenixCallは多ドラモデルであり実際に体積もありますので、シングルドライバのMagicOneが一般的に普通のサイズの部類になると思います。

ステムノズルの長さと太さ、角度ですが、長さはMagicOneが長く、太さはPhoenixCallがやや太くなります。角度はどちらもやや起きています。どちらもステムノズルの先端に返りが無くイヤーピースが抜けやすくなっています。

MagicOneは一般的なサイズ感となりますが、カスタムIEM風の造形によって耳への収まりが良く装着感は良好です。

ケーブルを接続するイヤホン側のコネクタ部はどちらもフラット2ピンです。リケーブルの際は通常の2ピンコネクタを選択しておけばそれほど気にする必要はないと思います。

シェルの材質は、どちらもオール樹脂製。PhoenixCallは大柄なためやや重量感がありますが、耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくMagicOneは一般的なサイズよりもやや太めのためイヤピ選びは通常よりもやや小さいサイズ感で良いと思います。

MagicOneはステムノズル部先端に金属フィルターがあります。PhoenixCallは音導管の先、ステムノズル内側にフィルタがあります。どちらも異物混入による故障を防ぐ事ができます。

二機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、前述の通りMagicOneはステムノズルがやや太めですので小さめのイヤーピースを選択し装着することで圧迫感は少なくなります。私は付属イヤーピースでは上手く調整できず、AET07 M-サイズを耳の奥に栓をするように耳に密着させ装着するとフィットしました。そのため付属のイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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付属のシリコンイヤーピースは黒と白の裾野が弾丸タイプです。他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的な形状は選択肢が増えますので安心です。

付属黒イヤピは傘がやや固めで軸が赤と青の2色があり、左右で色分けすることでイヤホン左右の見分けにも便利です。その音質は音がダイレクトに届き、やや低音がしっかりとするタイプの印象。白イヤピは黒よりも傘がやや柔らかいタイプ。音質は中高音をクリアにして僅かに低音を弱めてタイトにさせ全体のバランスをやや腰高にしてくれる印象です。黒白イヤピどちらも普段より小さめを耳奥へ挿入し栓をするように耳へ密着させる装着を想定している様子ですが、前述の通り私は上手くフィットできず、手持ちのAET07イヤピM-サイズを使用しました。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できない場合がありますが、今回は手持ちのシリコンイヤピで上手くフィットさせました。尤も、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. AFUL MagicOne 音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

3.1. ドングルDACアンプでの音質チェック

 

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昨年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピはAET07イヤーピース M-サイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「中高音に華やかさがある音。ボーカルがクリアに届き低音は想像よりもしっかりと鳴るやや中高音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しでは低音の量感が少ないのに膨らみボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は低音は締まりタイトに鳴り、高音とのバランスが取れた音という印象です。

 

音場

普通からやや広めの印象。前後の奥行を感じ、左右に広さを感じられます。奥行きがあることで立体感を感じ易くなっています。空間は広さを感じ音に立体感が感じられます。

 

高音域

華やかな印象を持ちますが、騒がしく感じない。不足を感じない煌びやかさは上までの伸びやかさを感じられ響きや余韻もあります。どちらかと云えば明るい存在感がある華やかさは、無駄に騒がしいと感じるような押し出しの強さも常に前に出る様な感じでも無く繊細さも兼ね備えた鳴り方は刺さりや尖りを感じません。解像感は良好ですが、カリカリの解像感と云いうよりは音の輪郭を掴みやすい、鮮やかで爽やかに描写してくれます。

 

中音域

高音域よりは僅かに暗い印象ですが、十分な華やかさがあります。音の分離が良く整理されていて真ん中に音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきは感じません。音の立ち上がりは良く解像感は良好です。ボーカルはクリアでやや近い位置から自然でニュートラルな声色の印象です。

 

低音域

量感は多くはありませんが適度な響きや広がりも感じられ、大きく強く鳴らすというよりは締まった音。音階や強弱といった低音域の解像感は良好。ベースラインは追いやすく気さくに、時に気安くとらえる事ができます。それでもボーカルよりも前に出るような不自然さはなく、それを邪魔する様な無神経さはありません。重低音は沈み込みはそれほど深くはありません。一方でタイトで力強さがありますので不足を感じません。中高音を邪魔することのない上品な低音です。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中高音寄りの弱ドンシャリ。中高音域は明るく鮮やかに鳴らしてくれます。低音はタイトで上品な強さですが、不足は感じません。寧ろBAで低音を強く鳴らす場合は中高音を邪魔しやすく、丁度良い出音のバランスと云えます。

 

高音は比較的明るい華やかさのある鳴り方。上の上までの伸びやかさがあり、響きや余韻を感じられ鮮やかな彩を感じられます。一方で高音域は2k-4kをピークに緩やかに下がります。それが過度な尖りを抑えており、結果響きと余韻を感じながらも不足を感じない爽やかな高音域を実現している印象です。誇張の少ない高音域は自然な音を彩り鮮やかな音を聴かせてくれます。超高音域までなめらかに鳴り、小さな音もかき消されずに感じ取れ、解像感や描写は良好です。

中音は僅かに凹みを感じますが、ボーカルはやや近い位置にあり楽器の音はその周りから後ろに位置しています。中音の域の下の方はそれ程厚みがありませんが、全体的に分離が良く整った音は立体感を感じられます。

ボーカルはやや近い位置からクリアに聴く事ができます。演奏の音や高音や低音にも埋もれることはありません。声色は自然で息遣いを感じられ艶も感じられます。そのため女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声を楽しめますし、アップテンポな曲でも伸びやかさを感じられます。

低音の量感は多くはありませんが、適度に響き広がりも感じられます。どちらかと云えばタイトに一発の力強さやレスポンスに重きを置いた音は音階や強弱の描写も感じ易く、解像感と雰囲気の良さを両立しています。

重低音は沈み込みそれ程は深くありませんが、タイトで芯の強さを感じられる音。それでも低価格帯でよくあるただ強く大きく鳴らす音とは異なり上質です。低音域全体として上品な音と云えます。

 

他機種との比較としてPhoenixCallとの比較になりますが、それは多ドラのメリットを活かした広いレンジと各音域の解像感を得ながらごちゃつきを抑えた整った音は高音質と云えます。MagicOneも中高音域寄りの弱ドンシャリと云えますが、PhoenixCallの多ドラの前では鮮やかさにやや分が悪い。それでもMagicOneの高音域は上までの伸びと余韻、自然な強さで鳴らす音は誇張が少ない爽やかさは好印象です。

特にボーカルはMagicOneの自然で艶も息遣いも感じられるリアルさは同価格帯でも上位に入ると云えます。

低音は流石にPhoenixCallが一枚上手となりますが、MagicOneの低音はシングルBA機ということを忘れさせてしまう程しっかりとしている。正直シングルDD機では高音域を厚めに鳴らす音造りを重視して低音が疎かに鳴っている機種が多くあり、MagicOneのレベルの高さを証明していると云えます。

 

次に現在は実売で同価格帯となるLETSHUOER S12 Proとの比較です。S12 Proの出音は高音と低音が不自然な強調感もなく、それに埋もれない中音が華やかに鳴る。全域のバランスはフラットに近い強調感の少ない音。地味な音ではなく明るさのある音。派手過ぎず、地味過ぎない丁度良い音でした。また、特長はやはり広い空間を感じる音場です。左右や奥行きのある音は描写が確かで、あくまでも自然な強さで音を奏でていてそれと比較すればMagicOneのもその傾向になりますが、中高音域の空気感は流石に分が悪いし低音も言わずもがな。そもそもS12 Proは発売当時MagicOneよりももう少し上の価格のA20000帯です。それでも全体としてMagicOneのシングルBA機が後ろに迫る音質を実現していることに驚きを隠せません。

 

※過去レビューも参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

3.2. DAPでの音質チェック

今回はいつものDACアンプにShanling UP5を使用していましたが、ちょっと思うことがってDAPを使用した感想を追記します。

 

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DAPにはHiby R6 gen II(国内ではnew Hiby R6。海外ではHiby R6 2020。R6 gen III、通称「R6 III」登場により呼称統一されたみたいです)を使います。プレイヤーはHiby Music、ローゲインで聴いてみます。R6 gen IIは中高音域寄りの音質傾向となりますが、低音域の力強さがあり、流石にドングルDACアンプのUP5とは違います。

UP5では全音域の出音バランスが良く、シングルBAモデルとして十分高音質と評価しましたが、R6 gen IIで聴いてみるとそれまで見せていた顔と異なり本来の力を魅せてくれます。

UP5でも十分だった中高音域は音の鮮明さに加え、より繊細な音で小さな音の消え入る様を掴みやすく、遠くで鳴る小さな音や近くの強い音は立体感に加え距離感を掴みやすくなります。そして最も異なるのは低音域です。UP5ではシングルBAモデルとしては十分な存在感のある上質な低音という評価から一変し、力強さが増しタイトでキレの良い音が楽しめます。BAの低音として上質で上品な音は、全音域をフラットな出音で鳴らし、MagicOneがシングルBAモデルではなくマルチBAドライバモデルと誤認しそうなレベルの高い音を聴かせてくれました。

これは言い換えればMagicOneをきれいに鳴らすには駆動力が必要と云えます。最初WM1AM2の4.4mmバランスで試した際にはそれ程感じませんでしたが、色々試してみるべきだよなぁと良い経験となりました。

 

3.3. 音質のまとめ

まとめるとMagicOneはシングルBA機でありながら複数BA機に迫る音を実現しています。それは多ドラのメリットであるワイドレンジと各音域の出音を調整し鮮明でありながら自然な音を鳴らす高音質モデルと云えます。中高音域寄りの弱ドンシャリは高音域は上までの伸びと余韻を持ち、タイトな低音域が音楽を破綻させずに鳴らす。ボーカルがリアルな音造りはバンドサウンドよりもボーカル曲でその特徴を活かすことがでします。そして同価格帯の中でも高音質と云えます。そして、MagicOneのもつ魅力を楽しむためにはアンプ部の力が肝要となります。

一方で従来のような中華イヤホンの強ドンシャリの音が好きな方には評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   S12 Pro ≧ PhoenixCall ≧ MagicOne (出音の強さ)

中音   S12 Pro ≧ PhoenixCall ≧ MagicOne (出音の強さ)

低音   PhoenixCall ≧ S12 Pro ≧ MagicOne (出音の強さ)

ボーカル MagicOne ≧ S12 Pro ≧ PhoenixCall (質感)

※ドライバ構成が異なる為、参考程度に

 

4. AFUL MagicOne の総評

AFUL MagicOneは従来のAFULの多ドラモデルとは異なり同社の音響技術を注ぎ込んだシングルドライバモデルとして上質な音を届けてくれる特別な製品と云えそうです。それは音質的には大人しいものの聴き込めばその音色に心を奪われる高音質モデルです。価格帯ではシングルBA機は珍しく、同じシングルドライバでもシングルDD機が多く、ましてや複数BA機と相まみえるには不利と云えますが、少なくても同じシングルドライバ機を相手にした場合にシングルBA機で戦うことができます。個人的にはシングルBA機はQDCのシングルBA機を含めあまり良い印象はありませんでしたが、少なくてもMagicOneはシングルBA機が好きな方にお勧めできる高音質イヤホンと云えます。そして強力なアンプ部を持つDAPを愛用している美音好きの方にお勧めしたいモデルです。

 

最後に、今回は中価格A20000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2023年12月16日)は国内amazonやHiFiGo、AliExpress等で20,000円を少し超える価格で発売されており、価格差が殆どありません。それ故に昨今の円安からは国内amazonでの購入が安心感があってお勧めです。HiFiGoやAliExpressでは本国発送は勿論のこと、納期が掛かりますし、万が一の際には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中華イヤホンでちょっとよいものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はHiFiGoやAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

MagicOne

以下、付属ケーブル、AET07イヤピ M-使用、DAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★☆  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★☆ (DD機好きの方は★4)

※☆0.51.0

 

PhoenixCall

以下、付属ケーブル、付属白傘赤軸イヤピ SDAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★☆  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

S12 Pro

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

MagicOne(参考)

以下、付属ケーブル、AET07イヤピ M-使用、DAP Hiby R6 gen II
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★ (ドングルDACの場合★4.5)

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回は中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後は低価格だけではなく、中価格の中華イヤホンも扱っていきます。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

※2023/12/23 DAPでの音質チェック追記に伴い3.項を3.1.項、3.2.項、3.3.項に再編成及び、4.項追記修正

 

Kefine Klanar レビュー

こんにちは。

今回はいつもの中華イヤホンレビュー編として、中価格A10000-U20000帯で発売された平面磁気駆動モデルのKefine Klanarについてレビューをまとめたいと思います。

 

国内amazonで取り扱いがあります。Linsoulが国内代理店となります。

 

AliExpressのKefine公式ストアでも取扱があります。

https://00m.in/Fppal

 

Linsoul直販サイトはコチラ

Kefine Klanarwww.linsoul.com

 

 

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1. Kefine Klanar について 

Kefineは新しい中華オーディオメーカーです。Kefineは今年9月に立ち上がった新興メーカーとして今後に注目のオーディオメーカーと云えます。

そのKefineのファーストモデルとして平面磁気駆動ドライバ(Planar Driver)を1基搭載したKlanarが発売されました。昨年から平面磁気駆動ドライバ(以下、PD)搭載モデルが続々登場し、従来の中価格A10000ーU20000帯だけでなく、U10000というかA5000帯でも従来のPDとは異なるSPD(Square Planar Driver)を搭載したモデルが登場しました。今回Kefine Klanarは一般的なPDドライバであり、正統派モデルとして期待値が高くなります。

 

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さて、Kefine Klanarのスペックですが、先述の通りPD(平面磁気駆動ドライバ)を1基搭載するシングルドライバモデルです。1PDには14.5mm径ドライバを採用。PDは従来のダイナミックドライバと比べ、バランスの取れたサウンドで広く評価されており、原音に忠実性と感情豊かに表現を誇張を抑え自然に近い音色で表現することができ、リアルで豊かなアコースティック楽器を再現できるとメーカーは謳っています。

 

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Kefine Klanarは同社のカスタマイズPDにより優れたオーディオ性能を得ることに成功しています。全体的にはやや暗めのサウンドは、暖かみのあるサウンドです。

それはPDの振動膜にコンポジットダイヤフラムを採用し、強力な磁力のn55マグネットをカスタマイズしたドライバー構造により他製品を超える非常に強力な低音応答を実現。中音域は暖かさと豊かさを特徴とし、卓越したクリアさとディテールを維持しながら、他に類を見ない没入型のリスニング体験を実現したこのPDがKefine Klanarの最大の特徴と云えます。

また、メーカー発表のf特はやや高音域を抑え気味の特性を示しており、実際に聴いてみるとただ大人しいだけのモニターサウンドではない臨場感を感じられる豊かなサウンドを届けてくれます。

 

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シェル本体は5軸CNC精密機械加工を使用して、アルミニウム合金の金属ブロックから慎重に切削加工されています。 この方法は高級感のある外観に加え、原音に忠実なサウンドを再生するために設計されたチャンバー構造も実現しています。シェル設計は、小型で軽量な構造を優先し、長時間のリスニングセッションで快適さを確保するための職人技を極めた加工技術を表しています。

シェル内には14.5mmの大径PDを搭載しながらもコンパクトに仕上げられたシェル本体により快適な着用感を実現。これはシェルサイズを最小限に抑えるために、ドライバユニットに非常に薄い0.2mm厚が採用されたことでシェルの快適なフィット感を確保。人間工学に基づいたデザインにより、さまざまな耳の形状に適合しやすくしています。

 

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最後に付属ケーブルです。Klanarには取り扱いのし易い0.78径2ピンを採用しリケーブル可能としています。商品購入時に3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスプラグを選択できます。この付属ケーブルはどちらも合計4本の芯線で構成され、一芯あたり54本の導線が含まれています。また、異なる二種の線材を採用し、茶色のOFC線と黒色の銀メッキ銅線の組み合わせにより、温かみのある自然な音を豊かにしながら、鮮明さを犠牲にすることなく滑らかで透明な高音を実現します。

一芯が太めの1mm線材は程良い堅さがありながらもしなやかで取り回しの良いケーブルとなっています。中華イヤホンメーカーでは付属ケーブルはリケーブル前提で質を落としコストカットしている場合がありますが、Klanarではそんな心配はありません。そのため、バランス接続を試したい方は最初から4.4mmバランスプラグモデルを選択すればよいことになります。

 

※宜しければ以前のレビューもご参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

Kefine Klanarの納期としては現在(2023/12/2)国内amazonで取扱があり、Prime扱いのため当日発送、翌日配達と安心です。AliExpressでオーダーした場合でも現在はかなり安定しており、10日前後で届くと思います。ほぼ平時に戻った印象です(※現在はBF/CMセールの配送混雑の影響がありますので、ご注意ください)。尤も従来の平時であればAliExpressならば早くて約1週間。通常10日から2週間。遅いと3週間から1か月。万が一の不良の際には返品交換に結構な手間と時間がかかります。

そんな訳で一般的にAliExpressや海外サイトでの購入は国内で購入した場合より安いが届くのに少し日数が掛かるのが気になるところでしたが、最近は円安の影響で国内amazonとの価格差が殆どなく、そのメリットは殆ど感じません。

まあ海外ネットショッピングで心配なのが「届かない、不良品だった、頼んだものと違うものが届いた」というような今や国内ネットショッピング大手ではあり得ないことが稀(?)に起こるデメリット(リスク)です。それでも国内で発売前の商品を入手できたり国内より安く入手できるメリットを比較した場合に止められない魅力があり、みぃねこは活用しています。なおこのリスクに不安がある方には全くお勧めできませんので国内amazon等での購入及び取り扱いを待って購入をお勧めします。

 

 

2. Kefine Klanar 実機レビュー 

それでは、早速実機レビューを以下、まとめていきます。

 

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パッケージングは白を基調としたスリーブタイプの中サイズの箱です。表面にはイヤホンイラストがプリントされメーカー名とイヤホン名の記載があります。

裏面にはイヤホンスペックが記載されています。

 

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スリーブを外すと黒を基調とした内箱があり無地という潔さ。

内箱の蓋を開けると黒地の内装にイヤホン等が収納されています。

箱の下側に付属品が収納されたイヤホンケースが収められています。

 

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付属品はシリコンイヤーピースタイプのS、M、Lの2種が2セットとイヤホンに取り付けられていたMサイズのイヤピが1組。これは2種の内、1種と同一のもの。他にはイヤホンケースです。中価格A10000-U20000帯としてはやや物足りないものの必要なものが揃った付属品となります。

 

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Kefineの文字が入ったイヤホンケースはハードタイプでイヤホンをしっかりと保護してくれます。

 

次に本体を見ていきます。

 

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シェルの造形は角に丸みを帯びたオーソドックスなIEM風のもの。シェルは一般的な大きさですが、厚みが無く平らなデザインです。シェルが厚くないため耳へ収まる部分が薄くなっており耳から出っ張ることも無く収まるので装着感も良好です。アルミニウム合金に黒アルマイト処理され、敢えて面粗度を下げたシボ処理の金属製シェルは落ち着きのある見た目です。それに加え金属製でありながら重量感が少なく耳への装着時はその装着感の良さから重さをそれ程感じません。

フェイスプレートはシンプルで中央部にメーカー名がワンポイントにあるだけの質実剛健といった出で立ち。派手な見た目よりもシンプルなデザインを好まれる方には好印象となりそうです。

肝心のビルドクオリティは、中華イヤホンの中価格帯として綺麗に仕上っており、シェルの合わせ面も綺麗です。

カラーバリエーションは黒のみ。今回は3.5mmステレオミニプラグを選択しています。

続いてケーブルです。

 

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付属ケーブルは先述の通り高品質4芯編込み線。銀メッキ銅線とOFC線のミックスタイプです。シェルのカラーの黒に付属ケーブルの被覆カラーが黒と茶色のミックスと落ち着いた色合いがマッチしています。プレイヤー側コネクタはI字タイプ。イヤホン側はフラット2ピン仕様。極性は上側がプラスです。スプリッター部とプラグ部にメーカー名があります。

この付属ケーブルは一芯あたり1mmと太くやや堅さを感じますが、思ったよりもしなやかで取り回しに苦労することはありません。また、タッチノイズを感じにくく、肝心の耳への装着性や使用感は悪くありません。イヤホン側にはシュア掛け用にチューブで癖付けされています。全体的に取り回しは良く使い勝手も悪くないため、バランス接続をしたい方は購入時に4.4mmバランスプラグタイプを選択すれば音質的にも十分ですし長く使用できます。

参考までにこのシュア掛け用のチューブでの癖付けがどうしても耳に合わない場合には、みぃねこはこのチューブをライターで焙り(チューブに火を直接当てる=炙る。誤解しないように!)、自分の耳に合うように癖付けを手直しています。これによって良い塩梅に調整し装着感を改善することができますので自己責任となりますが、興味のある方はお試しくださいね。

次に他機種との造形の比較です。

 

※画像左からKefine Klanar、Trn Kirin

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Kefine KlanarとTrn Kirinの外観の比較として、サイズ感はKirinがかなり大きく見えます。Klanarのシェルは厚みが薄く平らですが、Kirinは厚く立体的です。実際にKirinは体積も大きいです。KlanarとKirinはどちらも14.5mmの大径PDを搭載していながら圧倒的にKlanarの方がコンパクトと云えると思います。

ステムノズルの長さと太さ、角度ですが、長さはKlanarが長く、太さはほぼ同じ。角度はKlanarがやや寝ています。

KlanarはKirinと比べかなりコンパクトであり、オーソドックスな造形の見た目通り耳への収まりが良く装着感は良好です。

ケーブルを接続するイヤホン側のコネクタ部はKlanarがフラット2ピン。KirinはKZ-Cタイプです。Klanarのリケーブルの際は通常の2ピンコネクタを選択しておけばそれほど気にする必要はないと思います。

シェルの材質は、どちらもオール金属製ですが、Klanarではシェルをコンパクトにするために、ドライバユニットの小型化によりオール金属製であっても重量を感じにくくしています。寧ろ耳への装着感はステムノズルの太さに影響を受けやすくKlanarはやや太めのためイヤピ選びは通常よりもやや小さいサイズ感で良いと思います。

ステムノズル部には全てにフィルターがあります。どちらもステムノズル部に金属製フィルタがあり、異物混入による故障を防ぐ事ができます。

二機種共にシェル本体の形状と付属ケーブルからはシュア掛け前提となりますので、シュア掛けが苦手な方は注意が必要です。

なお、前述の通りKlanarはステムノズルがやや太めですので小さめのイヤーピースを選択し装着することで圧迫感は少なくなります。そのため付属イヤーピースで耳の奥というよりは浅めに栓をするように耳に密着させ装着するとフィットしました。そのため付属のシリコンイヤーピースで上手くフィットする事ができれば音質的にも必要十分だと思います。

 

最後にイヤーピースを見てみます。


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付属のシリコンイヤーピースは黒色のやや背が低く傘が幅広の口径大き目の形状と一般的な黒色の裾野が弾丸タイプの二種です。イヤホンに装着済みのイヤーピースは黒色弾丸形状タイプ Mサイズです。他社製含むサードパーティー商品との互換性の高い一般的なステムノズル形状は選択肢が増えますので安心です。

付属弾丸タイプは音質的にはダイレクトに音を届けてくれ、やや低音がしっかりとするタイプの印象です。傘幅広口径大タイプは中高音をクリアにして僅かに低音を弱めてタイトにさせ全体のバランスをやや腰高にしてくれる印象ですが、傘にコシが無くペラペラのため私はフィット感がイマイチ。傘幅広口径大タイプはいつもよりワンサイズ大き目で耳に浅めに蓋をする装着に。弾丸タイプは耳奥やや浅めに栓をするように耳へ密着させることで私はフィットしました。付属イヤピで装着感に問題ない場合を除き、あくまでも耳への装着感がどうかというフィッティングを重視し他社製も含めて選択した方が良いと思います。

幸い付属弾丸タイプのイヤーピースで私はフィッティングが上手くいきました。音質的にもメーカーの意図するタイプという印象で、そのまま初期装着の付属弾丸タイプMサイズを使用しています。

低、中価格帯に付属するイヤーピースは装着感が悪く、音質的にも実力を発揮できないと感じますが、今回は付属のシリコンイヤピで上手くフィットできました。まあ、この辺りは個人差があるかもしれません。

このことからも低~中価格の中華イヤホンでは付属のイヤピでは装着感は基より音質面でも本来の実力を発揮できない場合がありますので、個人的な意見となりますが装着感を優先し音質の傾向を変えないタイプへ交換する事をお勧めします。(この辺りは個人差やステムの太さや角度等も関係していると思いますのであくまでも参考程度にお願いします)

 

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3. Kefine Klanar 音質レビュー

いよいよ音質についてまとめていきます。

 

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昨年から再生環境を更新し、スマホとUSB-DACの組合せを基準としてレビューを行います。スマホSony Xperia 5 IIを。USB-DACにはShanling UP5の組み合わせです。Xperia 5 IIは音質にも拘ったandroidスマホの代表として。Shanling UP5は同社のエントリーハイDAPであるM3X相当の音質と云えます。

UP5の音質傾向ですが、高音は演出感が少なく自然に鳴らし綺麗に聴こえます。低音に脚色は無くしっかりと鳴り量感に不足はありません。中音は特に違いを感じ、音場が左右に広がり解像感と分離感は良好です。ボーカルはクリアですが淡々と聴こえ、艶とかリアルさはそれ程感じませんが、エントリーハイDAPと比較してもレベルの高い音質と云えます。

昨年はSony NW-ZX507を使用していましたが、やや演出感のあるドンシャリはメリハリがありグルーブ感のある音はSonyの音で音楽を楽しく聴く事が出来ました。しかし、音質レビューという役割にはM3X相当のUP5の方がモニターライクながらも、決してつまらない音ではなくリスニングでも使えて万能と考えたからです。

Shanling UP5をUSB-DACで使用した音質が気になる方は以前の「Shanling UP5レビュー【USB-DAC編】」をご覧ください。

 

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より上位のUSB-DACとしてShanling UA5もご参考ください。

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Shanling UP5やUA5の対抗としてFiiO BTR7もご参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

USB-DACのエントリークラスでも十分な音質変化が楽しめます。

Shanling UA2は以下を参考ください。

miineco106.hatenadiary.jp

 

それでは実際に聴いてみます。

ソースは宇多田ヒカル/First Love、平井堅/瞳を閉じて、倖田來未/Moon Crying。高音低音域の確認用に松岡充/SURPRISE-DRIVEです。

先述の通りイヤピは付属白傘赤軸イヤーピース Sサイズ、付属ケーブルです。

箱出しで聴いてみた第一印象は「中低音に厚みがある音。高音は華やかで低音はしっかりと鳴るやや中低音寄りのドンシャリバランス」です。

箱出しでは低音が膨らみボワつきを感じましたが、鳴らし込み後は低音は落ち着き、高音とのバランスが取れた音という印象です。

 

音場

やや広めから広めの印象。前後は奥行を感じ、左右は広さを感じられます。奥行きを感じられ立体感もあります。空間は広さもあり音の立体感を感じます。

 

高音域

華やかさは十分の印象。煌びやかさは適度で上までの伸びやかさはそれ程感じられませんが、響きや余韻は感じられます。やや暗めの印象ですが存在感は適度な華やかさ。兎に角明るい騒がしさを感じるような感じではない繊細な鳴り方。そのため刺さりや尖りは感じません。解像感は良好でそれに全振りする様な刺々しさはありませんので、聞き手にプレッシャーを与える様な感覚ではなく、心地の良い描写です。

 

中音域

厚みのある華やかさと濃さのある音は、真ん中に音が集まる団子感や音が重なるゴチャつきは感じません。音の分離が良い整理された鳴り方は上品さを感じさせます。音の立ち上がりも良く解像感も感じられ明朗に描写します。ボーカルはクリアで近い位置から自然で暖かみのある声色の印象です。

 

低音域

量感は適度で響きや広がりも感じられますが、大きく強く鳴らし音圧で誤魔化すような鳴らし方ではありません。音階や強弱といった低音域の解像感は良好でベースラインは追いやすいく癖が無く分かり易く感じられますが、ボーカルよりも前に出るような不自然さはありません。重低音は沈み込みは深さがあり、力強さがありますので力不足を感じません。

 

出音のバランス

一言で云えばやや中低音寄りの弱ドンシャリ。中高音域はやや暗く感じますがクリアで明快に鳴らし響きが良い。低音は適度な量感ですが、力強さがあり不足は感じません。聴き易い出音のバランスは素直に良い音と云えます。

 

高音はやや暗めの印象ですが華やかさは騒々しさはなく、上の上までの伸びやかさはそれ程感じませんが、響きや余韻が感じられ適度な華やかさは心地良く感じられます。一方で高音域は強調感がないため過度な響きを抑えられており、やや暗めの音という印象を持ってしまいます。無駄に強調せず誇張の少ない高音域は不自然さを感じない耳馴染みの良い音。超高音域までの伸びやレンジの広さはそれ程感じませんが、なめらかに鳴り、小さな音も感じ取れます。解像感や描写は良好で、鮮やかに小さな音をかき消されずに鳴らし、高音の出力を上手く整えているバランスです。

中音は凹みを感じず、ボーカルは近い位置にあり楽器の音はその周りに位置しています。分離も良く解像感の高い中音域でありながら中音の域の下の方に厚みがある音は濃厚な音を感じられます。

ボーカルは近い位置からクリアに聴く事ができます。演奏の音にも埋もれることはありません。声色は暖かく自然さを保ちながら息遣いを感じられ艶も感じられます。そのため女性ボーカルのバラードなどでしっとりとした艶のある声を楽しめますし、アップテンポな曲でも明朗に聴かせてくれます。

低音の量感は適度ですが響きや広がりも感じられます。響きもあり一発の力強さに重きを置いた音は音階や強弱の描写も感じ易く、解像感の高い濃厚な音は雰囲気の良さを感じられます。

重低音は沈み込みは深く、力強さを感じられる音。それは低価格帯でよくあるただ強く大きく鳴らす音ではなく、下から広がりを感じられる音です。

 

他機種との比較としてTrn Kirinと比較した場合、一言で云えば中高音寄りのKirinの弱ドンシャリとは異なる傾向という印象です。Kirinの出音は中高音を重視し低音を抑えタイトに鳴らす音。一方のKlanarは中低音が厚い濃い音。Kirinは兎に角中高音をクリアに爽快に鳴らす音であり、Klanarのそれは音楽を自然に聴かせてくれる音です。どちらが正しくてどちらが良い音と云う様なゼロかイチかという白黒で語るべきではないと思います。Kirinのそれは高音域の爽快感は心躍りますし、Klanarの音は音楽を聴く楽しさへの高揚感があります。それでも敢えて比較すれば、高音域はKirinの鮮やかさや爽快感は特筆ものであり、Klanarは真面目で地味な暗い音。中音域はKirin爽快感がKlanarの濃厚さからは薄口に感じられます。低音域は濃厚で音楽的なKlanarに対し、モニターライクなKirinとなります。全域のバランスはフラットに近いKirinに対し、同じ弱ドンシャリでも躍動感を感じられ情熱的なKlanarとなります。

Klanarは一聴すると地味な音ではありませんが高音域のやや暗い音への評価次第で印象が変わると云えます。

 

※過去レビューも参考ください

miineco106.hatenadiary.jp

 

まとめるとKefine KlanarはPDのメリットを活かした高い解像感と分離感を活かした情熱的で躍動感のあるサウンドを実現しており高音質と云えます。中低音域寄りの弱ドンシャリは高音域は比較的やや暗めとなりますが、響きと伸びは良好で中低音域を厚く濃厚に鳴らす音造りは音楽的であり万人が受け入れやすい音です。それは同価格帯でも間違いなく高音質と云え個人的に好きな音です。

一方で従来のような中華イヤホンの強ドンシャリの音が好きな方や中高音重視、低音は邪魔という方には評価が分かれてしまうかもしれません。

 

高音   S12 Pro ≧ Kirin ≧ Klanar (質感の順)

中音   S12 Pro ≧ Klanar ≧ Kirin (質感の順)

低音   S12 Pro ≧ Klanar ≧ Kirin (質感の順)

ボーカル S12 Pro ≧ Klanar ≧ Kirin (質感の順)

※S12 Proは価格帯が異なる為、参考程度に

 

4. Kefine Klanar の総評

Kefine Klanarは新興オーディオメーカーとなりますが、そのファーストインパクトとして最も評価できる製品を世に送り出していると云えます。このKlanarは音楽を楽しめる高音質イヤホンと評価できます。同価格帯では間違いなく高音質と云えますし、PDを上手く活用した製品と云えそうです。個人的に普通に高音質のイヤホンとしてお勧めできます。Klanarは音楽を楽しく聴く事を思い出させてくれる、そんな高音質イヤホンと評価できます。

 

最後に、今回は中価格A10000-U20000帯の中華イヤホンの紹介となりました。現在(2023年12月2日)は国内amazonやAliExpress等で約18,000円で発売されており、価格差が殆どありません。それ故に昨今の円安からは国内amazonでの購入が安心感があってお勧めです。AliExpressでは本国発送は勿論のこと、納期が掛かりますし、万が一の際には少々難があります。それでも、中華イヤホンの中でもその音質を含めクオリティの高さは十分満足できる内容となっておりますので、中華イヤホンでちょっとよいものを検討中の方や間違いのないものの購入を考えていて少しでも気になる方は安心確実な国内正規品取り扱いを待って。少しでも新製品を早く安く手に入れたい方はAliExpressでの購入も検討してみてくださいね。

 

Klanar

以下、付属ケーブル、付属砲弾タイプイヤピ MDAC UP5
高音★★★★☆ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★  

※☆0.51.0

 

Kirin

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、Referenceノズル、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★☆ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

S12 Pro

以下、付属ケーブル、付属白イヤピ M使用、DAC UP5
高音★★★★★ 
中音★★★★★  
低音★★★★★ 
音場★★★★★
分離★★★★★
お勧め度★★★★★

※☆0.51.0

 

 

あとがき

今回は中華イヤホンの中価格帯の新商品レビューをまとめました。日々進化を見せる中華イヤホンにはこれからも非常に楽しみですが、今後は低価格だけではなく、中価格の中華イヤホンも扱っていきます。

また、気になる商品や1BA+1DDイヤホンの新商品が出れば追加でチェックしていきますのでよろしくお願いいたします。
沼にハマった者の戯言に最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
みぃねこ

 

※2023/12/6 AliExpressリンク修正。1.項の導入部修正。