みらっちの読書ブログ

本や映画、音楽の話を心のおもむくままに。

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呪いから解放される物語【クリームイエローの海と春キャベツのある家/せやま南天】

重版だそうです。 このご時世、滅多なことでは重版になりません。 新人作家のデビュー作が、発売から1か月も経たないうちに重版が決定するなんて、おそらく相当に異例のことだと思います。 publications.asahi.com 『クリームイエローの海と春キャベツのある…

電子書籍のこれまでとこれから【『50代から始めるデジタル出版 定年で名刺を失う前に考えよう』/鎌田純子】

実をいうと、私はこの本を、なんと「謹呈」されています。 ―――などというと、おいおいどうした、と思われると思いますが、これが事実なのです。 『50代から始めるデジタル出版 定年で名刺を失う前に考えよう』を著された鎌田純子さんは、株式会社ボイジャー…

新しい「読書」を味わう【ミライの源氏物語/山崎ナオコーラ】

先日、吉穂堂の棚から旅立った山崎ナオコーラさんの『ミライの源氏物語』。 目にとめていただき、お買い上げいただきまして、まことにありがとうございます! 神田神保町の共同書店「PASSAGE」の3階にある棚、吉穂堂。 ただでさえ目立たない小さな棚。 常日…

豊潤な文章の源がここに【星占い的思考/石井ゆかり】

石井ゆかりさんのLINE公式に入っている。 もう何年も、毎朝7時に、今日の星占いが届く。 毎日だから、ちゃんと読む日もあれば、流し読みの日もある。スルーしてしまう日もある。それでもやめる気はない。石井さんの占いの「言葉」が好きだから。 つい先日、…

「光る君へ」の予習にぜひ【大塚ひかり『嫉妬と階級の『源氏物語』』】

謹しんで新年のお慶びを申し上げます。 昨年は大変お世話になりました。 今年もよろしくお願いいたします。 今年の大河は『源氏物語』を題材にした『光る君へ』。 いよいよ今夜から放送ですね。 私は毎週金曜日に、自分のWEBサイトのつぶやきというかエッセ…

芸術論であり文学論【ギケイキ3/町田康】

ついに。 待ちに待って5年、ついに出ました『ギケイキ3巻 不滅の滅び』。 実際、最初の行を読んだとき「あれ?2巻はどこらへんで終わったっけ」、と、途方に暮れた気分になりましたが、すぐに世界に没入。そうだったそうだった、前回は吉野山で静御前と別…

中世と絶妙に相性がいい【町田康】

町田康さんはミュージシャンです。常々、音楽と文学というのは密接な関係にあるんじゃないか、と思っています。音楽家でもあり作家である町田さんが「琵琶法師」の世界を描く。もうそれだけでわくわくします。 「ギケイキ」は「義経記(室町時代に成立したと…

もしかして鬼殺隊と鬼灯さんは敵対関係なのだろうか【鬼灯の冷徹/江口夏美】

【鬼灯(ほおずき)の冷徹/江口夏美】。31巻(完結)。 morning.kodansha.co.jp 地獄の話です。 表紙の鬼灯さんはもちろん鬼。獄卒を統率する閻魔大王の補佐官です。 この漫画の閻魔大王はおちゃめなおじさまといった雰囲気で、鬼灯さんの上司として毎日亡…

エウレカと叫び、元栓を締める【エピデミック/川端裕人】

SARSが2002年から2003年で、新型インフルエンザが2009年。どちらも日本は水際対策によって免れた、あるいは最小の被害で済んだ、とされています。この作品は、SARSと新型インフルエンザパンデミックの間、2007年に出版されました。本格的疫学小説、だそうで…

新米母だったあのときの自分に届けたい【感染症とワクチンについて専門家の父に聞いてみた/さーたり】

「この本を新米母だったあのころの自分に渡してあげたい」と思います。 www.kinokuniya.co.jp 正直、妊娠するまでワクチンのことを真剣に考えたことはなく、妊娠時に様々な検査をしたときに初めて意識した気がします。考えてみれば、かつて昭和・平成の時代…

追悼 山田太一さん【『ふぞろいの林檎たちⅤ/男たちの旅路<オートバイ>山田太一未発表シナリオ集』頭木弘樹・『異人たちとの夏』/山田太一】

山田太一さんが亡くなりました。 まさか酒見賢一さんに続き、こんなにすぐに山田太一さんの追悼記事を書くことになるとは思いませんでした。 いえ、思っていなかった、というのは少し語弊があります。 先月、山田太一の未発表シナリオが見つかって、それが書…

コロナ禍における稗史としての日常の記録【東京ディストピア日記/桜庭一樹】

www.kawade.co.jp コロナ禍の日常の日記の出版が増えているそうです。何が起こって、どんなことを感じたか、の日常の記録。 コロナ禍となり1年以上が経って、もっとこういう作品が乱発されるかなと思ったのですが、さすがにSNS全盛の現代、毎日のつぶやきはS…

シルクロードへの夢と憧れがつまっている【神坂智子】

少女時代、というのがこのわたくしにも存在いたしまして、その当時「ど」ハマりしていたのが神坂智子さんです。残念ながら、引っ越しを繰り返すうちに手放してしまったようで見つかりません。そのため記憶を頼りに書いております。 どれがいちばん、とはとて…

繊細で優美、独特の世界に酔う【岡野玲子】

岡野玲子さんが好きです。 www.hakusensha.co.jp 2001年に手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。2006年に第37回星雲賞コミック部門受賞。 とにかく絵が繊細で優美です。そして幻想的。「筆」を使って作画されることが多く、まさに芸術です。そしてまた、岡野さん…

心に刺さると抜けなくなる【清水玲子】

「この1冊で私の人生が狂いました」…いえいえ、そこまでではないですが、でも私にとって「人生に食い込んでる感じ」がするのが、清水玲子さんです。ほぼほぼ、リアルタイムで追い続けてきた漫画家さんでもあります。 最初に読んだのは『ミルキーウェイ』。高…