犬との14年

2023年11月1日。14年間一緒に暮らしてきた犬のおでんが亡くなった。

 

甘えん坊で食いしん坊。暴れん坊で強情っぱり。
犬が苦手で人が好き。日なたでピーンと伸びて寝る。見ているだけでこっちが眠くなるくらい、とっても気持ちよさそうに。

ぴーん

おでんと出会ったとき、私は毎日落ち込んでいた。24歳で3社目という騒々しい経歴を背負って転がり込んだ職場は想像以上にベンチャーで、元気しか取り柄のない私はしばらく結果なんて出ず、所在なかった。
だから、自分を必要としてくれる存在がほしかった。
そんなときにおでんに出会ってしまって、彼の表情は私の心の穴をズキュンと刺激した。数日悩んで、思い切って迎え入れた。そのときは、早くこんな仕事辞めてゆっくりしてやろうと思っていた。

が、その後の自分の変化と仕事の楽しさはハチャメチャだった。
14年の間に離婚・再婚・移住・出産*2・転居・起業・廃業・転職を経験して、目を血走らせる日々だった。
(実際、結膜炎が癖になって、今も1年の半分くらい目が充血してる)


変化を良しとする環境に身を置いてしまったので、いつもそこにいるおでんは時に負担にすら感じられた。
疲れて帰宅する度、嬉しくて襲いかかってくる彼にベロベロに舐められながら、ぐちゃぐちゃになったトイレを片付けて、何度もため息をついた。なんで飼ったんだろうと思ってしまうこともあった。

 

「いつもそこにいるおでん」
そう書いて気づいたけど、転居の度に家族の誰より早く、おでんは自分の居心地が良い場所を見つけて、文字通りいつもそこにいた。
西陽が差す部屋の一画、ボロボロだけど彼仕様にへこんだ無印のクッション、長女の気配を感じるリュックの上。いつも気持ち良さそうで、グースカ寝ていた。私たちは転居の度に、おでんを中心にして部屋を設えた。

日向への執着は見習いたいほどだった

そんなおでんと暮らすうちに、彼がいないとどこか不安を覚えるようになった。
翌日からの旅行に備えておでんをホテルに預けたのに、家に戻った途端に涙が溢れて、ホテルにとんぼ返りしたこともある。
迎えに行ったら、たった30分離れていただけなのに、まるで20年ぶりの邂逅ですか?と思うくらいにおでんは喜んでくれた。

無垢で無邪気で愛することをさぼらないおでんは、私を確実に変えた。

 

14年の間、必ずしも穏やかではなかった私をおでんはどう見ていたんだろう。
私たちから見たおでんは、ちょっと間抜けで、体全体で大好き!を伝えてくれるとってもっとってもかわいい犬だったな。

昼寝してる人間が好物だったおでん

 

おでん、大好きだったよ。もう、家族みんな泣いて泣いて大変だったんだから!はーもう、大好きだったな。