【再現像】青と夏
9月下旬になっても夏の余韻が残る南国鹿児島。半袖で過ごしても朝がだらだらと垂れてくるほどのうだる暑さだ。
ほんの少しの間、車のエンジンを切るだけで車内は熱気に覆われてしまう。常にエアコンはフル稼働不可避だ。
そんな中、この日も桜島は平常運転。
元気にモクモクと噴煙を吐き続けている。
鹿児島市内へと風に押し流されていくのが容易に見てとれるほどに常時灰を吹き出しているのである。
415系 (鹿児島車両センター所属)
比較的"風"が強く、すぐに市内側へと流されてしまったのが少々残念だった。
秋口の湿度が比較的低いこの時期でも桜島までクッキリとはいかない難しさ。鹿児島はやはりなかなか単位を取らせてはくれない。
それにしても今の写真技術というものは凄いもので、半逆光下で撮った写真も軽く編集するだけで息を吹き返す。
自然な色合い、質感を目指して試行錯誤を重ねた末に、やっと納得のいくテイストに仕上げることができた。
(2019.10.11)
重要文化財・東別府駅
日豊本線北側の大きな町といえば別府と大分だろう。
この二駅は距離にしてはすごく近いものの、間を山に阻まれており一つの街になり得なかった歴史があるとかなんとか。ソニックの利用者数を見ても、もしくっついていたら福岡に次ぐ第二の都市になっていたことは間違いないのではないだろうか。
温泉で有名な別府駅からひと駅となりの東別府駅。木造の駅舎にガスランプのような柔らかな白熱灯の光が雰囲気を作っている。
どうやら市の重要文化財なようで、さまざまな展示が駅舎内で行われていた。
国道10号線から細い道に一本折れ曲がったところの丘に位置しているこの駅。幹線道路沿いとは思えないほどの静寂や、落ち着きがある。わかりやすく説明するとお洒落な喫茶店のようなイメージだろうか。
そんな東別府駅で木造の雰囲気を生かした写真を狙うべく、415系の到着時刻を待つ。
ちょうど秋口で駅の周りにはコスモスの花が咲いていた。前ボケもきっちり入り、切り位置も完璧。どこか昭和っぽさのある写真に仕上がり、大変満足である。
(415系 大分車両センター所属車両)
(2019.09.19)
夏空
115系 N33編成
PENTAX67+SMC PENTAX 165mm f/2.8
▶︎PROVIA 100F
長岡花火大会増結を狙って新潟入りしたこの遠征。本命の増結の戦績は過去記事を参照していただきたい。
副産物として、その後南線運用についた二次新潟色を追っかけていた。
この年はいつ行ってもなぜか入道雲が不作。諦めかけていたそんな時、ふと救いの手を出してくれたのがこの雲だった。
雲といえば撮り鉄の天敵。だが風景を主体として撮る筆者にとって、雲はうまく付き合えば季節感のあるカットを演出してくれる。もちろん太陽を隠してしまう可能性も大いにあるので、諸刃の剣であるのに間違いはないのだが…。
せっかくなので、フィルムでも切ることにした。67に詰めたのはPROVIA100F。ポジ独特の色のりで鮮やかに新潟の風景を切り取ることができた。
(2019.08.04)
〜深夜の大イベント〜 小田急線保存車深夜回送 #1
小田急には往年の通勤車両が何両か喜多見の車両基地に保存されていた。
初代車両のモハ1形や、初代地下鉄直通車両の9000形などだ。
当然車庫内の一番奥に眠っており、その車庫も屋根付き半地下構造であることから、屋外はおろか航空写真ですらその姿を見ることはできなかった。
しかし車庫容量の確保の観点と、近い将来小田急ロマンスカーミュージアム開業に伴い海老名のSE保存庫が開くことから、一旦喜多見から相模大野に輸送されることとなった。
保存されている車両は約2年間かけ、5回に分けて輸送された。
初回がHiSE。次にRSE。その次にNSE。さらに通勤車四種類を挟み、最後にモハ1形だ。
最も世間の注目を集めたのは最後の3つで、とりわけ筆者は通勤3車種に重きを置いて撮影した。残念ながら全車ないしは部分解体となってしまった車両が多く、残して欲しかったところではあるが、この経済事情のもとでは致し方ないのであろう。しかしやはり小田急の歴史的遺産があっけなく散っていく様は小田急ファンとしては心苦しいものがある。
今回は、通勤車両3種類が輸送された日の写真を紹介しようと思う。
内訳は牽引車として1253×6が先導し、デハ9001+デハ2202+デハ2201+クハ2670、といった組成である。
特に筆者が撮りたかったクハ2670が最後尾についてくれているというのは朗報で、現役時代さながらのスナップを撮れるのではと目論んだわけである。
走行区間がそこそこ長い上に、相当な期間レール上を動かしていなかったことを考慮しての速度制限のおかげで追っかけが効きそうな条件だった。
編成撮りもしたかったので複々線区間の高架を降りてすぐのところで一旦編成を回収し、町田駅へと急いだ。
到着するとすでにたくさんのギャラリーが詰めかけており、現場は混沌としていた。
人をかき分け、なんとか踏切の前までたどり着く。途中工事に阻まれ時間をロスしたことも災いし、すぐに踏切が鳴り出した。
踏切には保線係員が配置されており、なんども踏切が開くまでは踏切内に立ち入らないよう注意喚起をしている。撮り鉄のみならず一般人のギャラリーもこんなにいるようではこの対応も致し方ないのか。
目の前を先ほど撮影した車両が45km/hでゆっくりと通過する。もともとY制限のかかっている町田駅だからかはわからないが、ホーム入線後にノッチを入れて加速。踏切が開くやいなや、すぐに自分が予めマークした立ち位置に移動し、シャッターを切った。
(1253×6+デハ9001+デハ2202+デハ2201+クハ2670)
現役時代さながらに収めることができただろうか。
夢にも見なかった保存車両の本線走行。突如現れた機会を存分に堪能した。おそらく二度と町田駅の線路を2600形が走ることはないだろう。
修繕され綺麗になった姿を日常的に見れる環境、小田急電鉄さんには是非ともつくってほしいところである。
(2019.03.03)
大野川の桜🌸スペシャルステージ
桜咲き乱れる景色を狙って九州へ。
新型コロナウイルス蔓延に伴う需要減のために飛行機が軒並み欠航し、3度の振替を強いられた。なんとか無事大分まで飛べたものの、搭乗率は20%前後。これでは欠航を喰らうのも無理はない。それでも羽田のバッゲージは長蛇の列ができていた。こんな状況でも上級会員権限の取得が必須とは……。ANA党の筆者も、年度初めのボーナスマイル取得目的でJALを利用。恥ずかしながら、保安検査場を通過する頃には搭乗時刻ギリギリになってしまった。
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無事大分空港に到着し、レンタカーを借りる。
まずは大分空港最寄り主要駅である杵築周辺の桜を調査するが、4/1午前の時点で駅周辺の桜は5分咲き前後。暖冬の影響で早咲きになるとの予想はどこへ行ってしまったのだろうか。この日は終日雨とのことでこれ以上の開花は見込めず、翌日の気温上昇を待つことにした。
翌日から遠征最終日の4/6までは都合よく全日程晴れ予報。気温も高く、4/4あたりにどこも満開を迎えていた。
中でもとりわけ冷たい風の吹き付ける川縁に位置している大野川堤防では、ムラのある開花状況。陸側に緑色の葉が芽吹いた頃にやっと護岸側が満開となった。
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念入りに各所の開花状況を確認し、狙うは5日の夕刻日没間際。対岸にそびえる山の稜線に太陽が沈む頃、お目当ての列車がやってきた。
(415系 大分車両センター所属車両)
開花具合に納得が行かず、せっかく滞在しているのだから完璧なカットを狙うべく2日連続でトライした。
今回の遠征イチの優勝カットをつまみに、今日もウイスキーを持つ手が止まらない。
(2020.04.05)
しっとり…びっしょり。
8月といえば梅雨が明けて夏に突入する季節。
世間も夏休みムードに包まれ、お祭りや花火で全国各地が色鮮やかに染まる。九州も太陽の恵みを受けて気持ちの良い晴れを感じられるだろう…。そう思っていた。現地に着くまでは……。
筆者も春学期の行事を終えて8月中旬から約1週間、九州に滞在した。
宮崎空港に降り立ち、大分と鹿児島で415系を狙おうという手筈だ。
しかし天気予報を確認すると、この滞在日程中全日程が悪天候。こんなことがありえるのだろうか。晴れ男と称されることの多い筆者でも気が滅入ってしまうほどの不安である。
到着したその日から連日の雨模様で精神的に疲弊していたその時、友人から久大本線へ行こうとお誘いがあった。その日ももちろん雨模様で、日豊本線を攻めるには物足りない天気だったので大歓迎だ。狙うは1日1往復のみ設定のキハ47である。
福岡県内に移動していた我々は一度後藤寺線でスナップを回収したあと、久大本線の有名撮影地へ向かった。
それまでしとしとと僅かな量が降り続いていたのだが、到着すると大雨に。カメラをセットするも明らかに個体によろしくないであろう勢いで雨が叩きつける。
だが背後の山にいい感じの霧が立ち込めてくるサマは心情を大きく乱し、自分でも"もっと降ってほしい"と思っているのか"弱まってほしい"と思っているのかわからなくなるほどだった。
お目当てのキハが通過する数十分前にお目見えする、ゆふいんの森を回収して本番まで車で待機。九州経験値の浅い筆者にとって全ての被写体が実に新鮮だ。東京じゃまず見れない景色に東京にはいないデザインの車両。JR東日本や小田急、東武あたりの観光特急は是非水戸岡氏のデザインを取り入れてほしいものだ。
通過時刻が近づき、構図と露出、ピントをチェックしてその時を待つ。
背景の霧がいい感じになってきた頃合いで重い空笛とともに列車が通過した。
キハ47系
(2019.08.27)
長岡花火増結2019
新潟の115系に関して1年間で一番大きな話題となるのが、柏崎花火大会と長岡花火大会に合わせての増結だ。
2018年のダイヤ改正から115系による運用は6つに絞られてしまったが、その中でも信越本線の快速運用である3374Mは今もなお、これらの日には増結して運転される。
現在(2019年8/1時点で)新潟車両センターには7本、6色の115系が存在した。一次新潟色が一本、二次新潟色が二本、三次新潟色が一本、弥彦色が一本、懐かしの新潟色が一本だ。ここまでカラーリングがバラバラであると編成美を求めてさまざまな議論がなされるわけだ。
増結の際後ろ(新潟側)につく車両は7本のうち予備車運用に回っているもので、前に着く車両は6つの運用のうち順当に流れてきたものが充てられる。
結果的に、2019年の長岡花火増結は8/2が弥彦色+二次新潟色、8/3が二次新潟色+二次新潟色となった。
これは撮り鉄界では画期的な組成である。なぜなら同じカラーリングの編成がペアを組むことになったからだ。
私は普段編成写真というのは滅多に撮らないのだが、そうと決まれば迷う余地はない。しかもメインに撮影している二次新潟色のペアともなるのだから当然の話である。
胸を躍らせながら、春学期の定期考査最終日の夜に東京を出発した。
関越道をひたすら下り、朝の越後線運用を一本撮影してから東光寺の定番撮影地の場所取りへ向かおうという算段だ。
初日の8/2は弥彦色と二次新潟色の組成であり、これは本来の目的ではないので割愛する。
構図や厳密な立ち位置を翌日のためにマーキングし、一夜を明かした。
来たる8/3の朝、空はすっきりと晴れており申し分ない。このまま夕方まで晴れて欲しいものだが、新潟の天気は冬ほどではないとはいえ先が読めないことが気がかりだ。
この日は寄り道をせずに宿から東光寺のストレートへと直行した。
まだ午前、通過まで7時間以上もあるというのにすでに同業者が何名か場所取りをしている。寄り道をしなくて本当によかった…。
立ち位置だけ同乗者と申し合わせをし、後からちらほらとくるおそらく電車移動の同業者を綺麗に並べていく。もう何本の129系を見送ったのかわからない。仮眠を取るにも、増結に胸を熱くしている同業者の熱気がすごく、自分まで胸騒ぎがしてしまい寝るに寝られない。
エンジンをかけて音楽を聴いていると、通過時刻が迫ってきた。
フィルムもセットしたかったがいかんせん望遠レンズを所有していないもので、デジタルの一丁切り。構図を組む手が震えているのが自分でも分かるほど緊張していた。
全員が三脚のセットを終え、いよいよ通過時刻。若干の遅れは想定内だしここで被ったという情報も聞いたことがないので精神衛生上は比較的クリーンである。
そしてずっと続く直線の奥の方にハロゲン電球がちらほらと陽炎に揺れながら視界に入る。いよいよ勝負の時だ。
もうレリーズを持つ手は手汗でびしょびしょだ。
115系 N33編成+N35編成
無事太陽光線も持ってくれて、優勝を収めることができた。このために新潟に来たと言っても過言ではない一枚。ここまで運用が削減された今、複線区間で二次新潟色の6連は諦めていたが、思わぬ産物にしばらく興奮が収まらなかった。
(2019.08.03)